- 更新日 : 2024年7月12日
クラウド型ERPの導入スケジュール | 手順や進め方のポイントを解説
クラウド型ERPは、オンプレミス型ERPよりもスピーディーに導入可能と言われています。それでも、要件定義や実装・テストなど、一定の手順が必要です。また、どのシステムを導入するかの選定も、導入と同じくらい重要なポイントです。
ここでは、実際にクラウド型ERPを導入するときにはどのような手順が必要なのか、また導入するクラウド型ERPのシステムを選定するにはどのようなポイントがあるのかをご紹介します。
目次
クラウド型ERPとは
クラウド型ERPは、クラウド上に構築したERPシステムをインターネット経由で利用できるサービスです。社内サーバーではなく、クラウド上のシステムを利用するため、オンプレミス型にはないさまざまなメリットを活用することができます。
クラウド型ERPの特徴
クラウドサービスのため、時間や場所、端末の種類を問わずアクセスできます。また、コスト削減、運用保守の負担軽減などさまざまなメリットがあり、導入することで大きな業務効率化につながります
オンプレミス型ERPとの違い
オンプレミス型ERPとクラウド型ERPには、次のような違いがあります。
- サービスの提供形態
オンプレミス型ERPは、社内のサーバーにシステムをインストールし、利用するには社内ネットワークを経由します。
クラウド型ERPは、クラウド上のサーバーにシステムがインストールされているものを利用し、インターネット経由でアクセスします。 - 拡張性
オンプレミス型ERPはパッケージでの導入となるため、段階的に拡張するのではなく、一気にすべてのシステムを導入する形になります。
クラウド型ERPは必要なシステムごとに導入することができるため、企業の規模や業務、予算などによって段階的に拡張していくことが可能です。 - カスタマイズ性
オンプレミス型ERPは、自社の業務フローに合わせて自由にカスタマイズできます。
クラウド型ERPも多少のカスタマイズは可能ですが、基本的にはベンダー側が提供するシステムをそのまま使用する形になります。 - 運用保守
オンプレミス型ERPは、運用保守に必要な人材も費用も自社で準備する必要があります。
クラウド型ERPの運用保守はベンダー側で対応してもらえるため、社内に特別な人員や費用を確保する必要はありません。 - コスト
オンプレミス型ERPはパッケージでの導入となり、大規模なシステムとなるため、初期コストはかなり高くなります。ただしランニングコストは非常に低くなります。
クラウド型ERPの初期コストはとても低いですが、毎月、一定のランニングコストがかかります。
クラウド型ERPのメリット・デメリット
クラウド型ERPにはさまざまなメリット・デメリットがあります。
メリット
- 初期コストが低い
ハードウェアやサーバー、回線などを準備する必要がないため、初期コストを抑えることができます。予算や必要な業務に合わせて導入するシステムを選択できるため、コストのコントロールがしやすいというメリットもあります。 - 運用保守の手間がかからない
運用保守はベンダー側で対応するため、自社で行うことはありません。
専門知識を有した人材や運用保守費用を確保する必要がないため、運用保守にかかる負担を軽減できます。 - 導入もスピーディー
クラウド型ERPでは大きなカスタマイズを行えないため、スピーディーに導入できます。 - 常に最新のシステムを利用できる
法令対応やバージョンアップはベンダー側で対応するため、常に最新のシステムを利用することができます。 - BCP対策にもなる
自社に万が一事故や天災などのトラブルがあっても、データはクラウドサーバー上に保存されているため、影響ありません。 - テレワーク推進になる
クラウドサービスなので、時間や場所を問わずに作業することが可能です。そのため、テレワークも導入しやすくなります。
デメリット
- カスタマイズ性は低い
クラウドサービスでは、カスタマイズできる部分はあまり多くありません。そのため、システムに合わせてこれまでの業務フローを見直す必要があります。 - セキュリティ対策や運用保守はベンダー任せになる
セキュリティや運用保守はベンダー側で行うため、自社のルールややり方に合わせることはできません。 - インターネット環境のないところでは使えない
クラウドサービスのため、利用するにはインターネット環境が必要です。
クラウド型ERPの導入スケジュールと手順
システムの導入に必要な期間や費用は、企業やシステムの規模、カスタマイズの量などによって異なります。
