• 更新日 : 2024年7月12日

予算管理とは?基本情報や管理手順、効率的な管理方法などを解説

予算管理とは、企業活動における予算の計画や実績把握、改善などの予算にまつわる管理活動のことです。
主な目的は企業利益の確保であり、そのためには定期的に予算の進捗状況を確認することが重要となります。本記事では、予算管理の基本情報や管理手順、効率的な管理方法などについて解説します。

予算管理とは

予算管理とは、企業活動において必要な予算の編成や各事業への配分、執行状況の把握などを行う管理活動のことです。本章では、予算管理の目的や種類、経営管理・予算統制との違いについて解説します。

予算管理の目的

予算管理の主な目的は、企業の利益目標を達成することです。
利益目標の達成に向けて期初に予算計画を立て、期中および期末で予算の実績確認や計画との差分確認などを行います。

もし予算の計画と実績が大きくかけ離れている場合は、関係者間で原因の究明をしたり、対策を検討したりすることも重要となります。

予算管理の種類

企業の予算には、大きく分けて以下の種類があります。

  • 売上予算
  • 原価予算
  • 経費予算
  • 利益予算

売上予算

売上予算は、企業の売上目標となる数値です。
前年の売上実績をもとに算出するケースや、商品単価と目標販売数を掛けて算出するケースなどがあります。

原価予算

原価予算とは、材料費などをはじめ製品・サービスを生み出すために必要な原価を見積もった予算です。
売上予算や原材料価格などによって変動するため、市場動向に合わせて定期的な見直しと調整を行うことが重要となります。

経費予算

経費予算とは、企業活動の維持に必要な経費を見積もった予算です。
たとえば、オフィスの賃料や光熱費、広告宣伝費などが挙げられます。

利益予算

利益予算は企業の利益目標を表す数値です。
売上予算から原価予算や経費予算を差し引いて算出します。そのため、売上・原価・経費、それぞれの予算目標を達成することで、利益予算も達成されます。

ただし、いずれかの予算において目標未達となった場合でも、他の予算で利益目標をカバーできることもあります。
たとえば、売上予算の目標を達成できなくても、原価予算や経費予算で未達分をカバーすれば、利益予算を達成することが可能です。

経営管理との違い

経営管理は、予算だけでなくヒトやモノ、情報といった経営上のリソース全体を管理する活動を指します。
そのため、予算管理よりも幅広い視野での管理が求められます。また、予算管理は経営管理の一部に位置づけられます。

予算統制との違い

予算管理と類似する用語として予算統制が挙げられますが、予算管理のほうがより広い意味合いを持ちます。予算管理は予算計画や執行管理を含めた一連の管理活動であるのに対し、予算統制は計画後の進捗状況の管理や差分の原因分析などを指すことが多いです。

予算管理の手順

予算管理の手順は、PDCAサイクルに基づいて説明することができます。
ここでは、予算管理の各手順について、以下の流れで解説します。

  • 予算編成を行う(Plan)
  • 予算に基づいて事業活動を行う(Do)
  • 予算の計画値と実績値の差分を確認する(Check)
  • 計画と実績に差分がある場合は、原因分析と対策検討を行う(Action)

予算編成を行う(Plan)

まずは計画(Plan)として、期初に各事業の予算編成を行います。予算編成の主な方法として、「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」があります。

トップダウン方式

社長や執行役員などの経営層が全社の予算計画を立て、各現場に落とし込む方法です。経営層による意思決定・通達となるため、全体最適の視点で予算編成を行い、各現場にスムーズに浸透させられるという利点があります。

一方で、現場の実情を十分にくみ取れていない場合もあり、現場の管理者や担当者の業務負荷が大きくなる可能性も考えられます。

ボトムアップ方式

各部門の現場が予算を積み上げて、最終的な全社予算を組み立てる方法です。現場をよく知る担当者による予算編成のため、実態に即した目標設定が行えるという利点があります。

その反面、全社の予算編成完了までに時間がかかる点や、全社視点での予算の整合・調整が難しくなる点などがデメリットであるといえるでしょう。

予算に基づいて事業活動を行う(Do)

予算編成ができたら、実際の事業活動を行っていきます。
売上や経費、原価、利益などの各項目において、月次や四半期など、各事業に適したスパンで予算実績を確認することが重要となります。

予算の計画値と実績値の差分を確認する(Check)

予算実績を集計できたら、月次や四半期などの単位で期初に立てた計画値との差分を確認します。
原材料の価格変動による原価のズレなどによって、計画値と実績値に差が生じるケースがあるため、各現場において許容できる誤差範囲をあらかじめ検討しておきましょう。

計画と実績に差分がある場合は、原因分析と対策検討を行う(Action)

