- 更新日 : 2024年7月12日
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインとは? ポイントとERPが担う役割をわかりやすく解説
経済産業省は、日本の民間企業がDXを推進するときに参考にするものとして、「DX推進ガイドライン」を策定し発表しています。DX推進ガイドラインには、DXを推進するときの経営者のあり方や、DX推進の基盤となるシステムはどのように構築するかなど、DXを推進するときに経営者が注意すべきポイントがまとめられています。ここでは、このDX推進ガイドラインの内容と、DX推進におけるERPの役割について解説します。
目次
ビジネスにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)には、さまざまな定義があります。ビジネスの現場では、DXとはデータとデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを創造し、企業の組織そのものを改革して競争優位性を保つことと考えられています。
ポイントは次の3点です。
- デジタル技術をベースに、顧客や社会のニーズに従って新しい価値を提供すること
- 業務やビジネスモデルをデジタル化するだけでなく、企業の組織や業務プロセス、企業文化まで変革していくこと
- それによって企業の競争力をつけ、優位性を確立すること
DXについては、以下の記事もご参照ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインとは
「DX推進ガイドライン」は、経済産業省が民間企業に向けて取りまとめたガイドラインで、正式には「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」といいます。
このDX推進ガイドラインは、DXを実現していくためのアプローチや行動について、認識を共有することを目的に策定されました。具体的な目的は、次の2点です。
- DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていくうえで経営者が抑えるべき事項を明確にすること
- 取締役会や株主が、DXの取り組みをチェックするうえで活用できるものとすること
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインの概要
DX推進ガイドラインは、企業がDX推進に活用できるように、大きく2つのテーマに沿って構成されています。
(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み
(2)DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築
この中には、具体的な進め方だけでなく、マインドセットなどの考え方や行動についても触れられています。DXを推進するには、強い意志と意欲が求められるのです。
DXレポートとは
DXについて、DX推進ガイドラインとともによく言及されるものに「DXレポート」があります。DXレポートは、経済産業省から発表されている、日本のDXについて分析したレポートで、次の3種類があります。
DXレポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|経済産業省
DXレポート2(中間取りまとめ)|経済産業省
DXレポート 2.1(DXレポート2追補版)|経済産業省
経営者はこれらのレポートも熟読したうえで、まずは自社の課題や現状を整理し把握することからスタートします。そのうえで、どのようにDXを進めていくべきか、DX推進ガイドラインを参考にDXに取り組んでいきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインの3つのポイント
DX推進ガイドラインの「(1) DX推進のための経営のあり方、仕組み」では、DXを推進するにあたり、経営者に求められているものとして、以下の3点について言及しています。
- 経営戦略・ビジョンの提示
- 経営トップのコミットメント
- DX 推進のための体制整備
それぞれ詳しくみていきましょう。
経営戦略・ビジョンの提示
経営者ははじめに、DXを通じて企業をどう成長させたいのかというビジョンや経営戦略を示す必要があります。
ビジョンや経営戦略とは、どの事業分野でどのような新たな価値を生み出すことを目指すのか、そのためにはどのようなビジネスモデルを構築すべきかなど、DXを推進する目的を明確化することが求められます。ここでいう「新たな価値」には、新ビジネスの創出、業務のスピードアップ、コスト削減などがあります。
このDX推進の柱となるビジョンや経営戦略が曖昧なままでは、DXの実現はうまくいきません。
経営トップのコミットメント
DXは、会社組織とビジネスモデルそのものを変革することになるため、推進するには経営トップ自らが強い意志と意欲を持って進めることが重要です。それによって社員の不安や抵抗をなくし、全社が一丸となってDXを推進することができるようになります。
社内の抵抗が大きい場合は、経営トップがリーダーシップを発揮し、DXを推し進める必要性を示さなくてはなりません。
DX推進のための体制整備
経営者は、各事業部門に対してDXを推進しやすい環境を整える必要があります。DXを推進しやすい環境とは、大きく分けて次の3点です。
- 積極的に挑戦するマインドセット
DXの実現に向けて、変化に抵抗なく、新たな挑戦を積極的に行っていくマインドセットが醸成されるような仕組みをつくります。 - DXを推進する専門部署の設置と推進・サポート体制
経営トップの提示する経営戦略やビジョンをもとに、DXを推進する専門の部署を設置し体制を整え、そこから各部門でのDX推進の取り組みをサポートしていきます。 - 人材の確保と育成
仕組みや体制づくりとともに、DXを推進していくにはやはり人が重要なカギになってきます。経営者が描いたビジョンや戦略を形にしていくチーム、人材が必要です。社内にDXに精通する人材がいなければ、必要な人材を外部から確保することもできますが、社内で育成することも、DXを実現するには大切なポイントになります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進におけるERPの役割
DXを進めるには、まず社内のデジタル化、IT化を進めなくてはなりません。そのために有効なのがERPの導入です。
