• 更新日 : 2023年12月28日

バックオフィスとは?業務内容や課題、効率化するための方法などを解説

バックオフィスとは、経理や人事、法務、総務など、企業活動を後方から支える職種や業務を指します。
直接利益を生み出さない部門ではあるものの、企業活動を営むうえで不可欠な存在です。バックオフィスには専門性が求められる職種も多いため、業務の属人化や特定の担当者の業務量増加などが課題として挙げられます。本記事では、バックオフィスの概要や課題、重要性、バックオフィス業務を効率化するための方法・ステップ、ユースケースなどについて解説します。

バックオフィスとは

はじめに、バックオフィスの概要やフロントオフィスとの違い、バックオフィスの具体例、一般事務との違いについて解説します。

バックオフィスの概要

バックオフィスとは、「Back Office(後方オフィス)」という言葉が意味するように、表立って顧客と対面せずに後方からサポートするオフィス業務や職種を総称した用語です。
また、直接的な利益(=売上)を生み出さない間接部門などがバックオフィスと呼ばれることもあります。

フロントオフィスとの違い

バックオフィスの対義語として「フロントオフィス」があります。
フロントオフィスは、顧客営業や販売担当といった顧客と直接対面する職種、および売上などの直接利益を生み出す部門などを指す用語です。

バックオフィス業務の具体的な例

バックオフィス業務の具体的な職種や部門としては、以下が挙げられます。

財務・経理部門

企業活動で必要な資金管理を行います。
たとえば、財務諸表の作成や決算作業、資金調達、税金の計算などです。

人事部門

社内の人材管理や労働環境の整備などを行います。
たとえば、採用活動や労働時間の管理、人材配置、評価制度の整備、人材育成などです。

総務部門

社員が働きやすいようにオフィス環境の整備を行います。
たとえば、備品管理やオフィスビルの防災に関する企画・主導、入退室ルールの整備などです。

法務部門

企業活動における法律面を管理します。
たとえば、契約書の確認や知的財産権の管理、社内のコンプライアンス教育などです。

情報システム部門

社内のIT資産やネットワーク環境などを管理します。
たとえば、パソコンやモバイル端末の管理、社内システムの保守・運用などです。

広報部門

社内活動の外部発信や自社のブランディング活動を行います。
たとえば、取材対応や社外イベント企画、広報誌の作成などです。

一般事務など

特定の専門職種ではなく、各部門や担当者をサポートするための職種です。
たとえば、データ入力や電話対応、書類のファイリングなどが挙げられます。

バックオフィスと一般事務の違い

バックオフィスと一般事務は混同される場合もありますが、両者の位置づけは異なります。前述のとおり、一般事務はバックオフィスの一部であり、バックオフィス業務は経理や法務などより幅広い業務を指しています。

直接利益を生み出す部門ではないものの、それぞれの部門が専門的な役割を果たしており、企業活動において不可欠な存在です。

バックオフィス業務における主な課題

ここでは、バックオフィス業務における主な課題として、以下の3点について解説します。

  • 業務が属人化しがち
  • 業務量のコントロールが難しい
  • 非効率な業務プロセスとなっている

業務が属人化しがち

バックオフィス業務には、経理や法務、情報システムなど、専門性の高い職種が多く集まっています。そのため、特定の社員が長年担当しているケースもあり、業務が属人化しがちです。
業務の遂行を一部の担当者に依存してしまう属人的な状況を解消するためには、業務の可視化やマニュアル化が重要となるでしょう。

業務量のコントロールが難しい

バックオフィス業務は、経理部門の決算作業や情報システム部門のシステムトラブル対応など、時期やタイミングによって業務量の差が大きい点も課題です。

システム面やコンプライアンス面などのトラブルを完全になくすことは難しく、トラブルが生じると突発的に業務負担が大きくなることもあります。

専門的な職種であるため人材の配置替えも容易ではなく、少数の担当者で対応しなければならない場合も考えられます。

非効率な業務プロセスとなっている

バックオフィス業務では請求書や契約書などを紙で作成・管理し、非効率な業務プロセスとなっているケースが依然として残っている点も課題です。

経済産業省の「DXレポート2 中間取りまとめ」によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進指標の診断に回答した企業のうち9割以上が、業務のデジタル化を含めたDX推進に未着手または散発的な実施に留まっていることが分かります。

