- 更新日 : 2024年8月16日
ERPで管理会計を高速化 | 管理会計の課題やERPを導入するメリットを解説
管理会計は企業の現状を経営層に伝えるもので、適切な意思決定や経営戦略の決定のためには不可欠な要素です。特にここ最近はビジネス環境における変化のサイクルが早く、これまで以上にスピードと正確性を持った経営判断が求められています。
まだExcelで管理会計を行なっている企業も多くありますが、スピード感と正確性の面で課題が多く、ERPの導入を検討する企業が増えています。ここでは、管理会計の概要と課題、ERPを導入するメリットについてご紹介します。
目次
管理会計とは
管理会計(Management accounting)とは、マネジメント、経営判断や意思決定を行うための会計です。主に経営者や役員など経営層に対して企業の現在の状況や予測などを報告し、経営層ではそれを業績評価や経営判断の材料にします。
具体的には、会計データをもとにさまざまな分析を行い、レポートを作成しますが、形式に決まりはありません。企業によって内容は大きく異なり、基本的には経営層の要望に従って、事業別、年度別、地域別などさまざまな角度から情報を分析し、提供します。
管理会計の目的
管理会計の目的は、経営層が迅速で適切な意思決定を行うため、情報を提供することです。経営層が意思決定を適切に行うためには、より正確な数字に基づいた分析が必要になると同時に迅速な意思決定のためには、リアルタイムな数字の把握が必要になります。
財務会計との違い
管理会計と財務会計とでは、報告の対象、法的な義務、目的の3つの点において大きく異なります。詳しくみていきましょう。
- 報告の対象
管理会計の対象は、社内の経営層なのに対し、財務会計の対象は、社外の第三者になります。主にステークホルダーですが、投資家、金融機関、税務署などさまざまな立場の人が含まれます。 - 法的な義務
管理会計は社内の資料のため、内容や形式に法的な規定はありません。管理会計を行うかどうかも、各企業の判断となります。財務会計による財務諸表の作成は、企業であれば必ず行う義務があります。内容や形式にも法的な規定があります。 - 目的
管理会計は、企業の現状を経営層に報告します。経営層はそれを経営戦略や意思決定の参考にします。財務会計は、ステークホルダーに対し企業の現状を報告することを目的としています。報告の対象が異なることから、それぞれの目的も異なってきます。財務会計については「ERPで財務会計を効率化 | 財務会計の課題やERPを導入するメリットを解説」も参考にしてください。
- 報告の対象
管理会計の主な業務
管理会計は各企業によって内容も方法も大きく異なりますが、ここでは主な業務についてごく一般的な例をご紹介します。
経営分析
企業の現状をデータから分析するものです。次のようなデータをもとに評価します。
- 業績評価(組織評価会計や事業評価会計など)
- 事業評価(企業の利益にどれだけ貢献したか)
- 会計情報の分析(財務会計のデータを部署別、プロジェクト別などさまざまな角度で分析したもの)
- シミュレーション(上のデータに基づいた予測)
これらの評価は、次のようなデータをもとにしています。
- 財務諸表(決算時の賃借対照表や損益計算書など)
- 調査報告(調査会社に依頼した調査のレポート)
- 特殊調査(監査法人や弁護士事務所に依頼した調査のレポート)
予実管理
最初に予算(目標となる売上金額)を設定し、実績の金額と比較します。実績が不足していれば、その原因を分析してその後の予算を管理し、目標達成を目指すものです。
予実管理は、期首から期末だけでなく、月次でも管理します。短いサイクルでPDCAを回すことで、不足があれば会期内に計画を調整して目標達成を目指します。予実管理は、経営分析の基本です。
資金繰り管理
日々の入出金を管理し、資金の過不足を調整することで、スムーズな企業運営を維持します。資金繰り管理をきちんと行わないと、売上があっても運転資金である現金が不足し、経営が悪化するという事態も起こり得るためです。
資金繰り管理では、現在の状態だけでなく今後のお金の出入りを予測して、今後の出金に対応したり、資金繰りの方針を決定したりします。
原価管理
製造にかかる原価に、適正な原価である「標準原価」を設定し、標準原価を実際にかかった原価と比較して分析します。実際原価が高ければ、その原因を分析して調整する必要があるでしょう。
また、品質を維持しながら標準原価を低減させることも目的です。しかし、原価を下げすぎると品質も悪化します。原価管理は、コストダウンや品質の維持に大きく関係するため、製造前に行う原価企画と、製造後に行う標準原価管理があります。
Excelでの管理会計の課題
これまでは、管理会計もExcelで行っている企業がたくさんありました。しかし、最近は管理会計にもより一層のスピードと正確さが要求されるようになり、Excelでは不十分になってきています。例えば、次のような課題があります。
リアルタイムに更新することができない
Excelでは、データ連携機能が弱く、リアルタイムにデータを更新することができないという課題があります。
- データ収集の時間
まず、すべての部署から必要なデータを収集するのに時間がかかります。期日通りに集まらない場合も多いからです。 - データ整理・加工の時間
集まったデータを使って分析する前に、データを整理したり、加工したりしなければなりません。そのプロセスは手作業で行うことが多いため、時間がかかります。 - データの陳腐化
さらに、集まったデータを整理・加工しているうちに、最新のデータではなくなっている可能性があります。その場合は、再度、新しいデータを集めなければなりません。
