- 更新日 : 2024年7月12日
次世代ERP・従来ERPの比較とメリットを解説
従来のERPは、単一パッケージによる大型システムが一般的でしたが、近年では「次世代ERP」と呼ばれる新しい概念が注目され始めています。この記事では、次世代ERPの概要や従来のERPとの違い、導入に向けたポイントなどを解説します。
目次
ERPの動向について
経済産業省のDXレポートで言及された「2025年の崖(※1)」が話題になっています。2025年の崖では、老朽化・複雑化した既存システムの維持・管理に大きな負担がかかり、企業の競争力を押し下げてしまうと指摘されました。ERPは問題となっている老朽化・複雑化した既存システムの代表例と言えます。長年かけてカスタマイズを繰り返してきたERPの肥大化が進み、新たな企業変革を妨げてしまうのです。
このような中、近年ではクラウド型のERPが普及してきました。堅牢性や拡張性、可用性などが求められる基幹システムでも利用に耐えられる実績が認められ、中小企業から大企業まで、クラウド型ERPの採用が進んでいます。企業の要件やIT部門の規模に合わせて、既成のソフトウェアをすぐに使えるSaaS(Software as a Service)や、パッケージをクラウド環境に導入するIaaS(Infrastructure as a Service)などの異なる提供形態が利用されています。
ITR社の調査(※2)では、2019年度のERP市場の売上金額は1128億円となり、2024年度まで年率9.5%で成長すると予測されています。自社サーバーで運用するオンプレミス型が横ばいで推移するのに対し、クラウド型ERPの成長が市場拡大に寄与しています。
※1:経済産業省 | DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
※2:ITR「ITR Market View:ERP市場2021」
次世代ERPと従来ERPは何が違う?
従来のERPは、基幹業務に必要なすべての機能を統合させた単一パッケージで運用されていました。製造・調達・物流・販売管理・在庫管理・財務会計・人事給与など、あらゆる業務を網羅する大型システムとなるのが一般的です。しかし、移行が難しく最初に導入したベンダーにロックインされる、カスタマイズを繰り返しブラックボックス化が進む、さらに、システム更新等の運用負担が増える、といった課題が指摘されるようになりました。
このような背景から、近年では次世代ERPが提案されています。次世代ERPは、中核となる会計や人事給与など業種による違いが少ない業務領域をシンプルな構成で整理した上で、業界特有の機能や不足する機能は別のアプリケーションと連携して対応する考え方です。
例えば、経営の基盤となる会計や人事給与をコアのERPシステムで構築した上で、IoT(Internet of Things)などの最新技術を取り入れた製造プロセスはクラウド型の業務アプリケーションで柔軟に対応する、といった方法が考えられます。また、大企業であれば本社はパッケージのERPを導入した上で、変化の激しい子会社にはクラウド型のERPを用いる「2階層ERP」を用いる考え方もあります。
次世代ERPのメリット
次世代ERPは、従来のERPのメリットを享受しつつ、成長分野での柔軟性を同時に追求できるのが大きな利点です。特に、クラウド型を導入した場合は、カスタマイズや運用負担を最小限に抑えられるので、ERPに要する予算や工数を削減し、成長戦略へと投資や人材を振り向けられるでしょう。
また、単一のパッケージではなく、システム連携を前提とした構成なので、提供ベンダーによるロックインを避けながら、新たな技術を取り入れるのも容易です。人間の代わりにAIが処理を担当するワークフローの自動化、IoT機器からのデータ取得・分析、データを活用した新サービスといった先進的な取り組みにも次世代ERPは対応しやすいでしょう。
次世代ERPのデメリット
次世代ERPを導入するには、中長期的な視点でのIT戦略が不可欠である点が最大のデメリットと言えるでしょう。次世代ERPを導入するには、標準化するべき中核業務と、柔軟性が求められる他の業務が適切に切り分けられなければ、適切な構成が選択できないでしょう。この判断が適切に行えないと、複数のアプリケーションを分散的に導入する分、かえってシステムの複雑さが増してしまうおそれがあります。したがって、企業全体を俯瞰して、ERPの構成を決めるIT戦略スキルが求められます。
また、クラウドサービスへの深い理解も必要です。オンプレミスよりも運用負担が軽減されるといっても、クラウド事業者と責任を共有し、ユーザー企業が果たすべき作業を遂行しなければなりません。適切なセキュリティ設定がなされていなければ、情報漏えいにつながるリスクもあります。
