- 更新日 : 2024年7月12日
売上管理とは?基礎知識や管理上のポイント、効率化に役立つツールを解説
売上管理とは、自社の売上目標の達成を目的に、売上目標の達成率や売上の前年比・前期比などを管理する活動を指します。
売上管理では、自社にとって必要な管理項目を明確にした上で、管理ルールや管理体制を事前に定めて運用していくことが重要です。本記事では、売上管理の概要や主な管理項目、管理上のポイントなどについて解説します。
目次
売上管理とは
はじめに、月次処理の概要や目的について解説します。
売上管理とは、企業が売上目標を達成するために、売上状況や達成率などを日常的に管理する活動のことです。そして売上管理の目的は、利益を最大化することです。
多くの企業では、年度ごとに売上・利益目標を設定し、達成を目指しています。
しかし、ただ目標を設定するだけでは「現在目標に対してどのような状況なのか」を把握できません。
売上管理を行うことで、ある一定期間(日次・月次・四半期など)に対して以下のような情報を確認することができます
- 商品の売れ行き
- 売上を立てるためにかかったコスト
- 目標に対する進捗
- 各値の前年比(前月比)
なお、売上管理を確実に行うためには、日々の売上状況をこまめに記録していくことが大切です。
売上管理は、ビジネスにおいて重要な役割を担っています。
売上状況を管理・分析することで、自社の課題などを明らかにできます。
また、その課題を解消する施策は、企業の競争力を向上させ、顧客満足度を高め、売上目標を達成するきっかけともなります。
売上状況管理の切り口としては、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 商材別
- 顧客別
- 部門別
- 担当者別
- 期間別
複数の観点から売上状況を把握することで、売上目標達成に向けた課題の把握や、改善施策の検討を行えるでしょう。
売上管理で主に管理する項目
売上管理では、主に以下のような項目を管理します。
- 売上高
- 売上目標および目標に対する進捗状況
- 売上の前年比・前期比
- 原価や経費
売上高
売上管理においてまず必要となるのが売上高です。売上金額や商品・サービスの品目、販売数、顧客・得意先情報、売上時期などの管理を行います。
売上目標および目標に対する進捗状況
売上目標および目標に対する進捗状況も売上管理で重要となる項目です。
期初に立てた売上目標と実際の売上高を月単位や四半期単位などで比較することで、売上目標に対する進捗状況の確認ができます。
売上ペースが目標から大きく遅れている場合は、進捗スピードを速めるための改善施策の検討が必要となるでしょう。また、進捗が想定よりも大幅に進んでいる場合は、当初立てた売上目標の妥当性を改めて検証することも大切です。
売上の前年比・前期比
売上の前年比や前期比も管理することで、新たな施策の効果などを検証できます。仮に売上が前年や前期と比べて大幅に落ちている場合は、マーケティング施策や営業戦略の見直しも必要になります。
ただし、事業内容や組織構成を大きく変更した場合、前年・前期との比較から施策の効果を検証することは難しくなるため、注意しましょう。
原価や経費
原価や経費は売上とは直接関係しないものの、売上総利益(粗利)を把握する上で必要な項目となります。
業種によっては原価がはっきりしないこともあるため、その場合は過去の原価実績を参照するなど、社内ルールを決めて管理することが重要です。
売上管理の手順
ここでは、売上管理の手順について解説します。主な流れは次のとおりです。
- 売上目標の設定
- 売上データの入力
- 売上データの追跡および分析
- 分析結果のフィードバックおよび改善
売上目標の設定
売上管理のファーストステップは、売上目標の設定から始まります。
売上目標の設定は、会社全体の戦略方針や経営計画などをもとに、部門ごとに行います。
目標を設定する際は、過去の売上データをはじめ、市場環境や競合他社などの外的要因も考慮することが重要です。
また実現性があり、競合や市場状況を踏まえてストレッチが効いた売上目標を設定する必要があります。
売上データの入力
次は売上データの入力です。
