- 更新日 : 2024年7月12日
BCP対策とは?具体的な手順や策定時の重要ポイントを解説
日本は古くから、地震や台風などのさまざまな自然災害に見舞われてきました。また近年の不安定な世界情勢下では、国内外におけるテロの危険性が高まっています。
これらのような緊急事態が発生すると、企業経営は深刻なダメージを被ることになります。そのような事態に陥っても、事業を継続するための計画がBCPです。
本記事では、BCP策定のメリットや具体的な進め方について解説します。
目次
BCP(事業継続計画)とは
はじめに、BCP(事業継続計画)の概要について解説します。
BCPとは
BCPとはBusiness Continuity Planの略であり、日本語では「事業継続計画」という言葉に訳されます。
企業が緊急事態に陥った場合に、事業を継続または早期復旧するための計画がBCPです。なお、BCPが対象とする緊急事態には、自然災害だけではなく、テロ攻撃などの人為災害も含まれています。
BCPが注目されるようになった背景
BCPが注目を集めるようになったのは、2001年に発生した米国同時多発テロ事件がきっかけだといわれています。人類史上でも稀に見る惨劇となったこのテロ事件を受けて、欧米の大企業を中心にBCPが普及していきました。
一方で、日本では2000年代後半に内閣府(防災担当)および中小企業庁が中心となり、事業継続ガイドラインや中小企業BCP策定運用指針などを公開し、企業のBCPを支援してきた経緯があります。
その後、2011年に発生した東日本大震災により、日頃から緊急事態に備えることの重要性を多くの国民が再認識することとなり、BCP策定が進んだのです。
防災やBCMとの違い
BCPは前述のとおり「企業が緊急事態に陥ったときに事業継続や早期復旧するための計画」を指します。
一方で「防災」は、災害が発生した際の被害を軽減するための対策であり、人や建物などを対象としているのが特徴です。
また、BCMとは「Business Continuity Management」の略であり「事業継続マネジメント」と訳されます。BCPは計画そのものを指し、BCMは実際にBCPを管理・運用することを指します。なお、場合によっては「BCP」というワードに「BCM」を含むこともあります。
BCP策定の主な目的とメリット
ここでは、BCP策定の主な目的とメリットを解説します。
従業員と企業資産の保護
企業にとって最も重要なリソースは「従業員」だといえます。なぜならば、従業員がいなければ事業の継続が困難だからです。また、企業風土や文化といった無形資産は、企業で働く従業員自らが創り出すものです。
そのほか、建物や設備などの「企業資産」も事業を行うために重要な要素だといえます。BCPは、このような従業員や企業資産を保護することを目的としています。
BCPを策定することで、従業員が安心して働ける環境を作ることができます。その結果、従業員満足度をはじめ、採用活動などにもポジティブな影響を期待できるでしょう。
事業の継続
緊急事態が発生した際は、何をすればよいのか分からない状態に陥りやすいものです。
経営陣や従業員が判断を誤ってしまうと、経営に深刻なダメージが及ぶリスクが高くなります。特に初動の遅れは、被害を拡大させるケースが多いです。
BCPを策定すれば、緊急事態発生時であっても速やかかつ正確な判断・行動を行えるようになります。
企業価値の向上
株主視点でみると、BCPを策定していない企業は投資リスクが高いといえます。
なぜならば、緊急事態発生時に事業を継続できなくなるリスクが高いためです。
BCP策定に取り組むことで、企業価値を向上させることができます。また、取引先企業や一般消費者にも「安心・安全を重視する企業である」というイメージをもたらします。
これらの結果として、企業価値を向上させることができるでしょう。
BCP策定の具体的なステップ
BCPの策定は、次のステップで進めるのが効果的です。
# | ステップ | 概要 |
1 | 基本方針の立案 | 何のためにBCPを策定するのかを検討し、基本方針を決定します。 |
2 | リスクの特定 | 自社の従業員や資産にどのようなリスクがあるのかを特定します。 |
3 | 重要業務の特定 | 自社の業務の中で何を優先して対応すべきかを特定します。 |
4 | 継続計画の策定 | 特定したリスクや重要業務をもとに、継続計画の策定を行います。 |
5 | 事前対策の実施 | 事前対策を実施します。事前対策は主に「ソフトウェア対策」と「ハードウェア対策」の2つに分けられます。 |
6 | 訓練と教育 | 従業員への訓練や教育でBCPの定着を推進します。 |
7 | 定期的な見直しと改善 | BCPを定期的に見直し、改善を図ります。 |
BCP策定における重要ポイント
ここでは、BCP策定時に考慮すべき重要ポイントを解説します。
人的資源
BCPは、従業員の安全や健康を確保する計画となっていることが大前提です。
また、平常時および緊急時の連絡手段をはじめ、従業員が出社できない場合の代替措置なども検討しましょう。人的資源を保護するためには、避難訓練・初期救急・心肺蘇生法などの定期的な訓練実施も必要です。
施設・設備
緊急事態によって本社や拠点、さらには工場などが損壊してしまった場合、事業の継続が困難となります。そのため、各機能の一時的な移管などについても検討することが重要です。
また自社の損害はもちろん、仕入先などからの調達ができなくなるケースも想定し、代わりの手段を考えておきましょう。なお、建物だけではなく工場内の機械設備なども検討の対象です。常に最新の情報を把握しておき、緊急事態に備えましょう。
注意点としては、施設や設備の対策を全国同一とすべきではないという点が挙げられます。地震や台風などの自然災害については、地域特性を加味した対策を検討することが求められます。
資金
緊急事態が発生した場合のワーストケースを想定し、ある一定期間(1週間あるいは1ヶ月など)にわたり事業を中断した場合の損失を把握しましょう。
その上で、事業が中断しても耐えられるキャッシュフローがあれば、倒産などを回避できます。
また、各種保険の損害補償範囲、融資制度などについても把握しておくことが重要です。
情報
昨今では、さまざまな情報(データ)も重要な経営資源だといえます。
それらの情報に対するバックアップをはじめ、対象期間や保存先などについても適切に検討する必要があります。例えば、バックアップデータを本社内に保管している場合、本社が被災すると復旧できないリスクが高くなるためです。
また、業務で利用するITシステムなどが、万が一稼働しない場合の代替策なども考慮しておきましょう。
組織体制
緊急事態ではBCPに沿った判断・行動を行うことが原則ですが、場合によっては臨機応変な対応も求められます。場合によっては全体を統率する指揮者が不在となることもあるため、代行するための手段を整備しておく必要があるでしょう。
また、自社内だけではなく取引先や同業者との相互支援などについても取り決めておくことをおすすめします。
まとめ
日本で発生する自然災害の件数は世界でも突出しています。
また昨今の世界情勢も非常に不安定な状況が続いています。
これらの緊急事態に対して「自社だけは大丈夫」と軽視しがちですが、ひとたび影響が及ぶと企業に深刻なダメージをもたらします。
そのような事態に陥らないためにも、BCPの重要性を理解した上で、日頃から取り組むことが重要です。
なお、BCPを策定していない企業は、今回紹介した具体的なステップを参考にしながら、早期にBCP策定に取り組まれることをおすすめします。
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