- 更新日 : 2026年4月16日
医療法人の会計とは?概要や一般企業の会計との違いなどを解説
2017年4月2日以降に開始される事業年度から、一定規模以上の医療法人には新しい会計基準の適用が求められ、公認会計士による監査を受けた計算書類の公告が義務づけられました。4月決算法人の場合は2018年4月期から、最も一般的な3月決算法人の場合は2019年3月期からこれが適用されます。
本記事では、医療法人の会計について解説していきます。
目次
医療法人の会計とは
この章では、医療法人の会計について解説します。
医療法人会計基準と病院会計準則
医療法人の基準である医療法人会計基準と施設ごとの規定である病院会計準則が存在します。
病院や診療所が法人である場合、医療法人や社会福祉法人などの形態が存在しますが、
財務会計や税務会計は法人ごとに行われ、法人の種別に適した会計基準が適用されます。例えば、1つの医療法人が複数の医療施設(病院、診療所)などを運営している場合、基本的に、各施設には医療法人会計基準が適用されます。
しかし、法人の種別が異なる病院同士の会計を比較する場合などに、法人種別の違いによる不整合が発生するのは避けなければなりません。
そのため、病院会計準則という各医療施設に統一された会計ルールも定められています。
医療法人会計基準の対象となる医療法人
医療法人会計基準の対象となる医療法人は、以下の条件を満たす医療法人です。
- 一般の医療法人で、負債が50億円以上または収益が70億円以上の場合
- 社会医療法人で、負債が20億円以上または収益が10億円以上の場合
- 社会医療法人債発行法人
上記の条件に該当しない医療法人(例:一人医師医療法人など)は、改正後も医療法人会計基準を適用する必要はありません。これまで通り、病院会計準則や中小会計要領などの基準を選択して使用することができます。
医療法人会計基準の適用開始時期
病院会計準則は1965年に厚生労働省が作成したもので、病院経営の適切な把握を目的としています。一方、医療法人に関する会計基準は長らく存在しておらず、2006年に実施された医療法改正まで、病院や介護老人保健施設はそれぞれ施設別の会計基準を使用していました。
2007年以降については、医療法人全体についての財務諸表が必要となりましたが、具体的な会計処理の基準が不足しており、一部で企業会計基準を採用せざるを得ない状況でした。この課題に対応すべく、2016年に医療法人会計基準が制定され、2017年から適用が始まりました。そのため、医療法人会計基準は導入からまだ数年しか経過していません。
参照元
e-Gov「医療法人会計基準」
厚生労働省「病院会計準則」
e-Gov「医療法施行規則」
医療法人の会計と一般企業の会計の違い
病院の経理と一般企業の経理との違いは、会計基準の違いが大きな要因です。
病院と一般企業の経理を比較したときの最も分かりやすい違いは、病院会計準則には一般企業にある「製造原価」という概念が存在しないことです。
また、売上に関する勘定科目も医療や介護の独特な表現がありますが、診療所では病院会計準則に従わず、一般企業の科目体系が主に利用されています。
経理実務で最も異なる点は、病院の場合、売上単価が公定価格であり、その内の多くが国民健康保険団体連合会と社会保険診療報酬支払基金から2か月後に入金されるということです。このため、請求金額からの返戻や査定減、減点などにより、実際の入金額が異なる場合があり、それに合わせて売上を減額修正することが一般的です。
また、医療法人は本来の業務以外にも介護事業などの付帯業務を展開している場合、医療法人会計基準において、事業ごとに損益を区分して把握することが求められます。
病院は多くの部門で構成されているため、病棟別や診療科別の損益を確認し、それぞれの機能に応じてインディケーターとともに課題改善に取り組むことが重要です。
参照元
厚生労働省「病院会計準則」
e-Gov「医療法人会計基準」
医療法人会計基準の概要
医療法人会計基準は厚生労働省令の中に規定されています。大まかにまとめると、以下の要素が含まれています。
全般的事項
総則には、原則的な事項が規定されています。一般的な企業会計においては、7つの企業会計原則が広く知られていますが、医療法人会計基準ではそのうちの3つが明確に記載されています。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 継続性の原則
