• 更新日 : 2022年11月21日

製造業向けERPの機能やメリット、製造業の課題をわかりやすく解説

製造業向けERPの機能やメリット、製造業の課題をわかりやすく解説

製造業の分野では「ERP」や「MES」、「PSI」といったシステムを活用して「受注・販売管理」、「在庫・購買管理」、「生産管理」、「財務・会計管理」などの業務を行います。この記事では、製造業におけるERPの役割や機能などを解説します。

製造業におけるERPの役割

製造業においてERP(経営資源計画)は、「受注・販売管理」「在庫・購買管理」「生産管理」「財務・会計管理」などを担います。

製造業の場合、ERPは特に生産計画や在庫調整の精度を上げるために使われることが多いでしょう。製造業には「見込み生産」「受注生産」など複数の生産形態があるため、各形態に合わせた生産計画・在庫調整が必要です。また、生産計画や在庫調整が企業の財務にどのような影響を与えるかも把握しておかなくてはなりません。

ERPは、企業内に存在する資源を一元的に管理・可視化することで、迅速かつ的確な経営判断に役立てるための仕組みです。こうしたERPの特性を活かし、受注・販売に紐づく生産計画、原材料の購買計画、リードタイムや在庫の調整などに使用されています。

製造業における課題

製造業でERPが使用される背景には、次のような課題があります。

競争力の維持

かつては日本のお家芸とも言われた製造業ですが、近年は海外企業の成長により苦しい状況に追い込まれるケースが散見されます。製品力では優位性を保っているものの、人件費の安い新興国の製造コストに太刀打ちできずに、シェアを奪われることも珍しくありません。

家電製品など機能面で成熟した領域では特にこの傾向が強く、「必要十分な機能を持った低価格な製品」が高品質・高価格な製品よりも人気を集めているのです。また、市場シェアを勝ち取った海外企業は、徐々に製品の品質を高め、日本企業に匹敵する信頼性を得ている事例もあります。

こうした状況の中で日本企業が競争力を維持するには、以前にもまして製造コストの削減に努め、品質と価格を維持する必要があるでしょう。

レガシーシステムからの脱却

ERPを導入していない企業は、独自の生産管理システムや在庫管理システムを運用しているケースが多いでしょう。こうした独自のシステムは、老朽化・複雑化が進み、サプライチェーン・エンジニアリングチェーンの双方で問題を発生させる遠因になります。

サプライチェーンとは「受発注・生産管理・流通・販売」の連鎖です。
これに対してエンジニアリングチェーンは「企画研究・製品設計・工程設計・生産」の連鎖と言えるでしょう。

この2つのチェーンは「価値の連鎖」であると同時に「データの連鎖」でもあります。しかし、事業部門ごとにセグメント化し、なおかつ複雑化が進んだレガシーシステムでは、データの連鎖がスムーズに進みません。その結果、ボトルネック部分が明確にならなかったり、生産過程における手戻りの作業が大きくなったりといった問題が発生します。

また、レガシーシステムは技術者の属人的な知識・スキルに支えられていることが多く、技術者の退職によって保守運用が難しくなるという問題も抱えています。

「ERP」「MES」「PSI」の違い

次に、ERPとMES・PSIの違いについて解説します。ERPは、企業内の資源を効率よく使用し、データとして可視化することで的確な経営判断に役立てるための仕組みです。つまり、「計画と可視化」のための仕組みと言うことができます。これに対してMESは「現場から実績データを収集する仕組み」、PSIは「生産・販売・在庫計画を連携させて最適な生産量を算出する仕組み」です。

MESは、生産ラインにおける具体的な実績値を収集・管理し、製造プロセスの効率化と安定化を実現します。また、現場から得られたさまざまなデータ(生産ラインの稼働率・スケジュール・人員配置・各種機器データ・在庫情報)をERPに渡し、リアルタイムで精緻な資源情報の構築を支援します。

