- 更新日 : 2024年7月12日
損益とは?意味や損益管理の必要性をわかりやすく解説!
会社経営を行う上で、売上高や人件費、利益率、経費などの数字を正確に把握・分析することは非常に重要です。さまざまな数字を取り扱う中で重要な経営指標の一つが「損益」です。損益を把握することで、自社の経営状況を客観的に把握でき、会社経営の質をより向上させることができるでしょう。
本記事では、損益の意味や損益管理の必要性について詳しく解説します。
損益とは
損益とは、「損失」と「利益」をかけ合わせた言葉であり、会社の商品・サービスなどの売上によって得た収益から経費を差し引いた額のことです。この差額がプラスであれば会社の業績は黒字、マイナスであれば赤字ということになります。
損益とよく似た言葉として「利益」や「収支」などがあります。下記でそれぞれの意味や損益との違いについて見ていきましょう。
利益との違い
利益とは、収益(事業活動による資産増加)から費用(事業活動に伴う支出)を差し引いたもので、企業の儲けのことです。損益は利益の反対だと誤解されるケースが見られますが、利益の反対は「損失」になります。
収支との違い
収支とは、「収入」と「支出」をかけ合わせた用語であり、得た収入から支出を差し引いた金額のことです。収支が会社の現金や預金などの動きを表わしているのに対し、損益は会社の財産の動きを表します。
例えば、10万円の自社商品を顧客に売って翌月に入金される場合、当月にお金の動きは発生しないため、収支は0円という計算になります。
一方、損益の考え方では売上が発生したタイミングで計上するため、収益から経費を差し引いた金額が当月の損益という形になるのです。
この損益を部門やサービスごとに管理することで、会社の利益がどこで発生しているのか、どこで損失が発生しているのかを把握することができます。
損益計算書とは
企業内のどの事業・分野で、どの程度の儲け・損失を出しているかを知るために用いられているのが「損益計算書」です。
損益計算書は英語で「Profit and Loss Statement」と書くため、略して「P/L」と呼ぶこともあります。損益計算書は「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」などと同様に、企業の重要な決算書の一つです。
この章では、損益計算書で読み取れる利益や収益性について解説します。
損益計算書から読み取れる5つの利益
損益計算書からは、以下の5つの利益を読み取ることが可能です。
- 売上総利益
売上総利益とは、自社の商品やサービスの販売価格と原価の差によって得た利益のことです。粗利とも呼ばれています。売上総利益は以下の計算式で算出することができます。・売上総利益=売上高-売上原価(仕入れや製造にかかる費用) - 営業利益
営業利益とは、本業の商品・サービスの販売によって稼ぎ出した利益のことを指します。以下の計算式の通り、売上総利益から販売する際に掛かる販売費・一般管理費などを差し引いて計算します。・営業利益=売上総利益-(販売費+一般管理費)この営業利益が大きいほど、会社の収益性が高いと判断できます。 - 経常利益
経営利益とは、本業と本業以外の収益・費用を合わせたものであり、以下の計算式で算出することができます。・経常利益=営業利益+営業外利益-営業外費用営業外利益とは、受取利息や受取配当金、有価証券売却益などのことを指します。
営業外費用とは、支払利息や有価証券売却損、有価証券評価損などのことです。 - 税引前当期利益
税引前当期利益とは、当期内に支払わなくてはいけない税金を納める前の利益額のことを指します。税引前当期利益は、以下の計算式で算出することができます。・税引前当期利益=経常利益+特別利益(本業に関係なく臨時的に発生する利益のこと)-特別損失(臨時的に発生する損失のこと) - 当期利益
当期利益とは、当該決算期で最終的に確定した利益のことです。純利益とも呼ばれています。当期利益は、以下の計算式で算出することができます。・当期純利益=税引前当期利益-法人税等±法人税等調整額法人税などの税金を納めた後の利益であるため、一つの事業年度であげた純粋な利益を指しているといえるでしょう。
損益計算書から企業の収益性も把握できる
損益計算書からは、以下の4項目も把握できます。
- 売上高総利益率(粗利率)
売上高総利益率とは、売上高のうち売上総利益が何パーセント占めているかを示すものです。企業の経営状況をチェックできます。
- 売上高営業利益率
売上高営業利益率とは、売上高のうち営業利益が何パーセント占めているかを示すものです。本業での収益力をチェックできます。
- 売上高経常利益率
売上高経常利益率とは、売上高のうち経常利益が何パーセント占めているかを示すものです。企業の収益性をチェックできます。
- 損益分岐点売上高
損益分岐点売上高とは、会社の売上から費用を引いたときにちょうどゼロになるポイントの売上高のことです。企業が損益分岐点に達する売上を獲得していない場合、赤字経営であるということになります。
損益管理の必要性
損益計算書を基に企業の損益を把握し、改善することを「損益管理」といいます。
この章では、損益管理の必要性や代表的な方法について解説します。
損益管理の目的
損益管理の一番の目的は、会社の「利益向上」です。
例えば、損益が赤字になっている場合、黒字にするためにはどのくらい収益を上げる必要があるのかを把握する必要があります。
黒字の場合は、黒字を維持するために、売上総利益や営業利益、経常利益などを分析・管理し、効率よく利益を上げていく方法を模索しなければなりません。
損益管理を実施することで、どの事業がどのように利益を上げているか、どのような経費に出費しているかが分かるため、経営上のリスク管理につながります。また、損益管理の結果をもとにした経営判断を下すことも可能です。
損益管理の種類について
損益管理は「部門別損益管理」「顧客別損益管理」「案件・プロジェクト別損益管理」の3種類が代表的な方法です。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
- 部門別損益管理
部門別損益管理とは、部門別・営業所別に行う損益管理のことです。
部門・店舗ごとに損益計算書を作成し、注力すべき部門・営業所を見定めて改善できる点がメリットとなります。
- 顧客別損益管理
顧客別損益管理とは、顧客ごとに損益を管理する方法です。
自社に大きな利益をもたらしている顧客を把握できるメリットがあります。さらに、利益率が高い顧客へのセールスを強化したり、逆に利益率の低い顧客への対策を練ったり、効率的に利益を上げる戦略を立案できる点も魅力です。
- 案件・プロジェクト別損益管理
案件・プロジェクト別損益管理は、案件やプロジェクト別に損益を管理する方法です。
利益に貢献しているプロジェクトを即座に把握できる点がメリットになります。
例えば、進捗中の案件に対してタイムリーに損益管理を行えば、想定よりも原価がかかっているプロジェクトを早めに見つけられるでしょう。その結果、赤字プロジェクトを早期に発見し、コストを最小限に抑えることができます。
タイムリーな損益管理を実施するためには、ERPの活用がおすすめです。
ERPは売上や原価などの損益を把握するために必要なデータが一元管理されているため、スピーディーに損益を把握できます。
ERPの詳細やメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。こちらをご覧ください。
まとめ
今回は、損益の意味や損益管理の必要性について解説しました。会社の損益を把握することで、会社の経営状況をより詳しく理解できるようになります。
ERPは売上や原価などの損益を把握するために必要なデータが一元管理されており、損益をスピーディーに把握することができます。会社の経営状況分析に大いに役立つため、ぜひ導入をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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