ERP(Enterprise Resource Planning)は「経営資源計画」と言われ、会社の資源を一元管理して適切に管理・活用するための考え方のことです。現在は一般的に経営資源計画を実現するためのツール「統合基幹業務システム」のことを指します。
ERPは、企業に必要な基幹業務システムをすべて統合したもので、企業内の情報すべてを1つのデータベースで一元管理し、複数の基幹業務システムをシームレスに連携させることができます。そのため、ERPの導入は大きな業務効率化を実現可能です。また、ERPの導入には、リアルタイムな経営データの可視化、内部統制(ガバナンス)の強化など、いくつものメリットがあります。
ERPを導入するには、業務プロセスの見直しも必要です。そのため、ERPの導入はDXの前の「デジタライゼーション」の段階にあたると言えるでしょう。
ERPの導入には次のような効果があり、DXを進めるための準備を進めることができます。
業務の標準化
ERPを導入することで、データの形式や業務フローを統一することが可能です。これにより、作業の無駄や属人化をなくし、業務の標準化が実現できます。教育の面でも共通化と効率化につながり、業務全体のレベルアップになります。
業務の効率化
データの一元管理だけでなく、ERPの連携機能を活用することで、業務効率化に大きな効果があります。
ERPは各システムから統合されたデータベースにリアルタイムにアクセスすることができるため、データや修正箇所の転記など、人的ミスの発生しやすい業務を削減することができます。
また、ERPを導入する場合には、業務をシステムに合わせる必要があるため、業務フローの見直しや無駄な業務の廃止のきっかけとなり、その面においても業務効率化を実現することが可能です。
経営判断の高速化
ERPでは常に最新の正しいデータをリアルタイムに確認することができ、いつでも現状の把握や分析をすることができます。それにより、素早く正確な経営判断や意思決定を可能にします。
まとめ
DX推進ガイドラインは、経済産業省がDXをよりスムーズに推進できるよう、企業の経営者に向けてまとめたガイドラインです。DXの推進には、経営者のDXに対する理解と、DXにより目指すビジョンや経営戦略、そして積極的なコミットメントがなければなりません。DXをスムーズに進めるには、経営者から社員までの全社的な取り組みが必要になるからです。そのため、DXを推進するための組織づくりや人材育成などを積極的に進めていく必要があります。
DXを推進するためのシステム構築では、現在のシステムの評価や分析から始め、新しく構築するシステムの要件定義など、自社で積極的に関わっていく必要があります。これは、自社に最適化されたシステムを構築するためには不可欠な要素です。このように、経営者の強いリーダーシップのもと、トップから各部門まで全社一丸となって進めていくことで、DXをスムーズに進めることができるのです。
また、DXをスムーズに進めるための土台作りとして、業務プロセスの見直しや業務のデジタル化が必要になります。ERPはそれらの実現に有効なシステムのため、自社の規模や業務に合ったシステムを選定し、DX化を進めましょう。
よくある質問
ビジネスにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXとはデータとデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを創造し、企業の組織そのものを改革して競争優位性を保つことです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインとは?
具体的な進め方だけでなく、マインドセットなどの考え方や行動など、企業がDX推進に活用できるように作成されたガイドラインのことです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進におけるERPの役割
ERPを活用し、業務の標準化と効率化、経営判断の高速化を実現することで、DX推進の土台作りを行うことです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
お役立ち資料
関連記事
デファクトスタンダードとは?事例や最新のトレンドを解説
デファクトスタンダードとは、事実上の業界標準となった規格を指します。デファクトスタンダードは統一性と互換性を持ち、高い競争優位性を確立できる点がメリットです。 本記事ではデファクトスタンダードの概要や事例、メリット・デメリット、最新のトレン…
詳しくみるダイバーシティとは?意味やビジネスに生かすメリット、身近な例を解説
ダイバーシティとは、多様性を意味する単語です。性別や年齢、人種、国籍、趣味嗜好、障害の有無などさまざまな属性の人が、組織や集団に属している状態を意味します。 近年、企業の競争力や生産性を高めるために、政府は企業に「ダイバーシティ経営」を推進…
詳しくみる事業継続力強化計画とは?メリットや計画策定のステップ、注意点を解説!
事業継続力強化計画とは、災害などの発生により事業が停止してしまうことを防ぐ計画を指します。 同じ事業継続の計画であるBCPと比べると、経済産業大臣の認定を受けることでさまざまな支援を受けられる点や、対象となる企業規模に違いがあります。 本記…
詳しくみるHRBPとは?必要なスキルや導入方法を解説!
企業において人材育成や人材獲得など、人事分野の果たす役割は大きなものとなっています。労働力人口の減少が続く昨今では、人事分野の重要性は、以前より増しているといえるでしょう。 当記事では、HRBPについて解説します。注目される背景や導入方法、…
詳しくみるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 定義とERPの活用で実現できることをわかりやすく解説
ここ数年の間に、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。しかし、DXに着手しはじめたものの、“業務のデジタル化”で止まってしまい、本質的にDXを実現できている企業はあまり多くはありません。 ここでは、DXとは…
詳しくみるSDGsとは?17の目標や事例を簡単に解説!
SDGsとは、2015年に国連で採択され、2030年までの達成を目指す17の目標が掲げられた「持続可能な開発目標」のことです。貧困や教育、気候変動など広範な課題の解決に向け、持続可能な経済成長と「誰一人取り残さない」目標の達成を目指していま…
詳しくみる