• 作成日 : 2024年3月8日

M&Aのデューデリジェンスとは?目的、種類などを解説

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、一般的に「DD」と略され、企業の合併・買収プロセスにおいて、買い手企業が売り手企業に対して実施する調査プロセスです。多岐にわたる領域があり、各分野で高度な専門知識が求められるため、通常は士業や専門家によって実施されます。

デューデリジェンスの範囲は非常に広く、買い手企業は売り手企業の潜在的なリスクや機会を正確に把握するため、深く掘り下げて調査しなければなりません。財務状況や法的契約の内容、技術的なインフラストラクチャ、人材構成などについて調査を行います。

デューデリジェンスの徹底的な実施により、買い手企業は将来のリスクを最小限に抑え、戦略的な意思決定をより堅固なものとすることが可能です。

デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスを実施する主な目的を解説します。

買収対象企業のリスク把握

企業を買収する際には、財務や法務だけではなく、人材や経営に関連するさまざまなリスクが伴います。外部の経営コンサルタント、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家を活用し、買収対象企業のリスクを包括的に調査しなければなりません。

買収金額が小さい場合でも、企業が抱える潜在的なリスクを見逃さないことが重要です。たとえ買収金額が低くても、簿外負債などの問題があれば、あとで大きな損失を被るおそれがあるためです。

経営統合(PMI)の準備

デューデリジェンスの過程では、財務情報だけではなく将来の事業計画など、経営に関する重要な情報を徹底的に分析します。これにより、買収後の経営統合に必要なプロセス、シナジーやリスクを把握することが可能です。

M&Aは買収したら成功ではなく、経営統合がうまくいって初めて成功したといえます。デューデリジェンス段階で経営統合の準備を進めることは、買収後のスムーズな移行や企業文化の調和に寄与し、全体的なM&A戦略の成功を確保するために重要です。

デューデリジェンスの流れ

デューデリジェンスの一般的な流れは以下のとおりです。

プレデューデリジェンス

プレデューデリジェンスでは、売り手企業の初期的な開示書類をもとに、買い手候補の企業が買収対象企業の情報を集め、初期の企業評価を実施します。

本デューデリジェンス

  1. 具体的な実施計画の策定: 買い手企業は、調査対象の範囲と手順を明確にするため、デューデリジェンス実施計画を策定します。方針としては、調査事項の優先順位、専門家の選定、社内検討チームの組成などを検討します。
  2. 詳細な情報収集・分析と調査: 共通の基礎情報から開始し、対象企業の組織構造、ガバナンス、事業戦略、事業計画などの共通の基礎的分析を行います。同時に、財務、ビジネス、法務、税務など個別のデューデリジェンスも進行します。外部専門家が厳格な管理下で情報を共有します。
  3. 報告書の作成と結果の検討: 買い手企業は開示資料の分析とインタビュー・現地調査の結果に基づいて報告書を作成します。
  4. 顕在化した問題への対応: 分析・調査の結果、解決不可能な問題が顕在化した場合、M&A契約の断念または対応策の実施が必要です。対応策には最終契約書の見直し、M&Aスキームの変更、売却価格の引き下げなどが含まれます。

ポストデューデリジェンス

ポストデューデリジェンスでは、最終譲渡契約までに問題点の解決状況を確認し、クロージング後の統合化(PMI)のための情報収集が通常行われます。

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスは、調査対象によっていくつかの種類に分けられます。M&Aにおける代表的なデューデリジェンスを紹介します。

ビジネスデューデリジェンス

M&Aの対象企業の事業について、ビジネスモデルや市場環境、技術の進化、法規制変更、競合他社の影響、新規参入の障壁やコストなどを分析し、オーナー経営者やキーマンへのインタビューを通じて事業の安定性や成長性を予測します。取引価格やM&A後のバリューアップ、シナジーの評価が可能です。

財務デューデリジェンス

対象企業提供の財務情報をもとに、買主が実態を把握して現在の財務状況を評価し、リスクを特定しながら、将来の事業計画の土台となる収支やキャッシュ・フローの予測を行います。貸借対照表損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、事業計画分析、税務リスクの分析などが含まれます。

法務デューデリジェンス

取引実行の障害となる法律上の問題点や、対象企業の価値に影響を与える法律上の問題点、M&A後の事業計画に影響を与える法的な問題点などを調査するプロセスです。

人事デューデリジェンス

M&A後に対象事業が円滑に継続できるよう、組織、人員構成、キーマンの状況、および労使関連の課題を調査し、M&A後の人事制度や組織へのスムーズな統合を促進する取り組みです。

ITデューデリジェンス

事業に使用するシステム関連の資産査定や、M&A成立後のシステム統合に関する障害、予測される投資費用を調査し、事業計画に反映させるプロセスです。

デューデリジェンスのプロセスの効率化

デューデリジェンスにおいては、売り手企業が積極的に協力する姿勢が極めて重要です。専門家からの質問や資料提供に対して、できるだけ迅速かつ正確に回答することが望まれます。

無駄な時間をかけず、積極的に情報提供を行うことで、買収側に対する高い信頼感の醸成につながります。調査への最大限の協力は、将来的な協業の可能性を高める要素といえるでしょう。

ただし、個人情報や秘密保持契約に関する開示は慎重に行わなければいけません。例えば、人件費の詳細を提供する際は、個人情報の取り扱いに留意しつつ情報を提供しましょう。企業の情報を適切にまとめたうえで提供するには、ERPパッケージの利用が有効です。

ERPパッケージは、企業が経営資源を効率的に配分し、有効に活用するための基本的なシステムです。会計、人事、生産、物流、販売など、多岐にわたる業務分野の機能を統合し、自社が保有する情報を一元管理できます。

ERPの適切な利用は、デューデリジェンスのプロセスの効率化につながります。

まとめ

デューデリジェンスは、投資やM&Aの意思決定において非常に重要な役割を果たします。弁護士や公認会計士などの専門家によってさまざまなリスクが検討され、最終的な経営判断や買収金額の決定、シナジー効果の評価など、重要な要素がリストアップされるからです。
デューデリジェンスには手間や時間、費用がかかりますが、M&A後の事業に大きな影響を与える要素であるため、慎重に実施する必要があります。投資やM&Aにおいては、できるだけ多くの情報を確認し、リスクを最小限に抑えるための基盤を築くことが肝要です。


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