- 更新日 : 2024年7月12日
工数管理とは?メリットや課題、ポイント、効果的なツールなどを解説
工数管理とは、プロジェクト完了までに必要な作業量や作業人数を管理する活動・取り組みを指します。工数管理を行うことで、プロジェクトに必要な作業量や人数を把握でき、効率的なプロジェクト体制の整備やタスクの割り振り・実行が可能になります。
本記事では、工数管理の概要やメリット、課題、ポイント、効果的なツールなどについて解説します。
目次
工数管理とは
工数管理とは、プロジェクトが完了するまでにかかる作業量や人数を管理する活動・取り組みのことです。
そもそも工数とは、ある作業を完遂するために必要な作業量であり、人数と時間を掛けて算出されます。
工数には、人月や人日、人時などの単位があり、プロジェクトによって用いられる単位は異なります。プロジェクトを効率的に進め、スケジュール通りに完了させるためには、工数管理をしっかりと行うことが重要です。
工数と勤務時間の違い
勤務時間とは、就業規則で定められた労働時間のことであり、給与計算の基準となるものです。一方、工数は特定のプロジェクトや業務に実際に費やした時間のことを指します。
工数管理では、勤務時間と工数が一致していることが重要です。勤務時間と工数に差があると、実際の労務費と記録上の工数の乖離が大きくなります。工数が実際の勤務時間より少なく記録されると、プロジェクトの実コストが過小評価されて正確な経営判断が困難になるため、注意が必要です。また、将来の案件見積もりの精度が低下するリスクもあります。勤務時間と工数を一致させることで、より効率的なプロジェクト管理が可能になるでしょう。
工数管理の目的
工数管理の目的は、プロジェクトの成功率を高めることです。プロジェクトの進捗状況を可視化し、適切なリソース配分やスケジュール管理を行うことで、より効果的な意思決定が可能になります。例えば、特定のタスクに予想以上に時間がかかっている場合は、早期に問題を発見できることで、リソースを追加したり、期間を見直したりといった対策を講じられるでしょう。
工数管理を適切に行えば、各メンバーの作業負荷を適切に把握し、負担を軽減することが可能です。このような対策を講じられるようになることで、プロジェクトの成功率を高められます。
工数管理の重要性
工数管理は、業務効率の向上やコスト削減、品質維持などに直結するため、非常に重要です。これらの要素が総合的に機能することで、企業の競争力強化につながります。従業員の作業負担を軽減でき、より付加価値の高い業務に注力できる環境を整えられるでしょう。
工数管理と他の管理手法との違い
続いて、工数管理と他の管理手法との違いを解説します。
勤怠管理との違い
工数管理がプロジェクト管理やコスト削減を目的とするのに対し、勤怠管理は労働時間の記録やコンプライアンス遵守を目的として実施されます。
勤怠管理とは従業員の出勤・退勤時間や休憩時間などの勤務状況に関する管理であり、労働基準法によって管理が義務付けられているものです。
一方で、工数管理は先述のとおり、プロジェクトを構成するタスクの作業量・人数を管理することを指します。
多くの企業はコンプライアンスを遵守するために勤怠管理を行っていますが、工数管理には法的義務がなく、企業がプロジェクト管理やコスト削減を目的として独自に行うという違いがあります。
プロジェクト管理との違い
工数管理はプロジェクト管理の一部であり、プロジェクトを遂行する上で欠かせない要素のひとつです。
プロジェクト管理はプロジェクト全体の進行を管理し、目標達成に向けてリソースの割り当てやスケジュール調整などを行うことを指します。
一方で工数管理はプロジェクト管理をする上で非常に重要な要素のひとつであり、タスクにかかる作業の予実時間や人的リソースを管理します。
工数管理はプロジェクト管理の要素として重要であり、適切なリソース配分や業務効率化などを通して、プロジェクトの成功に寄与します。
工数管理の具体的な手法
工数管理では、下記の3つの手法がよく使われています。
- WBS
- PERT
- クリティカルパス法
それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
WBS
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトを細分化し、各タスクの工数を明確にする手法のことです。大きな目標から始まって、それを達成するために必要な中間目標を設定し、それをさらに具体的なタスクへと分解します。この階層構造によってプロジェクト全体を可視化し、必要な作業を漏れなく把握できます。
WBSのメリットは、プロジェクトの全体像を俯瞰しやすく、必要な作業の抜け漏れを防げる点です。また、各作業の責任範囲が明確になり、進捗管理がしやすくなります。見積もりの精度向上にも役立つでしょう。WBSのデメリットは、作成に時間がかかること、細分化の程度の判断が難しいことです。また、プロジェクトの規模が大きくなるほど、管理が複雑になる傾向があります。
PERT
PERT(Program Evaluation and Review Technique)とは、タスク間の依存関係を考慮して最適なスケジュールを策定する手法のことです。各タスクの最早開始時刻や最遅開始時刻、所要時間などを考慮して、プロジェクト全体の所要時間を算出します。これらの情報をフロー図として視覚化することで、作業の流れや関連性を把握しやすくなります。
PERTのメリットは、タスク間の関係性が明確になり、並行して進められる作業を特定できる点です。また、時間に余裕のないタスク(クリティカルパス)を特定でき、重点的な管理が可能になります。デメリットは、複雑なプロジェクトではネットワーク図が複雑化し、理解するのが難しくなることです。
クリティカルパス法
クリティカルパス法とは、プロジェクト全体の最短完了時間を算出し、重要なタスクを特定する手法のことを指します。クリティカルパス法のメリットは、プロジェクトの完了時期に影響を与える重要なタスクを明確に特定できる点です。リソースの重点配分やスケジュールの最適化にも役立ちます。さらに、進捗の遅れが発生した際の影響を事前に予測し、適切な対策を講じることも可能です。
デメリットは、作業時間を確定値として扱うため、不確実性の高いプロジェクトでは現実との乖離が生じやすい点です。また、人的要因や外部要因による影響を考慮しにくいという課題も見られます。
工数管理を行うメリット
工数管理を行うメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。
- プロジェクトを推進しやすくなる
- プロジェクト体制の最適化が図れる
- 定量的な成果確認ができる
- プロジェクト進捗管理の精度が上がる
- タスクの透明化によってコストが削減される
- 次回以降の工数見積もり精度が上がる
プロジェクトを推進しやすくなる
工数管理を行うことで、プロジェクトをスムーズに推進できるようになります。
工数管理によってプロジェクト内のどのタスクにどの程度の時間がかかるかを定量化できるため、各タスクに多少の余裕を設けておくことで、プロジェクト推進中に生じるタスク遅延の影響などを軽減することも可能です。
また、各担当者にとってはどのタスクをいつ担当するのかが明確になるため、各タスクにより集中して取り組むことができるでしょう。
プロジェクト体制の最適化が図れる
工数管理を行うメリットには、プロジェクト体制の最適化も挙げられます。
プロジェクトの工程やタスクごとに担当者と工数を可視化することで、誰がどの程度の作業量を抱えているのかがわかります。
作業量や作業スキルに偏りがある場合は負荷分散もできるようになるため、最適な人員体制でプロジェクトを進行することが可能です。
定量的な成果確認ができる
工数管理を行うことで、定量的な成果確認ができる点もメリットです。
各担当者の作業工数の実績を数値で確認できるため、それぞれの担当者がどの程度の成果を出しているのかがわかりやすく、モチベーションの維持・向上が図れます。
チーム内で成果状況の共有やディスカッションを行うことで、業務上の気づきや改善提案などにもつながり、組織力の向上も期待できるでしょう。
プロジェクト進捗管理の精度が上がる
