• 作成日 : 2024年8月23日

自社に最適な多角化戦略を見つける3ステップと成功事例、メリット・デメリットを解説

中小企業の経営者や事業責任者の中には、「自社の事業が鈍化している」「将来の既存事業のリスクに備えたい」と考えている方も少なくありません。

しかし、「多角化戦略って具体的に何をすればいいの?」「自社に合った多角化戦略って?」といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

本記事では、多角化戦略の基礎知識から、メリット・デメリット、自社に最適な戦略を検討するためのステップ、成功事例までを分かりやすく解説します。

多角化戦略を理解し、自社に最適な戦略を見つけるためのヒントにしてください。

多角化戦略とは

多角化戦略は、企業が既存事業とは異なる新しい分野に進出し、事業領域を広げる経営戦略です。

経営学者イゴール・アンゾフの「成長マトリクス」では、「新しい市場」と「新しい製品」の組み合わせとして定義されています。

多角化戦略により企業の成長を加速させ、事業リスクを分散させる効果が期待できます。

近年、事業環境の不確実性や顧客ニーズの多様化を背景に、企業の成長戦略として注目されています。

多角化戦略の種類

多角化戦略は、既存事業との関連性や進出する市場・製品の組み合わせによって、4種類に分類されます。以下では、代表的な多角化戦略の種類について解説します。

水平型多角化戦略

水平型多角化戦略は、既存事業で培った技術やノウハウ、販売チャネルなどを活用し、関連性の高い新たな製品やサービスを展開する戦略です。

メリットとしては、既存の顧客基盤やブランド力を活かせること、新規事業への参入障壁が比較的低いこと、シナジー効果が期待できることなどが挙げられます。

デメリットは、競合との競争激化や既存事業とのカニバリゼーション(共食い)のリスクなどです。

例えば、化粧品メーカーがスキンケア商品だけでなくメイクアップ商品も展開するケースが、水平型多角化戦略に該当します。

垂直型多角化戦略

垂直型多角化戦略は、既存事業の上流(原材料調達や部品製造)または下流(流通や販売)に事業を拡大する戦略です。

メリットとしては、サプライチェーン全体をコントロールできるようになるため、コスト削減や品質向上、競合他社との差別化を図れることなどが挙げられます。

デメリットは、投資額が大きくなること、各事業の専門知識やノウハウが必要になること、市況の変化に影響を受けやすいことです。

例えば、食品メーカーが農場を経営し、自社製品の原材料を生産するケースが垂直型多角化戦略に該当します。

集中型多角化戦略

集中型多角化戦略は、自社の強みとなる技術やノウハウ、既存の製品・サービスを活かして、新たな市場セグメントや顧客層に向けて事業を展開する戦略です。

メリットとしては、既存の強みを活かせることや新たな顧客層を獲得できること、競合との差別化をしやすいことなどが挙げられます。

デメリットは、市場を読み違えるリスクや新規販路開拓にコストがかかることです。

例えば、写真フィルムメーカーが培った技術を応用し、化粧品や医療機器などの新たな分野に進出するケースが集中型多角化戦略に該当します。

集成型(コングロマリット型)多角化戦略

集成型(コングロマリット型)多角化戦略は、既存事業とは全く関連性のない異業種へ進出する戦略です。

メリットとしては、事業ポートフォリオの分散によるリスク軽減や各事業の収益相殺による安定経営、グループ内シナジー効果などが期待できる点が挙げられます。

デメリットは、各事業の専門知識やノウハウが必要になることや経営管理が複雑になること、ブランドイメージが分散し個々の事業の競争力が低下する可能性があることです。

例えば、IT企業が食品事業や金融事業など、全く異なる分野に進出するケースが集成型多角化戦略に該当します。

多角化戦略のメリット

多角化戦略は、企業にリスク分散、経営の安定化、市場シェアの拡大という3つのメリットをもたらします。

複数の事業を持つことで特定の事業や市場の不調による影響を軽減し、企業全体の業績を安定させます。

また、事業間の相互補完により収益の変動を抑え、安定的な経営基盤を築くことが可能です。

さらに、新たな市場に参入することで顧客基盤や販売チャネルを拡大し、既存事業で培ったブランド力やノウハウを活用して競争優位に立つことで、市場シェアを拡大することができます。

多角化戦略のデメリット

多角化戦略は企業の成長を促す一方で、経営資源の分散、管理の複雑化、企業ブランドの希薄化といったデメリットも伴います。

複数の事業に人材や資金を分散させることで各事業への投資が不足し、成長が阻害される可能性があります。

また、事業領域の拡大に伴って組織構造や意思決定プロセスが複雑化し、経営の効率性が低下する恐れもあるでしょう。

さらに多様な事業展開は企業ブランドのイメージを分散させ、顧客から見た価値が分かりにくくなる可能性もあります。

これらのデメリットを理解した上で、自社にとって最適な多角化戦略を慎重に検討することが重要です。

多角化戦略のステップ

多角化戦略は、企業の成長と安定に大きく貢献する可能性を秘めていますが、闇雲に進めるだけでは成功は難しいでしょう。

自社に最適な多角化戦略を立案し、実行するためには、3つのステップを踏むことが重要です。

ステップ1: 市場と機会の分析

市場と機会の分析では、自社が参入可能な市場を幅広く調査し、PEST分析や5F分析などを活用して市場の成長性、競争状況、顧客ニーズを分析し、全体像を把握します。

さらに、競合企業の分析を行い自社との差別化ポイントを明確にすることで、顧客のニーズや課題に応えられる自社の価値を検討することが重要です。

ステップ2: 内部能力と資源の評価

内部能力と資源の評価では、自社の強みと弱み、保有する経営資源を客観的に評価します。

SWOT分析などを活用し、自社の技術力、ブランド力、販売チャネルといった強みと、人材、資金、設備などの経営資源を洗い出し、多角化に活用できるものを明確にします。

それと同時に弱みや不足している資源も把握し、M&A、業務提携、人材採用などの補完策を検討することで、多角化に必要な体制を整えることが重要です。

ステップ3: 具体的な戦略策定と実行

具体的な戦略策定と実行では、市場分析と内部評価の結果を踏まえ、自社にとって最適な多角化戦略を具体的に策定します。

新規事業のコンセプトやターゲット顧客、販売方法、収益目標などを明確にし、具体的な事業計画を立てることが大切です。

計画実行にあたっては、KPIを設定し定期的に進捗状況をモニタリングすることで、市場環境や自社の状況変化に柔軟に対応しながら、多角化戦略の成功を目指しましょう。

多角化戦略の事例

ソニー株式会社は、多角化戦略で成功を収めた代表的な企業です。

当初、エレクトロニクス事業に偏っていた同社は、事業リスク分散のため、ゲーム、音楽、映画、金融など多岐にわたって事業を展開しました。

その結果、特定事業の不調を他の事業で補完でき、安定的な成長を実現しています。

例えば、2023年度上半期は金融分野が減益でしたが、ゲームや音楽分野の増益でカバーしました。

さらに、各事業で培った技術やコンテンツを相互に活用することでシナジー効果を生み出し、新たな価値創造にも成功しています。

参考:SONY「株主向け報告書(2023年度中間報告)

まとめ

多角化戦略は、企業の成長と安定に貢献する一方で、経営資源の分散や管理の複雑化といった課題も伴います。

しかし、自社の強みと市場機会を的確に分析し、適切な戦略を選択・実行することで、ソニー株式会社のように多角化を成功させることも可能です。

多角化を検討する際は、本記事で解説したステップを参考に、自社にとって最適な戦略を見つけてください。


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