- 更新日 : 2024年7月12日
バリューチェーンとは?概要や分析手順などをわかりやすく解説
バリューチェーンとは「原材料調達」にはじまり「販売・アフターサービス」に至るまでの一連のプロセスを「価値連鎖」として捉えたものです。
バリューチェーンを分析することで、自社の強みや課題を明らかにできるため、企業にとって重要な考え方だといえます。
そこで本記事ではバリューチェーンの概要や構成要素をはじめ、メリットや分析手順などについて解説します。
目次
バリューチェーンとは
バリューチェーンは、日本語で「価値連鎖」と訳されます。
この「バリューチェーン」は、米国の経営学者であり、ハーバード大学経営大学院で教授を務めるマイケル・E・ポーター氏によって提唱された考え方です。
企業は、ある製品を製造するとき「原材料調達」→「製造」→「在庫管理」→「物流」→「販売」といった工程で作業を進めます。
これらの工程ではただ作業をするだけではなく、それぞれで製品に「付加価値」を付与していくことになります。
このように、一連の工程において価値(Value)が連鎖(Chain)的に創出されるため、バリューチェーンと呼ばれています。
バリューチェーンの構成要素
バリューチェーンの構成要素は「主活動」と「支援活動」の2つに分けられます。これらを「基本モデル」と呼びます。
ここではバリューチェーンの「主活動」と「支援活動」それぞれについて解説します。
主活動
主活動とは、製品やサービスの生産に直接関係する活動を指します。
なお、業界などによって主活動の構成要素は異なります。
一般的な製造業における主活動の構成要素は次のとおりです。
構成要素 | 概要 |
---|---|
購買物流 | 製品やサービスを生産するために必要となる原材料などの調達・保管・管理などの活動を指す。 |
製造 | 購買物流にて調達した原材料などから製品やサービスを生産する活動を指す。 |
出荷物流 | 生産した製品やサービスを各店舗や倉庫などに輸送する活動を指す。 |
販売・マーケティング | 広告や営業など製品やサービスの販売に関する活動を指す。 |
サービス | 製品やサービスを販売した後のサポートやサービスに関する活動を指す。 |
支援活動
支援活動とは、製品やサービスの製造に直接関係しない活動を指します。
具体的な構成要素は次のとおりです。
構成要素 | 概要 |
---|---|
全般管理 (企業内のインフラストラクチャー) | 財務・総務・経営企画など企業の活動を円滑に進めるための活動を指す。 |
人事・労務(人的資源)管理 | 給与支払い・社会保険手続き・採用・教育など人材に関する活動を指す。 |
技術開発 | 新製品開発をはじめ既存製品の品質向上や生産効率化などに関する活動を指す。 |
調達 | 製品やサービスを生産するために必要となる原材料や資源の調達・契約などに関する活動を指す。 |
バリューチェーン分析のメリット
バリューチェーン分析とは、自社事業の業務・工程を「バリューチェーンの基本モデル」に従って分類した上で「どの活動において価値を創出できているか」あるいは「どの活動に問題があるか」を分析するためのフレームワークです。
本章では、バリューチェーン分析の主なメリットを解説します。
コストを削減できる
バリューチェーン分析を行う場合、購買物流や製造などといった活動ごとにコストの洗い出しを行います。
そのため、バリューチェーンの構成要素ごと、あるいは担当部門ごとなどでの正確なコスト把握が可能です。
これにより、各活動で創出される付加価値に対するコストが明らかとなるため、費用対効果を考慮した上でコストの削減を検討できるようになる点がメリットの1つです。
自社の強み・弱みを把握できる
製品やサービスそのものが持つ強みや弱みは、競合他社などの製品と比較すれば簡単に把握可能です。
しかし、製品やサービスそのものの比較では、自社が持つ真の強みや弱みを見誤る恐れがあります。
重要なのはその製品やサービスを生産するときに、どのような活動でより高い付加価値を創出したか、あるいはどの活動で期待するような付加価値を創出できていないかを把握することです。それらを把握することが、自社が持つ真の強みや弱みの理解につながります。
競合を分析できる
バリューチェーンは自社だけではなく、競合他社の分析にも利用可能です。
自社の活動だけを分析しても比較対象がないため、強みや弱みを把握するのは意外と難しいものです。
しかし、比較対象となるものがあれば、自社の強みや弱みをより簡単に把握できるでしょう。また、競合他社についてもバリューチェーン分析を行えば、市場予測や競合動向などを把握できます。
さらには自社が差別化すべきポイントなど、経営戦略を策定しやすくなる点もメリットだといえます。
経営資源を適切に配分できる
経営資源の適切な配分に寄与する点も、バリューチェーン分析のメリットだといえます。
どのような企業であっても、経営資源は無限ではなく有限です。
特に大企業と比較すると、スタートアップや中小企業などは経営資源に余裕がないケースが少なくありません。そのため、どの活動に経営資源を配分するのかについては、慎重に選択することが求められます。
バリューチェーン分析を行うことで、どの活動に注力すべきかの優先度を判断可能です。
さらに、全体最適を考慮した経営資源の配分を実現できるでしょう。
バリューチェーン分析のステップ
バリューチェーン分析は次のステップで進めましょう。
- 自社におけるバリューチェーンの整理
- コストおよび強み・弱みの分析
- 競合他社の分析および比較
- 戦略の策定
まずバリューチェーンの洗い出しを行います。
この作業は、事業を「主活動」と「支援活動」に分類し、図などで可視化することをおすすめします。
次に活動ごとにコストや強み・弱みを整理しましょう。
自社のバリューチェーン分析後は、競合他社の分析も必要です。
これにより自社の強み・弱みがさらに明確となります。
最後に、分析した結果をもとに今後どのような方針でビジネスを進めるかといった戦略を検討・策定します。
なお、バリューチェーン分析は1回限りではなく、継続して取り組むことが重要です。
バリューチェーン分析を活用した戦略策定
本章では、バリューチェーン分析の結果が出た後に検討すべき戦略を解説します。
具体的には次のとおりです。
バリューチェーン分析結果 | 策定すべき戦略 | 戦略の詳細 |
---|---|---|
高コストな活動を検出した | コストリーダーシップ戦略 | 高コストな活動に関して効率化やコスト削減を実施することでコスト面の優位性を創出する。 |
自社独自の価値を創出している(あるいは将来的に創出を期待できる) | 差別化戦略 | 自社の強みをさらに伸ばす戦略。 例としては、品質向上などに投資することで競合他社との差別化を推進するなど。 |
特定の活動に優位性がある | 集中戦略 | 特定の活動に優位性がある場合、その領域に経営資源を優先的に配分する戦略。 |
まとめ
今回はバリューチェーンの概要やバリューチェーン分析のメリット・ステップなどについて解説しました。
昨今、ビジネスを取り巻く環境はDXやグローバル化など、さまざまな要因により目まぐるしく変化しています。その影響を受け、少し前までは自社の強みであった要素が、一瞬にして陳腐化してしまうリスクが高まっているのです。
このような時代において、企業が競争力を維持・強化していくためには、定期的にバリューチェーン分析を行い、自社の強みや弱みを正確に把握することが重要だといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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