- 更新日 : 2024年11月25日
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 定義とERPの活用で実現できることをわかりやすく解説
ここ数年の間に、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。しかし、DXに着手しはじめたものの、“業務のデジタル化”で止まってしまい、本質的にDXを実現できている企業はあまり多くはありません。
ここでは、DXとはなにか、ビジネスのデジタル化とはどう異なるのか、実現するにはどのようなステップが必要なのかなど、DXの概要とクラウド型ERPの活用で実現できることを解説します。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)には、さまざまな意味があります。もともとはIT技術を活用し、人々の生活をより良く改善・進化させていくことを指します。
ビジネスシーンにおけるDXは、経済産業省が日本におけるDXについて言及した「DXレポート」や、経営者向けにDXを推進するうえでのポイントが提示された「DX推進ガイドライン」に、企業活動に沿った内容が定義されています。
ビジネスにおけるDXの定義
経済産業省の「DX推進ガイドライン」によると、ビジネスにおけるDXは、次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
また、経済産業省の「DXレポート2」では、DXを次のように定義しています。
「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」
この2つの定義から、ビジネスにおけるDXには次のようなポイントがあることがわかります。
- 業務の一部や業務プロセスではなく、企業や組織全体をデジタル化すること
- データや技術を活用して製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルや企業文化まで変革すること
- それらの変革をもとに、企業の競争力、優位性を維持・向上すること
DXの3段階
DXには、その達成度合いに応じた3つの段階があります。それぞれ、どのような段階を指すのか解説します。
- デジタイゼーション
これまでアナログで行われてきた業務にITツールを導入し、業務の一部をデジタル化すること。これは、「ツールのデジタル化」とも言えます。 - デジタライゼーション
特定の業務プロセスを整理して、プロセスをまるごとデジタル化すること。その結果、新しい価値やビジネスモデルを生み出すことができます。これは、「プロセスのデジタル化」とも言えます。 - デジタルトランスフォーメーション
企業全体をデジタル化し、ビジネスモデルだけでなく組織や企業そのものを変革し、顧客や社会のニーズに合わせて新しい価値やビジネスモデルを生み出していきます。これは、「ビジネスのデジタル化」とも言えます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化とデジタル化、IT化の違い
DXとデジタル化、IT化は似ていますが、厳密には異なるものです。
「IT化」とは、IT(Information Technology)技術を活用して業務をデジタル化し、業務効率化を実現することで、デジタイゼーションにあたります。
「デジタル化」とは、IT技術の進化により、データや技術を活用して業務プロセスの効率化を図り、新たな価値やビジネスモデルを生み出すことです。デジタル化には、アナログで行ってきた業務をデジタル化して効率化すること(デジタイゼーション)と、デジタル技術やデータを活用して新しい価値やビジネスモデルを生み出すこと(デジタライゼーション)の2つが含まれます。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、さらに次のステップで、業務やビジネスモデルだけでなく、企業全体を変革するものです。
IT化やデジタル化の主な目的は、自社の業務効率化です。しかし、DXの目的はさらに企業文化や企業のあり方全体を変革し、顧客視点から新しい価値を提供し、企業の競争力や優位性を維持・向上させることと言えます。
IT化やデジタル化は、DXを実現するためのひとつの手段にすぎないのです。
企業がDXに取り組むべき理由と現状
そもそもなぜ政府は、DXの推進を進めているのでしょうか?その理由は、大きく3つ挙げられます。日本の企業がDXに取り組むべき理由と現状について、詳しくみていきましょう。
DXの現状
まずは日本におけるDXの現状を押さえましょう。下図は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年公開しているDX白書の2023年版から抜粋した「日米におけるDXの取組状況」です。
画像出典:IPA DX白書2023
こちらの図をみると、2022年に「DXに取り組んでいる」と回答した企業は69.3%で、前年からおおよそ15%程度増加しています。一方で、米国の2021〜2022年の取り組み状況はほぼ横ばいであることがわかります。
