- 更新日 : 2024年12月26日
独自性を追求する差別化戦略とは?特徴や実践方法などを解説
ブランドの展開、既存サービスの拡大、新規事業の立ち上げなど、戦略を立てるべきシーンはビジネスにおいて多く存在します。ただし、一言で「戦略」といってもその意味は幅広く、また戦略のパターンも多様です。その中でも差別化戦略は多くの企業やブランドが採用し、実践しています。
本記事では、差別化戦略の特徴やメリット・デメリット、実践のための方法などを解説します。
目次
差別化戦略および戦略とは
まずはじめに、「戦略」がどういった意味を持つのか、そして差別化戦略がどういうものかを解説します。
戦略
戦略とはビジネスシーンで多く用いられる用語ではありますが、その定義は定かでなく、研究者間でも複数の定義がなされています。
ただ多くの場合で、戦略とは「企業やブランド、サービスが勝てるための道筋を示す」ものだと解釈して問題ないでしょう。また戦略の目的の1つは「リソース配分を決めること」にあり、「勝てる」領域に投資をするための優先順位を決めるために必要とされます。
つまり、勝つための計画を示し、リソースを割くべきポイントを見極められるようになることが、戦略の重要な要素となります。
差別化戦略
このような「勝てるための道筋」としての戦略は、企業や市場、業界によって種々様々ですが、過去の事例研究などから一定のパターン化がされるようになってきました。そのうちの1つが、本記事の主題である差別化戦略です。
経営学者のマイケル・ポーター教授によって提唱され、「他社のサービスや製品との違いを明確化してポジションをとる戦略」が差別化戦略と呼ばれます。
差別化戦略と類似する戦略パターン
次に、差別化戦略としばしば比較して挙げられる他の戦略パターンについて、その特徴と差別化戦略との違いを説明します。
代表的な戦略としては、下記の3つが挙げられるでしょう。
- コストリーダーシップ戦略
- 集中戦略
- ブルーオーシャン戦略
1. コストリーダーシップ戦略
まずコストリーダーシップ戦略と集中戦略は、マイケル・ポーター教授が差別化戦略と併せて打ち出したものとなります。
同教授は、戦略のパターンを、ターゲットの広さと競争優位性の2軸で体系化しています。競争優位性は低価格での優位性と付加価値などでの独自性の2つに大別され、広いターゲットに低価格での優位性をぶつける戦略がコストリーダーシップ戦略と定義されています。
本記事の主題である差別化戦略は幅広いターゲットに対して独自性で戦い、もう一方の集中戦略は価格の優位性か独自性のいずれかを狭いターゲットに狙い打ちする戦略を指しています。
すなわち、コストリーダーシップ戦略は、規模の大きさや技術的な強みを活かして競合よりも低価格で展開する戦略であり、差別化戦略のように商品の優位性や独自性で戦う手法とは異なります。
例えば、マクドナルドはコストリーダーシップ戦略を体現する企業の1つだといえるでしょう。マクドナルドでは、徹底的なマニュアル化や店舗数の規模を活かして、他のハンバーガーチェーンよりも低価格での商品提供を実現しています。
2. 集中戦略
集中戦略はターゲットを狭めて限定的に行う戦い方で、ニッチ戦略などとも呼ばれます。また、そのターゲットの狭め方もさまざまで、顧客層の年齢や性別、展開する地域などが挙げられます。
オリオンビールは集中戦略を実践する企業の1つで、沖縄県という地域に特化した展開・プロモーションを行い、大手ビールメーカーがひしめく中で独自のポジションを築くことができています。
3. ブルーオーシャン戦略
一方、マイケル・ポーター教授が提唱した競争戦略以外にも戦略のパターンは存在します。その代表例がブルーオーシャン戦略です。
ブルーオーシャン戦略は、低価格性と差別性を同時に満たそうとする戦略で、新しい市場を創造していくという考え方を採ります。つまり、差別化戦略などのように、競合とのシェアの奪い合いに勝つことを目指すのではなく、新たな市場を創り出す方に主眼を置いています。
例えば、「10分カット」という市場を創ったQBハウスはその好例だといえるでしょう。カット以外のサービスをなくし場所も駅中などにすることで、独自のポジションを築きました。
差別化戦略の特徴
続いて、差別化戦略のメリットやデメリットを解説します。
差別化戦略のメリット
差別化戦略は、価格ではなく独自性や付加価値を見つけることで優位性を出す戦略であるため、次のようなメリットが存在します。
- 高い利益率を実現できる
- 新規参入者に対して障壁を設けられる
- 価格競争に左右されない
例えば、コメダ珈琲はそのメリットを享受できている企業の例だといえるかもしれません。郊外を中心とした店舗展開や独自のメニューラインナップ、店舗設計などを独自性として、スターバックスやタリーズなどの他のコーヒーチェーンよりも高い利益率を有しつつ、その優位性を得ています。
差別化戦略のデメリット
一方で差別化戦略も万能ではなく、デメリットも存在することは忘れてはなりません。差別化戦略には、主に次の3点のデメリットが挙げられます。
- 価格重視や独自性に共感しない顧客層が離反する可能性がある
- 差別性を見出すには時間と労力、投資などのリソースが必要になる
- 既存競合には容易に模倣される恐れもある
つまり、差別化戦略の実現は難易度が高く、方向性を誤ればかえって現在のポジションを失う可能性も有しています。このようなリスクも踏まえた上で、適切に自社の現状やリソースを鑑み、戦略の方向性を検討しましょう。
差別化戦略の実践方法
最後に、差別化戦略を検討する際の具体的な実践方法を解説します。
差別化戦略の検討ステップ
差別化戦略は市場の状態や顧客のニーズ、自社の強みを分析しながら見極めることが重要です。基本的に次のようなステップを経ることが多いでしょう。
- 競合を洗い出し、競合の特徴(価格帯、優位性、ターゲット顧客など)を分析
- 顧客の満たされているニーズ、満たされていないニーズ、顧客自身も気付いていないインサイトを仮説立て、調査
- 上記のニーズ、インサイトの中で自社の強みやケイパビリティから満たせそうなポイントを特定
- 見出したポイントからサービスや事業のコンセプト、特徴を整理
- 市場調査などを行い、テスト・検証
- アイデアを開発・実行
差別化戦略を行うために有効なフレームワーク3選
また、上記の検討プロセスを進める上で有効なフレームワークを3つ紹介します。
- 3C分析:顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の特徴を体系的に分析
- VRIO分析:経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の観点から自社の強みを分析
- SWOT分析:自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、市場の機会(Opportunity)、脅威(Threat)の観点で今後の強化すべき方向性を分析
主に、3C分析は上記検討ステップの1と2、VRIO分析は3、SWOT分析は3と4で用いることが効果的です。
まとめ
本記事では、世の中に数多ある戦略の代表的なパターンである、差別化戦略について紹介しました。
差別化戦略は、幅広いターゲットに対して独自の付加価値や優位性を見出し、競合と差別化を図る戦略パターンです。低価格で勝負するコストリーダーシップ戦略やニッチなターゲットを狙う集中戦略、また新市場の創造を志向するブルーオーシャン戦略などとは異なり、その独自性・差別性を追求することがポイントだといえるでしょう。
差別化戦略は難易度が高くリスクも存在しますが、そこから得られるメリットも大きく、高い利益率や新規参入者への障壁など、自社のシェアを高め維持するために非常に有効な戦略の1つです。
本記事で紹介したステップやフレームワークを用いながら、一度差別性のある戦略を検討してみてはいかがでしょうか。
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