他にも様々な原則が存在しますが、医療法人会計基準ではこれらの3つが特に重要な原則とされています。
貸借対照表
医療法人会計基準において、貸借対照表の様式に一般の企業と大きく異なる点はほとんどありません。
注意が必要なのは「純資産の部」ですが、資産や負債の部に掲載される項目は、示された様式を基準にして不要な項目を省いたり、適切な科目名があれば変更したり、新しい項目を追加したりしても構いません。
損益計算書
医療法人会計基準における損益計算書は、通常の企業会計とわずかに異なります。留意すべきポイントは以下のとおりです。
- 事業損益の区分
- 本来業務事業損益:医師や歯科医師が勤務する医療機関や介護老人保健施設の損益
- 付帯業務事業損益:医療関係者向けの再教育機関、疾病予防施設、保健衛生業務などの損益
- 収益業務事業損益: 本来業務事業損益と付帯業務事業損益以外の事業損益(例:開設する病院などの業務に支障のない学術研究、専門・技術サービス業などに関する損益)
法人本部などの組織の費用は、本来業務事業損益に含まれます。
- 事業外損益の区分
事業外損益は一括して表示され、事業損益のように細かく区分する必要はありません。分かりやすい表示方法がなされていれば、医療法人の本来の目的が果たされているか、付帯業務や収益業務が本来の医療業務に支障をきたしていないかどうかを外部からも判断しやすくなります。
参照元
e-Gov「医療法人会計基準」
厚生労働省「医療法人会計基準に関する検討報告書」
e-Gov「医療法」
厚生労働省「医療法人の業務範囲」
医療法人会計基準の特徴
医療法人会計基準には、その目的や基準が策定された経緯から、一般の企業会計基準には見られない特有の会計処理規定が存在します。
特定の条件を満たす医療法人の簡便法
これまでの会計慣行から移行する際に確認すべきなのが、医療法人会計基準の注解に記載されている簡便法の適用要件です。具体的には負債総額が前々期の会計年度末日時点で200億円未満の医療法人(社会福祉法人を除く)です。
重要でない事項の処理にかかる時間を最小限に抑えるための指針です。
法人税法では、貸倒引当金の繰入限度相当額が取立不能見込額より小さいケースを除いて、その繰入限度額相当額を貸倒引当金に記録できます。
- 退職給付制度
退職一時金制度では、期末の自己都合要支給額を退職給付債務として扱うことができます。退職年金制度では、最新の年金財政の決算に基づいて数理的な債務を退職給付債務として記録できます。非積立型の退職給付制度では、退職給付債務の金額を退職給付引当金として活用できます。積立型の退職給付制度では、退職給付債務の金額から年金資産を差し引いた額を退職給付引当金として計上することが可能です。
- ファイナンス・リース取引
リース契約の中で、中途解約が不可能であり、かつ、借り手が自己所有の場合と同じ経済的利益を得てコストを負担する場合、通常の売買取引に準じた会計処理が行われます。これは「ファイナンス・リース」と呼ばれます。ファイナンス・リースの中で、借り手に所有権が譲渡されない場合、それは「所有権移転外ファイナンス・リース取引」と呼ばれます。
所有権移転外ファイナンス・リース取引は、原則として、通常の売買取引に準じて会計処理を行う必要があります。これには、リース資産の取得時の資産計上や、決算時の減価償却処理などが含まれます。
ただし、簡便法が認められる法人では所有権移転外ファイナンス・リース取引に関して、賃貸借処理(資産計上や減価償却などは不要)が許容されています。
厚生労働省「医療法人会計基準に関する検討報告書」
企業会計基準委員会「退職給付に関する会計基準の適用指針」
まとめ
病院と一般企業では、基本的な会計の構造は同じですが、会計準則や勘定科目に違いがあります。これは、病院や介護事業独自の特徴を考慮し、貸借対照表や損益計算書における課題を特定し、経営の改善を容易にするためのものです。病院用のERPパッケージを導入することで、これらの違いをスムーズに調整できます。
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業内の人的資源や資産を一元的に統合管理し、経営や業務をより効率的かつ最適化するためのシステムです。
マネーフォワードERPは医療法人会計基準にも対応しています。
ぜひ、導入をご検討ください。
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