この調査結果からは、日本でのDXが急速に加速していることが読み取れます。
もう1つの調査結果をみてみましょう。下図は「従業員規模別にみたDXへの取組状況」です。
画像出典:IPA DX白書2023
米国の場合と違い、日本では従業員規模が小さくなるにつれてDXへの取組も減少していることがわかります。
この2つの調査結果から、日本のDXを牽引しているのは大企業であり、100人以下の中小および零細企業ではわずか40%程度しかDXに着手できていない状況であると解釈できます。
このような状況を改善するためには、日本に存在する全企業の中で99.7%%を占めるといわれている中小企業のDXが喫緊の課題となります。
参考:IPA DX白書2023
「2025年の崖」への対策
日本企業の多くは「2025年の崖」と言われる問題に直面しています。これは「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025 年までに予想される IT 人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025 年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある」という問題です。
参考:DXレポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|経済産業省
変革することなく、現在の既存システム(レガシーシステム)を使い続ければ、急速にデジタル化が進む環境に対し新しい機能や技術に対応できない、あるいは維持管理に必要な人材が確保できないなどの理由から企業の競争力は失われ、大きな経済損失につながると政府では予想しています。また、いずれは使用しているアプリケーションなどのサポートは終了し、セキュリティの面でも大きなリスクにさらされることになります。
こうした問題に対処するには、DXの推進が不可欠です。2025年の壁を乗り越えるためにも、できるだけ早い対応が求められているのです。
働き方改革の実現
ビジネス環境が大きく変化した今、テレワークや時短勤務など、多様な働き方が求められています。政府はこれを働き改革として推進し、企業は働き改革に柔軟に対応し実現することで、人材不足を解決したり優秀な人材を獲得したりすることができるようになります。そのためには、業務のデジタル化やDXの推進が有効だと考えられているのです。
働き改革におけるDXを推進するメリットには、次のような点があります。
- 業務をデジタル化することで、時間や場所を問わず業務用のファイルやシステムにアクセスし、仕事をすることが可能になる
- 業務効率化により作業時間を削減でき、時短勤務が可能になる
- レガシーシステムを刷新し、新しい技術や機能に対応できるようになる
企業の競争力、優位性の維持・向上
DXにより、大幅な業務効率化や生産性の向上が期待できます。例えばデータやデジタル技術を活用することで社員をシンプルな単純作業から解放させ、本来やるべき業務に集中させたり、よりクリエイティブな作業へ転換させたりすることができるようになります。
その結果、社会や顧客のニーズをもとにした新しいビジネスモデルを創造することが可能になり、企業は高い競争力や優位性を維持、向上させることができるのです。
クラウド型ERPの活用でDXを実現
速やかに「2025年の崖」問題への対策を行い、DXを推進していくには、クラウド型ERPの導入をおすすめします。クラウド型ERPは、次のようなメリットがあり、よりDXを加速することが可能です。
一般的なERPのDXへのメリットについては以下の記事を参考にしてください。
経理部門のテレワーク化
クラウド型ERPを導入することで、紙の書類が多いバックオフィス業務もペーパーレス化を進めることが可能になります。ペーパーレス化が進むことで、これまでオフィスに出勤しなければできない業務もテレワークで対応が可能になり、バックオフィスのテレワーク化につながります。
業務の標準化と効率化
ERPを導入するためにはシステムに合わせて業務フローを見直す必要があり、それにより属人的になってしまっていた業務や無駄な業務を削減することで業務の標準化と効率化が可能になります。
また、ERPはデータが自動連携されるため、データの転記など人的ミスの発生しやすい業務を廃止することができます。
監査対応のデジタル化
ERPは各システムを統合したデータベースにアクセスするため、正確性が保証されています。
ERPの機能を活用することで、人的ミスや内部不正の防止、アクセス管理、操作ログの保存などが可能で、内部統制を強化することができます。また、監査の際にもERPに保存されている証憑を確認することができるため、これまでのように紙の書類を集めて用意するということも不要になります。
生産管理の効率化
多くのクラウド型ERPには、次のような生産業務を効率的かつ正確に行える機能が包含されています。
- 生産計画
- 在庫/購買管理および販売管理との連携
- 生産管理
