- 更新日 : 2024年7月12日
生産性指標とは?種類や計算方法、生産性向上への活用戦略を解説!
生産性指標とは、企業・組織の生産性を測定するための指標を指します。
主に「労働生産性」や「付加価値生産性」などの種類があり、それぞれ具体的な計算式があるため、生産性を定量的に測定することができます。
本記事では生産性指標の概要や種類、計算方法に加え、生産性向上の戦略や事例を解説します。
目次
生産性指標とは
まずは生産性指標の概要と、昨今の日本における生産性の動向を解説します。
生産性指標の概要
生産性指標は、企業が限られた資源(ヒト・モノ・カネ)をいかに効率的に活用し、成果を上げているかを示す「生産性」を測る指標です。
生産性は、「生産要素の有効利用の度合い」とも定義され、主に「労働生産性」や「付加価値生産性」、「全要素生産性」などがあります。
企業はこれらの指標を利用して、経営資源の効果的な活用度を測り、生産性の向上を目指します。
昨今の日本における生産性の動向
日本生産性本部が発表している「日本の労働生産性の動向」によると、2022年度の日本の労働生産性は、名目・実質ともに増加しています。
時間当たり名目労働生産性は5,110円と1995年度以降で最高値を記録し、実質労働生産性上昇率も前年度比+ 0.7%となりました。
また、1人当たりの実質労働生産性上昇率は+ 1.0%であり、前年度の+ 2.6%と比較すると上昇率は鈍化しているものの、2年連続で上昇しています。
このように日本の生産性は年々上昇傾向にありますが、生産性向上の取り組みを続けなければ、市場競争力の低下が懸念されます。
参考:公益財団法人日本生産性本部「日本の労働生産性の動向 | 調査研究・提言活動」
生産性指標の種類と計算方法
生産性指標は主に、「労働生産性」「付加価値生産性」「全要素生産性」の3つであり、基本的に「アウトプット(産出)÷インプット(投入)」の計算式で算出できます。
本章では、生産性指標の種類と計算方法について詳しく解説します。
労働生産性
労働生産性は、労働投入量1単位当たりの産出量や産出額を指し、労働者1人当たりまたは労働1時間当たりでどれだけの成果を生み出したかを示す指標です。
労働生産性は以下の計算式で算出できます。
「労働生産性 = 生産量 ÷ (労働者数 × 労働時間)」
労働生産性の向上は、同じ労働量でより多くの生産物を作り出している、またはより少ない労働量で以前と同じ量の生産物を作り出していることを意味します。
企業が生産性を高めるためには、従業員一人ひとりが効率的に付加価値を生み出せていることが重要であり、そのためにも残業時間の削減や人員削減、付加価値創出のための施策立案などが実施されます。
付加価値生産性
付加価値生産性は、付加価値(加工や生産によって企業が新しく生み出した価値)を単位として測定します。
付加価値とは、生産額(売り上げ)から原材料費や外注加工費などの外部から購入した費用を除いたものであり、企業が独自に生み出した価値を示します。
付加価値生産性は以下の計算式で算出できます。
「付加価値額 ÷ (労働者数 × 労働時間)」
企業にとって付加価値生産性を高めることは、より効率的に利益を生み出し、競争力を高めることにつながります。
全要素生産性
全要素生産性とは、生産に必要な労働力や資本などの全ての生産要素を考慮した生産性の増加分を測定する指標です。
「技術革新」「ブランド戦略」「業務の効率化」などにより引き起こされる、広義の技術進歩率とみなされています。
全要素生産性は以下の計算式で算出できます。
「全要素生産性 = Y ÷ (K^α × L^(1-α))」
Y:生産量(付加価値額)
K:資本投入量
α:資本分配率(生産量における資本の寄与割合)
L:労働投入量
1-α:労働分配率(=1 – 資本分配率)
全要素生産性が向上するということは、同じ量の資本と労働でより多くの商品やサービスを生産できることを意味し、企業の生産性が向上したことを示します。
参考:参議院「TFP(全要素生産性)に関する一試論」
参考:公益財団法人日本生産性本部「全要素生産性の定義・算出方法」
生産性向上の戦略
続いて、生産性向上の戦略を解説します。
業務の効率化
業務を効率化することは、生産性の向上に直結します。
まずは業務を整理し、見える化することが重要です。
社員一人ひとりがどのような業務に取り組んでいるかを明確にし、不必要な業務を排除することで、ムダやムラをなくし、労働投入量を抑えることができます。
無駄な業務をカットし、自動化が可能な部分はツールを導入することで、より効率的な業務プロセスを構築することが可能です。
また、人材開発や社員のスキルアップを図り、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことも、業務効率化につながります。
アウトソーシングの活用
アウトソーシングの活用も生産性向上に寄与します。社員がコア業務に専念できるよう、非コア業務を外部に委託することは効果的です。
専門的な知識を要する業務や、時間を大量に消費する単純作業を外部の専門家に任せることで、社員が自社のビジネスの核となる活動に集中でき、生産性の向上につながります。
適切にアウトソーシングを活用することで、労働時間を増やさずに、1人あたりの売上高を向上させることが可能です。
システムの導入・刷新
生産性を向上させるためには、最新の技術を活用したシステムの活用が重要です。
特にERPシステムの導入には、業務プロセスの効率化、情報の一元管理化、意思決定の迅速化など、さまざまなメリットがあります。
ERPシステムは、社内のさまざまな情報を一つのシステムで管理することができるため、データの重複入力や情報の齟齬を防ぎ、業務の自動化・効率化を実現します。
システムの導入や刷新によって業務プロセスを最適化し、生産性の向上を図ることが可能です。
ERPの詳細については以下の記事も併せてご確認ください。
生産性向上を実現した事例
三井住友海上火災保険株式会社は、働き方改革の推進と業務の効率化を目的に、RPA(ロボットによる業務自動化)やエクセルVBAを活用し、大幅な労働時間削減を実現しました。
具体的には、月間1,200時間(年間14,400時間)の削減に成功しています。
また、在宅勤務の推進や19時前退社ルールの導入など、柔軟な勤務制度を設けることで、全社員の活躍を促進しました。
これらの取り組みにより、女性管理職の割合の増加や残業時間の削減など、生産性の向上だけでなく、働きやすい環境の整備にも成功しています。
参考:厚生労働省「働きやすく生産性の高い 企業・職場表彰(P12)」
まとめ
生産性指標の活用は、企業の生産性を具体的に数値で計算できるため、生産性の向上度を可視化できます。
企業の生産性を向上させるには、以下のような手段をとることが求められます。
- 業務の効率化
- アウトソーシングの活用
- システムの導入・刷新
特にシステムの導入刷新については、かかる労力が導入時のみで、あとは効率化を持続できる点が大きな魅力です。
自社に最適な方法で生産性向上に取り組み、売り上げや利益率の向上を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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