- 更新日 : 2024年7月16日
CoEとは?組織の名称としての意味や機能を解説!
目的や目標を達成するために、会社に点在している優れた人材、技術やノウハウなどを集めた組織・グループのことをCoEといいます。
今回は、CoEとはどのようなものか、CoEが活用される場面、導入のメリット・デメリット、導入の流れ、企業での導入事例について解説します。CoEの理解を深めて、導入時の参考にしてください。
CoEとは?
CoEとは、目的や目標を達成するために、会社に点在している優れた人材、技術やノウハウなどを集めた組織・グループのことをいいます。ここでは、CoEの意味や歴史、CoEとDCoEやCCoEとの関連について見ていきましょう。
CoEは何の略?
CoEという言葉は、「Center of Excellence(センターオブエクセレンス)」の略語です。
CoEの意味
CoE(Center of Excellence)は、直訳すると「優秀な中心」という意味です。具体的には、目的や目標を達成するために、会社に点在している優れた人材、技術やノウハウなどを集めた組織・グループのことをいいます。
ビジネスでは、専門知識を持った優秀な人材が集まる部門を横断した組織のことを指します。また、人事では、採用や労務管理のプロなど、各分野の専門家が集まる人事機能を持った組織という意味で使われます。
CoEが生まれた歴史
CoEは、1940年代のアメリカ・スタンフォード大学で生まれました。当時のスタンフォード大学では、優れた卒業生の多くが東海岸に流れてしまっていました。
その流出を避けるためにスタンフォード大学では、アメリカ全土から優れた教授を招いたり、最新の設備を導入したりして環境を充実させました。この施策により作られた拠点がCoEの始まりになっています。
DCoEやCCoEとの関連
CoEが近年になって注目を集めるようになったのは、DX推進の広がりに関係があります。DXの中心になるビッグデータの収集やAIを利用した高度のデータの分析を実行するためには組織全体において情報の資産活用が重要です。
しかし、従来の個別の組織では部署間の連携がうまくできないため、データの活用ができないなどの課題がありました。これを解決に近づけるのがCoEです。このCoEの目的を特化させたのが下記のDCoE、CCoEです。
- DXの推進を目的としたCoEDCoE(「Digital Center of Excellence(デジタルセンターオブエクセレンス)」)
- クラウドの導入を目的としたCoECCoE(「Cloud Center of Excellenc(クラウドセンターオブエクセレンス)」)
最近では、DX化やクラウド活用に成功している多くの会社が、DCoEやCCoEを設置しています。
戦略人事とCoE – 3つの柱
CoEは、ビジネスでの人事の領域で、戦略人事の3ピラーモデルの1つとして数えられています。3ピラーモデルとは、HRBP、SSC、CoEです。その中でCoEは特に戦略人事を実現するための機能として重要視されています。
HRBP
HRBPは「Human Resource Business Partner)」の略語です。経営者や各部署の責任者のビジネスパートナーとして、事業を成長させるための問題解決を行いながら会社の業績向上を人と組織の面からサポートしていく役割を担っています。
SSC
SSCは、「Shared Service Center)」の略語です。SSCは、コストダウンを目的に管理部門の間接業務である給与計算や福利厚生対応など、定型的な人事業務を集約させて効率化する役割があります。
CoE
戦略人事に関するエキスパート集団として、人事制度の構築や研修プログラムの開発、人事KPIの管理などを組織の垣根を超えて推進する役割があります。
CoEが活用される場面
CoEが活用される場面として、DXの推進やイノベーションの創出・促進など、いくつか掲げましたので順番に見ていきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
CoEの役割が注目されるようになったのは、DXを推進するために組織を横断させた施策や戦略を行う必要性が高くなってきたためです。
DXの中心になるビッグデータの収集やAIを利用した高度のデータの分析を実行するためには組織全体での情報の資産活用が重要です。そのため、上述したDCoE(Digital Center of Excellence)やCCoE(Cloud Center of Excellence)が有効な手段になります。
