- 更新日 : 2024年7月16日
プロボノとは?ボランティアとの違い・メリットを解説!
プロボノとは、職業上のスキル・経験を活かして社会的または公共的な目的のために取り組む社会貢献活動のことです。近年では、東日本大震災の復興活動などをきっかけに、その取り組みが広く認知され、企業としても自社社員のプロボノ活動を支援する動きが見られます。ここでは、プロボノ活動の意味やメリット、事例について紹介します。
目次
プロボノとは?
プロボノとは、「公共善のために」という意味のラテン語「Pro Bono Publico」からきている言葉で、職業上のスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動を意味します。
近年では、職種を限らずビジネスで得たさまざまな経験やスキルを、社会貢献活動に活かすものとしてプロボノが広く知られるようになりました。
プロボノは、社会課題解決の推進力となる活動であるだけではなく、個人のライフキャリアの形成や企業のサステナビリティとも関わる重要なキーワードです。
プロボノとボランティアとの違い
一般的に、報酬を伴わない自発的な社会貢献活動全般をボランティアと呼びます。プロボノも、社会貢献活動に取り組むものですからボランティアの一種と考えられます。一般的なボランティアとプロボノの大きな違いは、「職業上のスキルや経験」との関連性です。
たとえば、プログラマーがスキルを活かし、災害防災アプリを無償で開発する取り組みはプロボノに該当します。プロボノは必ずしも専門性を必要とするものではありませんが、本業で培った経験やスキルを活かし、社会課題の解決に取り組んでいるという点がポイントです。
プロボノ活動の種類
プロボノにはさまざまな種類の活動があります。ここでは、代表的なプロボノの活動をご紹介します。
情報の発信・メディア
IT関係の知見を活かした活動は、プロボノで多く見られます。エンジニアやプログラマーが、スキルを活用しWEBサイトを構築することや、デザイナーがパンフレット等を作成し広報活動に関わることなどが該当します。社会貢献の取り組みでは、団体の存在そのものや活動が広く知られることが、課題解決のためにも重要です。情報発信や広報活動をサポートするプロボノは重要な活動といえます。
業務改善
業務を滞りなく行うためには、さまざまなスキルが求められます。タイムマネジメントや人員管理、業務フローの構築なども、社会貢献活動を裏で支える重要なポイントです。たとえば、災害時などのボランティアでは、支援物資を滞りなく避難所に届ける運営管理が重要です。そうした活動の影では、豊富なマネジメント経験や、PDCAの回し方を熟知している人々がプロボノとして活躍しています。
ファンドレイジング
NPO等、社会貢献に取り組む団体には、資金繰りに頭を悩ませることが少なくありません。必要となる資金を調達するには、お金に関する知見が求められます。金融業界での経験や、会計関連の知見を活かし、活動を財政面から支えるプロボノがあります。
事業戦略
新規事業戦略の立案や新製品の開発などでも、プロボノ活動が必要とされます。たとえば、東日本大震災後、復興活動をかねて企画された「東北プロボノプロジェクト」では、首都圏のプロボノ希望者が東北企業と連携し、さまざまなプロジェクトが行われています。独自ブランド商品のマーケティング施策立案や、市全体のブランドイメージを再構築するリブランディングなどが実現しています。
参考:東北プロボノプロジェクト プロジェクト事例集|経済産業省東北経済産業局
パラレルキャリアにおけるプロボノの位置づけ
社会貢献活動を支えるプロボノは、個人のキャリア形成の観点からも注目を浴びています。日本では、2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定したことをきっかけに、大企業を中心に副業解禁の動きが広がりました。また、近年発生した自然災害をきっかけに、職業上のスキルや経験を活かしてボランティア活動を行うプロボノの考え方が広く認知されるようになっています。
社会貢献という理由に加え、自身の活動の場を増やす、スキルを磨くという視点からプロボノ活動に取り組む人は少なくありません。日本で長く続いてきた終身雇用という考えが変化する現代で、一つの会社に生涯勤めようと思うのではなく、さまざまな場で多様な経験を積みキャリアを自律的に形成しようというスタイルが注目を浴びています。
このように、報酬があるなしに関係なく、人生を豊かにする取り組みとして本業と平行して何かに取り組むことを「パラレルキャリア」と呼びます。プロボノは、パラレルキャリアを築くきっかけになります。
プロボノ活動のメリット
プロボノ活動は、参加する本人だけではなく、送り出す企業、そして受け入れるNPOなどさまざまな関係者にメリットをもたらします。
【参加者のメリット】社会課題の現場を体験できる
プロボノ活動をすることで、社会に貢献している実感をダイレクトに得ることができます。震災復興のボランティアに参加したり、本業とは別に社会課題の解決に貢献したりと、「世の中の役に立つ」体験を得られる場です。離れている故郷のためにスキルを活用したいとプロボノに参加する人もいます。
【参加者のメリット】キャリアの棚卸の機会になる
