• 更新日 : 2023年12月8日

データドリブン経営とは?企業事例5つとメリットも紹介

データドリブン経営とは、蓄積されたデータをもとに企業の戦略や意思決定を行うことです。デジタル化技術の進歩や消費者ニーズの複雑さや多様化、またビジネス変化の目まぐるしいスピードに対応するために必要な方法です。本記事ではデータドリブン経営について、また導入するメリットや企業事例、実現するためのポイントを詳しく解説します。

データドリブン経営とは?

ここでは、データドリブン経営について解説します。データドリブン経営を取り入れることで、迅速な経営判断が可能となります。DXとの違いについても説明しますので、参考にしてください。

データドリブン経営について

データドリブン経営とは、蓄積されたデータを分析し、その結果をもとに戦略や方針を決める経営方法です。これまでは、経営者の長年の経験や勘をもとに経営判断がなされてきました。しかしデータドリブン経営では、データという客観的な指標を使って経営判断する点が大きな特徴です。
データドリブン経営では、経営者としての年月が浅くても、データをしっかりと分析することで迅速な判断が可能となります。昨今の急速なビジネス変化に対応するためにも、欠かせない方法です。

データドリブンとDXの違い

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略です。日本語に訳すと、デジタル革新やデジタル変換という意味になります。
DXとは、データとデジタルテクノロジーを活用して組織全体を変革し、プロセスやビジネスモデルが最適化された状態を指します。DXが企業にとって最適化された状態だとすると、データドリブン経営は、DXを実現するための手段の1つといえるでしょう。

データドリブン経営が注目される背景とメリット

ここでは、なぜデータドリブン経営が注目されるのか、その背景やメリットを4つお伝えします。

多様化する消費者の行動やニーズに対応できる

データドリブン経営が注目されている理由の1つが、多様化、複雑化する消費者のニーズや行動です。
以前であれば、消費者は近くの店舗に足を運び、陳列された商品を見比べ購入していました。現在は、1つの商品を購入するだけでも、多くの人がSNSや口コミのレビューを参考にします。さらに、最安値で買える通販サイトはないかを確認するなど、購入までの行動が以前とは明らかに異なります。
これまでの経営方法では、消費者のニーズや行動を予測し対応するのは難しくなっているのが現実です。データドリブン経営であれば、データをうまく活用することで、多様化する消費者の行動やニーズに対応することが可能です。

複雑化する業務に対応できる

消費者の多様化するニーズや行動に対応するために、当然のことながら業務も複雑化します。消費者のニーズに柔軟に対応するためには、業務やオペレーションも変化せざるを得ないためです。
業務やオペレーションが変われば、従業員の負担が増え、同様にコストも増大します。データドリブン経営であれば、より効率的な業務が可能となり、業務負担やコスト問題を解決できるでしょう。

目まぐるしいビジネス変化に迅速に対応できる

データドリブン経営であれば、目まぐるしいビジネス変化に迅速に対応できます。昨今のビジネス変化は、これまで以上にスピードが加速しています。このような状況の中、競争に打ち勝ち存続し続けるためには、変化を素早く捉え、対応することが必要不可欠です。
データドリブン経営では、膨大なデータを収集し分析することで、迅速に的確な判断ができるようになります。

データによる強みや課題を発見できる

収集したデータにより、自社の強みや課題を発見できる点もメリットの1つです。経営者や従業員の感覚頼りで判断していた部分を、データを分析することで客観的に捉えられます。
これまで気づかなかった強みや課題を把握できれば、新規ビジネスやサービス展開も考えられるでしょう。
データドリブン経営を導入するためのツールも充実してきています。幅広い企業で活用しやすくなっているため、さらなる発展のために導入を検討してみてはいかがでしょうか。

