• 更新日 : 2026年4月16日

中小企業投資促進税制とは?対象のソフトウェア、申請時の注意点を解説

PDFダウンロード
Point中小企業投資促進税制とは?

中小企業投資促進税制は、中小企業が一定の設備やソフトウェアを取得した場合に特別償却30%または税額控除7%を受けられる制度です。

  • 対象企業は資本金1億円以下
  • 新品設備が対象
  • 令和9年3月末までが適用期限

利益が十分にある場合は税額控除、利益が少ない場合は特別償却を選ぶと有利になりやすいです。

新しいソフトウェアや設備の導入は、企業の生産性を上げていくために不可欠なものです。しかし中小企業にとって、設備投資は大きな負担になるケースも多く見られます。

そこで活用したいのが「中小企業投資促進税制」です。

中小企業投資促進税制は、一定の設備投資やソフトウェアに対して、特別償却または税額控除を認める制度のことです。

本記事では、中小企業投資促進税制の概要や、対象となっているソフトウェア、申請する際の注意点について詳しく解説していきます。設備投資を検討している企業はぜひ参考にしてください。

目次

中小企業投資促進税制とは?

中小企業投資促進税制は、中小企業者等の設備投資を後押しし、生産性向上や事業拡大を支援するための税制措置です。一定の設備を取得した場合に特別償却または税額控除が認められます。

中小企業が一定の設備を取得した場合に特別償却または税額控除を受けられる制度

中小企業投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者等が、機械装置や器具備品、ソフトウェアなど一定の対象設備を取得し、国内の事業の用に供した場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除(資本金3,000万円超の法人は税額控除選択不可)を受けられる制度です。中小企業の設備更新や生産性向上投資を促進することを目的としています。

令和8年度税制改正では、本制度そのものの控除率や仕組みに大きな変更はありませんでしたが、他の設備投資関連税制の整理や新設税制の創設が行われました。そのため、企業は他制度との重複適用の可否や選択関係を踏まえたうえで、本制度を活用する必要があります。適用期限は令和9年3月31日までとされています。

参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁

中小企業投資促進税制の要件は?

中小企業投資促進税制の適用を受けるには、「対象となる法人の要件」と「設備の取得・供用に関する要件」の双方を満たす必要があります。

次の要件をすべて満たす場合に適用される

① 法人の要件
  • 青色申告書を提出する法人であること
  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人であること
  • 資本金または出資金を有しない法人の場合は、常時使用する従業員数が1,000人以下であること
  • 発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上を、同一の大規模法人(※)に所有されていないこと
  • 発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を、複数の大規模法人に所有されていないこと
    (※)大規模法人とは、資本金1億円超の法人など一定の法人を指します。
② 設備の取得および供用に関する要件
  • 対象設備を新品で取得していること(中古資産は対象外)
  • 取得した設備を国内の事業の用に供していること
  • その事業年度内に取得し、事業の用に供していること
  • 貸付用資産でないこと
③ 税額控除を選択する場合の追加要件
  • 資本金または出資金の額が3,000万円以下の法人であること
    (資本金3,000万円超1億円以下の法人は特別償却のみ選択可能)

上記のすべてを満たした場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除の適用を受けることができます。

中小企業投資促進税制の対象になる設備は?

中小企業投資促進税制では、すべての設備投資が対象になるわけではありません。設備の種類ごとに、資産区分と最低取得価額が明確に定められています。

次の設備を新品で取得した場合に対象となる

① 機械装置
  • 1台または1基の取得価額が160万円以上であること
② 測定工具および検査工具
  • 1台または1基の取得価額が120万円以上 であること
  • 1台または1基の取得価額が30万円以上、かつ、その事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のもの(上記いずれかを満たすこと)
③ ソフトウェア
  • 1本の取得価額が70万円以上であること
  • 1事業年度において事業の用に供したソフトウェアの取得価額の合計額が70万円以上であること(上記いずれかを満たすこと)

対象外となる設備

  • 中古資産
  • 貸付用資産
  • 建物および建物附属設備
  • 構築物
  • 船舶
  • 航空機

これらの要件を満たす設備を取得し、国内の事業の用に供した場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除の対象となります。

特別償却と税額控除、どちらを選ぶべき?判断基準は?

