• 更新日 : 2024年7月12日

アジャイル開発とは?開発手法や進め方、メリット・デメリットを解説

アジャイルとは、「素早い」「機敏」などの意味を持ちます。
アジャイル開発とは、ソフトウェア開発における手法の1つです。
具体的には、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装と検証を繰り返して開発を進行する形態を指します。
本記事では、アジャイル開発の基本概念やウォーターフォール開発との違い、アジャイル開発の手法、進め方、メリット・デメリットについて解説します。

アジャイル開発とは

アジャイル開発の概要、ウォーターフォール開発との違い、アジャイル開発の重要性について解説します。

アジャイル開発の基本概念とその特徴

アジャイル開発は、従来の開発手法よりも顧客の満足を最優先に考え、成果物を素早く提供することを重要視します。

未確定の要望や今後の運用で仕様変更となる可能性が高い機能は、次回のサイクルで仕様が決定されるため、顧客の要求の変化に柔軟に対応でき、不要な機能を開発してしまうこともありません。

ウォーターフォール開発との違い

これまで主流とされてきたウォーターフォール開発との大きな違いは、プロジェクトの進め方にあります。

ウォーターフォール開発は、要件定義から設計・開発・テストまでの工程を段階的に完了させていき、開発途中での仕様変更はしない前提で進めていく手法です。
各工程ごとに分担でき、スケジュール管理がしやすいというメリットがあります。そのため、仕様が決まっており、変更が起きづらいシステム開発に適しています。
それに対して、アジャイル開発は仕様や要件が固まっておらず、変更が起きやすいシステム開発に適しています。

アジャイル開発の重要性

アジャイル開発は、ビジネス環境の変化に対応できる開発手法として、現代ではDX推進の文脈で取り上げられる機会が増加しています。
IPAの「DX白書2021」では、アジャイルの原則に則ったDX推進の重要性が指摘されています。

DX化では、不確実性が高く、仮説と検証を繰り返す状況が多いです。
このような状況と、仕様変更への対応力が強みのアジャイル開発は相性が良く、多くのプロジェクトで採用されています。

参考:IPA「DX白書2021

アジャイル開発の手法

アジャイル開発には、いくつかの手法があり、手法によって進め方や適している状況は異なります。
本章では、それぞれの特徴について詳しく解説します。

スクラム

最も代表的な手法で、プロジェクトの進捗やスケジュール管理など、チーム間のコミュニケーションを重視する特徴があります。スプリントと呼ばれる短期間の開発工程を反復します。1つのサイクルの中で進行に問題がないか、成果物は要求どおりの動作をしているのかを精査します。

エクストリーム・プログラミング(XP)

仕様変更の対応力が高いのがエクストリーム・プログラミングです。仕様変更が発生することを前提としており、厳密な計画を立てません。顧客とコミュニケーションをとりながらソフトウェアに反映させるため、顧客のニーズを反映させやすく、顧客満足度の向上につながるというメリットがあります。

ユーザー機能駆動開発(FDD)

機能ごとにチームを分割し、大規模開発にも対応しやすい特徴を持つのが、ユーザー機能駆動開発です。
品質の高いシステムを作成でき、大規模な案件にも対応できるというメリットを持ちます。しかし、顧客の優先する機能を重視するため、顧客ニーズを把握するのに時間がかかるとスケジュールが遅延しやすいというデメリットがあります。

カンバン

開発プロジェクトの状況を可視化することにより管理を容易にするという特徴を持つのが、カンバンです。カンバンは、看板や標識が名称の元になっており、行動のきっかけとなる資格的な信号を意味します。
進行中の作業が完了次第、新しい作業に移行するという開発の流れの最適化を重視します。各タスクが配置されている領域を確認するだけで迅速に状況を把握できるというメリットは、素早さを求めるアジャイル開発との相性がいいです。

適応的ソフトウェア(ASD)

継続的に変更が発生する場合も対応できるという特徴を持つのが、適応的ソフトウェアです。
3つのサイクルを繰り返して開発を進行し、各段階では以下のような作業を実施します。

1.思索
  • 機能ごとに手順を検討する
  • 未確定部分はサイクルの反復の中で決定する
  • 顧客の要望確認や計画の作成を行う
  • 2.協調
  • チーム内でコミュニケーションをとりながら開発作業を進行する
  • 3.学習
  • 成果物の品質評価とレビューを行う
  • レビュー結果、改善すべき事項を検討し学習する

  • 適応的ソフトウェアは、継続して状況が変化する場合も臨機応変に対応でき、レビューを踏まえてチーム全体が成長していくため、質の高いソフトウェア開発が期待できます。

    アジャイル開発の進め方

    ここでは、最も代表的なスクラムの基本的な流れについて解説します。

    ①プロダクトバックログを作成

    プロダクトバックログは、作成したい製品が顧客にもたらす価値やタスクをリストアップしたものです。
    顧客の要望する機能を洗い出して、作業の優先順位付けを行います。顧客の要望を実現させるために必要な時間的コストと金銭的コストを擦り合わせる目的を持ち、顧客の要望が変化すればその都度対応が求められます。

    ②スプリントプランニングを実施

    スプリントランニングは、スプリントの開始前に立てる計画のことです。時間を細かく区切り、1スプリント内での目標を立てて開発を進めます。

    ③スプリント内の開発作業を実施

    プロダクトバックログで作成したタスクを進行していきます。進行にも以下のような流れがあります。

    デイリースクラム
  • 毎日の状況報告を行う
  • 実施した作業内容や、問題点を報告する
  • スプリントレビュー
  • スプリントが完了した段階で行う
  • 成果の確認を重視する
  • スプリントレトロスペクティブ
  • スプリントレビュー後に行う
  • プロセスを振り返ることを重視する

  • 中でも重要なのがデイリースクラムです。
    デイリースクラムの目的は、個人で解決できそうにない課題を明らかにし、チームでその解決を図ることです。これを毎日行うことで、個人で抱える問題の滞留をなくしつつ、開発を効率的に進めることができます。

    アジャイル開発のメリット・デメリット

    アジャイル開発のメリットとデメリットについて解説します。

    メリット

    一番のメリットは、臨機応変に柔軟な対応ができ、提供までのスピードが速いことです。
    またウォーターフォール開発と比べて、修正にかかるコストを抑えることができ、全体工数を削減できます。
    開発途中もチームや顧客とコミュニケーションをとりながら進行するため、顧客ニーズに最大限応えることができます。

    デメリット

    開発の方向性が不安定になりやすい、進捗が把握しにくくなるなどのデメリットがあります。
    段階的なデリバリー方式でリリースまでの時間を短縮するアジャイル開発ですが、長期的なプロジェクト開発の際は、プロジェクト全体のスケジュールの管理が難しい傾向があります。
    解決策としては、各スプリントでの優先順位をつけて、それに基づいて進行することです。

    まとめ

    アジャイル開発とは、顧客の満足度を優先することを重視する開発手法です。

    ビジネス環境の変化に対応できる手法として、DX推進の文脈で取り上げられることも多いです。仕様変更に柔軟に対応でき、成果物を素早く提供できるアジャイル開発は、DX化との相性が良く、多くのプロジェクトで採用されています。
    ウォーターフォール開発とアジャイル開発では、それぞれ異なったメリットを持ちます。
    開発手法には、それら両方のメリットを活かして組み合わせた手法もあります。顧客に求められていることを理解した上で、開発手法を検討しましょう。


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