データドリブン経営の企業事例

ここでは、実際にデータドリブン経営を推進している企業を5つご紹介します。ほかの企業がどのように導入しているのか、参考にしてみましょう。

博報堂DYホールディングス

博報堂DYホールディングスは、日本を拠点とする国際的な広告代理店グループです。同社では、データドリブン経営について積極的な取り組みをおこなっています。同社グループのデータドリブンの目標は、生活者起点で企業のマーケティングや事業そのものの変革、さらには社会の変革を目指すというものです。
変革を加速するため、メディア機能に加え、新たに次の3つの機能強化を推進しています。

  • グループのテクノロジー基盤となる「博報堂テクノロジーズ」の設立
  • グループのコーポレート機能の高度化・効率化を推進する新会社の設立
  • グループ連携を促進する経営管理の仕組みの強化

博報堂テクノロジーズは、グループに散財するリソースを集約し、外部から専門の人材を採用し育成に力を入れています。
参考:博報堂DYホールディングス 中期経営計画(2022年3月期〜2024年3月期)

三井情報グループ

三井情報グループでは、事業規模の拡大に向けて次の3つを掲げています。

  • 三井情報グループ一体経営の深化
  • データドリブン経営の進化
  • 業務プロセスの破壊と創造

データドリブン経営については、データの精度の向上と、係数関連業務の効率化と高度化を目指しています。全社KPIの定着と意思決定のために、データの利用を促すとしています。
参考:三井情報グループ 第七次中期経営計画[2024年3月期〜2026年3月期]

京都銀行

金融市場でも消費者ニーズの多様性や異業種からの参入など、取り巻く環境は大きく変化しています。京都銀行では、ビジネスのさらなる展開と新規ビジネス参入を目指し、データドリブン経営の導入を進めているところです。
2019年にはイノベーション・デジタル戦略部を新設し、2022年8月にはDX分野における非金融ビジネス創出のDXビジネス開発部を設けています。さらに2023年2月に「データドリブン推進室」を設け、高度デジタル人材の育成にも積極的です。
同社では、高度デジタル人材を育成することは、データの高精度な分析に不可欠としています。データをより有効に活用し、急速に変化する消費者のニーズや行動に的確に応えることを目的としています。
参考:NTT DATA データドリブン経営への変革を支えるAIプラットフォームおよび、人材育成支援を京都銀行に提供開始

旭化成

繊維や化学品、エレクトロニクス関連素材を扱う旭化成は、2022年に創業100年を迎える企業です。多くの素材を扱う同社では、マテリアル領域における製品ごとの損益情報の把握は大きな課題でした。
たとえば、樹脂製品は製造から加工、販売まで長いプロセスを経て顧客のもとに届きます。ほかの製品も同様で、国内だけでなく海外でも複雑に広がる工場や販売会社をすべて把握するのは困難でした。
これまでは、製品ごとにいくらの利益が生じているのか、どのポイントでの利益が大きいのかを把握するために、製品ごとにExcelで集計したデータを合算するしか方法はありませんでした。
同社は、問題解決のためにNTTデータのAnaplanを導入し、月次での製品別連結損益の可視化を実現しました。今では、5秒ほどで利益シミュレーションの計算が可能となり、現場においても利用が拡大しています。
これは同社が取り組んでいるDXの一例ですが、今後はさらに発展させ、デジタルを活用した新しい価値の提供を最終目標として掲げています。
参考:NTT DATA その事業、本当に儲けられるの?〜旭化成の機能材料事業が目指すデータドリブン経営〜

日本製鉄グループ

日本製鉄グループでは、各製鉄所が保有しているデータを統合集約し、経営レベルから現場まで同じデータに迅速にアクセスでき、高度な意思決定がおこなえるデータ活用を目指しています。
これまで同社では、製鉄現場におけるAI技術やIoTの活用に取り組んできました。今後は、データの収集と蓄積をおこない、データ利用者がデータの意味を正しく理解し、活用できる環境構築に取り組むとしています。
参考:NIPPON STEEL 日本製鉄、NSSOLとともに統合データプラットフォーム「NS-Lib」を構築〜全社のデータを集約、カタログ化し、データドリブン経営を目指す〜

マッキンゼーの2025年のデータドリブン企業予想とは?