そのため、企業のデジタイゼーションやデジタライゼーションなどのDXを実現できるだけでなく、生産リードタイムの短縮も期待できます。
購買・在庫管理の最適化
適正な購買・在庫管理により、企業はコスト削減および利益増加を実現可能です。
クラウド型ERPの購買・在庫管理を活用すれば、常に適切な在庫レベルを維持しつつ、購買発注を行えます。その結果、過剰在庫によるコスト増大や欠品・品切れによる機会損失リスクを軽減できるのです。
顧客関係管理 (CRM) の統合
クラウド型ERPを導入すれば、顧客情報や取引および問い合わせ履歴などを一元管理できます。その結果、下記のような業務について連動性を持った対応が可能になります。
- 営業
- マーケティング
- アフターサービス など
これにより、顧客接点全般の業務効率化および顧客満足度向上が期待できるでしょう。
人事・給与計算の自動化
人事情報管理、給与計算あるいは勤怠管理などは、企業によって業務に差が発生しない「非競争領域」と呼ばれています。そのため、可能な限り省力化して所轄部門の効率化を推進する必要があります。
クラウド型ERPでは、人事情報や給与計算などの省力化および自動化ができます。その結果、コストセンターの効率化につながるのです。
意思決定の高速化
昨今、ビジネスに求められるスピードは加速度的に上昇しています。このような中で、高速かつ正確な意思決定を行うためには、判断するための材料(経営データなど)を迅速に確認できる環境が必要となります。
ERPは組織全体のさまざまなデータを統合的に管理できます。それらのデータをBI(Business Intelligence)ツールと連携させれば、リアルタイムな情報を参照することもできます。企業経営者やマネージャーは、それらの情報を元に迅速な意思決定が可能となるでしょう。
業務プロセスの標準化
業務プロセスの標準化は、企業にとって重要な課題の1つです。社員ごとに異なる手順で業務を行うと業務品質の低下を招くだけではなく、業務の属人化が進んでしまうこともあります。
クラウド型ERP導入時に業務プロセスを標準化しておけば、さまざまな部門・拠点で業務の質および速度の向上を実現できるでしょう。
DXに伴ってERPを選定する際のポイント
DXに伴ってERPの導入を検討するとき、いくつかの選定ポイントを把握しておくことが重要です。ここでは、DXに伴ってERPを選定する際のポイントとして次の6つを解説します。
必要な機能について話し合い、優先順位をつける
ERPの導入は企業の各部門に影響を及ぼす重要なプロジェクトです。そのため、各部門の意見やビジネスニーズなどをヒアリングする必要があります。
一方でERP導入にかけられる予算や期間は有限であり、多くの場合すべてを実現することは難しいのが現実です。そのため、必要な機能について話し合い、優先順位をつけた上でフェーズを分けて対応するようにしましょう。
アフターサポートの内容を確認する
一口にアフターサポートといっても、具体的なサポート内容や期間などは全く異なります。
そのため、アフターサポートの内容として下記のような点を事前に確認した上でERPを選定することが重要です。
- 具体的なサポート内容および体制
- サポート費用
- 契約形態(契約期間やリース契約であるかどうかなど)
- 解約時の違約金
- その他サポートの条件 など
トライアルの有無
どんなに充実した機能を有しているクラウド型ERPでも、直感的に使いやすいかどうかなどは、実際にシステムを体験してみなければ判断できません。
ERPベンダーによっては、無料でERPを利用できるトライアル期間を提供しているところもあります。
トライアル期間があれば最低限のコストで試験的に導入できるため、現場のリアルな意見を回収する機会が得られます。そのような意見は、ERP選定において重要な判断要素となるでしょう。
導入にかかる手間
前述したとおり、ERPの導入は相応の手間とコストがかかります。さらに場合によっては、業務PCのOS一括更新などの付随的なコストが発生することもあります。
そのため、ERP導入に関する金銭的あるいは時間的コストはもちろん、関連作業などの負担も踏まえて選定を行う必要があります。
許容できるコストを明確にしておく
ERPはプランによって、費用が大きく異なります。企業のニーズによって、必要な機能や拡張性、ERP導入時や運用に必要となるサポートが異なるため、自社の要件に最適なプランを選択する必要があります。
標準プランで十分な機能を持つERPを導入することはコスト削減につながります。一方で、高度な機能や拡張性が必要な場合は、高いコストを投資しても十分にペイできるケースもあります。
そのため、自社がERP導入にどこまで費用をかけられるのか、許容できるコストを明確にしておきましょう。
社内でスムーズに運用できる体制を整える
ERPは、従業員が実務で使ってこそ価値を発揮します。そのため、ERP導入直後より従業員が機能をフル活用できるようにすべきです。
これを実現するためには、マニュアルの準備はもちろん、既存システムとの変更点などを周知したり、トレーニングの実施体制を整えておいたりすることが重要です。
最新技術が活用されているかを確認する
