- 作成日 : 2024年7月22日
業務改善助成金とは?メリットや申請プロセスに加えて成功事例を解説
業務改善助成金とは「最低賃金引き上げと生産性向上を目的とした設備投資」を行った中小企業や小規模事業者に対して、設備投資の一部を助成する制度です。
この制度を活用すれば、財務的なリスクを抑えながら生産性を向上できます。さらに賃上げも実現できるため、従業員のモチベーションアップも可能です。
本記事では、業務改善助成金の概要やメリットをはじめ、手続きの流れや成功事例などを解説します。
目次
業務改善助成金とは
はじめに、業務改善助成金の概要をはじめ、対象要件や助成額などについて解説します。
業務改善助成金とは
業務改善助成金とは、中小企業や小規模事業者を対象とした助成制度です。
「事業場内最低賃金を30円以上引き上げ」と「生産性向上を目的とした設備投資」の両方を行った場合に、その設備投資費用などが一部助成されます。
「事業場内最低賃金」とは、工場や営業所などの事業所において最も低い時間給を指します。また「生産性向上を目的とした設備投資」とは、各種機械設備やコンサルティングをはじめ、人材育成や従業員への教育などのことです。
なお、業務改善助成金は賃金アップや設備投資に関する計画を実施後に支給申請します。その後交付が決定すると、最大600万円の助成を受けることができます。
業務改善助成金の対象要件
業務改善助成金を受け取るためには「事業場内最低賃金」と「地域別最低賃金」の差額が50円以内に収まっている必要があります。地域別最低賃金と比較して、既に十分な賃金(差額51円以上)を支給している場合は対象外となる点に注意が必要です。
そのほか、下記のような「不交付事由」に該当する場合も助成対象外となります。
- 不当解雇
- 賃金引き下げ
- 労働関係法令の違反
- 補助金などの取り消し
- 暴力団員など反社会的勢力の経営への関与
業務改善助成金の支給条件
業務改善助成金は「生産性向上を目的とした設備投資などにかかった費用に助成率をかけた金額」と「助成上限額」のうち、安い方の金額となります。
令和6年度の助成上限額と助成率は次のとおりです。
引用元:厚生労働省「令和6年度業務改善助成金のご案内」
引用元:厚生労働省「令和6年度業務改善助成金のご案内」
例えば、以下のケースにおける業務改善助成金の額は次のとおりです。
- 事業場内最低賃金:850円
- 特例事業者に該当(申請事業場の事業場内最低賃金が950円未満である事業者)
- 賃金を引き上げる労働者数:12人
- 引き上げ後の賃金額:955円
- 設備投資費用:700万円
事業場内の最低賃金が850円のため、助成率は9/10(90%)となります。また、設備投資費用は700万円のため、設備投資費用×助成率は630万円です。
一方助成上限額を確認すると、賃金の上げ幅が105円であるためコース区分は「90円コース」となります。さらに賃金引き上げ対象の労働者は12名であるため、助成上限額は600万円となります。
この場合、より低い金額である「600万円」を、業務改善助成金として受け取ることが可能です。
業務改善助成金のメリット
ここでは、業務改善助成金のメリットについて解説します。
財務的なリスクを負うことなく生産性向上を実現できる
生産性向上を目的とした施策を実施する場合、通常は自費で取り組む必要があります。しかし、財務的に余裕がない中小企業や小規模事業者にとって、これらの費用は重荷となりがちです。
そこで業務改善助成金を活用すれば、設備投資費用の一部を助成金として受けることが可能となります。
このように、新たに財務的なリスクを負うことなくさまざまな設備投資に取り組める点が業務改善助成金のメリットだといえます。
従業員の満足度向上を期待できる
日本政府は持続的な賃上げの実現に向けてさまざまな方策に取り組んでいます。しかし、中小企業や小規模事業者の多くは賃上げの原資に悩んでいるのが現実です。
業務改善助成金は、生産性向上を目的とした設備投資が対象となるため、利益の増加を期待できます。この利益を賃上げの原資とすれば、従業員の満足度向上も期待できるでしょう。
業務改善助成金の申請プロセス
本章では、業務改善助成金の申請プロセスを解説します。
申請プロセス
業務改善助成金の申請プロセスは次のとおりです。
No | 担当 | プロセス | 詳細 |
---|---|---|---|
1 | 申請者 | 交付申請 | ・交付申請書・事業実施計画書などを作成 ・所轄の都道府県労働局に提出 ・厚生労働省のHPから必要書類をダウンロード可能 |
2 | 都道府県労働局 | 交付申請の審査 | ・申請された交付申請書および事業実施計画書を審査 ・交付申請から交付決定までには約1ヶ月程度を要する ・審査完了時には「交付決定通知」または「不交付決定通知」が届く |
3 | 申請者 | 事業の実施 | ・申請内容に沿って賃金の引上げ、設備導入、経費支払いなどを実施 ・事業計画を変更する場合は「事業計画変更申請書」、中止する場合は「事業廃止承認申請書」、事業完了が遅れる見込みの場合は「事業完了予定期日変更報告書」を労働局へ申請する必要がある |
4 | 申請者 | 事業実績報告 | ・申請者は労働局に事業実績報告書や助成金支給申請書を提出 ・申請期限は事業完了日から1ヶ月を経過する日、もしくは翌年度4月10日のうち、早い方となる点に注意が必要 |
5 | 都道府県労働局 | 事業実績報告の審査 | ・労働局は申請者から申請された事業実績報告書などを審査 ・適正と認められた場合、原則として20日以内に交付額が確定し、助成金が支払われる |
6 | 申請者 | 助成金の受領 | ・助成金を受領する |
申請の成功ポイントと注意点
業務改善助成金は、これまでに業務改善助成金を活用したことがある事業者も申請可能です。
しかし全体の予算枠があらかじめ決まっているため、申請期間内であっても募集を終了する可能性がある点には注意が必要です。また、交付決定前に設備の導入などを行ってしまうと助成対象外となってしまいます。
なお、業務改善助成金の交付要綱・要領は年々変更されているため、必ず最新の内容を確認しましょう。
業務改善助成金の成功事例
ここでは、業務改善助成金の成功事例として、厚生労働省が公表している業務改善助成金の活用例を紹介します。
デリバリー販売拡大に成功した飲食業
飲食業を営むA社は、コロナ禍により店内飲食が減少していたため、業務改善助成金を利用してコンサルティングを受けました。さらに、コンサルタントのアドバイスを元に受注システムや配達用バイクをはじめ、二層フライヤーなどの設備を導入しました。
その後、受注システム導入による電話応対時間や配達時間の削減に加え、調理時間の削減などの効果を確認。最終的に時間給の100円引き上げに成功したのです。
業務管理システム導入により経営情報の一元管理に成功した理容業
理容業のB社は、会計や顧客管理に加えて在庫管理なども手作業で行っていたため、業務に時間がかかるだけではなくミスも発生していました。
そこで、業務改善助成金を活用して理容店向けの業務管理システムを導入した結果、予約対応に関する時間が10%/日も削減できただけではなく、在庫管理や精算処理自体の作業も半減。最終的に時間給の61円アップを実現しました。
参考:厚生労働省「業務改善助成金の活用例「(P6、P13)」
まとめ
今回は業務改善助成金について解説しました。
業務改善助成金とは、中小企業や小規模事業者を対象とした助成制度です。この制度を活用すれば、新たな財務リスクを抑えて生産性向上の取り組みを行うことができます。
生産性に課題を感じている企業は、業務改善助成金の積極的な活用をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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