- 更新日 : 2024年7月12日
業務標準化とは?メリットやデメリット、進め方について詳しく解説
昨今の働き方改革によって勤務時間の短縮や生産性向上が求められている中、業務標準化に取り組む企業が増えています。業務標準化に取り組めば、企業全体の生産性向上や業務の効率化など、多くのメリットを得ることが可能です。
本記事では、業務標準化のメリットやデメリット、具体的な進め方について詳しく解説していきます。
目次
業務標準化とは
業務標準化とは、社員の誰もが同じ成果を出せるように業務の手順を整理し、設定したルールに沿って業務を行えるようにすることです。
業務の手順・ルールを統一し、同じ認識を持って作業することで、社員全員が同じレベルで業務を行えるようになります。誰もが同じ手順で業務を遂行するため、成果物の品質水準を一定以上に保つことが可能です。
また、業務標準化によって業務の属人化も解決できます。
属人化とは、特定の人しかその業務を担当できなかったり、担当者しか業務の詳細が分からなかったりする状態のことです。属人化が進むと、業務の担当者が不在の場合に業務が滞り、誰も対応できなくなるといったリスクがあります。
業務標準化の方法
業務標準化の方法は、大きく「タスクの標準化」と「業務フローの標準化」の2つに分けられます。
タスク標準化
タスクの標準化とは、社員ごとに仕事内容や成果に差が出ないように、誰が・どのような作業を行うかを明確にすることです。
社員一人ひとりのやるべきことや作業が統一化されるため、業務品質を一定に保てるというメリットがあります。
社員の誰が作業を行っても、業務品質が保たれる状態を作ることができます。
業務フローの標準化
業務フローの標準化とは、業務の流れを可視化し、社員の誰もが業務の流れを把握できる状態にすることです。
業務フローを標準化しておけば、仮に業務の担当者が代わった場合でも、スムーズな引き継ぎと業務の遂行が可能になります。ある社員が抜けたとしても仕事が回る状態を作れます。
業務標準化を行うメリット
業務標準化を行うことで、以下の5つメリットを得られます。
- 生産性の向上
- 業務品質の向上
- 属人化の防止
- コストの削減
- 成長に合わせた柔軟な業務の構築
それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
生産性の向上
業務標準化を行えば、業務をより効率的に進められるようになり、企業全体の生産性向上につながります。
また、業務タスク・業務フローが最適化されることで、ムダな作業や非効率な作業をなくしたり、改善したりすることも可能です。
例えば、顧客に対する電話対応のマニュアルを作成して業務フローを標準化しておけば、誰もが質の高い顧客対応を行えるようになり、企業に対する信頼感が高まります。顧客満足度のアップにもつながるでしょう。
業務品質の向上
業務標準化の取り組みでマニュアルやフローチャートなどを活用すれば、社員全員が同じ業務を遂行できるようになり、組織全体の業務品質が安定します。
作業の中でミスが起きやすいポイントや、重要なチェックポイントなどを共有できるため、人為的なミスが起こりにくくなる点がメリットです。
属人化の防止
業務標準化の体制を整えておけば、業務の手順やノウハウ、進捗状況などを社員間で共有でき、属人化を防止できます。異動などで社員の入れ替えがあるときも、スムーズに引き継ぎを行えるようになるでしょう。
コストの削減
業務標準化に成功すれば、さまざまなコストを削減できる点もメリットのひとつです。
業務標準化を進めるためには、既存の業務フローやタスクを分析したうえで、効率的に業務を遂行できる方法に標準化します。業務フローやタスクに潜んでいた「効率が悪い作業」や「無駄な業務」を検出し、ボトルネックを解消することが可能です。
また、業務標準化に取り組めば「やるべきこと」が明確となるため、メンバーの業務経験に関係なく安定したアウトプットを残せるようになります。その結果、人件費などのコスト削減をすすめることができるでしょう。
成長に合わせた柔軟な業務の構築
業務標準化は、成長に合わせた柔軟な業務を構築できます。
業務のあるべき姿は、企業規模や時間の経過とともに変わります。そのため、定期的に業務の進め方を評価し、課題を改善する必要があります。
日頃から継続して業務標準化に取り組んでいれば、新部門やプロジェクトが新設された場合に、速やかに効率的な業務の進め方を展開可能です。また、業務標準化推進時にクラウド型システムを導入すれば、組織の成長に合わせたシステム基盤の構築も実現できるでしょう。
月業務標準化のデメリット
業務標準化によって得られる効果は大きいものですが、以下のデメリットがあることも認識しておく必要があります。
マニュアル化していない業務に対応できなくなる可能性がある
業務標準化を進めると一定の水準で業務を行えますが、マニュアルに記載されていない作業はできなかったり、臨機応変な対応をしにくかったりするというデメリットがあります。
そのため、社員が柔軟かつ臨機応変に対応できるように考慮した上でマニュアルを作成することが重要です。
社員のモチベーション低下につながる可能性がある
マニュアル化された業務は単調な作業になることが多く、マンネリ化しやすいものです。
単調な作業を繰り返し行う状態が続けば、社員が不満を感じ、モチベーションが低下する可能性が高くなるでしょう。
マニュアル化により業務の目的があいまいになる