ERPを選定する際は、AIや機械学習、IoTなどの最新技術が活用されているかを確認することも重要です。
AIや機械学習を活用したERPは、日常業務の自動化を促進します。例えば、経費処理や在庫管理、顧客対応などの定型業務を自動化することで、従業員の作業負担を減らし、ヒューマンエラーのリスクを低減することができます。
AIや機械学習を活用したERPは、蓄積されたデータをリアルタイムで分析し、将来のトレンドや需要を予測することも可能です。例えば、販売データや市場の動向を分析し、在庫の最適な補充タイミングを予測することなどもできます。無駄な在庫を抱えるリスクを減らすことで、コストの削減や効率
的な資源配分を実現できます。
IoT技術を活用したERPは、製造業や物流業において特に大きなメリットをもたらします。例えば、製造機器やセンサーからリアルタイムでデータを収集し、生産ラインの稼働状況や設備の故障リスクを可視化することなどが可能です。迅速な対応が可能になることで、生産効率を高められるでしょう。
ERPの導入手順
ERPの導入を成功させるためには、手順の把握が必要不可欠です。ERPの導入手順に沿えば、DXの達成に向けた大きな1歩となるでしょう。
一般的なERP導入手順は次のとおりです。
- 社内の体制を構築する
- ERPを導入する目的を明確にする
- ERPの選定
- 導入
- 運用
1.社内の体制を構築する
ERPの導入は、経営層から現場まで多くの部門が関与することになります。まずはプロジェクトチームを設立し、各部門から責任者を選出しましょう。プロジェクトチームは、ERP導入の全体戦略や進捗管理、課題解決を担います。多くの資金や人材、時間が必要になるため、経営層の理解と支援を得ることが重要です。
また、ERPの導入に伴い、現場の従業員が抵抗感を感じるケースがあります。抵抗感を取り除くために、従業員への教育やコミュニケーションは必ず実施しましょう。特にERP導入プロジェクトの初期段階は、チーム内で定期的に進捗確認を行い、リスクや問題が発生した際に速やかに対応でき
る体制を整えることが重要です。
2.ERPを導入する目的を明確にする
ERPを導入する目的を明確にすることも非常に重要です。企業が抱える課題や改善点を明確にし、具体的な目的を設定しましょう。例として、下記のような目的が挙げられます。
- 業務効率の向上
- コスト削減
- データの一元管理
- 部門間の連携強化など
ERPを導入する目的を明確にすることで、システム選定や導入後の運用で優先すべき機能を把握することができます。さらに定めた目的を共有することで、プロジェクトに参加する全てのメンバーが、同じ目標に向かって取り組むことが可能になります。
3.ERPの選定
ERPを選定する際は、提供形態(クラウドorオンプレ)の違いも意識する必要があります。両者のメリットやデメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット | |
クラウド型ERP | ・初期コストが低め ・運用保守はクラウドベンダーの責任 | ・カスタマイズの自由度が低め ・運用保守がベンダー任せになってしまう |
オンプレ型ERP | ・基本的には買い切り型のため追加コストが不要 ・カスタマイズの自由度が高め | ・初期コストが高め ・導入に時間がかかる ・自社で運用保守を行う必要がある |
クラウド型ERPのメリット・デメリット、選び方のポイントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
最新技術を活用したERP(AIや機械学習、IoTとの連携が可能なもの)は、データのリアルタイム分析や業務の自動化を実現し、競争力を高める手助けとなります。また、ERPは企業の成長とともに、長期間使用することになります。そのため、システムの拡張性も選定時の重要な要素といえるでしょう。
4.導入
ERPの導入では、企業ごとの独自の業務フローに合わせたカスタマイズが必要になるケースがあります。また、データの移行を適切に実施することも重要です。データ移行では、過去のデータを新しいシステムに正確に移行しつつ、データの一貫性や品質を維持することが求められます。
新しいシステムに慣れるためのトレーニングを従業員へ実施し、システム操作や新たな業務フローを理解してもらうことも重要です。
5.運用
ERP導入後は、システムを安定的に運用し、継続的に改善することが重要です。
まず、導入後にシステムが計画通りに機能しているかを定期的に評価します。業務効率の向上やデータの正確性をモニタリングし、必要に応じて設定の調整や機能の追加を実施します。定期的なメンテナンスやソフトウェアのアップデートも重要です。
6.クラウドERPに移行する際の注意点
この章では、クラウドERPに移行する際の注意点について解説します。
データ移行の計画と準備
クラウドERPへ移行する際には、既存システムから新しいクラウド環境へデータを移行する必要があります。移行するデータが大量にあったり、古いデータが含まれていたりする場合は、データの整理やクレンジングを行いましょう。
