• 更新日 : 2024年7月16日

HRBPとは?必要なスキルや導入方法を解説!

企業において人材育成や人材獲得など、人事分野の果たす役割は大きなものとなっています。労働力人口の減少が続く昨今では、人事分野の重要性は、以前より増しているといえるでしょう。

当記事では、HRBPについて解説します。注目される背景や導入方法、注意点などを理解して、適切なHRBP導入の参考にしてください。

HRBPとは?

HRBPは、企業における経営者や、人事部門責任者のビジネスパートナーとして、組織の開発や成長を促すためのサポートを行う戦略人事のプロフェッショナルを指します。従来の人事や労務管理とは異なった役割を持っています。

HRビジネスパートナーの略

HRBPは、「Human Resource Business Partner」の頭文字を取った言葉で、HRビジネスパートナーの略語です。以降の当記事では、HRBPと表記して解説を行います。

HRBPの理論的背景

HRBPは、アメリカミシガン大学のウルリッチ教授が提唱した概念です。教授は、著書の中で、「人事を単なる事務処理係と捉えず、経営者の意思決定に影響を与えるパートナーであるべき」としています。教授の提唱する人事として、果たすべき役割は、以下の3つです。

  • 人事において制度設計を担うCoE (Center of Excellence)
  • CoEの設計した制度によって、現場の課題解決を行うHRBP(Human Resource Business Partner)
  • 定型業務(給与計算等)を行うHR Ops(HR Operation Services)

教授の提唱する人事の役割のひとつが、HRBPとなります。HRBPは、組織における人事機能のひとつとして定義され、経営者の視点から人や組織に働きかける戦略人事を行い、成長を促す役割を持っています。

従来の人事との違い

従来型の人事は、経営者から独立した立場で、企業内における仕組みや制度の整備を行い、組織を効率良く管理運用することが主たる目的です。つまり、経営からは切り離された存在となります。しかし、HRBPは、経営者や事業責任者の視点で目標達成や業績向上のために、能動的に戦略人事を実行します。そのため、両者は、経営と連動しているか否かの点で異なった概念です。

部門人事との違い

HRBPを部門人事と呼ぶ場合もありますが、両者は異なった概念です。部門人事は、事業ごとに異なる人事制度を整備しますが、あくまで従来型の人事と同様に管理運用をその主たる役割としています。対するHRBPは、目標達成や業績向上のために能動的な活動を行うため、両者の果たす役割は異なったものとなります。

労務管理との違い

労務管理は、従業員が十分な成果を上げられるように、職場環境を整備する役割を担っています。適切な勤怠管理や、正確な給与計算などを行うことで、従業員のパフォーマンスの維持向上や、モチベーションアップにつなげています。HRBPにも同様の業務が含まれる場合がありますが、それはあくまでも目標達成などの経営戦略達成のために行われます。

HRBPが注目されている背景

近年HRBPを導入する企業が増加しています。また、人事分野の話題として、HRBPが取り上げられることも多くなっています。では、どのような理由から、HRBPは注目を集めているのでしょうか。

コロナの影響による働き方の多様化

コロナ禍によって、日本のみならず世界中で働き方が大きく変容しました。出社を要しないテレワークやリモートワークの普及は、その最たるものでしょう。

しかし、変化に対応できた企業ばかりではありません。テレワーク等の新しい制度の導入が間に合わない、もしくは適切に導入できないことによって、大きく業績を下げた企業も見られます。

コロナ禍などの社会情勢の変動を受けて、現在のビジネス環境は目まぐるしく変化し続けています。そのような状況では、対応の遅れが致命的な損失につながる可能性もあるでしょう。そのため、能動的に活動し、先を読んだ戦略人事を実行可能とするHRBPに注目が集まる結果となっています。

人材獲得競争が激しくなっている

現在の日本は、少子高齢化の進展により、労働力人口の減少傾向が続いています。そのような状況を受けて、企業業種を問わず、人材獲得競争が激しさを増しています。また、DXの進展により、変化に対応できる優秀な人材を確保する必要性が向上していることも、競争激化の要因です。

労働力人口の減少やDXの進展による人材獲得競争の激化への対応は、従来型の人事では困難な部分もあります。そのため、経営と連動し、経営者の視点から人事の課題解決を図るHRBPの必要性が増しているのが現状です。

HRBPに必要なスキル

HRBPを効果的に導入するためには、必要とされるスキルを知ることが重要です。では、HRBPには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。

クリティカルシンキング

物事を批判的に捉えて、客観的な判断を下す思考法を「クリティカルシンキング」と呼びます。HRBPには、このクリティカルシンキングが必要とされています。

HRBPは、経営者の視点から課題解決をサポートします。これが従来の人事との違いですが、経営者はイエスマンであってはいけません。下から上がってくる報告を鵜呑みにせず、変化するビジネス環境を適切に俯瞰し、客観的な理由から判断を下すことが求められます。そのため、経営者の視点を持つ必要のあるHRBPも当然、同様のクリティカルシンキングを持つことが求められるでしょう。

