- 更新日 : 2024年7月12日
ERPの導入で失敗が起こる原因と対応策
ERPの導入は、ITプロジェクトの中でも失敗リスクが高いとされています。また、失敗したときの影響範囲が広く、ときには複数の業務を停止させてしまうこともあるほどです。この記事ではERP導入が失敗する原因と対応策について解説します。
目次
ERP(統合基幹業務システム)とは
ERPは「Enterprise Resources Planning」の頭文字をとった略称で、日本語では「企業資源計画」と翻訳されます。ERPはもともと経営手法のひとつでした。すなわち、企業が持つ「ヒト・モノ・カネ」といった資源が、いつ・どれだけ・どこにあるかを可視化し、効率よく使うための考え方です。この概念をシステムとして具現化したものがERPシステムです。
一般的にERPシステムには、「販売管理」「在庫・購買管理」「財務会計」「人事給与」「生産計画」など、企業の基幹業務に合わせた機能群が用意されています。また、それぞれの機能群で扱うデータは、統合型のデータベースに保存されます。業務ごとに分断されていた「製品情報」や「取引先情報」「各種伝票」「人事給与情報」などのデータを、統合データベースで一元的に管理するわけです。こうすることで「受注・販売の状況」「原材料や製品の在庫状況」「生産量と納期」「従業員の数と給与情報」などをリアルタイムに把握し、企業が持つ経営資源を効率よく使えるようになります。
ERPについての詳細は、こちらの記事でも解説を行っていますのでご参照ください。
ERPの市場について
ERPは1990年代終盤ごろから、大企業を中心に導入が開始されました。2000年代終盤には導入が一巡したと言われていましたが、現在でも市場規模は右肩上がりの傾向です。
矢野経済研究所の調査によれば、2020年の国内ERPパッケージライセンス市場は1201億6000万円で、前年比1.4%増です。ほぼ横ばいと言って良い状況ですが、2016年比では約13%増となっており、まだまだ国内市場は伸び続けると言えるでしょう。
参考:矢野経済研究所「2020年の国内ERPパッケージ市場は前年比1.4%増と足踏みも、2021年以降は回復へ」
2020年はコロナ禍の影響からシステム投資を控える企業も珍しくありませんでした。一方で、「DXの推進」や「新しい環境に対応できる経営情報基盤の構築」といった理由から、ERPに対する需要が発生したと考えられます。
ERPの導入は失敗する企業が実は多い?
このように、市場規模が拡大しているERPですが、実は企業向けITシステムの中でも失敗が多いシステムとして知られています。よくある失敗例としては、次のようなものが挙げられます。
ERPと業務プロセスの差異が埋まらない
一般的にERPの導入では、プロジェクトの最初期に「Fit/Gap分析」が行われます。Fit/Gap分析とは、ごく簡単にいえば「ERPパッケージが持つ機能と業務プロセスの差を明らかにする」作業です。ここで明らかになった差は、ERP自体が持つ設定変更機能を利用する「カスタマイズ」などで埋めていくことになります。また、カスタマイズで埋まらない差は、独自に機能を開発して付与する「アドオン開発」でカバーすることになるでしょう。しかし、ERP側と業務プロセス側の差があまりにも大きい場合は、アドオン開発の工数が膨大になり、予算や工期の制限内におさめることが難しくなります。この状態でプロジェクトを中断すればよいのですが、何らかの事情からプロジェクトを強行してしまうケースが珍しくありません。その結果、アドオン開発が中途半端な状態で終了してしまい、ERPでカバーされない業務プロセスが発生してしまうのです。
導入プロジェクト自体が頓挫した
ERP導入プロジェクトは、半年~数年単位の長期になることも珍しくありません。プロジェクトのフェーズが進むごとに人員が入れ替わり、本番稼働を目指していきます。そのため、プロジェクト開始当初に在籍していた人員が最後まで残っているとは限りません。少しずつ人員を入れ替えながら、業務引継ぎを行い、開発を進めていきます。こうした状況下では、業務引継ぎがうまく行われないこともあります。また、引継ぎの不備が重なることでプロジェクトメンバーの認識にズレが生じ、顧客要求とは異なる機能が実装されることがあります。さらには、不具合や考慮漏れなどに気が付かず、本番移行直前になって対応に追われることも珍しくありません。こうしたトラブルが重なることで、プロジェクト自体が頓挫することもよくあります。
ERP導入に失敗する際の原因は?