計画値と実績値に有意な差が生じている場合は、原因分析を行います。
たとえば、計画以上に経費を使っている場合は、オフィスの省エネ対策や出張要否の見極めといった対策を実施します。

また、市場のトレンドなどのマクロ要因によって売上が大きく下がっている場合は、次年度以降の事業撤退なども視野に入れた検討を行うとよいでしょう。

効率的な予算管理を行うためのポイント

予算管理は非常に重要ですが、必要以上にリソースを割くのは避けるべきです。
ここでは効率的に予算管理を行うポイントとして、以下の7つを解説します。

予算設定の粒度に気を付ける

効率的な予算管理を実現するためには、財務や経理だけではなく、現場の関係各部門とも予算設定の粒度をすり合わせておきましょう。

細かすぎる粒度での管理は、予算の策定に膨大な時間が必要となります。一方で粗すぎる粒度で設定すると、本来管理したい数字が見えにくくなると同時に、予算達成のために適切な施策を打ちづらくなります。

予算設定の粒度は企業によってさまざまですが、粒度を意識した予算設定を心がけましょう。

期初の予算設定にこだわりすぎない

企業にとって予算は重要な指標の1つです。なぜならば、予算の進捗を確認することで、ビジネス状況を確認することができるためです。また、達成率が芳しくない場合には、対策を検討、実施することができます。

しかし、企業のビジネス状況はさまざまな内的および外的要因の影響を受けるものです。そのため、達成不可能な予算を追って無謀なアクションを起こすよりも、状況に応じて期初に設定した予算を柔軟に見直すことをおすすめします。

予算の差異分析を行い乖離(かいり)の原因を特定する

当然ではありますが、予算管理は予算を管理することそのものが目的ではありません。
すべての予算管理は、設定した予算を達成するため(=達成に向けたアクションをとるため)に行っているのです。

そのためには、なぜ予算と実績の間に差異が生じたのかを分析した上で原因を突き止める必要があります。さらに、その原因を解消するための対策を検討し、費用対効果などを考慮しながらアクションに移すことが重要です。

部門間の連携

予算策定を経営陣や経理・財務部門だけで行ってしまうと、実際のビジネス状況との乖離(かいり)が大きくなります。また、はじめから局所的に予算を検討しても、妥当であるかの判断がしづらいでしょう。

そのため、予算策定時は各部門のマネージャーと連携して、予算の全体像を理解することが重要です。その上で「各部門のニーズ」と「企業の目標」とのバランスがとれた予算策定を行いましょう。

継続的な監視とレビュー

基本的に予算管理は、新たな期を迎えたときに予算を策定し、期末に実績を評価するという流れです。しかし、それらのポイント以外にも継続的に監視やレビューをすべきです。

なぜならば、定期的に予算の進捗状況を確認することで、当初の計画とのズレを早期に発見できるためです。

問題が小さいうちに適切な対応がとれれば、大きなコストをかけずに予算達成を目指せるでしょう。なお、必要に応じて予算調整や再配分も検討するとよいでしょう。

責任と権限の明確化

組織の形態によっては、予算管理の責任が見えづらくなることもあります。
事業本部制やカンパニー制の組織体系を導入している企業であれば予算の責任は明確ですが、機能別組織制の場合は予算責任が曖昧になりがちです。

そのような場合は、予算管理の責任を持つ担当者や部署を明確にしましょう。
また、ただ責任を背負わせるだけではなく、予算実現に向けて必要となる権限の付与を行い、迅速な意思決定ができる仕組みにしましょう。

リスク管理

どれだけ完璧な予算を策定しても、想定しない要因により経営に影響が生じるリスクがあります。そのようなリスク管理も考慮して、予備費の設定や緊急時の対応計画をあらかじめ準備しておくことが重要です。

主な予算差異分析の方法

前述したとおり、予算の差異分析は効率的な予算管理を行う方法の1つです。
ここでは、主な予算差異分析の方法として、下記3つを紹介します。

  • 単純比較による差異分析
  • 利益差異分析
  • フレームワークなどを利用した差異分析

単純比較による差異分析

1つ目は、単純比較による差異分析方法です。

この分析方法は、「売上」や「利益」などの単一項目の比較で分析を行うものです。
各項目に対する大まかな差異を元にすれば、全体的な傾向をつかむことは可能です。しかし、分析した結果の真因を探ることは難しいといえます。

例えば売上という項目の数値がアップしていたとしても、当該会計期間中に全商品の売り上げがアップしたのかもしれませんし、商品Aが売り上げを伸ばした一方で商品Bは大幅な落ち込みを記録していたという可能性もあります。

このように、大まかな差異は把握できるため分析のファーストステップとしては有用ですが、単純比較による差異分析のみでは変化の原因を見落としてしまう可能性があるため、注意が必要です。