従来ERPのメリット
単一パッケージで構成されるので、一つのシステムであらゆる業務に対応できるのが利点です。また、システムが統合されているため次世代型ERPよりもデータ連携が容易というのもメリットです。多くの企業では既に従来型のERPシステムを運用しているため、既存のIT資産を活用していけるのもメリットと言えます。
従来ERPのデメリット
前述したように、複雑化したことで柔軟性の低い大型の既存システムになり、運用負担が高くなったり、新しい技術を取り入れづらくなったりする点がデメリットと言えます。
カスタマイズを頻繁に行っているため、同じ機能が重複したり、誰も使わない機能が開発されたりしているケースも見受けられます。新しい他システムとの連携に対応していない場合も多いです。ビジネス環境の変化が激しい時代では、企業の要件に応えられないリスクが考えられます。
次世代ERPへの移行を成功させるポイント
では、従来ERPから次世代ERPへ移行するには、どのような観点で進めればよいのでしょうか。以下では、経営・業務・ITの観点から解説します。
経営層の視点
ERPは経営層にとって意思決定に必要な情報を提供する機能を担います。会社全体でヒト・モノ・カネの資産がどのような状態にあるのかを可視化しなければなりません。したがって、企業グループ全体でガバナンスを維持できるような次世代ERPを選ぶ必要があります。
業務の視点
ERPの導入・刷新においては、業務プロセスの見直しが欠かせません。既存の業務及びERPが抱える問題は何か、あるべき姿はどういったものか、アウトソーシングできる業務はないか、といった議題について検討する必要があります。標準化しやすい会計や人事給与などの中核業務と、柔軟性が求められる成長分野や業界特有の機能が必要な分野を切り分ける作業が必要です。また、システムを分離したことでデータ連携によるタイムラグが発生する可能性があるため、業務をスムーズに遂行できるかという判断も必要です。
ITの視点
近年では、IT環境を検討する上でクラウド技術を優先的に採用するクラウドファーストの考え方が浸透してきました。基幹システムであっても、コストの最適化やIT資産の柔軟性が増すクラウド型が好まれるようになっています。中小企業はもちろん、大企業でもIT部門の負担を軽減できるよう、積極的にクラウド技術を活用しています。
次世代ERPにおいては、適材適所でクラウド型ERPを活用します。例えば、会計や人事給与のコアERPをSaaS型にすれば、販売や調達といった業界特有の機能が求められやすい領域のアプリケーションは、他システムと連携することでシステム全体をスリム化する構成が採用できます。
業務ごとにオンプレミス型とクラウド型を組み合わせるハイブリッド型のERPを採用する可能性もあります。経営層やユーザー部門のニーズに応えられるよう、最適な構成を検討するのがIT部門の役割です。
次世代ERPの活用でDXを促進する
この記事では、従来型のERPと次世代ERPについて、それぞれ概要とメリット・デメリットを解説しました。次世代ERPは、運用負担が大きくなった既存システムの課題を解決するよう、シンプルな構成で、業務の変化へ柔軟に対応できるようにします。新たな技術を導入し、業務を効率化したり新サービスを開発したりするのは、近年話題になっているDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に他なりません。企業の中核業務に柔軟性をもたらすクラウド型のERPは、その要となるでしょう。
当社では、手軽に利用できるクラウド型のERPとして、「マネーフォワード クラウド ERP」を提供しています。マネーフォワードクラウドERPは最低1サービスからでも利用できるため、お客様の成長段階にあわせてサービスを組み合わせて使うことができます。
よくある質問
次世代ERPとは何ですか?
次世代ERPは、会計や人事給与などの業界による違いが少ない業務領域をシンプルな構成で整理した上で、その他の機能は別のアプリケーションと連携して対応する考え方です。詳しくはこちらをご覧ください。
次世代ERPのメリットは?
中核業務の標準化・効率化と、成長分野での柔軟性を同時に追求します。システム連携を前提としているので、パッケージ提供ベンダーによるロックインを避けながら、新たな技術を取り入れやすくなります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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