- 更新日 : 2024年8月7日
分社化とは?手法やメリット・デメリット、事例を解説
分社化とは企業の一部事業を切り離し、新たに会社を設立させることを指します。
分社化にはさまざまな手法があり、経営判断の迅速化や財務リスクの分散、新規市場への参入を主な目的として実施されます。
本記事では分社化の概要や主な目的、手法、メリット・デメリット、事例を解説します。
目次
分社化とは
まずは分社化の概要と、主な目的を解説します。
分社化の概要
分社化とは、企業が事業の一部を独立させ、新たな法人を設立することです。切り離された法人は、関連会社や子会社として扱われるのが一般的です。
組織の効率化や事業の専門化といった目的があり、事業単位での経営効率向上が期待されます。
分社化する主な目的
分社化を実施する主な目的は以下の3つです。
新規事業へのリソース集中
分社化は、新規事業にリソースを集中させる上で有効です。独立した法人を設立することで、迅速かつ柔軟な運営が可能となります。
新事業を立ち上げる際、分社化により専門チームが集中して業務に取り組めるため、新規事業の成功率向上につながります。
経営効率・財務の改善
経営効率と財務の改善も目的の一つです。事業単位での経営管理がしやすくなり、意思決定が迅速になります。
不採算事業を切り離してリスクを軽減し、業績が好調な事業に特化することで、経営の健全化を図ることが可能です。
後継者育成や経営者教育
分社化は後継者育成や経営者教育にも役立ちます。分社化した事業の経営を後継者候補に任せることで、実務経験を積ませることが可能です。
分社化した子会社を後継者に管理させ、経営者としてのスキルを向上させることで、次世代の経営者育成がスムーズに進むでしょう。
分社化の手法
分社化の手法には、主に「単独型新設分社型分割」「共同新設分社型分割」「分社型吸収分割」の3つがあります。
それぞれの概要は以下のとおりです。
手法 | 概要 |
---|---|
単独型新設分社型分割 | ・企業が単独で新会社を設立し、事業の一部を移行する手法。 ・企業内の一部事業を切り離し、独立性を持たせる。 |
共同新設分社型分割 | ・複数の企業が協力して新会社を設立し、各社の一部事業を集約する手法。 ・新設会社の株式は、各分割会社が持株比率に応じて取得する。 |
分社型吸収分割 | ・企業が一部事業を既存の別会社に移行する手法。 ・割り当てられる株式数次第では、親子関係が形成されるケースもある。 |
手法によって、経営権の所在や元会社との関係が異なるため、戦略にあった手法の選択が求められます。
分社化するメリット
分社化するメリットは以下の4つです。
組織の柔軟性向上
分社化によって企業全体の意思決定構造がシンプルになり迅速な対応が可能になるため、組織の柔軟性が向上します。
独立した事業部門が意思決定権を持つことで承認フローのスリム化が図られ、市場の変化に対して迅速に対応できるようになります。
また、事業部門が独自の経営判断を行うことができるため、全体の経営効率の向上も可能です。
さらに、迅速な意思決定により市場環境の変化に対応しやすくなり、新製品やサービスの投入もスピーディに行えます。
これによって企業全体としての柔軟性が大幅に向上し、競争力が強化されます。
リスクの分散
分社化することで財務状況の改善と倒産リスクの軽減などにつながり、リスクの分散が図れます。
業績不振の事業部門を分社化した場合は収益が改善され、金融機関からの資金調達が容易になるというメリットもあります。
親会社が倒産した場合でも子会社は独立して存続することができ、全体としての倒産リスクを軽減することも可能です。
このように、分社化によってリスクが分散され、経営の安定性が高まります。
新規市場への参入
分社化を行うと、新規市場への参入が容易になります。
成長部門を子会社として独立させると、その子会社が独自に資金調達を行い、新市場への迅速な対応が可能になります。
これにより新製品やサービスの提供が早まり、市場での競争力を高めることが可能です。
また、独立した事業部門が外部との技術協力を積極的に行うことで、新市場に必要な技術やノウハウを迅速に取り入れることができます。
これにより、新規市場での競争力が強化され、事業の拡大につながります。
分社化によって新市場への参入がスムーズに行われ、事業の成長が促進されるでしょう。
節税効果
分社化を行うことで、節税効果が見込めます。
法人税の税率は原則23.2%ですが、資本金1億円以下の企業の場合、課税所得金額が800万円以下の部分については軽減税率が適用されます。
また、設立後2年間は消費税の納付が免除されるため、税負担が軽減できます。
このように節税効果があることも、分社化のメリットの1つです。
分社化するデメリット
一方で、分社化するデメリットは以下の3つです。
経営コストの増加
分社化によって、新たな企業の運営に追加のコストが発生するケースが多く、経営コストが増加しがちです。
例えば、企業のオフィス代や財務部門の人件費、顧問税理士や弁護士への支払いなどが挙げられます。
また分社化に伴い、新たな管理部門を立ち上げる必要があり、これまで本社が担当していた業務も各分社で行うことになります。
結果として維持管理コストが増大し、節税メリットを上回ってしまう場合があります。
経営管理の複雑化
分社化により、独立した企業として管理体制を構築する必要があり、経営管理が複雑化します。
財務や税務の手続きを独自に行う必要があるため、専門知識を持つ人材の確保が求められます。
また各分社が独自の経営判断を行うため、親会社との調整が複雑化し、全体の意思決定が遅れる可能性があります。
分社化後も親会社と子会社の関係を維持しつつ、それぞれの会社の目標を達成するための連携が大切です。
ブランド力の低下
分社化によって統一されたブランドイメージが分散し、ブランド力が低下する可能性があります。
親会社と、分社化した子会社が異なるブランド戦略を採用することで、顧客に対するメッセージが混乱する可能性が考えられます。
また分社化により親会社のブランド力が希薄化すると、各子会社の独自ブランドが市場の認知を獲得するまでに時間を要します。
その結果、ブランドの一貫性が失われ、競争力低下につながる恐れがあります。
分社化の事例
本章では、売上35億円のソフトウェア業の分社事例をご紹介します。
この企業では、IT業界の環境変化に対応できる経営人材の育成が必要だったため、分社化により特定事業の子会社化を行い、新会社を設立しました。
事業部単位から会社単位に変更することで、責任と権限が明確化され、子会社単独での競争力強化を実現できたと同時に、経営効率が向上し、全体の競争力が強化されました。
まとめ
分社化とは、企業が事業の一部を独立させて、新たな企業を設立することを指します。
単独型新設分社型分割や共同新設分社型分割、分社型吸収分割といった手法があり、企業の目的や戦略によってこれらを使い分けることが大切です。
分社化には、組織の柔軟性向上やリスク分散、新規市場への参入などのメリットがある一方で、経営コストの増加や管理の複雑化を引き起こす恐れがある点に注意しなければなりません。
分社化を検討されている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
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