中小企業投資促進税制では、対象設備を取得した場合に「特別償却」または「税額控除」のいずれかを選択できます。ここでは、判断のポイントを整理します。

当期の利益水準と資本金規模を基準に選択すべき

特別償却は、取得価額の30%を追加で損金算入できる制度です。課税所得が十分にあり、当期に利益が出ている企業ほど節税効果が大きくなります。一方で、赤字の場合は効果が限定的です。

税額控除は、取得価額の7%を法人税額から直接控除できる制度で、資本金または出資金が3,000万円以下の法人に限って選択できます。法人税額から直接差し引くため、一定の利益がある企業にとっては即効性が高いのが特徴です。ただし、控除限度は法人税額の20%までです。

判断の目安として、十分な課税所得があり法人税額も大きい場合は税額控除が有利になりやすく、当期に課税所得が800万円を超えるなどして税率が高く、かつ資金繰りが苦しいような場合は特別償却が適するケースがあります。自社の利益状況と資本金要件を確認したうえで選択することが重要です。

令和8年度税制改正による中小企業投資促進税制の変更点は?

令和8年度税制改正では、中小企業投資促進税制そのものの控除率や基本的な仕組みに大きな変更はありませんでした。ここでは、改正のポイントを整理します。

① 控除率は変更なし

取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人)が選択できる仕組みに変更はありません。

② 対象設備の内容に変更はないが、最低取得価額は一部変更あり

対象設備の範囲に変更はありませんが、対象となる測定工具および検査工具の最低取得価額が30万円以上から40万円以上に変更される予定です。本改正は、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例について、対象資産の取得価額が現行の30万円未満から40万円未満へ引き上げられることに伴うものです。

③ 適用期限は令和9年3月31日までの取得・事業供用で変更なし

本制度の適用期限は令和9年3月31日までに取得して事業の用に供された機械装置とされており、令和8年度改正において新たな短縮や廃止は行われていません。制度は引き続き利用可能です。

④ 新設「特定生産性向上設備等投資促進税制」との重複適用は不可

令和8年度改正で創設された新たな設備投資税制との関係整理が行われました。同一設備について複数の税制を重複して適用することはできません。そのため、どの制度を選択するかの検討が重要になっています。

⑤ 設備投資税制全体の再編により制度選択の重要性が増加

法人向け設備投資税制の整理が進んだことで、中小企業投資促進税制は「中小企業向けの基本税制」としての位置付けがより明確になりました。自社の投資規模や利益水準に応じて、最適な制度選択を行うことが求められます。

特定生産性向上設備等投資促進税制との違いは?

中小企業投資促進税制と特定生産性向上設備等投資促進税制は、いずれも設備投資を後押しする制度ですが、対象企業や投資規模、目的が異なります。

特定生産性向上設備等投資促進税制は「大規模・高収益投資の促進」が目的

中小企業投資促進税制は、資本金1億円以下の中小企業者等が対象で、機械装置や器具備品、ソフトウェアなど一定の設備を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を選択できます。比較的小規模な設備投資も対象となり、日常的な設備更新や生産性向上投資を広く支援する制度です。

特定生産性向上設備等投資促進税制は、令和8年度税制改正で創設された制度で、大企業も含めた法人が対象となります。投資額については、中小企業者等で5億円以上、大企業で35億円以上といった大規模投資が要件とされ、さらに一定の投資利益率を見込む計画の確認を受ける必要があります。即時償却または税額控除の選択が可能ですが、収益性や成長性を重視した制度設計となっています。

両制度は同一設備への重複適用ができないため、投資規模や企業規模、収益見通しを踏まえて最適な制度を選択することが重要です。

参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省

中小企業投資促進税制を利用する手順は?

中小企業投資促進税制を活用するには、対象企業かどうかの確認から設備取得、税務申告まで、段階的に進める必要があります。ここでは、流れをステップごとに整理します。

① 自社が適用対象となるか確認する

まず、自社が制度の対象となる「中小企業者等」に該当するかを確認します。青色申告書を提出する法人であり、資本金または出資金の額が1億円以下であることが基本要件です。さらに、大規模法人に株式の2分の1以上を保有されていないことなど、支配関係の要件も確認します。税額控除を選択する場合は、資本金3,000万円以下であることも必要です。

② 対象設備に該当するか確認する

取得予定の設備が制度上の対象設備に該当するかを確認します。機械装置(160万円以上)、測定工具・検査工具(120万円以上)、一定の器具備品(30万円以上)、ソフトウエア(70万円以上)などが対象です。中古資産や貸付用資産、建物は対象外となるため、取得前に必ず資産区分と取得価額を確認します。

