- 作成日 : 2024年10月15日
中期経営計画とは?策定するメリットや手順、ポイントを解説
企業にとって経営理念が重要であることはいうまでもありませんが、それだけで経営が成り立つわけではありません。経営目標を設定し、その実現方法を定めた経営計画の策定が必要であり、その中でも「中期経営計画」は特に重要です。中期経営計画とは、3〜5年後に向けて設定する目標数値と、それを実現するための施策をまとめたものです。
そこで今回の記事では、「中期経営計画」の目的やメリット、作成方法などについて詳しく解説していきます。
中期経営計画とは?
中期経営計画とは、企業が3〜5年後に到達すべき目標を具体的な数値で定めた上で、現状を把握するために作成される計画のことです。目標は売上や会員数などの具体的な数値で設定し、それに向けた施策も策定します。
経営計画としては、この他により短期的な目標を設定する短期経営計画と、10年程度の長期的な目標を設定する長期経営計画もありますが、それぞれ異なる目的があります。
中期経営計画は、長期経営計画よりも具体的であり、短期経営計画よりも広い視野で目標が設定されます。
重要なのは、中期経営計画の達成に向けて短期経営計画を設定することと、それぞれの計画が連携していることです。
中期経営計画を策定する3つのメリット
企業経営における目標達成のためには、中期経営計画の策定が不可欠です。ここでは、中期経営計画を立てることで得られる主なメリットを、各項目に分けてご紹介します。
メリット1:現状を理解し今後の行動計画を立てやすくなる
長期経営計画と短期経営計画の間に中期経営計画を設けることで、計画が段階的に整理されます。長期経営計画は主にビジョンを示し抽象的になりやすい一方で、短期経営計画はアクションプランに近く、長期目標との間にズレが生じることがあります。
そのギャップを埋めるのが中期経営計画の役割です。
メリット2:社員との目標の共有がスムーズになりモチベーションが向上する
中期経営計画を策定することで、経営層と社員の間の目標に対する認識のギャップを解消することができます。中期経営計画には企業のビジョンなどが示されているため、社員と、企業の目的や進むべき方向性を簡単に共有することが可能です。
メリット3:融資を受ける際などに外部からの信頼性が高まる
中期経営計画を策定することで、社外からの信頼性が高まることが期待されます。中期経営計画には、企業のビジョンや戦略、目標、そして具体的なアクションプランが明確に記載されています。
企業の進むべき方向性が明確であれば、銀行などの金融機関からの信頼を得やすくなります。
中期経営計画を策定するための5つのプロセス
本章では中期経営計画の作成プロセスに焦点を当て、具体的に解説します。
プロセス1.経営理念を明確にする
中期経営計画を策定する際、最初に行うべきことは、経営理念の明確化です。
経営理念は、企業の運営における基本的な考え方や社会的な意義を示すもので、次の3つの要素で構成されています。
- ミッション:企業が果たすべき役割や使命を示すもの。企業活動を通じて社会にどのように貢献するかを表す
- ビジョン:企業が目指す目標や将来像を示すもの。「3年後に売上を2倍にする」などの具体的な数値を含むことが多い
- バリュー:企業の価値観や信念を表すもの。「お客様を最優先にサービスを提供する」といった社員の行動指針を示す
プロセス2.自社の置かれた環境を把握する
経営理念で示された方針を具体的な業務に反映させるためには、自社を取り巻く環境を精査することが不可欠です。自社の強みや弱み、市場におけるポジションなどを客観的に分析する必要があります。
プロセス3.経営戦略を策定する
経営理念を明確にし、自社の外部環境を分析した後は、経営戦略の策定が必要です。
経営戦略を立てる際のポイントは、自社が直面している課題に対して、どのようなアプローチで対応していくかを示すことです。具体的には、事業展開の方向性やどの事業に注力するかといったビジネスドメインを設定します。
さらに、経営戦略の策定には、本業の再評価が含まれます。その上でSWOT分析(自社の外部環境と内部環境を、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素に分けて要因を分析することで、既存事業の改善点や成長すべきポイント、新規事業の潜在的リスクなどを見つけるためのフレームワーク)を実施し、自社がターゲットとする市場に向けてどのようなアプローチが有効かを検討します。
プロセス4.課題解決のための行動計画と数値目標を設定する
経営戦略が明確になったら、具体的な数値目標を社員に提示します。ビジョンの実現に向けて必要な資源を逆算しながら、適切な数値目標を設定することが効果的です。
プロセス5.進捗をチェックする
中期経営計画を実行に移すためには、定期的な進捗確認が不可欠です。この進捗確認には、主に以下の3つのステップが含まれます。
- 単年度計画の詳細化:中期経営計画を年度単位からさらに細分化し、月次ベースでの計画を策定します。月次予算と実績を比較して、差異が生じた場合にはその原因を分析し、改善策を講じる必要があります。
- PDCA会議の実施:中期経営計画は全社的なプロジェクトであるため、月次でPDCA会議を開催して従業員の意識を高め、計画の進捗を共有します。
- 業績評価:計画の達成度に応じて部門ごとの業績を評価し、計画の実行状況に応じた評価を行います。これは全体のモチベーションを向上させ、計画を推進するための後押しとなります。
中期経営計画策定時のポイント
中期経営計画は、策定するだけでは効果がありません。実際の経営活動に取り入れて活用することが重要です。計画を策定した後は、社内にその内容をしっかりと浸透させ、計画が単なる紙上のもので終わらないよう、継続的な努力が求められます。
具体的かつ測定可能な目標を設定する
中期経営計画は、現状と目標とのギャップを常に振り返ることで、現状の改善に役立てることができるツールです。そのため、目標はできるだけ具体的に数値化されている必要があります。多くの企業は、中期経営計画において売上高、営業利益、営業利益率などの数値目標を設定しています。
さらに、新たな市場での顧客獲得を目指す場合は新規顧客の獲得数、海外展開を計画している場合は地域別の売上高などを目標として設定することも考えられます。
モニタリングの実施スケジュールを事前に決める
前述のとおり、中期経営計画には定期的なモニタリングが欠かせません。モニタリングの対象には、記帳や月次の労働時間などのすぐに把握できる情報も含まれます。どの部門で、どのタイミングで必要なデータが得られるかを把握しておき、適切なタイミングで定期的にモニタリングを行うための会議やミーティングの機会を確保することが重要です。
計画と実績に差異が生じた際の対応策を準備する
中期経営計画は、策定後、計画通りに進まないことがしばしばあります。しかし挽回の可能性がある場合には、対応策を講じてギャップを解消することが可能です。もし挽回が難しい場合は、中期経営計画自体を再策定する必要があります。
計画のズレを早期に把握できるよう、モニタリングを徹底し、ズレが発生した場合の対策を事前に考えておくことが重要です。
まとめ
中期経営計画は、企業が3〜5年後に達成すべき目標を具体的な数値で設定し、それを実現するための詳細なアクションプランを含んでいます。
さらに、中期経営計画を外部に公開することで、取引先や仕入先などからの信頼を得ることができます。また、助成金や融資を受ける際には、審査を円滑に進めるための資料としても有効です。
グローバル化やIT技術の発展、少子化、新型コロナウイルスの蔓延など、外部環境が急速に変化する現代においては、中期経営計画を基盤にすることで、多様な状況に柔軟に対応することが可能となります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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