売上管理を行うためには、日々発生する売上データをこまめにもれなく入力することが重要です。データが不足していたり、誤っているデータを分析に用いたりすると、自社の課題を見誤ってしまう恐れがあるためです。
なお、売上データの入力は従業員の労力を必要とします。小売業などの場合は、POSシステムなどから売上データを自動連携すると、効率的な管理が実現可能です。
売上データの追跡および分析
売上データが蓄積されてきたら、それらのデータを追跡および分析しましょう。
売上管理において、この工程は非常に重要な役割を持っています。
なぜならば、どのような分析を行うかによって、企業のビジネス状況が大きく変わる可能性があるからです。
日々入力された売上データは、蓄積するだけでは意味を成しません。定期的に売上データをチェックした上で、傾向やパターンを分析することが重要です。
なお、売上はさまざまな要因の影響を受けます。そのため、売上データを中心に幅広く分析を行い、経営上の課題を抽出するようにしましょう。
分析結果のフィードバックおよび改善
最後に、分析結果のフィードバックおよび改善を行います。
売上データを分析すると、自社の課題や弱みを抽出することが可能です。
それらの課題や弱みを解消するためには、改善施策を検討する必要があります。また計画した改善施策を確実に実行し、その効果を測定することも重要です。
このようなサイクルは1回でゴールを迎えるわけではありません。
課題の解消を実現するまで、幾度にもわたり繰り返し取り組みを継続することで、売上目標のクリアを目指しましょう。
売上管理を実施する上でのポイント
ここでは、売上管理を実施する上でのポイントとして、以下の点を解説します。
- テンプレートを用意する
- 事前にルール・体制を決めておく
- 正確にデータを管理する
- 売上管理の状況を定期的にチェックする
- 状況に応じて対策を検討する
- 効率的な分析方法を確立する
テンプレートを用意する
売上管理の対象項目をまとめたテンプレートを作成することがポイントのひとつです。
テンプレートを作成しておくことで、管理対象となる項目の具体化ができるため、項目忘れや入力漏れを防止することが可能です。
また、売上管理を行う担当者が変更となった場合でも、テンプレートがあれば引き継ぎがスムーズに行えます。
事前にルール・体制を決めておく
売上管理は複数人で行うケースもあるため、事前に社内のルール・体制を決めておくこともポイントです。例えば、金額の単位や数値を入力する箇所、備考欄の書き方などのルールを統一しておくとよいでしょう。
また、担当者の氏名なども明記し、更新する箇所の分担をはっきりさせておくことで管理漏れを防げます。
正確にデータを管理する
売上管理を実施するためには、正確なデータ管理が前提となります。
従業員が入力した売上データの数値に誤りや入力漏れがあったりすると、正しい分析を行えません。また、ガバナンス的な観点からも、改ざんができない状態にしておく必要があります。
昨今、ビジネスのスピードは一段と加速しています。そのような環境の中でより効果的な売上管理を行うためには、正確かつリアルタイムなデータ管理を行うことが重要です。
売上管理の状況を定期的にチェックする
売上管理は数値の入力だけで終わりにせず、定期的に状況をチェックすることも重要です。売上管理の状況をこまめに確認することで、売上に大きな変動が生じた際の要因分析を適切に行えるようになるでしょう。
例えば、関係者を集めた定期的なミーティングを開催し、売上管理表の確認や、現況の要因分析を行っていくことなども重要です。
状況に応じて対策を検討する
売上管理の状況を定期的に確認するとともに、状況に応じた対策検討を行うことも大事なポイントとなります。
売上管理の大きな目的は自社の売上目標を達成することであり、売上目標達成のためには追加の施策などが必要となる場合も考えられます。
例えば、新規顧客からの売上が計画を大きく下回っている場合は、新たな顧客層の開拓やマーケティングチャネルの追加などを検討しましょう。
反対に、売上進捗が計画よりも順調に進んでいる場合は、うまく行った施策内容を分析し、今後の施策内容に反映していくことが大切です。
