- 更新日 : 2024年7月12日
レガシーシステムとは?概要や問題点、脱却するためのポイントなどを解説
レガシーシステムとは、老朽化や複雑化、ブラックボックス化が問題となっているシステムのことです。
レガシーシステムを抱えることで、多大な保守・運用コストがかかることに加え、DX化が進みにくくなるなどの問題が生じます。レガシーシステムから脱却するために、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか。本記事では、レガシーシステムの概要や問題点、レガシーシステムから脱却するための方法などについて解説します。
目次
レガシーシステムとは
はじめに、レガシーシステムの概要やレガシーシステムが生まれる背景について解説します。
レガシーシステムの概要
レガシーシステムとは、旧来の技術や仕組みによって構築され、老朽化・ブラックボックス化したシステムのことです。
英単語の「Legacy」は、本来「遺産」を意味する言葉です。それが転じて、レガシーシステムは時代遅れとなったシステムに対して使われる用語となっています。
たとえば、メインフレーム(汎用コンピューター)やオフィスコンピューターなどのシステムが該当します。
レガシーシステムの特徴
レガシーシステムの特徴としてよく挙げられるのが、以下の4点です。
- 古い技術またはプラットフォームを利用している
レガシーシステムの基盤となっているのは、古い技術やプログラミング言語、データベース管理システム、オペレーティングシステムなどです。これらが搭載されているシステムは、新しいシステムやアプリケーションとの互換性が乏しいため、データの統合・共有が難しいケースが多く見られます。 - 保守・サポートが非常に難しい
レガシーシステムは、そもそも製造元がサポートを終了しているため、適切な保守やアップデートが難しいケースもよくあります。また、システムに関するドキュメントが不足していたり、システムを理解している専門家が少なくなっていたりするケースも多いです。 - 運用コストが高額になる
レガシーシステムの維持・管理を行える人材は年々少なくなっており、このような特別なスキルを持っている人材を確保すること自体が難しくなっています。さらに、維持・管理を行うために必要なリソースを確保する必要があるため、運用コストも高額になりがちです。 - セキュリティリスクを抱えている
レガシーシステムは、最新のセキュリティ基準に準拠していない可能性が高く、何らかのセキュリティリスクを抱えているケースが多く見られます。
レガシーシステムが抱える問題点
レガシーシステムが抱える大きな問題点として、経済産業省がDXレポートで述べている「2025年の崖」が挙げられます。
経済産業省は、2025年までにレガシーシステムから脱却してDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現しない場合、2025年以降で最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると指摘しているのです。
また、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が2016年に実施したアンケートに回答した企業のおよそ4割が、レガシーシステムによる現行ビジネスの維持・運営に予算の9割以上を割いています。
IT人材が不足する中、レガシーシステムの保守・運用に多くの予算や人的リソースを費やしている現状がうかがえるでしょう。
参考1:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
参考2:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2017」
レガシーシステムから脱却するためのポイント
レガシーシステムから脱却するには、以下のポイントを押さえた上で長期に渡って対応に取り組む必要があります。
①状況評価
まずは、現行システムの依存関係や統合ポイントを把握し、ビジネス上の影響を把握しましょう。システムの現状を正確に理解できれば、ビジネスへの影響を最小限に押さえた計画を立案できます。
②ビジネス要件の明確化
市場の動向を調査した上で、ビジネスの変化に対して柔軟に対応できる新システムを設計していきます。ここでは、レガシーシステムから移行する目的と新システムに求めるビジネス要件などについて、従業員からのフィードバックを取り入れながら明確にしていきましょう。
③技術選定