工数管理を適切に行うことで、プロジェクトの進捗管理の精度が向上します。
予定と実際の工数を比較することで、予定通りに進んでいないタスクや、予定より早く進んでいるタスクを把握することが可能です。
また、予定よりも時間がかかっているタスクを早期に特定しリソースの追加や人員の再配置を実施することで、プロジェクトの遅延を防ぐこともできます。
このように、プロジェクトを予定通り進めるために工数管理を活用することができます。
タスクの可視化によってコストが削減される
工数管理によってタスクが可視化され、コスト削減につながります。
タスクごとの工数が明確になることで、無駄な作業を特定しやすくなり、改善するきっかけとなります。
プロジェクトの一部メンバーで過剰な残業が発生している場合なども、工数管理で原因を特定して作業プロセスを見直すことで、人件費を大幅に削減することが可能です。
次回以降の工数見積もり精度が上がる
工数管理を行うことで、次回以降の工数見積もりの精度が向上します。
過去プロジェクトの実績データを蓄積することで、これをもとに正確な工数見積もりが可能となります。
過去のプロジェクトと類似の案件があった場合は、そのデータを参考にして工数見積もりを行うことで、正確なプロジェクト計画を立てることが可能です。
工数管理は次回以降のプロジェクトの工数見積もりの精度を高め、プロジェクト計画の効率化・正確化に寄与します。
工数管理の手順
本章では、工数管理の手順を解説します。
- ステップ1.プロジェクトスコープの定義およびタスクを洗い出す
- ステップ2.タスクを分解する
- ステップ3.工数を見積もる
- ステップ4.スケジュール作成およびリソースの割り当て
- ステップ5.工数を入力する
- ステップ6.予実の確認
- ステップ7.報告
ステップ1.プロジェクトスコープの定義およびタスクを洗い出す
まずはプロジェクトで何をどこまで対応するのか(あるいは対応しないのか)すなわちスコープを定義します。プロジェクトのスコープが決定したら、必要となるタスクの洗い出しを進めましょう。
ステップ2.タスクを分解する
タスクの粒度が大きいと進捗の把握が難しかったり、1人で対応できないことがあります。正しい進捗を把握するため、あるいは円滑に作業を進めるために、洗い出したタスクを細かい粒度に分解します。
ステップ3.工数を見積もる
続いて、分解したタスクの工数を見積もります。工数は、過去に経験した類似プロジェクトのデータはもちろん、難易度や作業量などを加味して見積もることが重要です。
ステップ4.スケジュール作成およびリソースの割り当て
タスクの洗い出しおよび分解が完了したら、それらのタスクの最適な処理順序や依存関係を考慮しながら、プロジェクトのスケジュールを作成します。その後、メンバーのスキルなどを踏まえて各タスクに対しメンバーをアサインしましょう。
ステップ5.工数を入力する
プロジェクト開始後は、実際にタスクに取り組み、費やした工数を記録します。工数入力はExcelや工数管理ツールなどを利用するケースが一般的です。
ステップ6.予実の確認
プロジェクトマネージャーなどの管理者は、定期的に工数の予実(予定と実績)を確認します。あらかじめ予定していたスケジュールと実績に乖離が発生した場合は、柔軟に計画を見直すことも重要です。
ステップ7.報告
工数情報は、その他のプロジェクトに関する情報とともに関係者へ報告します。定期的(週次・月次など)、あるいはプロジェクト終了時の報告はもちろん、振り返りも併せて行いましょう。
工数管理の事例
本章では、工数管理の成功事例と失敗事例を紹介します。
成功事例1.工数管理の精度向上や潜在的な問題の可視化
物流DXサービスを展開する企業であるA社では、原価統制のため、プロジェクト別の原価を正確に計上することが課題となっていました。
工数管理にはフリーソフトを使用していましたが、工数データの集計・分析にはエクセルを使用しており、完全なデジタル化を目的として工数管理ツールを導入しました。
データ集計のコストが0になったほか、充実したレポート機能により「コア業務外の業務に時間がかかっている」という問題の可視化も実現しました。