効率的な分析方法を確立する
効率的な分析方法の確立も、売上管理を行うにあたり重要なポイントです。
売上管理の方法によっては、分析に時間を要するケースがあります。例えば各部門がそれぞれのExcelで売上を管理するなど、分散管理を行っている場合は、売上データの収集に時間を要してしまいます。さらにその先の「売上データの整理」や「分析の実行」を考えると、多大な時間や労力がかかることが分かるでしょう。
有益な売上管理を実施するためには、売上データをこまめに分析することが求められます。しかし、分析にコストがかかる状態では、分析が疎かになりがちです。意味がある売上管理を実施するためにも、可能な限り効率的な分析手法を確立しましょう。
売上管理の効率化につながるツール・システム
売上管理を効率化するには、以下のツール・システムを活用していくことが効果的です。
- エクセル
- 会計ソフト
- ERP
本章では上記ツール・システムの解説に加えて、それぞれのメリット・デメリットや事例などを紹介します。
エクセル
簡単に売上管理表を作成して管理したい場合は、エクセルが始めやすいでしょう。エクセルであれば新たなシステムの導入などが不要であるとともに、自社の用途に応じてフォーマットのカスタマイズも可能です。
一方で、エクセルの関数スキルなどが求められる点や、最初に売上管理表を作成した担当者に管理が依存しがちな点が課題であるといえます。
会計ソフト
会計ソフトを活用することで、効率的な売上管理が可能です。会計ソフトであれば、日々の売上データなど売上管理に必要な情報をまとめて管理でき、前年・前期とのデータ比較や商材別の売上管理などもスムーズに行えます。
また、会計ソフト内にあるデータをCSV形式などで出力し、エクセルに貼り付けるような活用方法もあります。
ERP
ERPを導入することで、売上管理だけでなく人事管理や勤怠管理、経費精算といった社内業務の一元管理をも実現できます。
全社最適の視点で、売上を含めた社内データの一元化を行いたい場合は、ERPの活用が効果的です。
また、会計ソフトなど他システムとの連携も可能であるため、自社のニーズに合った形での導入もできます。
ERP導入の詳細に関しては、以下の関連記事も併せてご確認ください。
各ツール・システムのメリット・デメリット
各ツール・システムには、さまざまなメリットおよびデメリットがあります。具体的には次のとおりです。
メリット | デメリット | |
エクセル | ・エクセルさえあれば手軽にスタートできる ・誰でも操作できる | ・基本的にファイルごとの管理となるため売上データが分散し、統合・整理するために労力がかかる ・ファイルを共有している場合、意図せずデータを上書き・削除されるリスクが高い |
会計システム | ・ERPと比較すると低コストで導入可能 ・レポートなどの分析機能が充実している | ・エクセルと比較すると高コスト ・業務ごとにシステムが分かれるため複雑になりがち |
ERP | ・データが一元化されているためリアルタイムな売上管理を実現可能 ・強力な分析機能を備える | ・(オンプレミス型のERPの場合は)コストがかかる |
エクセルによる売上管理は、エクセルさえあれば手軽にスタートできる点がメリットです。
しかし、エクセルによる売上管理は、企業規模が拡大するほどさまざまな課題が発生する点に注意が必要です。一般的にエクセルで売上管理を行う場合、部門ごとに別々のファイルで管理します。部門で一つのファイルを扱う際は、エクセルの機能である「ファイル共有」を活用すれば複数ユーザーによる同時編集も可能ですが、誤って他人の更新を上書きしてしまう恐れがあります。
また、全社的なデータを確認するためには、各部門が保有する売上データを統合・整理する必要がありますが、この作業には大きな労力を要する点もデメリットのひとつです。
会計ソフトやERPによる売上管理は、エクセルと比較すると導入コストが必要となるものの、それぞれの担当者が同時に・安全に利用できます。さらにレポート機能が充実しており、いつでも必要な情報をリアルタイムに確認可能です。なお、ERPであれば「仕入情報管理システム」や「経費管理システム」から「会計システム」への連携が可能であるため、効率的な売上管理を実現できます。