マッキンゼーによる2025年のデータドリブン企業予想とは、データと技術革新が企業やビジネスモデルに大きな影響を及ぼすと示唆するレポートのことです。
レポートの冒頭で、2025年には技術の進歩やデータ価値についての認識、データリテラシーの向上により、データドリブンの意味自体が変化していると説明しています。また、データドリブン経営を迅速に導入する企業は、データから最高の価値を引き出せるだろうとのことです。
レポートでは、2025年のデータドリブン型企業は次の7つの特徴を備えていると説明しています。

  • あらゆる意思決定、対話、プロセスにデータが組み込まれている
  • リアルタイムでデータの処理および配信ができる
  • より柔軟な方法でデータを整理し活用できる
  • データを商品として扱えるデータ運用モデルが実現している
  • 最高データ責任者(CDO)の役割が拡大している
  • データエコシステムに参加している
  • 自動的にプライバシー、セキュリティ、レジリエンスが強力に管理されている

すでに多くの企業が、このような特徴をいくつか示しているとのことです。データドリブン経営は、今後の企業活動の発展に欠かせません。正しい投資をおこない、いち早くデータドリブン経営に着手する必要があるでしょう。
参考:McKinsey&Company The data-driven enterprise of 2025

データドリブン経営を実現するためのポイント

ここでは、データドリブン経営を実現するための方法を解説します。また導入したデータドリブン経営を成功させるためには、どのようなポイントに気をつければよいのかもあわせてお伝えします。

データドリブン導入の領域を決定

まずは、どの領域でデータドリブンを導入するのかを決定します。データドリブンを活用するためには、データ化しやすい領域で導入する必要があります。すべての領域で、データ化できるわけではありません。
たとえば、販売数や顧客数などデータとして扱いやすい領域は、積極的に取り入れるべきでしょう。しかしながら顧客の感情に訴える重要な領域は、データ化するのは難しい状況です。
たとえ取り入れたとしても、有効に運用するのに想像以上の労力がかかり、思うような結果を得られない可能性が高いでしょう。自社において、どの領域で、どのような情報をデータ化するのかの見極めが重要です。

データの蓄積・管理する基盤の構築

データ化する領域を決定した後は、データ蓄積と管理に取りかかります。膨大なデータを集めても、効率よく管理できなければ意味がありません。データを管理するために、データウェアハウス(DWH)やデータマネジメントプラットフォーム(DMP)などが有効です。
データウェアハウスは、データを蓄積・管理するプラットフォームです。データマネジメントプラットフォームは、管理されたデータをマーケティング施策に利用できるように変換する役割を果たします。
自社の目的にあったものを選択し、膨大なデータを活用できる基盤づくりを構築しましょう。

データの可視化や分析

次に、集めたデータを理解しやすいように可視化する作業が必要です。数字のみではわかりづらいため、表やグラフにし、パッと見て理解できる形にします。
可視化したデータを分析し、経営戦略に役立てます。ここはデータドリブン経営をおこなううえで、重要なポイントです。データから消費者の行動やニーズ、また問題点を探ります。分析する際は、最初に設定した目的を頭に入れておこなうことが大切です。
さまざまな分析ツールが出回っているため、利用しやすいツールを選び、データをより有効に活用しましょう。

施策の策定・実施・検証・改善

分析結果から、どのような施策をおこなうのかを決定します。この過程では、いくつかの候補が出るかもしれません。候補の中からどの施策にするかを決める際は、施策の影響や実行の難易度などを比較するポイントを明確化すると判断しやすくなります。
施策を決定したら、実際に実施します。ここで大切なことは、やりっぱなしで終わらせないことです。実施後は消費者の反応を再度データとして収集し、問題点を洗い出して改善します。
施策が有効かどうかは、実際に実施してみないとわかりません。何度も成功と失敗の結果を検証し、次へつなげていくことが大切です。