新システムを実現するために必要な技術を洗い出します。新システムで必要となるソフトウェアやハードウェア、クラウドサービスについて、最新のトレンドを踏まえて選定しましょう。
④リスク管理
システム移行に伴うリスクを明確にし、そのリスクを軽減する戦略を策定します。新システムへ移行する場合、特にデータ損失などのリスクが想定されます。他にも、サイバー攻撃に対するセキュリティ強化などの観点も含めるとよいでしょう。
⑤データ移行
新システムに移行する際は、企業にある重要なデータを安全に移行できるかがポイントとなります。
データを安全に移行する方法としては、データ変換やクレンジング、バックアップ戦略などの方法が挙げられます。これらの方法でデータを移行した後は、データの整合性をチェックし、移行後もデータが正確であることを確認することが重要です。
⑥プロジェクト関係者とのコミュニケーション・情報共有の場を設ける
新システムへ移行する際には、プロジェクトの進捗報告や関係者とのコミュニケーションの機会を設けることも非常に大切です。プロジェクトの透明性を保つことで、関係者のサポートや協力を得やすくなるでしょう。
⑦従業員へのトレーニング・サポート
従業員が新システムを効率的に利用するためには、従業員に対する操作方法のトレーニングや、必要に応じてサポートを提供するといった取り組みが必須です。トレーニングの内容は、従業員のスキルレベルや役割に合わせてカスタマイズすると良いでしょう。
⑧段階的な実装
組織が新システムに順応するためには、段階的に実装を進めていく必要があります。各段階での成功基準を設定し、必要に応じて計画を調整しながらシステムを実装していきましょう。
⑨評価・改善
新システムに移行した後も、システムのパフォーマンスを継続して監視し、必要に応じて改善作業を実施していきます。定期的にユーザーのフィードバックも取り入れ、ユーザーエクスペリエンスの向上を目指していきましょう。
レガシーシステムを新システムに更新・移行する際の課題と解決策
レガシーシステムから新システムへの移行は、現在の機能をどの程度維持するかによって、異なるアプローチで行う必要があります。ここでは、現在の機能を担保する必要がある場合・担保する必要がない場合に分けて詳しく解説していきます。
現在の機能を担保する必要がある場合
現在の機能を担保する必要がある場合、たとえば以下のような方法が有効です。
- レガシーシステムの機能を段階的に新システムに移行する
- 新旧のシステムを一定期間並行して運用する
「レガシーシステムの機能を段階的に新システムに移行する」方法では、一つの機能またはモジュールを移行し、問題がないことを確認してから次の機能を実装するという流れで行います。
この方法はセキュリティリスクが低く、移行中であってもビジネスの中断を最小限に抑えられる点がメリットになります。
一方、「新旧のシステムを一定期間並行して運用する」方法は、両システムで同じ操作を行い、結果を比較して新システムの正確性を確認するという流れになります。
移行する際の安全性は高くなりますが、リソースや労力がかかる点がデメリットです。
現在の機能を担保する必要がない場合
現在の機能を担保する必要がない場合では、以下のような方法でシステムを移行するケースが多くなりです。
- 特定の時点でレガシーシステムを停止し、新システムに完全に切り替える
- レガシーシステムの機能を新しい要件や技術に基づいて再構築する
「特定の時点でレガシーシステムを停止して、新システムに完全に切り替える」方法の場合、成功すれば一度の作業で移行が完了するため、移行期間を短縮できるというメリットがあります。
ただし、この方法ではセキュリティリスクも高くなるため、念入りな計画と準備が必要です。
一方、「レガシーシステムを新しい要件や技術に基づいて再構築する」方法は、既存のシステムを参考にしつつ、新しいビジネスのニーズに合わせてシステムを設計していく流れとなっています。
この方法は柔軟性が高く、最新の技術を取り入れられるのがメリットになりますが、時間とコストがかかる点がデメリットです。
データ移行の課題
レガシーシステムを新システムに更新・移行する際には、データ移行を安全かつ適切に行うことが重要です。
新システムに移行する際には、移行過程でデータの整合性を維持し、データの損失や破損が起きないようにする必要があります。
また、古いシステムに蓄積されたデータには、重複や不正確な情報が含まれている可能性もあるため、データを移行する前にこれらをクレンジングする作業も欠かせません。