特に古い取引データや使用されていない顧客情報を整理・削除することで、移行にかかる時間を短縮できます。クラウド環境に無駄なデータを移行させないように、必ず不要なデータを削除してから移行作業を進めましょう。
セキュリティ対策の確認
クラウドERPはインターネット経由で利用するため、サイバー攻撃を受けるリスクが高くなります。クラウドERPの提供事業者のセキュリティ対策(データ暗号化やアクセス制御、認証プロセスなど)が自社のセキュリティポリシーに適合しているかを確認しましょう。
必要に応じて、多要素認証(MFA)やIPアドレスの制限など、追加のセキュリティ対策も検討することをおすすめします。
ネットワーク環境の確認
クラウドERPは、利用するネットワーク環境によってパフォーマンスが大きく影響されます。通信速度が遅い場合はシステムの応答が遅くなり、業務効率が低下する可能性があるので注意しましょう。
例えば、在庫情報の確認や注文処理に時間がかかったり、レポート生成に時間がかかったりするケースが考えられます。クラウドERPの移行では、高速かつ安定したネットワーク環境を整備することが非常に重要です。
7.クラウドERPの運用・管理のポイント
この章では、クラウドERPの運用・管理のポイントについて詳しく解説します。
セキュリティの強化
ERPの運用では、ユーザーごとに適切な権限を設定し、必要な業務に関する情報にのみアクセスできるようにしなければなりません。例えば、営業部門の社員は顧客情報にアクセスできるが、財務データにはアクセスできないといった形で、各役割に応じたアクセス制御が必要です。
部門や役職ごとにアクセス範囲を制限することで、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。
アクセスやシステム操作のログを定期的に監視し、不審な動きや異常な操作がないかを確認することも重要です。ログインの失敗や不正なアクセス試行などを自動で記録・検知できるERPシステムであれば、セキュリティインシデントを未然に防止できるでしょう。
コスト管理
クラウドERPは、システムリソースの利用状況に基づいて課金されます。そのため、CPUやメモリの使用量、ストレージ容量、データ転送量などを定期的にモニタリングすることが重要です。特に無駄なリソースの消費が発生していないかを確認し、必要以上のコストがかかっていないかをチェックする必要があります。
クラウドERPは、必要に応じて追加の機能やリソースを利用できる柔軟性が魅力ですが、予想以上にコストを押し上げる原因になる場合もあります。機能を追加する際は必要性を確認し、費用対効果を見極めた上で慎重に判断することが重要です。
運用の自動化・効率化
クラウドERPには多くの自動化機能が含まれており、これらを積極的に活用することで日常の運用管理作業を格段に効率化することができます。
例えばクラウドERPには、売上報告書や在庫レポートなどを自動で生成する機能があります。手作業でデータを集計し、レポートを作成していた時間を削減することが可能です。
クラウドERPには、システムのメンテナンス作業(定期的なバックアップやセキュリティパッチの適用など)を自動で実施する機能もあります。
手動でのメンテナンス作業が不要になるため、セキュリティ管理者の負担を軽減することができます。
DXを推進するためには、クラウドERPの機能を活用し、業務をいかに効率化するかが重要です。
まとめ
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、企業全体またはビジネスそのものを変革させることを意味します。
DXは、単なる業務をデジタル化することではありません。企業活動全体をデジタル化し変革することで新しい価値を生み出し、企業の競争力や優位性を維持、向上させることを目指します。DXの目的は、これらの変革そのものなのです。
このDXの推進において、現在、日本の企業は世界から遅れをとっているのが現状です。「2025年の崖」に記されているように、IT人材の不足をはじめ、世界的に大きな変化が進むビジネス環境への対応の遅れが競争力の低下を招くなど、多くの問題を抱えています。世界的にデジタル化が急速に進み、進化し続けるビジネスシーンのなかで生き残っていくためには、できるだけ早いDXの推進が不可欠なのです。
そのためには、社内のデジタライゼーションを進め、DXを推進できるような基盤を作る必要があります。業務の標準化と効率化を実現し、バックオフィスのテレワーク化を進めるにはクラウド型ERPの導入がおすすめです。
よくある質問
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。
企業がDXに取り組むべき理由とは?
「2025年の崖」への対策と働き方改革の実現、企業の競争力、優位性の維持・向上のためです。
クラウド型ERPの活用で実現できることとは?
経理部門のテレワーク化や業務の標準化と効率化、監査対応のデジタル化を実現します。
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