成功のためのポイント

データドリブン経営を成功させるためには、次の4つのポイントが重要です。

  • 専門的人材の育成
  • 企業文化としてのデータドリブン定着
  • スモールスタートで実施
  • 規制や消費者感情への対応

データドリブン経営を導入し、自社にとって最適な状態でデータを活用するには、専門的な人材が必要です。部署ごとに人材を置くのではなく、部署をまたぎ横断的に対応できる人材がいなければなりません。
データドリブン経営導入のためのコンサルタントに依頼するのではなく、自社内で推進チームを立ち上げ、中長期的な人材育成が必要です。
データドリブンを企業文化として根づかせることも重要です。経営陣や推進チームだけでなく、全社内でデータを活用した意思決定がなされなければなりません。収集したデータを活用しやすく提示し、データに基づいた決定を尊重する企業風土の育成が必要です。
とはいえ、企業内で一斉にデータドリブンを導入するのは現実的ではないでしょう。全社内で活用できるデータ運用には、時間と労力がかかります。
このようなケースでは相性の良い部署から始めるのがおすすめです。改善をおこないながら少しずつほかの部署へ広げていくことで、スムーズに浸透していくでしょう。
データドリブン経営をおこなう場合、消費者の大切なデータを扱っている点を常に意識することが重要です。近年では、世界中で消費者の個人情報に対する規制が厳しくなっています。
データへの不正アクセスや流出のニュースは後を絶たず、消費者自身がデータ保護に敏感です。消費者が納得いく形でデータを収集し、管理・運用しなければなりません。そのためにも、消費者との適切なコミュニケーションが重要です。

データドリブン経営の実現をサポートする具体的なツール

データドリブン経営の実現においては、以下に挙げるツールを活用していくことが効果的です。

  • DMP
  • BI
  • データレイク
  • ERP

DMP

DMPは「Data Management Platform」の略であり、顧客データの管理やマーケティングへの利活用を行うためのプラットフォームを指します。
DMPには、自社内のみで機密情報を含めたデータを一元管理する「プライベートDMP」や、外部からの提供データもまとめて一元管理する「パブリックDMP」といった種類があります。
DMPの活用によって、データに基づいて顧客行動を正しく理解でき、顧客ターゲティングの精度向上や広告配信効果の最大化などを図れるようになるでしょう。

BI

BIとは「Business Intelligence」(ビジネスインテリジェンス)の略で、企業内に蓄積されたさまざまなデータを分析・可視化するためのツールのことです。
顧客数の推移や商材別の売上高といった各種データをリアルタイムに可視化でき、データドリブン経営の実現に役立ちます。

データレイク

データレイクとは、各部門や各拠点から集めたあらゆるデータを元の形式のまま保存できるレポジトリ(格納場所)を指します。
データレイクによって、多種多様なデータを一元的に管理でき、BIツールなどの周辺システムへのデータ連携も可能となります。

ERP

ERPは「Enterprise Resource Planning」の略であり、ヒト・モノ・カネ・情報など経営に関するあらゆるリソースを有効活用して、経営効果を最大化させるための計画・考え方を指します。
また、リソースの有効活用による経営効果の最大化を支えるためのシステムを指すことも多く、ERPでは例えば販売データや生産データ、会計データなどをまとめて管理することができます。
ERPを活用することで、企業内のさまざまなデータを一元管理できるため、データドリブン経営の実現につながるでしょう。

まとめ

これからは、多様化・複雑化する消費者の行動やニーズに対応するために、データドリブン経営は欠かせません。これまでのような経営者の勘に頼るのではなく、客観的なデータから先を読み、企業の発展を目指す必要があります。
データドリブン経営によって、経営上の意思決定の迅速化や顧客ニーズの深い理解、客観的な自社分析などが期待できます。また、リモートワークの促進や生産性の向上といった働き方改革にも貢献するでしょう。
厳しい競争を勝ち抜くためにも、データドリブン経営の導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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