• 作成日 : 2024年8月7日

コングロマリットとは?概要や戦略上のメリット、成功させるためのポイントを解説

コングロマリットとは、異なる業界・業種の複数の企業が1つの大きな企業グループを形成する戦略です。経営リスクの分散やシナジー効果の創出などがメリットであり、買収や合併などのM&Aによって実現することが一般的です。
本記事では、コングロマリットの意味や語源、成功のポイントなどを解説します。

コングロマリットとは

はじめに、コングロマリットの意味や語源などの基礎知識を解説します。

ビジネス用語としての「コングロマリット」の意味

コングロマリットとは、異なる業界・業種の複数の企業が1つの大きな企業グループを形成している状況を意味します。例えば、自動車製造、金融、不動産などの異なる事業を担う子会社を持つ企業グループが該当し、国内では楽天グループや三菱グループ、ソニーグループなどがコングロマリットに該当します。

コングロマリットの語源

コングロマリットの語源は、英単語の”conglomerate”です。 Conglomerateには、「集団になった」、「丸く固まった」などの意味があります。また、ラテン語では「丸く固まる」という意味を表します。

異なるビジネスを行う企業が「丸く、集団に固まっている様」から、ビジネスでもコングロマリットという用語が使われるようになっています。

コングロマリット戦略・コングロマリットM&Aの特徴

コングロマリット戦略とは、コングロマリットによる事業の成長を目指す戦略を指します。つまり、業種が異なる複数の事業をグループ全体で展開し、成長を図る戦略です。

この戦略で有用となるのがM&Aです。既存事業との関連性がない事業を展開する企業の買収により、スピーディーなコングロマリットの形成が可能です。こうしたM&Aを「コングロマリットM&A」と呼び、同業種を買収する「水平型M&A」や、川上・川下企業を買収する「垂直型M&A」とは得られる効果やリスクが異なっています。

コングロマリットのスキーム・種類

コングロマリットの形成では、主に「買収」、「合併」、「資本提携」という3種類のM&Aスキームが活用されます。

買収

買収とは、過半数〜全株式の株式取得によって、相手企業の経営権を取得し、子会社化するスキームです。法令遵守やシナジー効果最大化の観点から、完全子会社化(100%株式取得)がベストだといわれています。後述する資本提携と比べて、企業同士の結束感をより強固なものにできます。

合併

合併とは、自社が相手企業の権利義務、資産のすべてを取り込み、1つの法人に統合させるM&Aスキームです。買収と異なり、相手企業の法人格が消滅する点が大きな特徴です。

完全に1つの法人となるため、シナジー効果や結束感を創出する上で最も効果的である場合が多いです。ただし、異なる企業文化や働き方までもを統合する必要があり、この作業に伴う負担が大きくなるリスクがあります。

資本提携

資本提携とは、相手企業の株式取得によって資本関係を構築し、業務や資金などの面で協力し合うスキームです。一般的には、第三者割当増資という手法が用いられます。

あくまで提携なので、相手企業の経営に関する独立性を保てる範囲で株式を取得します(1/3未満が一般的)。買収や合併と比べると結びつきは弱いものの、お互いの独立性を保った上で協力し合える点がメリットです。

コングロマリットにおけるメリットとデメリット

この章では、コングロマリット戦略のメリットとデメリットを解説します。

4つのメリット

コングロマリットでは、以下4つのメリットを期待できます。

メリット概要
経営リスクの分散が可能ある事業の収益が低下しても、他の好調な事業の収益があるため、会社全体の業績悪化を防ぎやすい
シナジー効果が創出されやすい同一業種間の融合と比べて、思いもよらないシナジーが生み出されやすい
※クロスセルによる売上アップや、物流最適化によるコスト削減など
中長期で経営戦略を進めやすくなる複数事業の展開で企業の成長を目指すため、必然的に中長期的な目線での経営につながる
敵対的買収を防ぎやすい関連性が低い事業を複数抱えることで、外部から見て買収によるメリットが分かりづらくなる

3つのデメリット

コングロマリット経営を行う際には、以下3つのデメリットに注意が必要です。

デメリット概要
経営管理が複雑化するリスク関連性が低い企業同士が集まるため、企業間のコミュニケーションや業績管理、ガバナンスの維持が困難になりやすい
長期的な企業価値の低下リスク以下2つの理由から、企業価値の低下につながるリスクがある
・一見すると会社の強みや事業内容が分かりづらいため、投資家からの評価(≒株価)が低くなりやすい
・経営資源が分散して、各事業の収益が上がりにくい
短期的な経営状況の悪化リスク同業種や関連性の高い企業同士の買収と比べて、すぐにシナジー効果を創出することが困難であり、短期的には業績が悪化しやすい

コングロマリットの事例

コングロマリットの成功事例として楽天グループ株式会社が挙げられます。

楽天グループでは、かつての本業であるECモール事業に加え、数々の買収によって保険業や金融業、モバイル事業などの会社を取り込み、国内有数のコングロマリット企業となっています。

楽天グループの報告によると、同社の連結売上収益は2020年度〜2023年度にかけて右肩上がりで増加しています。成長要因はさまざまあるものの、一見無関係な事業同士のシナジー効果が創出されているなど、コングロマリット経営が功を奏していることが大きいと考えられます。

参照元:楽天グループ株式会社「業績推移(年度別)

コングロマリット化を進める3つのポイント

コングロマリット戦略を成功させるには、以下3つのポイントを押さえることが重要です。

ポイント1:目的および戦略の明確化

事業の関連性が低い企業同士が集まるため、統合の難易度が高い上に、短期的にどのようなシナジー効果が見込めるかが不明瞭となり得ます。そのため、あらかじめM&A
などによってコングロマリットを進める目的や戦略を明確化する必要があります。

「この企業を買収することでどのような効果を得たいのか」、「〇〇の目標を達成するには、どの様な業種の会社を取り込むべきか」などを明確化することで、成功に一歩近づくでしょう。

ポイント2:統合計画の策定

難易度の高い統合を円滑に進めるためには、統合計画を入念に策定することが重要です。具体的には、M&Aが完了する前のタイミングから、人事制度やITシステム、業務プロセスについて「いつまでに、どのように統合させていくか」を具体的に決めていきます。

また、異なる文化や働き方に違和感を感じた従業員同士の摩擦やモチベーション低下、離職が生じる可能性もあります。こうした事態を防ぐためにも、従業員間・企業間のコミュニケーションを徹底して行う必要があります。

ポイント3:リスク管理の徹底

コングロマリットに限らず、異なる企業間の統合は難しく、さまざまなリスクが想定されます。従業員のモチベーション低下や業績悪化、企業間の対立、法令遵守の軽視、企業価値の低下(コングロマリット・ディスカウント)など、リスクは多岐にわたります。

そのため、事前に想定されるリスクや事前対策を考えるだけでなく、リスクが顕在化した際の対策も策定しておくことが重要です。そうすることで、コングロマリットによる弊害のダメージを最小限に抑え、持続的な成長を実現しやすくなります。

まとめ

コングロマリットでは、経営リスク分散などのメリットを得られる一方で、経営管理の複雑化などのリスクもあります。メリットとデメリットを踏まえて、リソースに余裕があるタイミングでコングロマリット化を進めるのがおすすめです。


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