さらに工数入力が容易になることで従業員の工数入力の頻度が上がり、リアルタイム性も向上しました。
ツールを用いた工数管理を実施することで、工数管理の精度向上や潜在的な問題の可視化につながった事例だといえます。
成功事例2.データ集計業務にかかる時間を大幅に短縮
通信インフラを提供するB社はExcelによる工数管理を行っていましたが、手間と時間がかかりデータ入力精度も低いという課題を抱えていました。
当初は、入力された工数管理のデータをもとに、次のような施策の実施を検討していました。
- 業務と要員の配置最適化
- 業務の見直し・効率化実現
しかしデータの信用度に問題があり、実現に踏み切れないままだったのです。
B社はこれらの課題を解消するために工数管理ツールを導入し、以前は30分〜1時間費やしていたデータ集計業務を5分程度まで短縮。さらにデータの信用度も向上したため、これまでは見えていなかった業務の実像把握にも成功しました。
失敗事例1.工数入力の負担増加および重複
工数管理に利用するツールによっては、2重3重のデータ入力が必要になることや、工数入力・分析業務に時間を取られることで、工数管理の失敗につながります。
例えばエクセルを活用すると、コストを抑えられるものの、入力や分析に時間がかかります。
さらに日報やタイムカードの打刻などを別途行っていると、重複する作業もあるため、従業員が「無駄」と感じてしまう要因となるでしょう。
コスト削減が目的のひとつである工数管理を実施するために、従業員が多くの工数を割くことは本末転倒です。
組織全体を通して利用するツールを最適化し、データの重複入力の削減や入力作業を効率化することが求められます。
失敗事例2.工数管理を行う目的の理解不足
工数管理を成功させるためには、社員1人ひとりが正しく工数を入力することが前提条件となります。
しかし、毎日工数を入力しなければならないのは煩わしいと感じる人がいるのも事実です。Excelであれ工数管理ツールであれ、「なぜ工数管理を行うのか」という目的がクリアになっていないと、正しい工数入力につながりません。
工数管理の目的(プロジェクト進捗の可視化や個別原価の精緻化など)を社員に教育・啓蒙しないままでは、一方的に工数入力を促しても形だけの工数管理で終わってしまうリスクが高まります。
このような事態を防ぐためにも、あらかじめ工数管理に取り組む目的などをしっかりと発信していくことが重要です。
工数管理における課題
工数管理には前述のようなメリットがある一方で、課題も存在します。工数管理の主な課題は以下のとおりです。
- そもそもどの程度の工数が必要となるのかわからない
- 作業工数を入力する手間がかかる
- 数値の管理だけに目が行きがちになる
- 正確性の担保が難しい
- 部門間における認識の不一致が起きる可能性がある
- モチベーションの低下につながるリスクがある
- 予期せぬ事態への対応が難しい
そもそもどの程度の工数が必要となるのかわからない
工数管理における課題のひとつは、プロジェクト推進に必要となる工数のボリュームの把握が難しい点です。
組織・チームのプロジェクト実施経験が浅い場合や、過去に類似のプロジェクトを経験していない場合などに生じやすい課題であるといえます。
工数を把握するためには、現場担当者へのヒアリングを行ったり、作成予定の成果物を洗い出して作業工数を試算したりすることが重要です。
作業工数を入力する手間がかかる
工数管理では、各担当者が日々の作業工数を入力する必要があるため、入力の手間が生じる点も課題です。
プロジェクトのタスクを進めるための時間だけでなく、工数を入力・記録するための事務的な時間も必要となります。
数値の管理だけに目が行きがちになる
工数管理ではプロジェクトの各工程や各タスクの作業工数を定量化できる分、定量化した数値の管理だけに目が行きがちになる点も課題であるといえます。
プロジェクトの状況を適切に把握するためには、数値上の工数データだけでなく、業務現場に足を運んで実際に確認することも大切です。
正確性の担保が難しい
