- 作成日 : 2024年11月8日
管理部門とは?企業における役割や必要性、部門の種類を解説
管理部門とは、主に経理、人事、総務などの職種で構成される、企業運営をサポートする部門を指します。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の管理を通じて、営業や製造などのフロント部門をサポートしたり、経営陣へ意思決定のための情報を提供したりすることが主な役割です。
本記事では、管理部門の概要や種類、構築方法、年間の業務スケジュールについて解説します。
目次
管理部門とは
まずは、管理部門の概要と役割、必要性について解説します。
管理部門の概要
管理部門は、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を管理することで企業経営を支える部門です。間接部門とも呼ばれ、主に経理、財務、人事、総務、法務などが管理部門に該当します。
売上には直結しない部門ですが、フロント部門の業務を円滑にするためのサポートを実施して企業運営の潤滑油となることで、間接的に売上向上へ貢献します。
管理部門の役割
続いて、管理部門の役割を解説します。
経営資源の管理と情報提供
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の管理を通じて、経営陣に意思決定のための情報を提供します。
例えば、人事部門が従業員のパフォーマンスや退職率を分析し、採用や人材育成の計画を立案することで、経営陣による人員配置や予算編成の意思決定が容易となります。
フロント部門のサポート
営業や製造、マーケティングなど、売上に直結するフロント部門が本来の業務に集中できるよう、間接的にサポートします。
例えば、経理部門が売上・支出を集計し、月次報告を作成することで、営業部門がタイムリーに財務状況を把握することができます。
また総務部門は、オフィス環境の整備や契約書管理を通じて、各部署が業務に専念できる環境を整えます。
これによってフロント部門は自身の業務に集中でき、効率的な業務遂行が可能となるのです。
コンプライアンスとリスク管理
企業が法的な義務を遵守してリスクを最小限に抑えることも、管理部門の役割の一つです。法務部門が契約書のレビューや新法対応を行うことで、法的リスクを軽減します。
管理部門の必要性
管理部門が存在しなければ、売上に直結するフロント部門が本来の業務に集中できなくなり、経営や事業拡大に悪影響を及ぼします。
大企業では、経営資源が豊富で管理部門が充実しやすい傾向がありますが、中小企業ではコスト削減のために管理部門が小規模になりがちです。しかし、事業拡大のためには管理部門の充実が必要不可欠です。
また上場企業においては、外部の株主やステークホルダーへの情報開示など、非上場企業以上に管理部門の役割が重要となります。
そのため、管理部門は企業規模の大小にかかわらず、非常に重要な部門なのです。
管理部門の種類
管理部門は主に、「経理、人事、総務、財務、法務」などの部門で構成されます。本章では、多くの企業で設置されている「経理、人事、総務」の3部門に絞って詳細を解説します。
経理
経理部門は、企業のお金の流れを数値化し、正確に管理する役割を担います。
日常業務としては、請求書や伝票の整理、経費の精算、帳簿の作成などがあり、企業の収支を記録することが主な役割です。
また、毎月の月次決算書や四半期・年次の財務諸表の作成も行い、経営状況を把握するためのデータを提供します。加えて、給与計算や年末調整、税金の計算・納付といった業務も実施します。
決算業務や会計監査対応といった重要な業務も担当し、企業の財務健全性を支える役割を果たします。
人事
人事部門は、企業における最も重要な資源である「人材」を管理・活用する役割を担います。
採用計画の立案から新卒・中途の採用活動、人材育成のための研修実施、さらに評価制度や報酬制度の構築・改善まで、幅広く対応します。
人事戦略や制度の企画立案を通じて企業の成長に貢献し、従業員のキャリアプランや配置転換・異動計画の策定にも関わります。
労務管理としては、社会保険手続きや勤怠管理、福利厚生管理などの業務も含まれ、従業員の働く環境を整えるために重要な役割を果たします。
総務
総務部門は、企業全体の運営を円滑に進めるために、他部署が扱わないさまざまな業務を担当します。
主な業務として、株主総会や取締役会の企画・運営、文書管理、施設管理、機器・備品の管理、そして電話やメール対応、来客対応などが挙げられます。
加えて、社内イベントの企画・運営、防災対策やセキュリティ面の整備、さらに社内外の慶弔業務も総務の役割です。
総務は「何でも屋」としての側面を持ち、広範囲にわたって企業運営に不可欠なサポートを提供します。
