- 作成日 : 2024年10月15日
大幅な業務効率化を見込めるデジタルBPOとは?適用範囲の見極め方も解説
業務を効率的に回して組織全体の生産性を高められるかどうかは、企業のその後の成長に大きく影響します。
効率化の方法としては、ムダを省く、人員の配置を変えるなどさまざまなものが考えられますが、有効な方法の1つに外部への委託が挙げられるでしょう。
これは主にBPOと呼ばれ、このような外注業務を請け負うBPO事業なども存在します。
中でも近年は、テクノロジーの発展によって、AIやRPAなどを用いたデジタルBPOが更なる効率化を見込めるソリューションとして注目を集めています。
本記事では、デジタルBPOの具体的なソリューション例や、BPO検討の判断軸なども含め、BPOについてさまざまな角度から解説します。
目次
デジタルBPOとは
まずは、BPOおよびデジタルBPOの特徴を解説します。
BPOとは
BPOは、Business Process Outsourcingの略で、企業の一部の業務を切り出して、外部の専門業者に委託することを意味します。
主に、人手を集約させることで規模の経済が働くような領域や、定型的な業務などで効果を発揮するでしょう。例えばコールセンター業務や事務業務などが、BPOを用いる典型的な例として挙げられます。
デジタルBPOとBPOの違い
本記事が主題とするデジタルBPOとは、従来のBPOが行っていた領域を、デジタルを用いて行うソリューションのことです。
デジタルを活用することで更に効率化したり、従来では扱えなかった、非定型で意思決定を要するような業務も扱えるBPOサービスのことを指します。
つまり、通常のBPOとは、対象とする業務範囲の広さや質、効率化のインパクトといった点で違いがあります。
デジタルBPOとITアウトソーシングの違い
デジタルBPOと類する言葉にITアウトソーシングが挙げられますが、一般的にITアウトソーシングとは、IT業務を委託することを指します。
一方、デジタルBPOは企業のある業務をまるごとデジタルで効率化することを指すため、ITアウトソーシングとは根本的に異なることに留意してください。
デジタルBPOによるソリューション
次に、デジタルBPOが対象とする領域やソリューションの具体例を紹介します。
デジタルBPOは、ノンコア業務の効率化とコア業務の支援という2つの軸で整理することが可能です。
ノンコア業務での活用
ノンコア業務とは、それ自体が直接利益に直結しにくく、定常的に行うような業務が挙げられます。具体的なソリューションの例には下記のようなものが挙げられるでしょう。
- 自動応答やチャットボットを用いたコールセンター業務の一部代替
- OCR(文字認識技術)を用いた経費精算や契約書読み取りの手入力作業の代替
- RPA(ロボットによる自動化技術)を用いた書類からExcelへの転記作業などのPC上の定型業務の代替
- ブロックチェーン技術を用いた契約取引の透明性向上によるダブルチェック作業などの代替
- クラウドコンピューティングによるグローバルな多拠点間、子会社間での遠隔かつ膨大なデータの一元的な管理
ノンコア業務では高度なデジタルサービスよりも安価で導入しやすいデジタルツールが用いられるケースが多く、すでに多くの企業でデジタルツールの導入が進んでいます。
コア業務での活用
一方のコア業務は、利益に直接貢献するような業務を指します。デジタルBPOのソリューション例としては、次のようなものが挙げられます。
- AI多言語翻訳機能を用いた顧客対応や営業業務、サービス紹介などの補佐
- BIツールを用いた大量データの可視化・分析によるデータに基づく意思決定の支援
- AIを用いた精度の高い需要予測によるKPIや在庫管理の支援
- AIによる最新のトレンド情報のキャッチおよび分析による商品開発業務の支援
- IoTやAIカメラなどを用いた店舗や街中での顧客行動情報の収集・分析によるマーケティング支援
コア業務には言語やコミュニケーション、意思決定支援などの高度なデジタルサービスが必要とされ、一部の先進的な企業で導入が進んでいる領域となります。
BPOやデジタルBPOのデメリット
次に、BPOやデジタルBPOを自社に導入する際のデメリットを解説します。
上記のように、ノンコア業務の効率化やコア業務の支援などによって生産性を大幅に向上させることができる点が、デジタルBPOをはじめとするBPOサービスのメリットです。
一方で、このようなBPOを活用する場合は、次のようなデメリットも存在します。
- 外注によるコミュニケーションコストが増える
- 自社の情報などセキュリティ面でのリスクが増大する
- 自社にナレッジやノウハウが蓄積されにくい
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
1.外注によるコミュニケーションコストが増える
外注による委託先を増やすことで、それらを適切にマネジメントしコミュニケーションをとるためにそれなりの業務量を要する場合があります。
指示内容を示した書類の作成や進捗の管理など、社内の特定の人材への負荷が高まる可能性があるでしょう。
2.自社の情報などセキュリティ面でのリスクが増大する
委託先とNDAを締結することで、委託先は情報の扱いに注意を払うことが義務付けられている場合が多いものの、情報漏えいのリスクをゼロにすることは実質的に不可能です。
委託先が増えることで、思わぬところから自社の秘密情報が外部に漏れる可能性がある点には注意が必要です。
3.自社にナレッジやノウハウが蓄積されにくい
業務を外部に委託するため、自社の人材はそのアウトプットを受けとることが中心となり、業務プロセスでの学びや気づきを得にくくなります。
例えば、将来的に市況の変化に伴ってデータ分析の重要性が増したタイミングで、データの管理・分析を内製化したいと思っても、自社の人材で外注していたものと同じクオリティのものを確保できず、更なるコストが発生することにもなり得ます。
BPOおよびデジタルBPOを検討する際のポイント
最後に、どこまでを外注しどこからを内製化すべきかを検討する際の考え方について解説します。
前章のとおり、デジタルBPOの導入にもデメリットが存在することを忘れてはなりません。これを踏まえ、短期的な効率化による利益創出だけでなく、さまざまな観点からBPOの導入を検討することが重要です。
そのために主に検討すべき論点として、次の3点が挙げられるでしょう。
- 効率化したい業務が自社にとってノンコア業務かコア業務か
- (特にコア業務を対象としたい場合)将来的にそれが自社の競争優位性につながる可能性はないか
- 内製化するための実現難易度やコストはどの程度か
対象がノンコア業務であれば、積極的にデジタルBPOの導入を進める方が良いですが、コア業務の場合は導入には慎重を期した方が良いといえます。
なぜなら、それが将来的な自社の競争優位性に直結する可能性があるためです。具体例で紹介したようなデータ分析や商品開発業務などは、自社らしさにつながるような領域であり、これらは時間を要してでも、自社で地力をつけることが重要かもしれません。
最終的には、その内製化の難易度やコストなどの実現可能性も踏まえた上で判断をする必要があるでしょう。
まとめ
本記事では、企業の成長戦略にとって重要な手段の1つであるデジタルBPOについて解説しました。デジタルBPOは効率化や生産性向上に力を発揮し、ノンコア業務、コア業務双方の幅広い領域で適用可能です。
一方で、コミュニケーションコストの増大やセキュリティリスク、ナレッジの蓄積不足といった課題があることも事実です。導入を検討する際は、これらを踏まえて、本当にデジタルBPOの導入が自社の中長期的な成長にとって最適かを見極める必要があるといえるでしょう。
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