サイロ化の防止
従来のサイロ化した縦割り組織では、各部署の連携がうまくいっていないことが多くあります。この状況では、保有するデータや技術を会社として有効活用することができません。
CoEを活用して部署の垣根を超えて会社としてデータや技術が共有できるようになると、部署間の連携も強化され、サイロ化の防止にもつながるでしょう。
イノベーション創出・促進
会社内のイノベーションの創出や促進もCoEが活用できます。縦割り組織の場合、各部署における特定の分野については深い知識がある反面、イノベーションが起こりにくいことがあります。
この問題をCoEの活用によって横断型人材を育てることで、イノベーションを起こしやすい環境整備につなげることが可能です。具体的には、ジョブローテーションの実施によって社員に複数部署の知識やノウハウを習得させて育成することで、さまざまな知識を習得でき、部署ごとの連携もしやすくなります。
業務プロセスの設計
会社全体の業務を見直して改善していくのもCoEの役割です。CoEが各部署の業務を横断的にチェックし、必要があれば、会社全体の業務の見直しや業務プロセスの設計を行います。
具体的には、以下のような施策を行います。
- 業務マニュアルの整備
- 不要な作業や業務分担の見直し
- 業務の可視化など、
- 各部署間の連携の見直し
ノウハウの整理・収集
CoEには、会社の情報やノウハウを整理・収集する役割もあります。会社内では、情報を各部署単位や社員しか持っておらず、業務が属人化しているケースが少なくありません。CoEを導入し、部署を横断して情報を収集し、無用な情報かどうかを選別することによって、スムーズな情報共有ができるようになります。
CoE導入のメリット
CoEの導入にはさまざまなメリットがあります。具体的にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
部署や事業を横断した連携強化
CoEを導入した会社では、社内にあるデータを活用するためのルールや体制の整備を進め、部署を横断した情報共有を行っています。その結果、複数の部署や事業で重複していたコストを一元化したり、技術などを他の部署や事業で利用したりできるようになりました。
それによって、さまざまなサービスや商品の組み合わせを企画できるようになり、社内の連携が強化されたことがメリットになっています。
困難な課題の解決
困難な課題を早期解決しやすくなるのもCoEのメリットの1つです。CoEは、部署を横断した組織で行うので、これまで部署単体で解決していた問題において、各部署が持っているノウハウや問題の解決方法を共有できます。この効果により、それが専門的で高度な問題だったとしても、部署単体で解決しやすくなります。
CoE導入のデメリット
CoEの導入には、メリットもありますがデメリットもあります。導入のデメリットについても見ておきましょう。
社員負担の増加
通常、CoEに選ばれるメンバーは通常業務を行いながらCoEの業務を兼務することになります。そのために、CoEに選ばれた社員の業務量は増えて労働時間が増加する、心身に不調をきたす、というようなリスクがあります。
それに対して適切な対応ができない場合、パフォーマンスの低下や健康被害も引き起こしかねないため、注意が必要です。
失敗した場合のリカバリー
CoEに選ばれた社員については、CoEに必要なマネジメント力などを身につけた人材を選ばないと正しく機能しないというリスクがあります。
CoEの役割を正しく理解して業務遂行していかないと、部署を横断して困難な問題を解決したり、社内の連携を強化したりすることは難しくなるでしょう。このような場合のリカバリー方法も検討しておく必要があります。
CoEを導入する流れ
CoEを導入する際は、組織やグループを超えた横断的な連携が必要です。そのためにも、各部署間が連携して、CoEを導入しやすい環境になるように整備しましょう。ここからは、CoEを導入する流れについて説明します。
部署間連携の場の構築
CoEの導入にはまず部署間の垣根を超えた連携を行うことが必要です。CoEは横断的な組織のため、それぞれの組織で専門的な知識やノウハウを持っていて、なおかつ、マネジメント能力を備えている人をメンバーにして構成します。