工数管理の課題の一つが、正確性の担保がです。特に人間の記憶に頼る事後入力の場合、実際の作業時間との乖離が発生しやすくなります。また、複数のプロジェクトを同時に進行している場合も、どの作業にどれだけの時間を費やしたのか、正確な振り分けが困難になることがあるでしょう。特にメールチェックやミーティングなど、複数のプロジェクトに関連する作業時間の計上方法については、判断が難しいケースが多く見られます。
部門間における認識の不一致が起きる可能性がある
工数管理では、異なる部門間における工数の考え方や計上方法に差異が生じやすいという課題がよく見られます。例えば、営業部門と開発部門では作業の性質が大きく異なるものです。そのため、同じ打ち合わせという作業でも、工数としての計上基準が異なるケースがあります。このような部門間での基準の違いがあると、全社的な工数データの比較や分析が困難になるでしょう。
モチベーションの低下につながるリスクがある
過度な工数管理は、従業員の自主性や創造性を阻害する可能性があります。特に細かい時間管理を強いられることで、従業員は常に時間を意識してしまい、本来必要な試行錯誤や創造的な作業を避けるようになるリスクが考えられます。
また、工数の実績が個人評価に直結するとなると、必要以上に時間を掛けて作業を行ったり、逆に必要な作業を省略したりするといった行動を招く恐れがあるため、注意が必要です。このような状況を防ぐには、工数管理の目的が業務改善や効率化にあることを従業員に明確に示す必要があります。
予期せぬ事態への対応が難しい
工数管理には、計画段階で想定していなかった緊急の作業や、突発的な問題対応の工数を適切に管理することが難しいという課題があります。例えば、システムトラブルへの対応や急な仕様変更への対処など、事前に計画できない作業が発生した場合、既存の工数計画が大きく崩れてしまうことがあります。
その結果、工数の再調整や関連タスクのスケジュール変更に多大な労力を割くことになってしまいます。。これを避けるためには、あらかじめ予備の工数を確保しておくなど、柔軟に対応できる計画作りが求められます。
工数管理をデジタル化するメリット
本章では、工数管理をデジタル化するメリットについて解説します。
工数入力のコストを削減できる
Excelなどで工数入力を行う場合、すべて手動で入力する必要があります。しかし、手入力はミスや漏れが発生しがちなため「入力内容のチェック」という作業が発生してしまいます。
工数管理ツールなどを導入すれば、入力ミスや入力漏れを防ぐことが可能です。さらに工数管理ツールは操作性に優れているものが多く、直感的に入力できます。
結果として工数入力のコストを削減できる点はメリットのひとつといえます。
正確なデータの収集により高精度の分析を行える
前述のとおり、Excelなどで工数管理を行うとミスや作業漏れが発生するため、正確なデータを収集できないケースがあります。
工数管理をデジタル化すれば、集計なども自動化できるため、より正確なデータを収集することが可能です。さらに、それらの正確なデータを利用することにより、高精度な分析や予測などを実現できる点もメリットです。
状況をリアルタイムで把握できる
工数管理ツールを導入すれば、利用者が入力した工数情報をリアルタイムで把握可能です。
その結果、進捗などに関する問題を早期検出できるため、健全な経営を実現しやすくなります。また必要な情報を瞬時に参照できるため、経営判断をスピードアップできる点もメリットといえます。
データの消失リスクを抑えられる
Excelなどで工数管理を行っている場合、PCの故障や紛失などでデータが失われてしまうリスクがあります。人為的なミスはもちろん、自然災害の影響を受けてしまうことも考えられます。
しかしクラウドベースの工数管理ツールを導入すれば、データをクラウドに保管することが可能です。想定外のアクシデントの際も、データ消失リスクを下げることができる点がメリットです。
工数管理を効果的に行うポイント
ここでは、工数管理を効果的に行うポイントとして、以下の事項について解説していきます。
- 工数の予定と実績の両方を管理する
- 数値の確認だけでなく、業務現場の状況の把握にも努める
- なるべく作業工数を入力する負荷を軽減する
