- 更新日 : 2024年12月20日
予算策定とは?手順、活用すべきツールや技法、ベストプラクティスを解説
予算策定とは、企業が年間の経営活動に必要な資金を計画するプロセスです。
収益と支出を見積もり、経営戦略に基づいた具体的な数値目標を設定することで、リソースの最適な配分を実現します。
本記事では、予算策定の概要や手順、向いているツールや技法、ベストプラクティスについて解説します。
目次
予算策定とは
まずは、予算策定の概要と目的を解説します。
予算策定の概要
予算策定とは、企業や組織が一定期間内における収入と支出を計画し、資金の配分を決定するプロセスです。
企業の戦略的目標に基づいて売上や経費を見積もり、計画を立てることで、経営資源を最適に活用することができます。
予算は通常年間計画として作成されますが、四半期ごとや月ごとの詳細な計画まで含まれるケースが大半です。
予算策定の目的と必要性
予算策定の主な目的は、経営資源の有効活用と収益性の向上を図ることです。
企業の財務状況を明確にし資金の流れをコントロールすることで、無駄を排除し効率的な運営を実現できます。
また、策定した予算計画は企業全体の目標となり、従業員の意識統一や動機付けにも寄与します。
不確実な経済環境において、予算策定はリスク管理や柔軟な対応を可能にする手段としても重要です。
予算策定の手順
予算策定は、以下の手順で実施されます。
- STEP1:目標設定
- STEP2:部門別予算の策定
- STEP3:全体予算の調整
- STEP4:予算の承認と共有
STEP1:目標設定
まず、企業の短期および長期の目標を明確にすることが求められます。売上高や利益率、コスト削減目標などの具体的な数値目標を設定します。
経営層と各部門のリーダーが協力して目標を設定し、組織全体の方向性を一致させることが重要です。
STEP2:部門別予算の策定
各部門は、設定された目標に基づいて詳細な予算案を作成します。営業部門では主に売上予測を立て、生産部門では必要な原材料費や人件費などを見積もります。
部門ごとの予算策定は、実際の運用に即した現実的な数値を反映させることが求められます。
STEP3:全体予算の調整
各部門から提出された予算案を統合し、全社的な予算を調整します。この段階で部門間の資金配分のバランスを取り、全体の収支計画を確立することが大切です。
必要に応じて部門ごとの予算案を見直し、全体の戦略目標に沿った調整も行います。効果的な予算策定には、現実的な数値設定と柔軟な調整が欠かせません。
STEP4:予算の承認と共有
最終的な予算案は、経営陣によって承認されます。承認後の予算は全社に共有され、各部門の担当者に伝達されます。
予算の共有は、従業員全体が目標達成に向けて一丸となるため、非常に重要です。
予算策定に向いているツール・システム
予算の策定時は、以下のようなツール・システムを用いることで効率的な予算策定が可能となります。
- スプレッドシート
- 予算管理システム
- ERPシステム
スプレッドシート
スプレッドシートは低コストで利用できるため、予算策定の初期段階で導入が検討されるケースが大半です。
スプレッドシートを使うことで、簡単にデータの入力・計算を行うことができます。またカスタマイズ性が高く、企業のニーズに合わせたテンプレートを作成することが可能です。
一方で、アクセス権限の管理や編集権限の管理、セキュリティ対策など、多くの点に注意しなければなりません。
予算管理システム
予算管理システムは予算管理用に設計されたソフトウェアであり、予算策定の大幅な効率化が可能です。
予算の作成や管理、分析が一元管理できるため、統一されたデータの管理が実現できます。また自動化機能が豊富であり、手作業によるミスを減少させることも可能です。
さらに、リアルタイムのデータ更新や可視化機能により、最新の予算状況を常に把握できます。シナリオ分析や予測機能が実装されているケースも多く、将来の見通しを立てやすい点も魅力の一つです。
監査機能や履歴管理を活用すれば、コンプライアンスの強化にも寄与します。
ERPシステム
ERPシステムは、企業全体の情報を統合管理するためのシステムです。予算策定をはじめ、財務管理、購買管理、生産管理、労務管理などの各業務を統合管理できます。
企業内の全データを一元化して統合的に管理することにより、各部門間での情報共有がスムーズに行えるようになります。これによってリアルタイムのデータ分析が可能となり、経営判断のスピードと正確性が向上します。
導入にはコストや時間がかかりますが、その分長期的な業務効率の改善が期待できます。
ERPの詳細については、以下の記事もあわせてご確認ください。
予算策定の技法
予算策定時に活用できる技法を3つ紹介します。
トップダウン方式
トップダウン方式は、経営層が全体の予算枠を決定し、部門ごとに割り当てる手法です。企業全体の戦略に基づいて予算が配分されるため、合理的です。
経営層の意向が反映されやすく、決定までが迅速な点も特徴の一つです。また、部門ごとの予算配分が経営戦略に沿って調整されるため、一貫性が保たれます。
ボトムアップ方式
ボトムアップ方式は、各部門が個別に予算を策定し、それを集約して全体予算とする手法です。現場の実情やニーズが反映されやすく、現実的な予算を立てることができます。
また各部門が予算を策定することによって責任感が高まるため、モチベーションの向上も期待できます。さらに、部門ごとの詳細な計画が求められることにより、予算の精度も高まります。
折衷方式
折衷方式は、トップダウン方式とボトムアップ方式を組み合わせた手法です。経営層の戦略的指針をもとに、各部門が具体的な予算を提案します。
双方の意見を取り入れることで、全体のバランスが取れた予算策定が可能になります。また経営層と現場のコミュニケーションが強化され、相互理解を深めることができます。
予算策定のベストプラクティス
効果的な予算管理を実現するためには、データに基づいた意思決定が必要不可欠です。その際、正確なデータをもとに分析を行うことで、効果的な予算編成が可能となるでしょう。
特に過去の実績や市場の動向といったデータを活用し、客観的な判断を下すことが求められます。データに基づく意思決定は正確な予測につながり、目標達成に寄与します。
また、部門間の協力と情報共有も重要です。予算管理は全ての部門が協力して取り組むべきプロセスであるため、部門間の協力が円滑であれば予算の効果的な配分が実現できます。
定期的な会議や報告の場を設けて情報を共有することで、全体最適な予算管理が可能となります。
まとめ
予算策定は、収益と支出を見積もり、経営戦略に基づいた数値目標を設定することでリソースを最適に配分することが主な目的です。
予算の策定時は、スプレッドシートや予算管理システム、ERPシステムなど、予算策定に向いているツールの活用が求められます。各ツールの特徴を踏まえ、自社に最適なツールの導入を検討しましょう。
また、予算策定は予算管理のプロセスの一部であり、予実管理や分析、改善活動も重要です。予算管理の詳細は、以下の記事を併せてご確認ください。
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