• 更新日 : 2025年1月28日

ERPとブロックチェーンの連携がビジネスにもたらすメリットや事例を紹介

ブロックチェーンを活用したサービスといえば、暗号資産が広く知られています。しかし、近年ではそれ以外の分野でもさまざまな活用事例が増えています。
その中の1つが、ERPとの連携です。ERPとブロックチェーンを組み合わせることで、ビジネスの信頼性や効率性向上だけでなく、セキュリティやコンプライアンスの強化も期待できます。
本記事では、ERPとブロックチェーンの連携がもたらすメリットを中心に、具体例や導入時の注意点について解説します。

ERPとブロックチェーンの概要

はじめに、ERPとブロックチェーンの概要について解説します。

ERPとは

ERPとは「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略であり、日本語では「企業資源計画」と訳される言葉です。

ERPとは本来、その言葉通り、企業の経営資源を有効に活用するという考え方や手法を指します。しかし最近では、会計・人事・生産・物流・販売など、企業の幅広い業務を一元的に管理するシステムを「ERP」と呼びます。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは「分散型台帳技術」と呼ばれる先端技術の1つです。

このブロックチェーンは、データをブロックと呼ばれる単位に分割し、そのブロックを鎖(チェーン)状につないで管理します。改ざんに強く、安全かつ透明性が高い取引やデータの管理を実現できる点が特徴です。

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、基盤にブロックチェーンを採用することにより、新たな価値を創出しています。

ERPとブロックチェーンの連携がもたらすメリット

ERPとブロックチェーンという組み合わせに、あまり関連性を感じない人も多いはずです。しかし両者が連携することによって、さまざまな効果を期待できます。
そこで本章では、ERPとブロックチェーンの連携がビジネスにもたらすメリットについて解説します。

データの信頼性および透明性の向上

ブロックチェーンが持つ特徴の1つに「改ざんに対する耐性」が挙げられます。
ブロックチェーン上に記録されたデータは、取引記録の不正な書き換えや削除ができないようになっている点が特徴です。

ERPのデータ保管にブロックチェーンの技術を活用すれば、さまざまな取引などの情報を分散台帳上で管理することになるため、簡単に改ざんできない状態となります。さらに、ERPとブロックチェーンの連携により、各データに対して「いつ」「誰が」「どのような変更を行ったか」の記録を残せるため、問題が発生した場合も原因の追跡が可能です。

結果としてERPが管理するデータの信頼性が担保され、透明性が高い経営実現に寄与します。

サプライチェーン管理の効率化

サプライチェーンには複数の企業や部門が関与しますが、それぞれの企業や部門で契約を行うことは大きな負担を伴います。

しかし、ブロックチェーンを活用した「スマートコントラクト」という技術を利用すれば、紙ベースや人間を介した契約を行う必要がなく、任意の条件を満たせば自動的に契約の締結が可能です。さらに、すべての取引や製品情報などの一元管理が可能なため、ステークホルダー全員が同一情報をリアルタイムに確認できます。

結果として、サプライチェーン管理の効率化が可能になります。

セキュリティやコンプライアンスの強化

前述のとおり、ブロックチェーンは改ざんに強いという特徴を有しています。また分散型管理を行っているため、あるコンピュータが攻撃されたとしても被害を最小限に抑えることが可能です。さらに「公開鍵暗号方式」という暗号化手法でデータを保護することにより、情報の真正性や機密性を確保できます。

これにより、ERPシステム上でやり取りされるデータの信頼性が高まるだけでなく、不正や改ざんを発生させない環境を実現できるため、業務プロセス全体の透明性が向上します。そのほか、すべてのデータに対する変更が追跡可能になるため、監査対応や内部統制を容易に行えるようになります。
その結果、セキュリティやコンプライアンスの強化につながる点がメリットです。

ERPとブロックチェーンの連携に関する具体例

本章では、ERPとブロックチェーンの連携に関する具体例について解説します。

スマートコントラクトの実現

業界特有のルールや商習慣は国や企業ごとに異なるため、企業間のシステム連携には多くの課題があります。こうした課題を解消するために注目されているのが、ブロックチェーン技術を基盤とした「スマートコントラクト」です。
スマートコントラクトとは、あらかじめ定義された条件が満たされた場合に自動的に契約を実行する仕組みを指します。

スマートコントラクトをERPシステムに統合することで、受発注や入金処理、請求書発行などの契約関連業務を効率化でき、大幅なコスト削減が可能です。
またスマートコントラクトを活用すれば、契約内容が透明かつ改ざん不可能な形で記録されるため、信頼性の高い取引を実現できます。
さらに、ブロックチェーンを活用した暗号資産による決済を導入すれば、国際取引において為替変動リスクを回避することもできます。

サプライチェーン管理

在庫管理にブロックチェーンを活用すれば、自社はもちろん、荷主や物流業者なども一元的に管理された在庫情報をリアルタイムに共有できます。

最近では食品の産地偽装などが後を絶ちませんが、改ざんが難しいブロックチェーンを用いればさまざまな情報の追跡が容易に可能となるため、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。

監査業務や内部統制の効率化

トランザクションデータに関するCRUD処理(登録・参照・更新・削除)のログをブロックチェーンで管理すれば、改ざんができない確実な監査証跡として利用できます。これにより、監査の効率化が可能です。

同様に企業の取引も完全に記録されるため、不正が発生しにくい環境はもちろん、透明性を高めることができます。このように、統制が効いた安定的な経営を推進できる点もERPとブロックチェーンの代表的な連携事例の1つです。

ERPとブロックチェーン連携時の注意点

本章では、ERPとブロックチェーン連携時の注意点について解説します。

システム間の連携性と既存システムへの影響

複数のシステムを利用している場合、システム間の連携が可能であるかは確認が必要です。

ERPがブロックチェーンを活用した機能を備えていても、ERPと連携する別システムがブロックチェーンに関する機能を持たずERPと連携する別システムとブロックチェーンが連携できないケースがあります。
またERPとブロックチェーンの連携により、既存の業務プロセスに影響が発生したり、負荷が増大するリスクがある点にも注意しなければなりません。

連携をスムーズに進めるためには、影響の事前検討はもちろん、現場で働く社員へのヒアリングやトレーニングの実施が有効です。

ブロックチェーン導入に伴うコスト

ERPとブロックチェーンの連携には、初期投資が必要です。特にブロックチェーンのインフラ構築やシステム統合に関する開発をはじめ、社員へのトレーニングもコストがかかります。

企業の予算は限られているため、ERPとブロックチェーンの導入・連携によって実現したい目的を整理し、費用対効果が十分かを検討することが重要です。また、導入後に発生するERPとブロックチェーン基盤双方の保守や運用コストも考慮する必要があります。

あらかじめサポートや保守の内容および費用を踏まえた上で、その範囲や必要性を検討しましょう。

まとめ

企業はERPとブロックチェーンの連携により、データの信頼性および透明性向上やサプライチェーン管理効率化のほか、セキュリティやコンプライアンスの強化を実現可能です。
ただし、あらかじめシステム間の連携可否や既存システムへの影響を確認しておくことが重要です。
また、ERPに加えてブロックチェーンに関連するコストも発生するため、費用対効果を考慮した上で連携要否を判断することをおすすめします。


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