③ 設備を取得し、国内事業で供用する

対象設備を新品で取得し、その事業年度内に国内の事業の用に供します。取得のみでは足りず、実際に事業で使用を開始することが必要です。供用開始日や取得価額を証明できる資料(契約書、請求書、固定資産台帳など)を整備しておきます。

④ 特別償却か税額控除かを選択する

設備取得後、特別償却(取得価額の30%)または税額控除(取得価額の7%)のいずれかを選択します。資本金3,000万円以下の法人のみ税額控除を選択できます。自社の利益水準や法人税額を踏まえ、どちらが有利かを試算して判断します。

⑤ 確定申告で適用手続きを行う

最後に、法人税の確定申告書に必要事項を記載し、特別償却または税額控除を適用します。別表への記載や明細書の添付が必要となるため、申告書類を正確に作成します。控除限度額の管理や、将来の税務調査に備えた資料保存も重要です。

中小企業投資促進税制を申請する際の注意点は?

中小企業投資促進税制は要件を満たせば活用できる制度ですが、制度選択や利益状況を誤ると十分な効果が得られない場合があります。押さえるべき注意点を整理します。

他の設備投資税制との重複適用はできない

同一設備について、特定生産性向上設備等投資促進税制など他の投資促進税制と重複して適用することはできません。より有利な制度がある場合でも、一度選択すると変更できないケースがあります。設備取得前の段階で各制度の控除額や適用条件を比較し、最適な制度を選択することが重要です。

当期の利益水準によって節税効果が変わる

特別償却は課税所得がある場合に効果が発揮され、税額控除は法人税額が発生していることが前提です。赤字決算や繰越欠損金が多い場合、想定よりも節税効果が小さくなる可能性があります。事前に税額シミュレーションを行い、実際の節税効果を確認しておきましょう。

短期的な節税だけでなく中長期の投資計画を踏まえて判断する

単年度の税負担軽減のみを目的に制度を利用すると、将来の減価償却費や利益計画とのバランスが崩れる可能性があります。設備更新計画、資金繰り、今後の投資予定などを総合的に検討し、企業全体の経営戦略に沿った活用を行うことが不可欠です。

中小企業投資促進税制を計画的に活用しよう

中小企業投資促進税制は、一定の設備投資を行う中小企業者等に対して、特別償却または税額控除による優遇措置を認める制度です。対象企業や設備の要件を正確に満たすことに加え、他の投資促進税制との重複適用ができない点にも注意が必要です。さらに、特別償却と税額控除のどちらが有利かは、当期の利益水準や資本金規模によって異なります。単なる節税策としてではなく、自社の投資計画や将来の収益見通しを踏まえ、制度を計画的に活用しましょう。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

財務会計と管理会計の基本

財務会計と管理会計の基本

予実管理の煩雑さは大きな課題です。手作業に依存した業務プロセスやデータの連携不足、エクセルによる予実管理に悩む企業も多いのではないでしょうか。

財務会計と管理会計の基本を押さえつつ、予実管理の正確性とスピードを両立させるためのポイントと具体的な解決策を詳しく解説しています。

無料ダウンロードはこちら

2025年の崖までに中堅企業がやるべきこととは

2025年の崖は、大企業だけではなく、中堅企業においても対応が求められる重要な課題です。

2025年の崖の現状や解決に向けて中堅企業がやるべきこと、バックオフィスシステムの見直し方を解説した人気のガイドです。

無料ダウンロードはこちら

“失敗しない”ためのERP導入比較ガイド

“失敗しない”ためのERP導入比較ガイド

ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の業務効率化と経営管理を支える重要なシステムです。

ERPの基本的な概念から、オンプレ型ERPとクラウド型ERPの費用対効果の比較まで、比較検討する際に見るべきポイントを詳しく解説したガイドです。

無料ダウンロードはこちら

マネーフォワード クラウドERP サービス資料

マネーフォワード クラウドERP サービス資料

マネーフォワード クラウドERP段階的に導入できるコンポーネント型クラウドERPです。

会計から人事労務まで、バックオフィス全体をシームレスに連携できるため、面倒な手作業を自動化します。SFA/CRM、販売管理、在庫・購買管理などの他社システムとも連携できるため、現在ご利用のシステムを活かしたままシステム全体の最適化が可能です。

無料ダウンロードはこちら

PDFダウンロード

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事