マニュアル化を進めると「なぜこの業務が必要になるのか」あるいは「何のために行っているのか」といった業務の目的に対する意識が薄れがちです。その結果、ビジネス状況や企業規模の変化などにより、以前は必要であったにもかかわらず現在は不要となった業務が見直されずに残り続けてしまうおそれがあります。
このような状況に陥らないためには、業務を定期的に見直すことはもちろん、マニュアルに作業手順だけではなく作業目的や業務の背景なども記載するとよいでしょう。
現場の反発を招くおそれがある
業務標準化は、進め方を誤ると現場で働く従業員の反発を招くおそれがあります。
従業員にとって、慣れた業務の進め方を変えるのは、強い不安を感じるものです。場合によっては、拒否感を示す従業員も出てくるでしょう。特に長年にわたり同じ仕事に従事している人は、それまで培った仕事の進め方が通用しなくなるため、業務標準化に抵抗しがちです。
一方的に標準化後の業務を伝えるだけで、理解を得ることは難しいといえます。スピーディーに業務標準化を取り組むことも重要ですが、あらかじめ業務標準化に取り組む目的やもたらされるメリットについて時間をかけて丁寧に説明し、慎重に進めることが重要です。
業務標準化を実施・運用するためのポイント
効果的な業務標準化を行うためには、実施・運用時にいくつかのポイントを意識する必要があります。ここではそれらのポイントについて解説します。
業務標準化を行う目的の共有および浸透
現場で働く従業員にとって、日々慣れた業務を見直すのはとてもストレスが大きいことです。そのようなストレスを少しでも緩和するためには「なぜ業務標準化に取り組む必要があるのか」という目的を、丁寧に従業員に説明することが求められます。
従業員間のコミュニケーションと協力の重要性
業務標準化をすすめるときは、従業員間のコミュニケーションや協力体制を重視しながら進めましょう。
業務標準化は、さまざまな部門をまたがるケースも少なくありません。そのため、従業員同士で密にコミュニケーションをとりながら、標準化を進めることが重要です。特に企業規模が大きくなってくると、縦割り組織の弊害としてサイロ化が進み、セクショナリズムが生まれやすくなります。
業務標準化を達成するためにも、従業員間のコミュニケーションや部門間の協力体制を円滑に構築できる人選や体制構築が重要です。
トレーニングの実施
標準化した業務を運用する前に、あらかじめトレーニングを実施しましょう。
業務フローやタスクの見直しが業務標準化のゴールではありません。「標準化した業務により日々の仕事がスムーズに完了する状態」が目指すべきゴールです。そのためには、従業員に対して、標準化後の業務フローやタスクの進め方をトレーニングする必要があります。
なお、トレーニングを行うときは、あらかじめ作業マニュアルを作成し、マニュアルに沿って業務を進められるようにすることをおすすめします。
継続的な評価および改善
業務標準化は一回で完結せず、継続的な評価および改善を行うことが重要です。
ビジネス環境は不変ではなく、さまざまな要因により変わっていきます。業務の「あるべき姿」も同様に、テクノロジーの進化や法令の施行などによって変わる可能性があります。そのため、業務標準化後も継続的に評価を行い、新たに検出された課題を改善していくようにしましょう。
リスク管理
規制やコンプライアンスが厳しい業界では、リスクについても十分に注意を払う必要があります。
業務背景などに対する理解が浅い状態で業務標準化を進めてしまうと、法令やコンプライアンスの観点で重要だった業務を削ぎ落してしまうおそれがあります。このような事態に陥らないためには、業務背景や作業の理由を把握したうえで、リスク管理についても十分に考慮して業務標準化をすすめることが重要です。
業務標準化対象の見極め
高度な技術を必要とする業務や柔軟かつ的確な判断が求められる業務は、業務標準化との相性があまり良くありません。このような業務を強制的に標準化してしまうと、業務が成立しないなどデメリットが大きくなりがちです。
そのため、業務標準化に取り組むときは「どの業務を標準化対象とするか」あるいは「どの業務を標準化しないか」をさまざまな観点で検討したうえで、見極めながら進める必要があります。
業務標準化を進める方法
業務標準化は、以下の流れで進めていきましょう。
- 現状の業務を洗い出す
- 標準化すべき業務の優先順位を付ける
- 業務を最適化する
- 業務をマニュアル化する
- 定期的に見直し・改善を行う
①現状の業務を洗い出す
まずは、業務内容を工数や頻度、難易度などの項目で数値化しましょう。
担当者へのヒアリングを行なうことで、より詳細な数字を把握できます。この段階では、生産性が低い業務や、担当者がいないと進められない業務などを洗い出しましょう。
②標準化すべき業務の優先順位を付ける
①で洗い出した問題点を踏まえて、標準化すべき業務を選定していきます。属人化している業務以外にも、品質にばらつきのある業務も対象にするとよいでしょう。
全ての業務を標準化するのはコスト・手間がかかります。優先順位を付けて、一つずつ取り組むことが重要です。
③業務を最適化する
続いて、現状の業務手順が最適かどうかを確認していきます。
具体的には、業務にムダな工程があれば省いたり、作業工程の順番を入れ替えたりすることで、業務を最適化できます。
ITツールを活用した業務改善など、より効率的な方法を検討することが大切です。例えば、ERP導入することで業務標準化を実現できます。
