- 更新日 : 2024年7月12日
経理のペーパーレス化を実現するには? | メリット・デメリット・進め方を解説
経理業務ではまだ紙の伝票が使われている場面もありますが、電子帳簿保存法が施行されたことにより、ペーパーレス化が推進されています。
経理業務のペーパーレス化は、経理部門の業務を大きく効率化できるなど、さまざまなメリットもあります。
ここでは、経理部門のペーパーレス化の概要とメリット・デメリット、そしてペーパーレス化の進め方を紹介します。
目次
経理のペーパーレス化とは?
経理のペーパーレス化とは、これまで紙で作成・処理していた書類や伝票を電子化したものをデータとして管理し、会計処理を行うことです。
例えば、次のような伝票類を電子化します。
取引先から受け取る伝票が電子化されていれば、そのまま処理できます。また、紙の伝票を受け取った場合でも、会計処理を行うときにスキャナー保存や写真で電子化、データ化が可能です。
自社が発行する伝票は、PDFなどで電子化したものを送信します。ペーパーレス化が進めば伝票の内容をデータとして処理できるので、その後の工程に大きなメリットをもたらすでしょう。
ペーパーレス化を推進する背景
現在経理作業のペーパーレス化が進んでいる要因は、次の2つが挙げられます。
- 電子帳簿保存法
2018年の電子帳簿保存法の改正で、国税関係の帳簿を基本的に電子化することができるようになりました。これにより、作成・保存時に電子化可能な書類の幅が大きく広がっています。 - コロナ禍によるテレワークの増加
コロナ禍により、部署を問わずテレワークの導入が推進されました。経理部門の業務にテレワークを導入するためには、ペーパーレス化とシステム導入が欠かせません。
保管が必要な帳簿書類
ペーパーレス化を進める中でも、電子化できる書類とできない書類があります。
基本的に経理書類は全て電子化可能です。中でも国税(法人税法や所得税法)に関連する帳簿や書類は電子化する必要があります。また、電子取引の伝票は最初から電子化されています。なお、電子化を行わないのは、あくまでイレギュラーな場合です。
次のような場合が、電子化を行わない事例となります。
- 入力期間が過ぎた伝票・書類
- 読み取った書類がプリンターの最大出力よりも大きい場合
- 定期的な検査で不備があった場合
- 取引先の希望で紙の書類や伝票で処理する場合
経理のペーパーレス化を推進するメリット・デメリット
経理部門の業務をペーパーレス化するには、会計システムやERP(Enterprise Resources Planning)などのシステム導入が不可欠です。そこで、システム導入に伴うメリットやデメリットを解説します。
メリット
会計システムの導入により、次のようなメリットが挙げられます。
業務効率化
紙の伝票を電子化してシステムを導入することで、保存・共有・決済・検索・廃棄が容易になります。検索機能により必要な伝票をすぐに取り出すことができ、保存期間が過ぎれば自動的に廃棄することも可能です。
また、データを自動連携することで、手入力の作業を減らし、作業時間を短縮できます。これは人的ミスの削減にもつながります。システムを導入することで、日次の業務だけでなく月次や年次の決算業務も大部分を自動化することが可能です。
コストや保管スペースの削減
ペーパーレス化により、紙の伝票を作成・郵送・管理するコストやスペースを削減できます。
セキュリティ対策
ペーパーレス化により、紙の伝票の持ち出しや紛失・破損がなくなります。また、会計システムによりアクセス権限を細かく設定できるので、セキュリティを強化できます。
テレワークなど多様な働き方の実現
ペーパーレス化のシステムを導入することで、経理部門でもテレワークが可能になります。これは働き方改革や多様な働き方の実現につながります。
デメリット
経理のペーパーレス化には、デメリットもあります。
主なデメリットは、次の通りです。
ネットワーク環境やシステムの影響を受ける
システムやネットワークに障害が発生した場合、システムにアクセスすることができなくなり、業務が滞る可能性があります。
システム導入のコストや手間がかかる
システムを導入するには、システム利用料などのコストがかかります。
また、システムを導入することで、これまでの業務フローを変更する必要が出てくるため、新たな業務フローを構築する手間がかかります。
経理のペーパーレス化の進め方
経理のペーパーレス化の進め方と、それぞれのポイントを説明します。
目的を明確にする
経理部門の業務をペーパーレス化する目的や必要性を明確にして、経理部門全員で、できれば全社で共有します。それにより、社内で経理のペーパーレス化を推進する雰囲気を醸成でき、スムーズに進めることができます。
書類の選定と優先順位の検討
経理のペーパーレス化を行う場合でも、一度に経理部門の全ての書類を電子化するわけではありません。最初はどの書類を電子化するのか、どこから始めるのかなどを検討して、限られた範囲から始めます。いわゆるスモールスタートで臨んでみましょう。
システム導入の検討
経理のペーパーレス化には、システム導入が不可欠です。そのため、どのようなシステムが自社に合っているのか、よく検討しなければなりません。大きく分けて次の2種類があります。
- 会計ソフト
経理部門の業務に特化した単体業務向けの基幹システムです。低コストで導入しやすいでしょう。経費精算、請求書発行など機能を限定したシステムもあります。 - ERP
経理部門だけでなく、他の部門の業務も含めて企業の情報を一元管理できます。クラウド型ERPの場合、スモールスタートで導入し、必要に応じて段階的に拡張していくこともできるため、必要な機能やコストに合わせて調整しやすいというメリットがあります。
ERPについては、次の記事を参照してください。
- 会計ソフト
業務フローの構築
経理業務をペーパーレス化するには、新しく作成する書類は電子文書でなければなりません。そのため、書類や伝票を作成し、配布するための業務フローも大きく変化します。また、取引先から書類を受け取った後の処理も変化します。
そのため、ペーパーレス化や書類の電子化に合わせて新しい業務フローを構築する必要があります。構築
アウトソーシングの活用
人材や費用などの問題から、自社だけで経理のシステム化が難しい場合は、経理業務を完全にアウトソーシングするという方法もあります。また、既存の書類の電子化をアウトソーシングすることも可能です。
書類の処理から管理・保存まで任せることができ、大きな業務効率化になります。
まとめ
経理部門は紙の書類を使用する業務が多くなりがちです。
経理部門は全ての部署とやり取りをしているため、経理部門のペーパーレス化を実現できれば、全社でのペーパーレス化にも大きな影響を与えるでしょう。
経理業務は専用ソフトやERPなど、ペーパーレス化をサポートするツールやシステムが数多く提供されているため、ペーパーレス化を実現しやすい業務ともいえます。電子帳簿保存法の改正やリモートワークに対応するためにも、ペーパーレス化を進めていきましょう。
よくある質問
経理業務のペーパーレス化とは?
紙で作成・処理していた書類や伝票を電子化し、データとして管理して処理行うことです。
経理業務のペーパーレス化のメリットとは?
業務効率化、コスト削減、書類の保管スペースの削減、セキュリティ対策、多様な働き方の実現などのメリットがあります。
経理業務のペーパーレス化のデメリットとは?
業務がネットワーク環境やシステムの影響を受ける、システムの導入にコストや手間がかかるなどのデメリットがあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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