- 更新日 : 2024年7月12日
2030年問題とは?企業に与える影響と具体的な対策を解説
2030年問題は、日本の少子高齢化が社会・企業に与える問題の総称です。
企業にとって労働力人口の減少は深刻な問題であり、継続して円滑な企業経営をするためにも、何らかの対策が求められます。
この記事では、2030年問題の概要や企業に与える影響、対策方法をご紹介します。
目次
2030年問題とは
まずは2030年問題の概要と、2040年問題との違い、他国と比較した日本との現状を確認しておきましょう。
2030年問題の概要と背景
2030年問題は、日本の人口減少・高齢化に伴う問題の総称です。
まずは2030年問題の背景を確認していきましょう。
内閣府の発表している「令和5年版高齢社会白書(※1)」によると、2030年には65歳以上の高齢者が人口比率の30%を超え、2037年に35%を突破し日本の人口の3人に1人が65歳以上になると想定されています。
また、厚生労働省の発表している「人口動態統計月報年計(概数)の概況(※2)」によると、2022年の出生数は77万747人であり、前年の81万1622人より約4万人減少しています。
これらの背景から、日本の少子高齢化は今後さらに加速・深刻化すると予測されています。
必然的に、上記に伴う労働力人口の減少や社会保険料の増加、医療費の増大などが懸念されており、これらの問題を総称して2030年問題と呼ばれています。
※1 参考:令和5年版高齢社会白書(図1-1-2)
※2 参考:令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
2040年問題との違い
一方、2040年問題は2030年問題の延長線上にあり、日本の少子高齢化がピークを迎える時期とされています。2030年問題と2040年問題には、以下の違いがあります。
- 2030年問題:日本の人口の3人に1人が65歳以上になり、労働力の減少や社会保障制度への圧迫などが懸念されている。
- 2040年問題:日本の少子高齢化がさらに進行し、ピークに達する時期を指す。
2040年問題は、団塊ジュニア世代が65歳を迎えるタイミングであり、65歳以上の高齢者が全人口の34.8%に達することから提起されています。これによる労働力人口の更なる減少が予想されています。
よって2040年は2030年に比べ、労働力人口の減少がさらに深刻化すると考えられており、企業が取るべき対策や準備の重要性を示唆しています。
他国と比較した日本の現状
内閣府が発表している高齢社会白書の「高齢化の国際的動向」の章では、先進諸国と日本の高齢化率を比較すると、2005年に日本が最も高水準となり、その後もこの状況が続くものと見込まれています。
他国でも高齢化率は上昇しており、高齢化は世界的な問題となっていますが、日本ではその問題がより深刻であるといえます。
2030年問題が企業に与える影響
2030年問題が企業に与える影響は以下の3つです。
- 労働力人口の減少
- 従業員の離職率の増加
- 技術力向上とデジタル化の重要性の増加
労働力人口の減少
少子高齢化の影響によって労働力人口が減少し、人材確保が困難となるでしょう。
これに伴い、優秀な人材確保のために高賃金での求人が増え、企業では人件費・労務費の増加が懸念されます。
人材獲得のために人件費を増加させる場合、企業は生産性向上や業務効率化でコストを削減し、資源配分を調整することが重要です。
従業員の離職率の増加
企業間で優秀な人材を確保するための競争が増えることで、引き抜きや転職が活発化することが考えられます。
転職をしやすい環境となることで、従業員はより良い条件を求めて、転職を考える傾向が強まるでしょう。
企業は、リモートワークやフレックスタイム制度など、自由度の高い勤務体制を導入することで、従業員が定着しやすい体制の構築が求められます。
技術力向上とデジタル化の重要性の増加
少ない労働力で効率よく企業を運営するには、技術力の向上や業務のデジタル化を行い、生産性を向上させることが必要不可欠です。
既存のレガシーシステムにとらわれずDXを推進し、業務プロセスの抜本的な改革や自動化・効率化が求められます。
企業が取るべき2030年問題への対策
企業が取るべき2030年問題への対策は、以下の4つです。
- 業務の見える化を実践する
- 業務を取捨選択する
- 従業員のスキルアップを推進する
- デジタル技術を用いた業務効率化を行う
業務の見える化を実践する
業務フローや手順、システム間の関連性を明確にし、効率的な業務運営のための基盤を作ります。
マニュアルや手順書を整備すれば、定年に伴って退職する従業員のナレッジを失うことなく、残る従業員に継承することが可能です。
業務を取捨選択する
長年にわたる慣習で実施している業務について、本当に必要な業務であるかを精査し、不要であれば捨てることができないか検討することも大切です。
長い承認フローや押印業務の短縮・廃止ができれば、大幅な業務効率化が実現できるでしょう。
従業員のスキルアップを推進する
従業員の能力を高めることで、業務を効率よく遂行できるようになります。
管理職は、メンバーに不足しているスキルを探し、研修やセミナーへの参加を促すことが求められます。
さらに、スキルアップした内容・実績を人事評価や給与に反映することで、従業員のモチベーション向上も図れます。
デジタル技術を用いた業務効率化を行う
労働力人口減少の対策として、RPAやAI、ERPなどのデジタル技術を用いることも非常に大切です。
従来の人手に依存する業務プロセスの見直しや自動化が生産性の向上につながり、人材不足を解決する一助になることでしょう。
先程挙げたデジタル技術について、それぞれの詳細を解説します。
RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略語で、パソコンで行っている定型処理を自動化できる技術を指します。
システム間のデータ書き写しやデータチェックなどのさまざまな単純作業を自動化することが可能です。
自動化によってミスや単純業務を削減でき、クリエイティブな作業に専念することが可能になります。
AI
AIとは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略語で、AIシステムが大量のデータ分析と学習を通じて、高度な判断や提案ができるようになる技術を指します。
例えば、AIを搭載したチャットボットを導入することで、社内外の問い合わせ業務の自動化や、業務品質の均一化が可能です。
ERP
ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略称で、会計・人事・生産・物流・販売など、企業のさまざまな情報を統合管理するシステムを指します。
ERPを導入することで、複数のシステムへの入力作業が減り、部門ごとの業務状況をリアルタイムに確認できるようになります。
結果として、企業は迅速な意思決定を行い、効率の良い企業運営を実現することが可能になります。
ERPの概要や詳細については、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
2030年問題は、日本の人口減少と高齢化に伴う社会・企業の問題を指します。
企業としては労働力不足や離職率の上昇が懸念されるため、以下のような対策が求められます。
- 業務の見える化を実践する
- 業務を取捨選択する
- 従業員のスキルアップを推進する
- デジタル技術を用いた業務効率化を行う
特にデジタル技術においては、ERPを導入することで部門間連携の強化や情報のリアルタイムな活用ができるようになり、業務の効率化が可能です。
2030年を迎える前にERPを導入し、労働力人口の減少に備えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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