もちろん、会計システムやERPは売上データを厳密に管理しているため、ユーザーの操作履歴なども確認可能であり、改ざんに強い点も特徴のひとつです。
効果的な売上管理の事例
会計システムやERPの活用により、効果的な売上管理の実現に成功した事例は豊富に存在します。
日本全国・海外3ヵ国に飲食事業を展開するコズミックホールディングス様は、マネーフォワード クラウド会計Plusを導入しました。以前はグループ会社それぞれで異なる会計システムを利用していましたが、これを統合したことによりグループ全体のリアルタイムな売上管理の実現に成功したのです。
また、24時間ジムとリラクゼーションサロンを展開する株式会社ソルテラス様は、1日2時間以上のデータ入力を行っていました。しかし、マネーフォワード クラウドの導入に加えてPOSデータを連携したことによって効率的な売上管理が実現でき、1日2時間かかっていた作業が15分まで短縮されました。
まとめ
売上管理とは、企業の売上目標を達成するために、売上目標の達成率などを日々管理する活動を指します。売上管理の大きな目的は自社の売上目標を達成することであり、そのために商材別や顧客別、期間別などの切り口で分析を行うことが重要です。
売上管理では、主に売上高や売上目標、目標に対する進捗度、売上の前年比・前期比などを管理します。売上管理を行ううえでは、売上管理表のテンプレートを作成し、管理対象項目を明確にしておくことが大切です。
また、事前に管理ルールや管理体制を決めておくとともに、定期的な売上管理の状況確認や要因分析、対策検討を行っていくことがポイントとなります。売上管理を効率的に行うには、エクセルや会計ソフト、ERPなどのツールの活用も検討していくとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
お役立ち資料
関連記事
データドリブン経営とは?企業事例5つとメリットも紹介
データドリブン経営とは、蓄積されたデータをもとに企業の戦略や意思決定を行うことです。デジタル化技術の進歩や消費者ニーズの複雑さや多様化、またビジネス変化の目まぐるしいスピードに対応するために必要な方法です。本記事ではデータドリブン経営につい…
詳しくみる価格弾力性とは?計算方法や価格設定への活用方法、事例を解説
価格弾力性とは、ある商品の価格が変化したときに、その商品の需要や供給がどれだけ変動するかを示す指標のことです。 企業は価格弾力性を効果的に活用することで、需給のコントロールや利益の最適化が可能になります。 本記事では、価格弾力性の概要や測定…
詳しくみる業績管理の重要性!管理すべき内容や具体的な進め方、ツールを解説
競争が激化する昨今、ビジネス環境で成功するためには「業績管理」が不可欠です。正確かつ効果的な業績管理が実現できれば、市場での競争力向上やリソースの最適化、コスト削減、生産性の向上、決算の迅速化など、企業は多くの利点を享受できるでしょう。 本…
詳しくみる割引現在価値とは?計算式やビジネスでの応用例などを解説
割引現在価値とは、時間経過による変動を考慮して将来の資産価値を算出する方法です。 M&Aや不動産投資をはじめとする企業の会計基準などでは、将来の収益性やリスクを考慮して適切な価値を算出することが重要であり、その際に利用されるのが割引…
詳しくみる人的資本経営の基本 取り組みの流れやポイントを解説
市場環境が絶えず変動し企業間競争が激化していく状況の中で、いかに社員の能力やモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させるかは、多くの企業が直面する大きな課題となっています。 そんな中、人的資本経営という概念が注目されるようにな…
詳しくみるESGとは?概要と企業に求められる取り組みについて解説
既に定着化したキーワードといえるESG。企業には具体的にどのような取り組みが求められているのでしょうか。 この記事では、企業が行うべきESGの取り組み例や、当社のESGに対する取り組みについてご紹介します。 ESGとは? ESGとは、Env…
詳しくみる