管理部門の構築方法
管理部門の構築は、以下のステップで行われます。
- STEP1:管理部門長の選定
- STEP2:管理部門メンバーの要件設定
- STEP3:適切な人員配置
- STEP4:社外人材の採用や委託の検討
STEP1:管理部門長の選定
まずは、管理部門長の選定を実施します。
管理部門を統括する管理部門長は、組織や業務の全体的な計画や構造をまとめて管理しながら進める役割を担うため、マネジメント能力がある人材を選定することが重要です。
人材の選定が完了したら、選ばれた管理部門長の先導で管理部門のメンバーを選定します。
社長が管理部門の構築に直接関わるケースもありますが、企業経営に集中するためにも、メンバーの選定は管理部門長に任せることが理想的です。
STEP2:管理部門メンバーの要件設定
管理部門長が全体設計に基づき、経理、人事、総務などの担当者を順次選定します。管理部門のメンバーを選定する際は、業務ごとの専門性を考慮して人材を確保することが大切です。
また、IPOを見据える場合、以下の担当分野が必須となります。
- 経理(会計)
- 財務
- 人事・労務
- 法務
- 総務
その他、必要に応じて経営企画部門や内部監査部門も設置することで、企業運営がより円滑になります。
STEP3:適切な人員配置
続いて、各部門に適切な人数を配置します。
基本的には責任者を含めて6〜7名が理想的ですが、一部業務の兼任が可能な場合は、4〜5名で足りるケースもあります。
外部のBPOサービスやIPOコンサルタントを活用すれば、人員を削減することも可能です。
STEP4:社外人材の採用や委託の検討
IPOを予定しているにもかかわらず、社内にIPOに関する知見を持つ人材がいない場合は、外部から専門家を採用することも検討しましょう。IPOコンサルタントへの委託も有効な選択肢となります。
IPOを見据えて管理部門を設置する場合は、以下の記事も併せてご確認ください。
管理部門の年間スケジュール
最後に、管理部門の中から、人事・経理・総務部門の一般的な年間スケジュールをご紹介します。
人事部門 | 経理部門 | 総務部門 | |
---|---|---|---|
4月 | 新入社員の入社式・研修 昇給・昇進通知 定期異動の実施 新卒採用のエントリー受付・応募書類確認 | 決算整理 財務諸表の作成 | 新入社員の入社手続き 歓迎会の準備、開催 社会保険資格取得手続き |
5月 | 夏季賞与査定 新卒採用の選考開始 | 各種税金の確定申告 各種税金の納付 | 株主総会の準備開始 制服/衣替えの準備 |
6月 | 新卒採用の内定通知 | 夏季賞与計算・支給 社会保険の算定基礎届提出 | 株主総会の開催 お中元の準備 定期健康診断の実施 労働保険更新手続き |
7月 | 夏季賞与の評価フィードバック | 源泉所得税の納付 労働保険の更新 | オフィス環境、冷房機器の点検 衛生管理の徹底 社会保険更新手続き |
8月 | 夏季休暇中の社内体制確立 | ||
9月 | 年末調整の準備(扶養控除申告書、保険料控除証明書の回収) 昇進・昇給制度の見直し | 半期の決算対応 半期の法人税・消費税の中間申告・納付 | 防災訓練の実施 |
10月 | 秋季入社対応・研修 内定式 定期異動の実施 | 年末調整の準備(提出書類に基づいて税額再計算) | 定期健康診断の実施 制服/衣替えの準備 |
11月 | 新年度採用活動の準備開始 冬季賞与査定 | 各種税金中間申告と納付 | お歳暮の準備及び発送 |
12月 | 冬季賞与計算・支給 源泉徴収票作成(還付・追徴対応) 年末調整 | 年賀状の準備及び発送 大掃除の実施 | |
1月 | 冬季賞与の評価フィードバック 新入社員研修準備 | 給与支払報告書、法定調書提出 償却資産税申告書提出 法定調書の提出 源泉徴収票の発行・配布 | 年賀状の返礼 住所変更の整理 年始回り 来客対応 |
2月 | 昇進・昇給の査定 | 各種業務規程の見直し | |
3月 | 新卒採用の情報解禁・会社説明会開催 | 実地棚卸 決算対応 法人税等の申告準備 | 入社式の準備 新入社員の入社準備(オフィス環境、名刺発注、PC手配など) |
上記はあくまでも一例であり、これら以外にも、企業によってさまざまなイベントがあります。
まとめ
管理部門は売上に直結しない部門ですが、企業運営を円滑にする上で非常に重要な役割を担います。
主に「経理、人事、総務、財務、法務」などの部門で構成され、それぞれ異なる側面からフロント部門をサポートします。
管理部門の構築を検討されている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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