ERPを導入するためには、業務フローの見直し・改善を実施し、ムダのない統一された業務フローを実行する必要があります。また、伝票やデータ形式なども統一しなければなりません。ERPの機能に自社の業務を合わせる形で業務標準化を図れるのです。
基幹業務を一元管理できるERPを導入することで、企業はさまざまなメリットを得られます。ERPを導入するメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。こちらをご確認ください。
④業務をマニュアル化する
続いて、③で最適化した業務をもとにして、業務フローやタスクの進め方、トラブル時の対応法などを盛り込んだマニュアルを作成していきます。社員が柔軟な対応を行えるようにしておくことがポイントです。
⑤定期的に見直し・改善を行う
マニュアルを用いて実際に業務に取り組んでみると、問題点や改善点が出てくる可能性があります。定期的に業務を見直し、改善していくことで、より効率的で標準化された業務を行えるようになるでしょう。
業務標準化をサポートするツールとテクノロジー
業務標準化はツールやテクノロジーを活用すれば、より効果的かつ効率的に進めることができます。本章では、業務標準化をサポートするツールやテクノロジーを紹介します。
課題管理ツール
課題管理ツールは、業務の進捗や状況を可視化します。
課題管理ツールでは、すべての業務は「チケット」または「タスク」と呼ばれる単位に細分化して管理するのが特徴です。それらのチケットは担当者を割り当てることができます。業務の種類ごとにチケットの担当を決めれば、業務フローの標準化に効果を発揮します。
ERP
ERPは業務プロセスやタスクの標準化を促進します。
ワークフローや業務の効率化機能をもつERPは、業務の初心者やベテランを問わず業務の遂行を可能にします。メンバー間の成果にバラつきが出にくくなるため、業務標準化におすすめです。
また、ERPは業界のスタンダードな業務を基準としており、自社の業務をベストプラクティスに合わせられる点もおすすめしたいポイントのひとつです。
業務標準化ならマネーフォワードの導入がおすすめ
マネーフォワード クラウドを導入すれば、業務標準化を実現可能です。
日本ホスピスホールディングス株式会社様は、経理関係の業務を会計事務所へ委託していました。しかし、マネーフォワード クラウドの導入により業務標準化をすすめ、初心者でも経理業務に対応できるようにしました。
これはマネーフォワード クラウドがもつ直感的な操作や複式簿記に近いUIがあったからこそといえるでしょう。
また、バリュークリエーション株式会社様はマネーフォワード クラウド会計Plusを導入することで、周辺の関連システムとの自動連携を実現しました。これまで手作業で行っていた業務を自動処理してくれるマネーフォワード クラウド会計Plusは、同社の業務標準化に大きく貢献しています。
さらに株式会社RevComm様は、マネーフォワード クラウド会計PlusとSalesforceを連携させることで、それぞれ独立していた営業や経理・会計の業務をつなぐことに成功しました。このように、マネーフォワード クラウドは全体最適を考慮した業務標準化にも大きな効果を発揮します。
マネーフォワード クラウドで業務効率化を実現した事例
マネーフォワード クラウドでは、バックオフィス業務におけるさまざまな悩みを解決し、効率化をサポートします。
こちらでは、マネーフォワード クラウドを導入して業務効率化に成功した事例をご紹介します。
SMBC GMO PAYMENT株式会社様の事例
EC領域での決済代行サービスを提供するSMBC GMO PAYMENT株式会社様は、事業の規模拡大に伴い、業務効率化を目的としてマネーフォワード クラウド会計Plusとマネーフォワード クラウド経費を導入。
これにより、紙伝票の業務をほぼゼロにし、業務効率化とペーパーレス化を実現しました。リモートワークにも対応可能な業務体制を整えることができています。
導入前は紙の伝票を用いた非効率な業務フローであり、出社が必要でリモートワークに対応できない状況でした。
マネーフォワード クラウドを導入してからは、属人的になっていた業務が改善されたことで、ミスの発生回数が大幅に減少し、業務時間の約30%削減を実現しました。
業務効率化により、チーム内に余裕が生まれたことで、マニュアルの作成・更新など本来やるべき業務に時間を使えるようになりました。
追われるように業務をしていた導入前と比べ、現在はお互いに積極的にサポートしあうチーム体制を実現しています。
今後は、さらなる業務効率化を目指し、会社の成長に耐えうるバックオフィス体制の構築を進めていく予定です。
まとめ
業務標準化を進めれば、業務の手順・ルールを統一化でき、社員全員が同じレベルで業務を行うことが可能です。企業の生産性向上や業務効率化にもつながります。
業務標準化を進めるためには、課題となっている業務を洗い出し、優先順位を付けて一つずつ取り組む必要があります。業務標準化を効率的に進めるには、ERPの機能に自社の業務を合わせて、業務標準化を図る方法が有効です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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