• 更新日 : 2024年7月12日

ソフトウェア仮勘定とは?利用目的別、会計処理のポイントと留意点を解説

近年、ソフトウェアは企業活動において不可欠かつ重要な資産となっていますが、その開発や導入には経費がかかります。ソフトウェア仮勘定は、企業がソフトウェアの制作(開発)にかかる費用を正確かつ適切に計上するために行われます。

ソフトウェアに関する会計基準は、販売する場合と自社の業務やサービス提供のために利用する場合とで異なり、それぞれの利用目的に応じて、費用処理と資産計上の方法が定められています。

本記事では、各ケースに応じた会計処理の方法を解説し、ソフトウェア仮勘定の必要性と課題・留意点について説明します。

ソフトウェア仮勘定とは

ソフトウェアは、その制作(開発)目的によって会計処理の方法が定められています。
市場販売や自社利用のソフトウェアを資産として計上する場合、制作(開発)途中のソフトウェアに関する研究開発費以外の費用は、ソフトウェア仮勘定などの一時的な勘定にまとめて記録します。
その後、ソフトウェアを事業として供用(利用)する際、ソフトウェア勘定に移す会計処理を行います。

会計基準に基づくソフトウェアの分類

ソフトウェアの制作(開発)費は、研究開発に該当する場合、「研究開発費」として処理します。
それ以外の場合については以下のとおりです。

受注制作(オーダーメイド)のソフトウェア

受注制作(オーダーメイド)のソフトウェアは、ある特定の顧客が注文した内容に基づいて、その顧客向けに特定の仕様で個別に制作(開発)されるソフトウェアを指します。
通常、これらの開発プロジェクトは1年以上かかることが一般的であり、収益認識の基準(売上や収益を帳簿に記録するための基準やルール)は、プロジェクトの進捗状況によって異なります。

制作(開発)の進捗が確実な場合、収益と原価の計算は進捗度に応じて行われ、これを「工事進行基準」と呼びます。工事進行基準では、進行中のプロジェクトの進捗度に基づいて収益と原価の合計金額を計算します。

一方で、制作(開発)の進捗が不確実な場合は、「工事完成基準」が適用されます。収益はプロジェクトが完了し、顧客に引き渡されたのちに認識されます。

自社利用のソフトウェア

自社利用のソフトウェアは、外部のユーザーへサービス提供をして、その対価を得るために活用される場合と、社内の業務遂行を効率的に行う場合などに分類されます。

自社内でのソフトウェア利用は、主として以下のようなパターンが考えられます。

1)外部向けのソフトウェアとして業務システムのサービス提供に使用し、将来的に対価を得る場合
2)自社で使用するためのソフトウェアとして制作し、社内業務やプロセスの効率化のために使用する場合
3)自社の業務の効率化を目的として、市場で入手可能なソフトウェアを購入する場合

自社利用のソフトウェアを資産として計上するには、将来の収益獲得や例えば人件費などの費用削減が確実である必要があります。
この要件を満たす場合、ソフトウェアは無形固定資産として記録されます。
無形固定資産は、建物などのような物理的な形態を持たないけれども、1年以上の長期間にわたって使用される固定資産とされるものの1つです。収益性や費用削減が確実でない場合や不明な場合は無形固定資産とされず、費用として処理されます。

制作(開発)途中のソフトウェアに関する研究開発費以外の費用は、一時的な仮勘定(例えばソフトウェア仮勘定など)にまとめて記録され、事業で使用する際にソフトウェア仮勘定からソフトウェア勘定への振替を行うことになります。

市場販売目的のソフトウェア

市場販売目的のソフトウェアとは、製品マスターを作成し、それを複製して広く一般のユーザーに販売するためのソフトウェア製品を指します。

具体的な例としては、次のようなものが挙げられます。

・広く使用される表計算ソフト、ワープロソフト、プレゼンテーションソフト
財務会計や営業管理などの業務管理ソフトウェア
・パソコンの基本ソフトウェア(オペレーティングシステムなど)

市場販売目的のソフトウェアの研究開発完了は、はじめて製品マスターが完成し、製品の方針が明確になった時点です。この段階までの制作(開発)活動は研究開発とみなされ、それにかかった費用は研究開発費として処理されます。それ以降の費用は「無形固定資産」として処理します。

「はじめて製品化された製品マスター」の完成条件は、以下の2つです。

・製品の特性を判断できるほどのプロトタイプが完成していること
・プロトタイプを制作しない場合、製品として販売するための主要な機能が完成し、かつ主要な問題点が解決されていること

製品マスターの機能を向上させたり、強化したりするためにかかる費用は、適切な原価計算を経て資産として計上され、ソフトウェア仮勘定として処理されます。事業を行う上で使用する際に、ソフトウェア仮勘定からソフトウェア勘定への振替を行います。

ソフトウェア仮勘定の必要性と課題

この章ではソフトウェア仮勘定の必要性と、ソフトウェア仮勘定を行う際の課題について解説します。

なぜソフトウェア仮勘定が必要なのか

ソフトウェア仮勘定を用いることで、適正な期間損益計算を実施できます。
制作(開発)途中のソフトウェアに関する費用を一時的にソフトウェア仮勘定に計上し、適切な時期にソフトウェア勘定に振り替えることで、減価償却を正しく行い、収益と費用を対応させることができます。

ソフトウェア仮勘定における課題

ソフトウェア仮勘定の金額を正確に算出するには、原価計算基準(1962年に導入された日本の企業が行うべき原価計算方法を規定した基準)に則って、工程内で作業中の仕掛品の金額を計算する必要があります。

ただし、そのために情報を収集し、正確な計算を行うのは決して容易ではありません。
原価計算については、下記の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

ソフトウェア仮勘定を使用する際の注意点について

ソフトウェアに関する貸借対照表での表示は、原則として、製品マスターの仕掛品と完成品を区分することなく、一括してソフトウェア等の科目で行うことになります。

ただし、制作途中の段階や完成前の仕掛品(製品マスター)が事業において重要な役割を果たす場合、ソフトウェア仮勘定を区分して表示することが推奨されています。
例えば、製品の完成前の段階ですでに顧客からの予約注文がある場合は、仕掛品を区分して表示することが重要です。

まとめ

会社の業務でさまざまなソフトウェアを使用する場合、それぞれに異なる会計処理が適用され、その判断基準も多様になります。
特に、金額が大きい場合は慎重な処理が必要であり、誤った処理が会社の決算数字に影響を及ぼす場合もあるので、注意が必要です。

ソフトウェア仮勘定の金額を正確に求めるためには、原価計算基準に基づいて、仕掛品の金額を計算する必要があります。
その際、ERPパッケージは非常に有用であり、ソフトウェアの開発にかかった費用や予約注文に関する情報が一元管理されているため、業務の効率化が実現できます。

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