利益差異分析

2つ目は、利益差異分析という方法です。

利益差異分析では「予算策定時に設定した利益額」と「分析時点における実績値の利益額」を比較し、その差異について分析します。

なお「利益差異」は「収益差異」と「原価差異」に分けられます。さらにそれぞれの差異を、下記のような要素に分解可能です。

上記の要素でドリルダウンしていくことで、原因の詳細を追及できるという手法です。

フレームワークなどを利用した差異分析

3つ目は、フレームワークなどを利用した差異分析方法です。

ここでいうフレームワークとは、分析をする際に利用される定番の数式のようなものです。例えば「売上高」は以下のように表現できます。

売上高 = 顧客数 × 顧客単価

なお、顧客数や顧客単価もそれぞれ以下のように掘り下げることが可能です。

顧客数 = (新規顧客数 + 既存顧客数) × 来店する頻度

顧客単価 = 購入商品数 × 平均商品単価

このように細分化を繰り返すことで、差異の原因を特定することができる手法です。

予算管理時に気を付けるべき点

ここまで、予算管理の手順や効率的な予算管理を実現するためのポイントなどを解説しました。
では、予算管理時はどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。

ここでは、下記2つの注意点について解説します。

予算管理そのものが目的ではない
適度にストレッチした予算を設定する

予算管理そのものが目的ではない

注意点の1つ目は、予算管理そのものは目的ではなく、あくまでも手段の1つであるという点です。

そもそも「1円のズレもない予算管理」などは誰も望んでいません。なぜならば、期末時に予算と実績がマッチするだけでは、何の意味もないからです。

予算管理が重要な業務であることには変わりありません。しかし、予算管理をした上で予算と実績の差異が発生することも視野に入れた上で、その際には差異分析を行い、あぶりだされた原因への対策をとることが重要です。

適度にストレッチした予算を設定する

注意点の2つ目は、適度にストレッチした予算を設定するというものです。

予算が低すぎると容易に達成できるため、社内に緩みが生じやすくなります。
一方で高すぎる予算が設定されてしまうと、モチベーションが著しく低下し、早々に予算の達成をあきらめてしまいかねません。このように、予算は低すぎても高すぎてもネガティブな影響が生まれるリスクがあるのです。

一部の企業(零細企業など)では予算管理を行っていないところもあります。しかし、予算という目標があることで、その目標を達成するための行動がとれるようになります。

そのため「背伸びをすればなんとか達成できる可能性がある」というストレッチが効いた予算を設定するようにしましょう。

システムやツールを活用した予算管理

予算管理の効率化にあたっては、主に以下の方法が挙げられます。

  • エクセルを活用する
  • 予算管理システムを活用する
  • ERPを活用する

エクセルを活用する

エクセルを使って売上や原価、経費などの予算を管理する方法です。
小規模事業の場合や取り扱う商材がシンプルな場合であれば、エクセルでも問題なく予算管理ができることもあるでしょう。

ただし、エクセルで管理する場合は、特定の担当者による属人的な管理となったり、計算ミスや恣意的な予算変更が生じたりするリスクがあるため、注意が必要です。また、実績との突き合わせを行う際も労力が高くなります。

予算管理システムを活用する

より効率的な予算管理を行いたい場合は、予算管理システムを活用することが有効です。予算管理システムを活用することで、予算編成の自動化や人的ミスの防止、予算管理状況のスムーズな共有ができます。それにより、透明性や持続性の高い予算管理を実現できるでしょう。

ERPを活用する

前述した予算管理システムは、予算管理の効率化においては有効であるものの、基本的には予算管理に特化したシステムとなっています。
予算管理の効率化を実現しつつ、全体最適の視点でデータの一元管理や意思決定の迅速化も図りたい場合は、ERPを導入することが効果的です。

ERPでは、販売や発注、会計など、社内の各種データを一元管理することができ、予算管理システムの役割も内包しています。予算管理と関連する管理会計などにおいても、ERP導入による業務効率化などのメリットがあります。

管理会計においてERPを導入するメリットについては、以下の関連記事も併せてご確認ください。

まとめ

予算管理とは、企業における予算編成や予算実績の確認、改善検討などを行う一連の管理活動のことです。
予算管理の主な目的は、企業の利益目標を達成することであり、そのために売上や原価、経費などの各項目を管理します。

予算管理はPDCAサイクルに沿った手順で実施することが一般的であり、期初に予算編成を行った上で、期中および期末に予算の計画値と実績値の差分を確認します。もし計画と実績に大きな差がある場合は、関係者間で原因分析および対策検討を行うことが重要です。

予算管理を効率化するためには、エクセルや予算管理システム、ERPを活用することが有効な手段となります。中でもERPは、全社最適の視点で社内の各種データを一元管理できるため、予算管理に加えて管理会計の効率化にもつながるでしょう。


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