- 実績入力は毎日行う
工数の予定と実績の両方を管理する
工数管理では、工数の予定と実績の両方を管理することがポイントのひとつです。
例えば、工数実績だけを管理していた場合、実績値の評価を行うことが難しくなってしまいます。
予定と実績の両方を管理することで、両者の間にどの程度の差異があるのかを把握でき、差異が発生した要因分析や今後の改善などにつなげられます。
数値の確認だけでなく、業務現場の状況の把握にも努める
工数管理を効果的に行うポイントとしては、工数データと業務現場の両方を確認することも挙げられます。
工数管理の目的はプロジェクトをスケジュール通りに完了させることであり、工数の数値を管理することはあくまで手段のひとつです。
そのため、工数データの管理はしっかりと行いつつも、業務現場の様子や担当者からの声なども把握しておくことが重要となります。
なるべく作業工数を入力する負荷を軽減する
工数管理では作業工数の入力の手間も課題となるため、なるべく作業工数を入力する負荷を軽減することもポイントです。
毎日の作業工数の入力は5分~10分程度で終わることが多いものの、積み重なればそれなりの時間になります。
作業工数の入力の負担を軽減するためには、入力作業を効率化するためのツールの活用などが効果的です。
実績入力は毎日行う
正確な工数データを記録するためにも、工数の実績入力は、まとめてではなく毎日行うことが大切です。
例えば週末にまとめて入力しようとすると、週初めの作業工数に関する記憶があいまいとなり、入力データが正確でなくなる可能性があります。
工数の実績入力を業務として捉え、終業時に毎日欠かさず記録することが重要です。
工数入力の負担が大きくならないよう、入力が容易なツールやデータ連携が充実したツールを利用することが求められます。
工数管理の目的を明確にする
工数は毎日入力することで正確な情報を取得できるため、従業員の協力が必須です。工数管理の精度を高めるためには、全従業員に工数管理の重要性やメリットを説明し、工数管理の目的・意義を理解してもらうように努めなければなりません。
予期せぬ事態への対応が難しい
工数管理のデータを可視化し、プロジェクトの分析・改善に活かすことができれば、プロジェクトのコストを自分ごととして受け止められるようになります。例えば、収集した工数データを分かりやすく可視化し、定期的なレビューミーティングで共有します。これにより、プロジェクトの現状や課題が明確になり、改善点を具体的に議論できるでしょう。工数管理は無駄という意識も起こりにくくなります。
工数管理がプロジェクトマネジメントに与える影響
工数管理は、プロジェクト管理にさまざまな好影響を与えます。
精緻な工数データがあれば、プロジェクトの進捗をリアルタイムで把握可能です。また、メンバーが入力した工数情報をもとに、遅延発生箇所(計画以上に工数を費やしている箇所)を検出できれば、追加要員を投入したりスケジュールを延期したりするなど、早期に対策を講じることができます。
さらに工数管理によって予実のギャップを把握できるため、プロジェクトチームのパフォーマンスを評価し、今後のプロジェクトに活かせる点も重要なポイントです。
工数管理ツールの選び方
工数管理を負担をかけずに効率的かつ効果的に行うためには、工数管理ツールを導入することもおすすめです。
工数管理ツールを選ぶ時の以下3つのポイントを紹介します。
- 工数入力・管理作業の容易さ
- 目的を達成できる機能の有無
- ツールの値段
工数入力・管理作業の容易さ
工数管理ツールを選ぶ際は、操作性の良さが重要です。
直感的なUIを持つかやスマートフォン・タブレットからの入力可否、カレンダーとの連携機能など、従業員が使いやすいかどうかを確認しましょう。また、工数の入力忘れを防ぐアラート機能もあると、工数入力の精度が上がると考えられます。
目的を達成できる機能の有無
また、工数管理ツールにはさまざまな機能があり、目的に応じた機能が実装されているかを確認することも重要です。一般的には工数の予実管理やプロジェクト管理、レポート作成などの機能があり、自社のニーズに合う機能を持つツールの選定が求められます。