データ移行を安全かつ効率的に行うためには、「モダナイゼーション」や「クラウドERP」などを活用するのがおすすめです。
レガシーシステムから脱却する方法
前述した通り、レガシーシステムから脱却するためには、以下に挙げる方法が有効です。
- モダナイゼーション
- クラウドERPの活用
下記でそれぞれの方法について詳しく解説していきます。
モダナイゼーション
モダナイゼーションとは、「Modernization(近代化)」を意味する言葉であり、システムにおいては老朽化したIT資産を新しいものに置き換えることを指します。
長年にわたって運用してきたソフトウェアやハードウェアのデータやプログラムを活かしつつ、現代の技術に合わせて刷新する方法です。
モダナイゼーションの手法としては、主に以下の3点があります。
- リライト
- リホスト
- リプレース
リライト
最新の機種やOSに適合するよう、新しいプログラミング言語でソースコードを書き換える手法です。
システム自体を新たに開発する必要はないため、コストや手間を軽減できます。
リホスト
メインフレームやオフィスコンピューターなどの古いシステム基盤を、オープンシステムなどの新しいシステム基盤に移し替える手法です。
オープンシステムに移し替えることで、外部のクラウドサービスなどとの連携もしやすくなります。
リプレース
老朽化したシステムを新しいパッケージソフトウェアなどに移行する手法です。
パッケージを用いることでスムーズなシステム移行を実現でき、業務プロセスを見直す機会にもなります。
上記のいずれの手法においても、IT資産の現状把握やモダナイゼーションの対象箇所の明確化が重要となります。
クラウドERPの活用
過去に社内で独自開発された基幹システムがそのままブラックボックス化し、レガシーシステムとなっているケースも考えられます。その場合、クラウドERPを導入してレガシーシステムからの脱却を目指す方法も効果的です。
そもそもERPとは「Enterprise Resources Planning(企業資源計画)」の略であり、企業経営において重要なヒト・モノ・カネ・情報などのリソースを最適化するための計画・考え方を指します。
また、ERPは企業資源の全体最適化を実現するためのシステムに対して使われる場合も多く、ERPを活用することで社内データの一元管理などが可能です。
ERPと基幹システムの主な違いは、企業全体最適の視点で情報の一元化や意思決定の迅速化を目指すか、販売・生産などの各基幹業務を効率化するかという点にあります。
ERPは企業全体のリソースを一元管理し、経営に活用することを目的としています。
クラウドERPはインターネット上でシステムを構築でき、短期間・低コストでの導入が可能です。レガシーシステムから脱却し、時代の変化に合わせた柔軟性の高いビジネスを実現する上で、クラウドERPは有効な選択肢であるといえるでしょう。
クラウドERPの詳細については、以下の関連記事も併せてご確認ください。
ERPを活用してモダナイゼーションに成功したケース
ここでは、ERPを活用してモダナイゼーションに成功したケースを紹介します。ビジネスマネジメント事業やエデュケーション事業などの事業を展開している「モトヤグループ」では、オンプレミス型の会計システムを利用しており、現金での経費精算の手間や管理口座数の多さが課題となっていました。そんな中、事業の拡大とリモートワークへの対応をきっかけに、「リプレース」を用いてクラウド型のERPシステムであるマネーフォワード クラウドを導入。
データ連携機能の活用によって業務の効率化を実現し、拠点数や業務量が増加しても対応できるバックオフィス体制を構築することができました。
参考:グループ9社の経理業務を6名で対応。システム移行で業務工数30%削減
まとめ
レガシーシステムとは、古い技術や仕組みによって長年運用が続けられた結果、老朽化やブラックボックス化が問題となっているシステムのことです。経済産業省は、レガシーシステムを放置したままDX化を実現しなかった場合、多大な経済損失につながると指摘しています。
いわゆる「2025年の崖」問題であり、企業は事業継続やコスト削減、業務効率化、DX推進などあらゆる面において、レガシーシステムからの脱却が課題となっているのです。
レガシーシステムから脱却するためには、既存のIT資産を活かしつつ最新のIT環境・技術に適合させるモダナイゼーションや、クラウドERPの活用などが有効な手段となるでしょう。
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