新型コロナウイルスの影響でDX化が推し進められた後でも、書類や押印のデジタル化といった環境変化への対応ができていない企業が少なからず存在しているのです。

参考:経済産業省「DXレポート 2 中間取りまとめ

バックオフィスを効率化する重要性

バックオフィスの効率化は企業全体に多くのポジティブな影響を与えるため、ビジネスにおいて不可欠です。
ここでは以下の4つの観点で、バックオフィスの効率化の重要性について説明します。

  • コスト削減
  • 生産性の向上
  • エラーの減少
  • 競争力の強化

コスト削減

バックオフィス業務を一部自動化し、請求書や人事データなどの単純なデータ入力作業を効率化します。従業員の手作業を減らすことで、人件費などのコスト削減につながります。

また、単純作業の自動化と同時にプロセスを最適化することにより、無駄なステップや待ち時間を削減し、リソースをより有効に利用できるようになります。

生産性の向上

ERPなどのデジタルツールやクラウドベースのシステムを利用すると、リアルタイムで情報にアクセスすることが容易になり、生産性の向上につながります。

さらに、繰り返しの作業やルーチンとなっているタスクをRPAなどで自動化することにより、作業時間の短縮と効率化が実現できます。

エラーの減少

データ入力や処理の自動化は人手によるエラーを排除し、データ品質を向上させます。

また、デジタル化された環境では記録やログが残るため、トランザクションやプロセスが追跡可能になり、誤りの発見や修正が容易になります。

競争力の強化

バックオフィス業務を効率化することで、データ収集および分析をする余地が生まれます。組織の過去のパフォーマンスや傾向を把握すれば、将来の戦略策定に役立てることができるでしょう。

またERPツールの導入などのデジタル化を行うことでリアルタイムなデータへのアクセスが可能となり、的確な意思決定を迅速に行うのに役立ちます。

バックオフィス業務を効率化する方法

バックオフィス業務を効率化するためには、以下のような方法が効果的です。

  • 業務をアウトソーシングする
  • ERPを導入する
  • プロセスの自動化を行う
  • ペーパーレス化などのデジタル化を進める

業務をアウトソーシングする

バックオフィス業務を効率化する方法のひとつに、業務のアウトソーシングが挙げられます。バックオフィス業務の担当者が少ない場合や、業務量が多く困っている場合などに有効な方法です。

たとえば、単純なデータ入力作業や電話対応、書類のファイリング作業などであれば、専門性は不要であるためアウトソーシングしやすいでしょう。法務や経理、情報システムなどの専門的な職種に関しても、専門の業者に委託することで社内の業務を効率化できる場合があります。

ただし、業務ノウハウが属人化している場合はアウトソーシングが難しくなる点や、社内にノウハウが蓄積されにくくなる点には注意が必要です。

ERPを導入する

会計や人事など基幹業務に関わるバックオフィス業務については、ERPを導入して効率化を図ることも有効な手段です。ERPを導入することで、社内データをシステム上で一元管理でき、業務の属人化や非効率性の解消につながります。

ERPの詳細については、以下の関連記事も併せてご確認ください。

また、ERPの中でもSaaS型ERPであれば契約後すぐに使うことができるため、バックオフィス業務が滞るリスクを軽減しつつ、業務の効率化が図れます。

SaaS型ERPの詳細については、以下の関連記事も参照することでより一層理解が深まるでしょう。

プロセスの自動化を行う

プロセスの自動化には、ワークフロー自動化ツールの導入が効果的です。重複作業や定型業務などを効果的に自動化することができ、スムーズな業務の進行が可能になります。

同時にルールベースも見直すことで、ワークフロー自動化ツールを導入する効果が上がります。たとえば、ワークフロー自動化ツールの導入に伴ってプロセスを検討する際、ルーチンワーク全体のルールを整理し、決められたルールに基づいて自動的に判断や処理を行うことで、意思決定の効率を向上させることができます。

ペーパーレス化などのデジタル化を進める

ペーパーレス化では電子文書管理システムの導入をすることが多く、その際、紙の文書を電子形式に変換し、電子文書管理システムに格納します。これにより、文書の検索・共有・保存が容易になります。

バージョン管理やアクセス制御などのセキュリティ機能も組み込まれていることが一般的なため、単純な業務効率化以外の効果も見込めます。

併せてデジタル署名の導入をすれば、さらにペーパーレス化が進みます。署名が必要な文書に対して物理的な印鑑や手書きによる署名を廃止し、デジタル署名を導入することで、紙の署名プロセスが省略できます。これにより、承認プロセスが飛躍的にスムーズになります。