経営の知識

HRBPは、従来型の人事と異なり、経営戦略と連動していることが特徴です。また、経営者の視点を持つことも求められるため、経営者同様に経営知識やスキルも必須となります。HRBPには、最新の社会情勢やビジネス動向、市場の変化などを読み解き、業績向上につなげる経営知識やスキルが求められることになります。必要となる経営知識やスキルを持たないHRBPでは、効果的な戦略人事も望めないでしょう。

コミュニケーションスキル

企業で働くうえでは、業種職種を問わず一定のコミュニケーションスキルが求められます。これは、HRBPであっても変わることはありません。

しかし、HRBPは、経営者や事業責任者とだけ関われば良いわけではありません。現場で働く従業員の実情を知り、生きた意見を得ることが効果的な経営者へのフィードバックにつながります。そのため、HRBPには経営者や事業責任者だけでなく、現場の従業員とも良好なコミュニケーションを取ることが求められます。

HRBPを導入する方法

HRBPの必要性が理解できても、闇雲な導入では望んだ効果を発揮できないでしょう。本項では、HRBPの導入方法について解説します。

① 人事戦略および方向性を洗い出す

HRBPの導入は、目的ではなく手段です。そのため、目的となってしまわないように、自社における課題の洗い出しを行って、人事戦略や進むべき方向性を決定しなければなりません。明確な方向性を定め、将来を考えた人事戦略が決定できなければ、HRBPを導入しても効果を発揮することができません。採用のみならず、育成まで考えた戦略の立案が必要となるでしょう。

➁ 体制の構築・メンバーの招集

必要となる人事戦略および方向性が決定したのであれば、戦略を実行可能とする社内体制の構築と、実行するメンバーの選定が必要となります。既存の人事部門制度のままで運用可能なのか、新たにHRBPを追加する必要があるのかなどを判断することが必要です。また、実行するメンバーには、先に述べた必要となるスキルを持った人材を充てましょう。

③ 試験的な運用を行う

体制構築とメンバーの選定が済んだからといって、いきなり本格的な運用を行うのは、避けるべきでしょう。いきなり「HRBPを設置したから活用するように」と部門に通達しても、なかなか相談には至らないでしょう。効率的に現場の意見を吸い上げ、フィードバックを行うためには、信頼関係の構築が必要となります。そのため、まずは積極的にHRBP側から働きかけ、課題の解決に努めましょう。

④ 振り返り・課題と改善点を洗い出す

試験的な運用を続けることで、徐々に解決すべき課題や改善点が見えてくるはずです。その後は、課題の解決や改善を行っていきましょう。また、ただ解決して終わりではなく、しっかりと振り返りを行うことも重要です。振り返りを行うことで、新たな課題の発見や改善点の洗い出しにも役立つでしょう。

HRBPを導入する際の注意点

HRBPの導入を効果的にするためには、守らなくてはならない注意点が存在します。注意点を守らずに、導入しても最大限の効果は発揮できません。

本社と対等な裁量を与える

HRBPの導入の際には、本社人事と対等な裁量権や立場を付与することが必要です。本社の定めた制度をただ管理運用するのでは、従来型の人事と何ら変わることはないでしょう。HRBPには、本社に対して現場の状況を踏まえたうえでの提案や、フィードバックを行うことが求められるため、本社から独立した存在でなければなりません。

事業部門との連携は密に行う

HRBPは、経営戦略と連動した戦略人事を行います。経営と切り離された従来型の人事とは異なり、事業部門などの他部門とも関わることが必要です。そのため、他部門との密な連携も必要となり、信頼関係の構築が重要となるでしょう。

CoEの創設も検討する

CoE(Center of Excellence)は、組織において継続的な事業計画を実行する専門的研究機関を指します。CoEは、人事に関した施策の立案を担っており、HRBPと連携することで、より効果を発揮できるでしょう。ただし、企業内の職種を理解していないCoEでは、HRBPに誤った指示を出す可能性もあるため、注意が必要です。

HRBPの導入事例

HRBPは、すでに多くの企業で導入されています。一例として、コミュニケーションツールで有名なLINE株式会社の事例を紹介します。

LINE株式会社では、2018年からHRBPを導入し、組織として運用を開始しています。同社におけるHRBPチームは、人と組織の課題解決を行うための企画立案や、マネジメントが主な役割です。

同社では、事業分野ごとに1〜2名のHRBPが割り当てられています。幅広い事業を展開する同社においては、課題に対して多面的な情報収集と分析が求められ、経営戦略と連携した施策の立案が必要です。

事業に割り当てられたHRBPは、事業に合わせた課題を見つけ、有効な解決策の提示を行っています。その結果として、課題解決の先にあるニーズの分析まで可能となり、HRBPの設置は同社の成果につながっています。

参考:
人事部門のあらゆる課題に取り組むHRビジネスパートナーチームとは? | OnLINE(オンライン)
LINEの「HRBP(HRビジネスパートナー)」が事業成長のために行っていること|ダイヤモンド・オンライン

HRBPの活用により自社の成長を

経営者や事業責任者の視点からサポートを行うHRBPは、従来型の人事とは異なった存在です。効果的に導入できれば、目まぐるしく変化を続ける現代のビジネス環境においても、有効な人事戦略の立案が可能となるでしょう。


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