では、なぜこのような失敗が発生してしまうのでしょうか。その原因としては以下2つが考えられます。
製品理解が追い付いていない
ERPは「企業の基幹業務を丸ごとシステム化した製品」とも言えます。膨大な機能を備えるERPのすべてを理解することは非常に難しく、販売元のベンダーに在籍する専門家でさえ、自社製品を隅々まで知っているケースは稀です。大抵は、業務領域ごとに専門家が存在し、それぞれが知見を出し合いながら導入を進めていきます。専門家でさえこの状態ですから、ユーザー側はさらに製品知識が不足することになります。製品知識が圧倒的に不足した状態では、業務プロセスとのマッチングを正確に判断することはできません。このことが導入失敗の原因になってしまうのです。
業務にシステムを合わせるという意識
日本企業は、それぞれ独自の業務プロセスや商慣習を持つことが多いと言われます。そのため、ERPの導入では「業務プロセスにシステムを合わせる」という意識がありました。この意識も、ERPの導入が失敗する原因として無視できないポイントです。導入前の業務プロセスを「正」とし、この状態にシステムを合わせることでカスタマイズ開発コスト、工数が膨れ上がってしまうだけでなく、バグなどの不具合発生にもつながります。基幹システムを導入したが、何年経っても安定稼動しないというケースは、カスタマイズに起因しているケースが多々あります。
ERP導入に失敗しないためのポイント
これまでの内容を踏まえ、ERPの導入を失敗させないためのポイントについて整理していきましょう。
導入前に業務プロセスを整理しシンプルにする
ERP導入にあたっては、「標準機能をそのまま活用できる業務プロセス」であることが理想です。業務側にERP側を合わせるという意識が過剰に働くと、追加開発の工数が増え、コストに見合わないシステムが出来上がってしまいます。
一般的にERPは「経営のベストプラクティスの集合体」と言われます。つまり、さまざまな業態・業種で通用する汎用的な成功例が凝縮されているのです。標準機能をそのまま使うことで、業務効率化や生産性向上が達成される可能性が高まります。ERP導入を成功させるためには、まず「業務プロセスを整理して、シンプルな状態にする」「導入を予定しているERPに業務システムを合わせる」といった施策を進めるべきでしょう。
ターゲットを絞った部分的な導入を心掛ける
ERPの導入で失敗する背景には「調整・連携の煩雑さ」「認識の統一の難しさ」があります。また、こうした問題は「ビッグバン的な導入」で多く発生するものです。そこで、まずは部分的かつ試験的にERPを導入してみることをおすすめします。オンプレミス型のERPパッケージでは難しかった最小単位での導入も、クラウド型ERPならば容易に進められます。「まずは給与管理のみ」「とりあえずは経費精算から」といった具合に、単一の業務のみをERPに置き換えることが可能です。
ERP導入を成功されて業務をさらに効率化しよう
この記事では、ERPの導入が失敗する原因と対応策について解説してきました。当社では、小さく確実にERP導入を成功させるクラウド ERP「マネーフォワード クラウドERP」を提供しています。マネーフォワード クラウド ERPは、1つの機能から利用できるため、「バックオフィスを徐々にERPに移行したい」「段階的なERPを導入したい」といったご要望にも対応できる製品です。
よくある質問
ERPの導入が失敗する原因は何ですか?
複雑な製品を十分な理解が無い状態でビッグバン的に導入しようとするためです。詳しくはこちらをご覧ください。
ERPの導入を失敗させないためのポイントは?
対象業務を絞り、できるだけシンプルかつ小さな単位で導入を始めることで失敗を回避できる可能性が高まります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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