- 作成日 : 2024年9月2日
リストラクチャリングとは?リストラとの違いやメリット・デメリット、成功のためのポイントを解説
リストラクチャリングは、企業価値向上や経営効率化を目的とした企業改革、組織再編、事業再構築などのことです。日本ではいわゆる「リストラ」としてネガティブなイメージを持つ人が多いですが、本来のリストラクチャリングは、人員削減や解雇などに留まりません。
本記事ではリストラクチャリングの概要やメリット・デメリットをはじめ、成功させるためのポイントや事例を紹介します。
目次
リストラクチャリングとは
はじめに、リストラクチャリングの概要や類似用語との違いについて解説します。
リストラクチャリングの概要
リストラクチャリング(restructuring)とは「再構築」や「構造改革」という意味を持つ言葉です。ビジネスにおいては、企業価値向上や経営の効率化などを目的として、企業改革や組織再編、さらには事業再構築などに取り組むことを指します。
リストラクチャリングの主な種類は、次のとおりです。
種類 | 概要 |
---|---|
財務リストラクチャリング | キャッシュフローの改善を目的とする方法。 |
事業リストラクチャリング | 選択と集中などにより事業構造を見直す方法。 |
業務リストラクチャリング | 売上増加や費用削減により利益アップを図る方法。 |
リストラ(人員削減)との違い
本来「リストラ」は「リストラクチャリング」の略語であるため、意味に違いはありません。しかし、バブル崩壊以降の日本では、人員削減や解雇を「リストラ」と呼んでいたため、現在もなおそのネガティブなイメージが定着しています。
人員削減や解雇などの「リストラ」も、本記事のテーマである「リストラクチャリング」の一部です。しかし、本来のリストラクチャリングは、単なる人員整理ではなく企業価値向上などが目的である点には注意しましょう。
リストラクチャリングのメリット
ここでは、リストラクチャリングのメリットについて解説します。
経営の効率化
企業規模が拡大してくると、異なる事業部で類似する業務を行うなど、ビジネス上の住み分けが曖昧になりがちです。また、どのような業務も時間の経過とともに不要な作業などが発生します。リストラクチャリングを行えば、各事業や業務の見直しにより経営効率化を実現可能です。
コスト削減
リストラクチャリングは、採算が取れない事業を整理することにより、これまで同事業へ投資していたさまざまなコスト(人件費など)を削減可能です。結果として、コスト削減(利益増大)を期待できます。
競争力の強化
どのような企業も経営リソースには限りがあります。経営で成果を出すためには、自社の経営リソースをどの事業に投資するかが重要です。リストラクチャリングに取り組めば、事業の選択と集中により主力事業や注力事業の競争力を高めることが可能となります。
リストラクチャリングのデメリット
ここでは、リストラクチャリングのデメリットについて解説します。
社員のモチベーションが低下する
リストラクチャリングは、事業統合・整理はもちろん、時には人員削減などを行うことがあります。一方で日本は、海外諸国と比較しても、人材流動性が低く安定志向が強いのが特徴です。
このような事情があるため、リストラクチャリングによってこれまで携わってきた事業や業務が変わることをネガティブにとらえる社員も少なくありません。結果として、社員のモチベーションが低下する恐れがある点はデメリットの1つです。
業績が低下する
リストラクチャリングは社内の体制や事業をドラスティックに変更します。しかし、即効性がある施策ばかりではなく、効果が出るまでに相応の時間を要する場合もあります。
また、リストラクチャリングによって必ず業績が向上するという保証もないのです。一例を挙げると、採算性に問題がある事業の整理を行う場合も、一時的ではあるものの売上に影響を及ぼします。
このようにリストラクチャリングによって、業績が低下するリスクがある点もデメリットだといえます。
新たな成長エンジンを失うリスクがある
PPM分析でいう「金のなる木」や「問題児」にポジショニングされる事業は、今後の成長が期待できる一方で、撤退も視野に入れる必要があります。しかし、撤退対象の選定を誤ると、将来性がある事業からの撤退あるいは縮小を余儀なくされがちです。
リストラクチャリングの対象とする事業の判断を誤ると、企業の新たな成長エンジンを失ってしまう点に注意が必要です。
リストラクチャリングを成功させるためのポイント
ここでは、リストラクチャリングを成功させるためのポイントを3つ解説します。
具体的な成長戦略を策定・共有する
リストラクチャリングは企業成長を目的に実行しますが、事業整理や人材削減などに取り組むだけでその後の成長戦略を描けていないケースも少なくありません。
そのため、事業整理や人員削減により圧縮した経営リソースをどの事業に投資するのかなど、成長戦略までをセットで考えることが重要です。また、それらの成長戦略やリストラクチャリングの必要性を社員へ共有・浸透させることも必要となります。
中長期的な視点を持つ
リストラクチャリングは、すぐに効果が出るものばかりではありません。短期的な視点だけでリストラクチャリングを進めてしまうと、将来性がある事業から撤退あるいは縮小してしまうリスクが高まります。
もちろん、短期的な視点も求められるのは事実ですが、それ以上に中長期的な視点でリストラクチャリングの計画を策定することが重要です。
外部の専門家を活用する
どのようなリストラクチャリングも、業務や事業が大きく変化する可能性があるため、自社の社員だけでリストラクチャリングを成功させるのは難しいケースもあります。
そのような時は、豊富な経験を持つリストラクチャリング専門のコンサルタントなどを活用しましょう。専門家であれば、外部からの客観的かつ貴重なアドバイスを行ってくれるはずです。
リストラクチャリングの事例
ここではリストラクチャリングの事例として、次の2つを紹介します。
富士フイルムホールディングス株式会社
かつて富士フイルムは、写真フィルムの開発・販売を主力事業としていましたが、2000年以降デジタル化の影響を受け、売上の6割、利益の2/3を失うことになりました。
しかし、同社は2004年から経営改革をスタートし、大規模なリストラクチャリングを行います。具体的には、医療機器、医薬品、化粧品の「ヘルスケア」、印刷用機材の「グラフィックシステム」など6つの事業へ経営リソースを集中的に投資したのです。さらには経営が厳しい中でも年間2,000億円以上を研究開発に投資してきました。
その結果、富士フイルムホールディングスは、経営改革スタートからわずか3年後の2007年には過去最高の売上高と利益額を創出することに成功したのです。
参考:株式会社長崎経済研究所「ながさき経済2014年5月号(寄稿:富士フイルムの経営改革「第二の創業」)」
ソニーグループ株式会社
2024年2月、ソニーグループはコア事業の1つである金融事業を部分的に分離し、上場させる計画を発表しました。
この計画により、銀行や保険などを事業とする金融子会社が、独自に資金調達を進められるようになったのです。さらに、同社グループの主力であるエンターテインメント事業やイメージセンサー事業へ経営リソースを集中投資する狙いもあるといわれています。
例えコア事業であっても、グループ全体の成長を目的としたリストラクチャリングを遂行したこの取り組みは、リストラクチャリングの好事例の1つです。
まとめ
今回は、リストラクチャリングについて解説しました。
リストラクチャリングとは、企業価値向上や経営効率化を目的とした企業改革、組織再編、事業再構築などのことです。
企業経営に課題を感じている方、更なる経営効率化や企業価値向上を目指している方は、リストラクチャリングの活用をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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