PSIは、生産・販売・在庫の各工程で綿密に計画を立て、この計画に沿うことで生産量を最適化していきます。ERPにも生産管理機能が内包されていますが、ERPはあくまでも基幹業務にまつわる資源(ヒト・モノ・カネ)の配分を最適化することに強みを持っています。一方PSIは、生産計画と在庫の適正化に特化した仕組みです。また、ERPと連携する場合は、ERPが持つ販売計画や人的資源の情報を参照しながら、精緻な生産計画・在庫適正化を行うことができます。

製造業で求められるERPの機能

製造業では、ERPの機能の中でも以下のような機能が求められることが多いでしょう。

需要予測機能

販売(受注)実績および出荷実績データなどをベースに、複数の統計予測手法を用いて需要を予測する機能です。一般的には、過去の実績データから予測モデルを構築し、予測モデルを随時アップデートしながら需要の計算を行うといった機能を指します。

生産計画機能

需要予測や所要量計算をもとに、現場での生産計画を立案する機能です。製造指図の作成や作業実績の登録といった管理機能が内包されることもあります。また、生産だけではなく受注・購買と連携しながら、リードタイムを短縮する仕組みとして「生産スケジューラ(APS)」が必要になることもあるでしょう。APSは、保有設備や人的リソースを加味しながら、中・長期の生産計画を立てる際に役立つ機能です。

購買管理機能

製造に必要な原材料や部品を、生産計画機能によって算出された値に従って調達するための機能です。

在庫管理機能

購買発注によって購入された原材料・部品、または生産された完成品の入庫/出庫状況を管理する機能です。

部品構成管理/設計変更管理機能

部品構成管理機能は、完成品を生産する際に必要な部品の数や組み合わせなどを管理する機能です。設計変更管理機能は、不具合の解消やクレーム対応などで変更された設計情報を管理します。

製造原価管理機能

製造する品目ごとに原価計算を行うための機能です。複数の原価計算(標準原価、実際原価など)に対応し、原価同士の差異を算出したり、レポートとして可視化したりといった機能が含まれます。

ERP導入による製造業のメリット

製造業におけるERP導入のメリットとしては、次のような事柄が挙げられます。

受注から出荷までのリードタイム短縮

実績データにもとづいて常に最適な生産を行い、在庫や物流を管理することによって、リードタイムの短縮が見込めます。

在庫管理の適正化

生産計画機能を活用することで、部品を必要なときに必要な量だけ調達することができるため、在庫の削減につながります。また、受注に対する製品在庫の割り当てや販売担当者の在庫チェック業務などが自動化されることで、在庫管理にかかる業務が効率化されていくでしょう。

納期回答の精度向上

ERPの導入によって生産管理と在庫管理の精度が向上すると、納期回答についても正確な数値が算出されやすくなります。「いつ・どの製品を・どれだけ用意できるか」といった情報を高い精度で提供できるため、取引先の信頼を勝ち取りやすくなります。

この記事では、MES・PSIとERPの違い、製造業で求められるERPの役割と機能、ERP導入のメリットなどを紹介してきました。ERPの導入では、製造業の生産計画・在庫管理にかかる複雑な業務を効率化することが可能です。また、納期回答の精度向上や在庫管理コストの低減など、企業の成長を後押しする効果も見込めます。

ERPの活用で製造業の業務を効率化

この記事では、MES・PSIとERPの違い、製造業で求められるERPの役割と機能、ERP導入のメリットなどを紹介してきました。ERPの導入では、製造業の生産計画・在庫管理にかかる複雑な業務を効率化することが可能です。また、納期回答の精度向上や在庫管理コストの低減など、企業の成長を後押しする効果も見込めます。

よくある質問

ERPとMES、PSIの違いは?

ERPは、計画・可視化に強みを持つ「計画系」、MESやPSIはより現場に近い情報を吸い上げる「実行系」のソリューションという点で違いがあります。 詳しくはこちらをご覧ください。

製造業におけるERP導入のメリットは?

生産計画と在庫管理の適正化によるコスト削減、リードタイム短縮、納期回答の精度向上などが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。


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