メンバーの中で、そのメンバーたちをまとめるリーダーシップを持ったリーダーも必要です。このようなメンバーで話し合いの場を作り、情報収集することで部署間連携の場が構築されます。
チェック体制の構築
チェックリストを作成するなどして、1人ひとりの業務の状況や社員の意識などをチェックする体制を構築するとCoEが機能しやすくなります。
また、アンケートの実施や、チェック時に不明なところがあれば、社員に直接ヒアリングを行うことなども有効です。
CoEに参加した場合のスキルマップ・キャリアマップの策定
まず、組織において理想の人材像の定義を行います。その際、あるべきスキル、必須のスキル、あると良いスキルというように分けてスキルマップを作成しましょう。次に、分けたスキルから必要な全てのスキルを洗い出して、現状との差異を整理します。
キャリアマップでは、次のようなことを設定します。
- ステップアップするための段階
- 各ステップでの必要な年数の目安
- ステップアップに必要なスキル、資格、実績など
このキャリアマップは、定期的に見直す必要があります。
オンボーディングフローの確立
先に整理したキャリアマップと現在のスキルとの差をもとにして教育方針を決めていきます。CoEで求めるスキルは範囲も広く、内容も高度です。そのため、現在の業務に必要なスキルを優先して学ぶなど、効率的に行わなければなりません。
人材の募集
人材の募集にあたっては、性別や年齢、役職、スキルなどに制限を設けず、さまざまな人材を取り入れられるようにする必要があります。
また、CoEの業務は、通常業務と兼務で進められることが一般的なため、CoEの担当者に負荷がかかりすぎないように注意しましょう。
CoEの導入事例
CoEの導入事例について紹介します。
株式会社資生堂
資生堂では、4つの「センター・オブ・エクセレンス」の設立を完了し、資生堂グループの各ブランドによるイノベーティブなマーケティング展開を可能にするネットワーク体制が始動しています。(スキンケアは日本、メーキャップやデジタルは米州、フレグランスは欧州)
各カテゴリーにおいてグローバルに影響力を持つ最先端のエリアで情報収集・戦略立案・商品開発などをリードし、これらを資生堂グループの全世界のマーケティングに展開し、世界に通用する強いブランドを育成しています。
引用:資生堂、「センター・オブ・エクセレンス」ネットワーク体制を完成|資生堂
また、2019年1月にビジネスイノベーションのCoEとして「中国事業創新投資室」を開設。中国事業の基盤強化をサポートしていくとともに、中国発のイノベーションにより、資生堂グループの次の成長の原動力となる新たなビューティービジネスをグローバルレベルで産み出すことで中長期戦略の実現に貢献しています。
株式会社NTTデータ
NTTデータは、2020年にグローバルでデジタル技術に関する知識を蓄積し、専門技術者を育成するCoE(Center of Excellence)を3つの先端技術領域(IoT、Intelligent Automation、Software Engineering Automation)で設立しました。
NTTデータは中期経営計画における戦略“グローバルデジタルオファリングの拡充”の施策の1つとして、技術集約拠点(CoE)の拡充を掲げており、これまでBlockchain、Digital Design、Agile/DevOps、AIの4つの先端技術領域において活動を進めていました。これに加え、上記の3つの先端技術領域の分野についても拡充されています。
参考:デジタル技術のグローバル集約拠点を新たに3つ設立|NTTデータ
CoEの導入による部署間の連携強化で課題解決しよう
CoEを導入することで、会社のさまざまな所に変化を起こすことが可能です。この変化を通して、部署間の連携を構築でき、横断的に人材、ノウハウ、ツールなどを集約して情報共有が進み、解決力の向上にもつながるというメリットがあります。
ただし、CoEの業務に従事する社員が業務を兼務する負担は相当なものがありますので、労働時間の増加や、心身の不調には十分注意してください。
CoEを導入する際には、導入事例を確認して自社に適している導入方法を十分検討してから進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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