一般的には、中小企業なら3ヶ月から半年程度が多いですが、大企業なら1年から1年半程度かかる場合もあります。ここでは、一般的な中小企業の例をご紹介します。
企画
期間:約1ヶ月程度
実際の現場における課題から、ERPの導入目的を明確に示します。例えば、業務効率化やテレワークの推進などです。
また、導入範囲を明確にし、一気に導入するのか、段階的に導入していくのかを検討する必要があります。
それを基に、どのようなERPを導入するのかを決定します。この段階で、大まかに予算やスケジュールも決めておきましょう。
要件定義
期間:1ヶ月から3ヶ月程度
決定したベンダーと打ち合わせを行い、必要な機能や仕様、さらに帳票やインターフェースなどを確認します。必要に応じて、これまでの業務フローを見直し、システムに合わせた効率的な新しい業務フローを構築しましょう。
実装・テスト
期間:4ヶ月から半年
試運用を行います。開発中の単体テストから、導入直前の本番環境でのテストまでを含みます。
特に重要なのは、機能を満たしているか、社内(本番環境)で正常に動作するか、既存のシステムとの連携がうまくいくか、などです。
導入
期間:1ヶ月から2ヶ月程度
テストと不具合の修正を繰り返し、リリース判定基準を満たしたら導入します。
導入時には、既存のシステムからのデータ移行、ユーザーIDや仮パスワードの登録、各種権限・通知・ログ保存などの設定も必要です。さらに、導入教育やサポートの準備を行います。
運用・保守
期間:不定
導入後は継続的に運用保守を行います。アプリケーションの更新や修正、トラブル対応などはベンダー側で行うため自社で対応する必要はありません。
全てのユーザーが滞りなくシステムを利用できるよう、教育・サポートを行います。オプションとして、導入支援の面でもベンダーからサポートを受けられることがあります。
クラウド型ERP導入の進め方のポイント
導入するクラウド型ERPを選定するときには、次のようなポイントがあります。
ERPの選定については、次の記事も参照してください。
課題と導入目的の整理
まずは、企画の段階で自社には現在どのような課題があるのか、なんのためにERPを導入するのかを明確にします。そうすることで、より適切なERPを選ぶことができるからです。目的でERPを絞り込み、仕様や機能で自社の業務に合ったERPを選びましょう。
RFI・RFPの作成
導入するERPを選定したり、ベンダーを選定したりする前には、RFIやRFPを作成し、選定の参考にします。この2つの文書を作成することで、自社がベンダーについてよく知ることができ、また、ベンダーに自社のことをよく知ってもらうことができるからです。
RFP(Request For Proposal)は「提案依頼書」ともいい、自社がERPに求める内容をまとめた文書のことです。ERPやベンダーを選定する参考にします。
RFPについては、次の記事を参照してください。
パートナー企業の選定
RFIやRFPを参考に、ベンダーを選定します。
RFI(Request for Information)は情報依頼書ともいい、ベンダーについて実績や得意分野を質問する文書です。そのベンダーが自社の求める技術を持っているか、実績があるか、どの程度のコストがかかるのか、などがわかります。RFIを参考に、いくつかのベンダーを比較して選定しましょう。
まとめ
クラウド型ERPはカスタマイズできる部分が少ないため、オンプレミス型ERPよりもスピーディーに導入できます。しかし、新しいシステムを導入することには変わりありません。そのため、選定や実装、テストなどである程度の時間はかかります。
またERPの導入効果を上げるためには、導入だけでなくシステムやベンダーの選定にも時間をかけることが重要です。適切なシステムやベンダーを選定することが、長期的にERPの導入を成功させるポイントとなるでしょう。
よくある質問
クラウド型ERP導入のステップとは?
通常のシステム導入と同じように、企画、要件定義、実装・テスト、導入、運用保守などのステップが必要です。
クラウド型ERP導入にかかる時間は?
中小企業なら3ヶ月から半年程度が多いですが、大企業なら1年から1年半程度が一般的です。
クラウド型ERP導入のポイントとは?
自社の課題とERPの導入目的を可視化すること、RFIやRFPを作成してシステムやベンダーを選定することなどです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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