プロボノはスキルを客観的に見る良い機会です。長年業務に従事していても、自分のスキルや経験がどこまで社会で通用するものなのか、会社という場を離れて客観的に判断できる人は多くありません。プロボノ活動で、まったく別の取り組みに挑戦することで、自身の長所を再発見したり、スキルを再評価したりすることができます。
【企業としてのメリット】企業価値の向上に繋がる
社会課題が複雑化する現代において、企業や個人、NPOといった垣根を超えた協業が求められています。近年広がりをみせたSDGs(持続可能な開発目標)でも、企業の社会課題への貢献が重視されています。
企業が自社社員のプロボノ活動を支援することは、サステナビリティ経営の推進につながります。社会課題の解決と事業活動の成長の両輪を回す企業として、対外的な企業価値の向上にもつながるでしょう。
【企業としてのメリット】ノウハウ・ナレッジの蓄積に繋がる
自社社員がプロボノ活動を行うことで、社員は本業以外の場でスキルを磨くことができます。会社を離れて培ったノウハウは、現場に戻って本業に活かすことが可能です。
社員が、自社の企業活動以外に時間を割くということは、一見経営的には無駄に思えるかもしれません。しかし、職業上のスキルや経験を第三の場で活かすことが、社員の成長を促し、ひいては企業の成長につながります。
【NPOとしてのメリット】人材教育・確保につながる
プロボノ活動を受け入れる団体は、必要な人材を確保できます。すでに専門性や経験を持った貴重な人材を活用することができれば、教育や研修といったコストを削減し、目的の達成につなげられるでしょう。資金を直接的に社会課題の解決に活用するためには、人材面にかかるコストが必要です。社会貢献活動の多くは、プロボノ活動によって支えられています。
プロボノ活動における注意点
プロボノは、外部からやってくる人材です。スキルも意欲もありますが、業務委託や雇用契約などを結ぶわけではありません。そのため、プロボノという形で協業を行うためには、参加する側と受け入れる側の双方が、以下の心構えを持つことが大切です。
【参加者の注意点】予定通り・想定通りにいかないケースがある
プロボノに参加する場合、求められるスキルはもちろんのこと、関係者と積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。プロボノでは、本業と平行して参加することも少なくないため、打ち合わせや活動時間に制限があります。その場合は、参加する初期段階で「平日〇時間稼働できます」など、具体的な稼働可能時間を伝えておき、双方合意を取って進めましょう。
【募集者の注意点】スキルを参加者に依存し過ぎない
プロボノを受け入れる側は、プロボノを「プロフェッショナルだからなんでもできる」と考え、依存してはいけません。プロボノのメンバーはそれぞれ専門性を有していますが、時間的・地域的制限があることも多く、無制限に協力できるとは限りません。また、関わる社会課題についての知識は十分ではないということもあります。「すべてお任せします」という姿勢では、プロジェクトは崩壊してしまうでしょう。
プロジェクトに参加してもらう段階で、プロジェクトの目的を明確にし、活動の意義や背景を共有します。プロボノのメンバーに何を達成してもらいたいか、そのためにはどのようなスキルが必要となるのか等、密にコミュニケーションを取って進めましょう。
プロボノ活動における報酬の扱い
プロボノは、活動に対して金銭的な報酬は支払われません。成果物等は、無償で実施団体に提供するのが基本です。ただし、活動に参加する際の活動経費(交通費等)や、ウェブサイト構築のためのサーバー使用料といった成果物の実装・維持運用にかかる費用は、実施団体が負担する形がとられることもあります。
プロボノの企業事例
最後に、プロボノ活動を支援し自社社員を送り出す企業の事例をご紹介します。
NECプロボノイニシアティブ
NECは、国内企業でははじめて本格的なプロボノプロジェクトに着手しています。2010年度からはじまった取り組みにおいては、2022年12月末時点で1625名の社員がプロボノ活動に参加しました。業務マニュアル、営業ツールの製作、マーケティング調査などを中心に本業での知見を活かしたプロボノ活動が行われています。
住友商事「教育支援プロボノ」
住友商事は、自社が推進する社会貢献活動である「100SEED(ワンハンドレッドシード)」の一環として、教育課題に取り組むNPOの運営基盤強化をサポートする「教育支援プロボノ」を実施しています。プロボノ活動は、複数の部署から集まったメンバーが4〜5人のチームで取り組みます。広報戦略やウェブサイトの構築、業務フロー設計、事業計画、クラウドファンディングなど、さまざまな分野で社員がプロボノとして活躍しています。
参考:教育課題に取り組むNPOをサポートする -「教育支援プロボノ」|住友商事株式会社
Sumitomo Corporation 100SEED|住友商事株式会社
社会課題の解決を推進し個人にも活力をもたらすプロボノ
非営利団体や企業、個人といった垣根を超えて専門性を活かすプロボノ活動は、社会課題の解決を推進し、個人のライフキャリアを充実させるという観点から、今後もますます広がりを見せることでしょう。少子高齢化で労働人口が減少する日本においては、垣根を超えた協業が、地方・社会を支える一つのポイントになるかもしれません。
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