これらのさまざまな手法を組み合わせて導入することで、バックオフィスの生産性が上がり、業務プロセスの効率が向上します。ただし、デジタル化の導入にはセキュリティ対策や従業員のトレーニングなども考慮する必要があります。

バックオフィス業務を効率化するステップ

バックオフィス業務を効率化するためには、以下のステップを検討し、段階的に進めることが重要です。適用する業務や組織の状況によってステップの順序は変わることがありますが、一般的な手順は以下の通りです。

業務の棚卸し・分析

現行の業務プロセスを詳細に分析・整理し、どのプロセスが最も時間とリソースを消費しているかを特定します。ボトルネックや非効率なステップを明確にし、改善の余地があるかどうかを分析します。

解決策の検討

業務の棚卸し・分析を終えたら、効率化のインパクトが大きい業務から優先して検討を進めましょう。
主に以下の3点を検討する必要があります。

  • ERPの適用などで自動化できる業務はないか
  • 外部に委託できないか
  • ペーパーレス化できる業務はないか

実装・評価・モニタリング

対象業務と施策が決まったら、実行に移すためのスケジュールを決定します。施策の実行には、システムの変更に加えて従業員のトレーニングの実施なども含まれます。

ただし、従業員や部門によっては、業務プロセスが変更となることに抵抗を示したり、繁忙期などによりうまく定着しなかったりする場合があります。そのため、新しいシステムやプロセスを導入する際には、従業員への丁寧で適切なトレーニングとサポートが不可欠です。

そして、効率化の施策を実施した後も、定期的な評価と改善を行うことが重要です。
また、従業員や利害関係者からのフィードバックを積極的に取り入れ、継続的な改善を図りましょう。これにより、新しいツールの有効活用とスムーズな移行が促進されるでしょう。

ユースケースの紹介

最後に、効率的なバックオフィス導入のユースケースを紹介します。

バルス株式会社

バルス株式会社は会社設立に伴い、連携が強化されたバックオフィスシステムを模索しており、併せて内部統制の強化や、業務の属人化・情報の分散が起こらないバックオフィスの構築を目指していました。

そこでマネーフォワード クラウドを導入し、必要なシステムを段階的に拡張してIPO時に必要とされる内部統制の構造にも耐えうる体制構築に成功しています。

当初は会計を中心とした人事などの各種コーポレートに関するシステムの導入を検討していたのですが、途中でマネーフォワード クラウド会計Plusに移行し、承認機能やログの管理を図って内部統制の強化を実現したそうです。
また社内システムでは、給与システムと年末調整システムの間を連携させることでミスが無くなり、入力工数の削減につながった例などもありました。
外部とはAPI連携を用い、銀行・クレジットカードのデータとの接続を行い、計上に関するミスを防げるようになったとのこと。
今では、一部のCSV加工や、入退社に伴う個人情報部分の手作業以外、ほぼすべての業務を自動化することができています。

引用元:システム間の連携でバックオフィス全体の効率化と内部統制の強化を実現

株式会社KOLテクノロジーズ

株式会社KOLテクノロジーズは、企業規模の拡大に伴い、バックオフィスで扱う情報を一元管理したいと考えていました。同時にデジタル化によって内部統制も強化できると考え、バックオフィスの一元化を図りました。

はじめは、会社の規模に合わせてマネーフォワード クラウド会計とマネーフォワード クラウド経費を導入し、スモールスタートをしました。その後は、マネーフォワードのシステム間連携も含めて段階的に拡張していけるという特徴に合わせて、マネーフォワード クラウド会計Plusへの移行へと至りました。

このように2段階の導入を経て、バックオフィスのデータをすべて連携することができ、月次決算が従来の半分の期間で完了できるようになるなど、大きな効果が出ています。

引用元:マネーフォワード クラウドでバックオフィス業務を完結!

まとめ

バックオフィスとは、営業などとは異なり顧客と直接対面せず、後方から企業活動を支える業務や職種を指します。
たとえば、経理や総務、人事、法務、情報システム、一般事務などが挙げられます。

バックオフィス業務は専門的な職種も多く含むため、業務が属人化しがちな点が課題です。また、業務量をコントロールしにくい点や非効率なアナログ管理なども課題であるといえます。

バックオフィス業務を効率化するためには、業務のアウトソーシングやERPの活用が効果的です。特にSaaS型ERPであれば、契約後すぐに使うことができるため、バックオフィス業務が滞るリスクを抑えつつ業務を効率化できるでしょう。


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