- 作成日 : 2024年7月29日
アライアンス契約とは?概要やメリット・デメリットをはじめ成功事例も紹介
アライアンス契約とは、異なる企業や組織間などで締結される契約の1つです。
この契約は、双方の経営資源やビジネス上の強みを共有することにより、新製品の開発や新規事業の創出などを成功させることを目的としています。しかしアライアンス契約にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。
本記事ではアライアンス契約の概要や種類、メリット・デメリットおよび成功させるためのポイントについて解説します。
目次
アライアンス契約とは
はじめに、アライアンス契約の概要や類似用語との違いについて解説します。
アライアンス契約の概要
アライアンス契約とは、複数の異なる企業や組織などの間で締結される契約を指します。
アライアンス契約の目的は、契約を締結する双方の経営資源や強みなどを共有することにより、企業単独では成し得ない事業やプロジェクトを成功させることです。
昨今、ビジネスのグローバル化や少子高齢化などにより企業間の競争は激化していますが、アライアンス契約を活用すれば企業の独自性を維持しつつ弱みを補完できる可能性があります。
M&Aとの違い
M&Aとは、企業の合併や買収を指します。アライアンス契約は双方が対等な立場であるのに対して、M&Aはどちらかの企業の経営権が他方に移行する点が異なります。
また、M&Aを行う際は莫大なコストを必要としますが、アライアンス契約はコストをかけずに比較的簡単に行える点も違いに挙げられます。
アライアンス契約の種類
アライアンス契約には、さまざまな種類があります。以下は主なアライアンス契約の種類です。
種類 | 概要 |
---|---|
資本提携 | 株式の売買や交換を通じた提携 |
資本業務提携 | 資本と業務の両方で協力する提携 |
技術提携 | 技術やノウハウの共有を通じた提携 |
販売提携 | 販売チャネルの共有を目的とした提携 |
契約実現に向けた負荷や期待できる効果はそれぞれ異なるため、自社に合う契約の種類を選定することが重要です。
アライアンス契約のメリット
本章では、アライアンス契約のメリットを解説します。
経営資源を共有できる
アライアンス契約を締結すると、契約を締結したパートナー間で、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源を共有できるようになります。
大企業と比較すると、中小企業などは経営資源に限りがあるケースが多いですが、そのような中で競争力を獲得するには、強みをさらに伸ばして弱みを解消することが重要です。
アライアンス契約の活用は、経営資源の共有によって「強みの強化」や「弱みの解消」を実現できる点がメリットだといえます。経営資源的に単独では難しい事業にもチャレンジ可能となるでしょう。
コストを削減できる
企業が弱みを解消するためには、時間や費用などのコストを費やして長期的に事業を成長させることが求められます。一方で、市場における競争は激化しているため、時には時間をかける余裕がなくスピーディーに弱みを解消することも重要です。
弱みの解消法としては、M&Aにより「時間を買う」のも一手ですが、これには莫大な資金が必要となります。しかしアライアンス契約であれば、多額のコストをかけることなく、企業が持つ弱みを補完できる点もメリットの1つです。
独立性を維持できる
M&Aは経営権を譲渡する必要がありますが、アライアンス契約は独立性を維持できる点もメリットです。
M&Aは買い手側となる企業の影響を色濃く受けることになります。しかし、アライアンス契約であれば、会社の社風や文化が失われることもない上、契約違反でなければ、必要に応じて途中で契約を解消することも可能です。
アライアンス契約のデメリット
ここでは、アライアンス契約のデメリットについて解説します。
企業の強みや機密情報が流出するリスクがある
アライアンス契約は恒久的なものではなく、一定期間で終了するケースが一般的です。
契約内容にもよりますが、アライアンス契約が終了した後のアライアンスパートナーは競合先にも成り得るため、自社の強みであった技術やノウハウが流出するリスクが高い点はデメリットの1つだといえます。
成果が出ないこともある
M&Aであれば経営権を持った企業によって戦略的に事業を進めることができますが、アライアンス契約の場合は影響範囲が限定的です。事業に問題が生じた場合も、アライアンスパートナーとの関係性や利害関係により、期待したような効果や成果が得られない恐れがある点もデメリットに挙げられます。
アライアンス契約を成功に導くポイント
アライアンス契約を成功させるためには、提携先の選定が重要です。目的が一致しているかに加えて、優れた経営資源を有しているかを判断材料としましょう。
また、企業のビジョンなどが類似していればシナジー効果も期待できます。さらにアライアンスによる効果の計測・分析を行い、次回以降に活かすという作業も重要です。
なお、アライアンス契約の経験が乏しい場合は外部コンサルタントなどを活用し、専門的な視点からのアドバイスを受けることも重要なポイントとなるでしょう。
アライアンス契約締結における注意点
アライアンス契約を締結するためには、アライアンス契約書を作成する必要があります。記載すべき事項はアライアンス契約の種類などによっても異なりますが、主な内容は次のとおりです。
- 契約の目的
- 対象業務(提携範囲)
- 費用(使用料)に関するルール
- 期間
- 契約変更・解除条件
特に、契約終了後における技術や機密情報の流出リスクについては、最大限注意しなけれなりません。これを避けるためには、あらかじめ競業禁止などの取り決めを契約条項に盛り込んでおくことが重要です。
アライアンス契約の事例
企業規模を問わず、アライアンス契約はさまざまな企業間で締結されています。ここではアライアンス契約の事例を2つ紹介します。
SBIグループ × 株式会社エイチ
オープン・アライアンス戦略を推進するSBIグループは、2024年3月に従業員数わずか6名の株式会社エイチと資本業務提携を締結しました。
株式会社エイチは、人の希望を言語化することをサポートする「おもてなしAI」の開発を推進しており、総務系の決済領域を統合的に管理できるAIプラットフォームを提供している会社です。
この事例は、規模が小さい企業であっても卓越した技術や強みを持っていれば、大手企業と対等な関係でビジネスを拡大できることを証明しています。
参考:SBIホールディングス株式会社「SBIグループと株式会社エイチとの資本業務提携に関するお知らせ」
エルピクセル株式会社 × 島津メディカルシステムズ株式会社
2024年4月、画像診断支援AIを提供するエルピクセル株式会社は、島津製作所の医用機器販売子会社である島津メディカルシステムズ株式会社と販売提携契約を締結しました。
従業員数80名程度のエルピクセル株式会社は、このアライアンス契約により全国約50ヵ所の拠点を有する島津メディカルシステムズの販売力を活用可能となったため、医療AIの更なる普及を目指しています。
この事例は、アライアンス契約によって短期間での販路拡大も実現できることを示しています。
参考:LPIXEL「エルピクセル、島津メディカルシステムズと販売提携契約を締結」
まとめ
今回はアライアンス契約について解説しました。
アライアンス契約は、他社の経営資源や強みを活用できます。また優れた経営資源や技術を有している企業であれば、企業規模を問わず活用することが可能です。特に中小企業や小規模な企業にとっては、大企業と共にビジネスを推進できる機会となるでしょう。
更なる事業の拡大を検討している方は、アライアンス契約の活用をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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