ツールの値段
さらに、ツールの導入時におけるコストやランニングコストが適切かどうかも確認しましょう。工数管理ツールには買い切り型やサブスクリプション型、従量課金制などがあります。利用人数や必要な機能に応じたコストを事前に算出し、自社にとって適切かどうかを見極めましょう。
導入を検討しているツールを無料で試せる場合は、実際に導入する前に操作感や機能の有用性を確認することも重要です。
工数管理に役立つツール
工数管理に役立つツールとしては、主に以下が挙げられます。
- エクセル
- 工数管理ツール
- ERP
エクセル
工数管理に役立つツールのひとつにエクセルがあります。
エクセルであれば導入済の企業も多いため、新たにツールの導入を行わなくてもすぐに管理を開始できるでしょう。
しかし、追加費用やツールの学習コストを抑制できる点などがメリットとなる一方で、エクセルの場合は各担当者が作業工数を手入力する必要があります。また、エクセル関数やマクロなどの管理が特定の担当者に依存しがちな点もデメリットです。
工数管理ツール
工数管理ツールは、プロジェクト推進における作業工数を管理するためのツールです。
作業工数は手入力だけでなく、カレンダーやスケジュールと連携して管理することも可能であり、効率的な工数管理を行えます。
また、未入力の項目や入力期限を超過した項目に対して、アラート通知を行う機能もあります。工数管理の状況をレポートとして出力する機能もあるため、チームで工数管理の状況を確認したい場合などにも有効活用できるでしょう。
ERP
ERP(Enterprise Resources Planning)は、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営リソースを一元管理し、有効活用するための計画・考え方のことです。
企業内のあらゆるデータを一元管理するためのツール・システムを指す場合も多く、ERPを使うことで各種データの集約や有効活用を実現できます。
プロジェクトの工数管理に役立つ点では工数管理ツールと同様ですが、ERPであれば販売や会計、人事といったより広範な業務領域との連携を図ることも可能です。
ERPのメリットなどについては、以下の関連記事も併せてご確認ください。
工数管理ツール導入後に必要となるECRSの4原則
工数管理ツールを導入すれば、さまざまな業務に潜む無駄な作業を可視化できます。ただし、工数削減を成功させるには「ECRSの4原則」を理解しておくことが重要です。本章では「ECRSの4原則」について解説します。
排除(Eliminate)
対象となるタスクが、排除しても問題がない業務であるかを確認しましょう。排除しても問題ない場合は、対象業務分の工数(コスト)削減が可能になります。
結合と分類(Combine)
類似業務を統合することで、作業効率が上昇するケースもあります。ただし、一見結合した方が良さそうに見える作業であっても、個別に分離しておくべき方が望ましいこともあるため十分な注意が必要です。
交換(Rearrange)
業務を進める順序の入れ替えなども、工数削減に良い影響を与えることがあります。
簡素化(Simplify)
業務の自動化や簡略化など、可能な限り単純であったり手間がかからない方法に変更することで、さらに工数を削減できる可能性があります。
まとめ
工数管理とは、プロジェクト完了までに要する作業量や人数を管理することです。工数管理を行うことで、プロジェクト推進の円滑化やプロジェクト体制の最適化、定量的な成果確認などが図れます。
一方、工数管理では工数を正確に予測する難しさや工数を入力・記録する手間などが課題となります。
工数管理を効果的に行うためには、工数の予定と実績の両方を管理することや、数値だけでなく業務現場の状況を直接確認することなどがポイントとなるでしょう。工数管理に役立つツールとしては、エクセルや工数管理ツール、ERPがあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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