ヒューマンエラーが起こりやすい
Excelでは手作業が多いため、人的ミスが起こりやすいのも、大きな課題です。例えば、次のような部分はすべて手作業で行わなければなりません。
- データの収集、貼り付け、集計など
アナログ伝票に対応している部分は、すべて手作業で処理する必要があります。その部分は工数も増え、ミスが発生しやすくなります。 - トラブル対応
システムや収集したデータでエラーを発見した場合、発生箇所の確認、原因分析、修正などにも時間と工数がかかります。その間、データ入力や分析作業は止まってしまうこともよくあります。Excelで作業を行う場合は自動化できる部分が少ないため、現場での手作業が多く、人的ミスが発生しやすいのです。
ERPで管理会計業務の課題を解決
これらの課題は、管理会計にERP(Enterprise Resource Planning、統合基幹業務システム)を導入することで解決できます。ERPを導入することで次のようなメリットがあるからです。
- 管理会計作業の高速化
- 高度でわかりやすいデータ分析
- それによる経営判断の高速化、最適化
正しいデータをリアルタイムに連携
ERPを使えば、正しいデータをリアルタイムに利用することができます。これは、ERPがすべての基幹業務システムを統合しており、データは1つのデータベースで管理しているためです。そのため、次のようなメリットがあります。
- その都度、必要なデータを収集する必要がない
データはERPで一元管理されているため、担当部署から収集しなくても、すぐに共有・反映することができます。 - 常に最新の情報をリアルタイムに確認することができる
データはERPで一元管理されているため、担当部署で入力したデータがすぐに会計上でも反映され、利用することができます。 - 人的作業の削減、人的ミスの削減
データ連携はシステムが自動的に行うため、社員が作業する必要はありません。そのため正確なデータを利用でき、人的ミスを防ぐことができます。財務会計との不一致も起こりません。
グラフやレポートのカスタマイズが可能
ERPを使えば、グラフやレポートをカスタマイズし、見やすくてわかりやすいレポートを作成することができます。
- 財務会計をもとにして、さまざまな形式、切り口、軸での分析が可能です。ERPによっては、BI(Business Intelligence)と呼ばれるデータ分析機能が搭載されています。
- 統一されたフォーマットでグラフや表を作成し、比較しやすくなります。色や大きさをカスタマイズし、さらに見やすく体裁を整えることも可能です。
- データ分析やレポート作成は専門知識の必要な業務でしたが、ERPならシステムが自動化している部分も多く、操作も比較的容易です。それによって、データ入力や分析の属人化を防ぐことができます。
マネーフォワード クラウドで業務効率化を実現した事例
マネーフォワード クラウドでは、バックオフィス業務におけるさまざまな悩みを解決し、効率化をサポートします。
こちらでは、マネーフォワード クラウドを導入して業務効率化に成功した事例をご紹介します。
SMBC GMO PAYMENT株式会社様の事例
EC領域での決済代行サービスを提供するSMBC GMO PAYMENT株式会社様は、事業の規模拡大に伴い、業務効率化を目的としてマネーフォワード クラウド会計Plusとマネーフォワード クラウド経費を導入。
これにより、紙伝票の業務をほぼゼロにし、業務効率化とペーパーレス化を実現しました。リモートワークにも対応可能な業務体制を整えることができています。
導入前は紙の伝票を用いた非効率な業務フローであり、出社が必要でリモートワークに対応できない状況でした。
マネーフォワード クラウドを導入してからは、属人的になっていた業務が改善されたことで、ミスの発生回数が大幅に減少し、業務時間の約30%削減を実現しました。
業務効率化により、チーム内に余裕が生まれたことで、マニュアルの作成・更新など本来やるべき業務に時間を使えるようになりました。
追われるように業務をしていた導入前と比べ、現在はお互いに積極的にサポートしあうチーム体制を実現しています。
今後は、さらなる業務効率化を目指し、会社の成長に耐えうるバックオフィス体制の構築を進めていく予定です。
まとめ
経済のグローバル化やIT化など、ビジネス環境が変化するにつれて、経営判断にも以前よりスピードと正確さが要求されるようになってきました。しかし、現在も多くの企業で管理会計に利用されているExcelではスピードと正確さに課題があり、管理会計を高速化してより強力にするためにERPの導入を検討する企業が増えています。
ERPの導入には費用がかかりますが、管理会計における課題を解決するだけでなく、バックオフィス業務全体の業務効率化やDX推進の効果が期待できます。
自社に合ったERPを選定し、ビジネス環境の変化に対応していきましょう。
よくある質問
管理会計とはなにか?
企業内部で、経営判断に必要な情報を経営層に提供するための会計です。
Excelでの管理会計の課題とは?
リアルタイムなデータを利用できない、手作業が多くて人的ミスが起こりやすいなどの課題があります。
ERPでの管理会計のメリットは?
リアルタイムに正確なデータを利用し、作業の多くを自動化すること、わかりやすいグラフやレポートを作成できるなどのメリットがあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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