- 作成日 : 2024年11月11日
CAPEXのOPEX化とは?概要、削減方法、業界ごとの見直しポイントを解説
昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈で「CAPEXからOPEXへ」という表現を目にすることがよくあるのではないでしょうか。
今回の記事では、CAPEXとOPEXそれぞれの定義や違い、経理上の取り扱いなどについて詳しく見ていきます。
目次
CAPEXとOPEXとは?
はじめに、CAPEXとOPEXの概要について解説します。
CAPEXの概要
CAPEXとは、企業の成長に直接関わる資本的支出のことです。新しい設備投資や技術革新などのコストはCAPEXに含まれ、これらの支出によって生産性や収益性の向上が期待できます。また、競合との差別化を図るための設備の改善や新規事業への投資もCAPEXとして認識されます。
CAPEXの金額は大きくなることが多く、企業の財務状態に影響を与える場合があります。主な影響として、以下の2点が考えられます。
- CAPEXが高い場合、短期的にキャッシュフローが悪化する恐れ
- 長期的に考えた場合、CAPEXの投資によって収益が上がり、キャッシュフローが改善される可能性
CAPEXの影響は、必ずしも良いものばかりではありません。適切な投資額やその効果を評価し、バランスを取って運用することが非常に重要です。
OPEXの概要
OPEXとは、企業において日々発生する経費を指します。具体的には、人件費や賃貸料、広告費、設備のメンテナンス費用などが含まれます。いわゆるランニングコストがOPEXに該当します。
OPEXの支出は大規模な投資ではなく、企業の活動を維持するために必要な経費であるため、「運営支出」と称されます。
CAPEXのOPEX化
最近では、特にIT分野において「CAPEXのOPEX化」が注目されています。
CAPEXのOPEX化の概要
「CAPEXのOPEX化」とは、企業が自社内でシステムを開発・構築して運用するのではなく、外部のシステムやサービスを利用するという新しいアプローチを指します。
企業が自社のシステムを開発するためには、通常、設備投資が必要になります。この初期投資がCAPEX(資本的支出)に該当し、資産として計上されます。
一方で、外部のシステムを利用する場合は、月々の使用料を支払う形になります。この場合、支払われる金額は運営費用の一部として計上され、OPEX(運営費用)に分類されます。
これにより、企業は資金を効率的に使い、必要に応じてリソースを拡張したり縮小したりする柔軟性を持つことができるのです。
CAPEXのOPEX化の具体例
例えば、大容量のサーバーを自社内に設置するのではなく、外部のクラウドサーバーを利用することはCAPEXのOPEX化の典型的な例です。
このようなクラウドサービスを利用することで、企業は設備の初期投資を抑えつつ、必要に応じてサーバーのスペックを変更したり、リソースを追加したりすることが可能になります。
CAPEXのOPEX化は、企業の資金運用における効率性を高め、リスクを低減する手段として非常に重要なトレンドとなっています。特に、技術の進歩が早いIT分野では迅速な対応が求められるため、外部サービスを活用することにより、企業は市場の変化に敏感に反応しやすくなります。
CAPEXのOPEX化は、単なるコスト削減の手段に留まらず、企業の戦略的な選択肢を広げ、将来的な成長を支える重要な要素となっているのです。
OPEXを削減する方法
OPEXは企業のビジネス活動を支える重要な支出です。したがって、経営の観点からは、品質や生産活動を損なうことなくOPEXを削減することが求められます。
売上が増加しても経常利益が伸びていない場合は、OPEXの管理が不十分であることがよくあります。特に、事業規模が拡大するとともに増加する支出項目を定期的に見直すことが重要です。
この章では、企業の成長に伴って増加しやすい費用について説明します。
人件費
人件費の見直しには、まず業務プロセスの改革を行い、既存の業務フローを見直しながら最適な人員配置を進めることが推奨されます。これにより、残業代などのコスト削減や従業員の業務負担の適正化が実現できます。
消耗品費
消耗品費の削減には、サプライヤーからの相見積もりが効果的です。相見積もりとは、複数のサプライヤーに見積もりを依頼し、それらの内容を比較することで、最安値を選択する手法です。
物流費
物流費を削減するためには、運送業者との価格交渉を行い、商品の輸送単価を適正価格に引き下げることが重要です。特に、垂直統合されたサプライチェーンを持つ企業にとって、物流費は大きな比重を占めることがあります。これは小売業や自動車産業でよく見られます。
支払手数料
銀行振込や海外送金に伴う支払い手数料も、事業の成長に応じて増加しがちです。インターネットバンキングや振込代行サービスを利用し、支払い手数料を削減できるよう工夫してみましょう。企業によっては数十パーセントのコスト削減が可能です。
外注費
外注費を見直す際は、業務要件を明確にし、サプライヤーとの密接なコミュニケーションを重ねた上で価格交渉を行う必要があります。特にIT業界では外注費が大きな比重を占めることが多いため、削減の効果も大きくなります。これはコア業務に専念するために、周辺業務のアウトソーシングを行うことが一般的であることが理由として挙げられます。
OPEX見直しの業界ごとのポイント
OPEX(運営費用)を見直す際に留意すべき点は、業界や企業の戦略によって異なるため、慎重な検討が必要です。
OPEXの割合が高い業界では、OPEXの削減によってサービスの質が低下するリスクも高まります。このような状況では、削減に際して十分な配慮が求められます。
前述のとおり、OPEX化はIT業界でも進行しているため、慎重なアプローチが求められるでしょう。
通信業界
通信業界においては、仮想移動体通信事業者(MVNO)のOPEX比率が非常に高くなっています。
MVNOは、自社で通信インフラを持たず、既存のキャリアのシステムを利用してモバイルインターネット接続サービスを提供するビジネスモデルを採用しています。
MVNOは、キャリアのインフラを活用することで初期投資を抑えつつ、独自の付加価値を加えなければなりません。このため、OPEXの削減を図るには長期的な視点での計画と戦略が不可欠です。
サービス業
サービス業においては、特に高級なサービスを提供している企業がOPEXを多く要する傾向があります。これらの企業では、顧客満足度の向上やブランド価値の強化を優先するため、高品質なサービスを維持するコストが必要になることが理由として挙げられます。
一等地に立地するホテルやラグジュアリーブランドなどの業界では、他の業界と比較してOPEXが高くなりやすく、簡単には削減できないケースもあります。
OPEXを見直す際には、単にコストを削減するのではなく、どのようにして品質を保ちながら効率的な運営を行うかという点に注目することが重要です。業界の特性を理解し、それに応じた柔軟な戦略を立てることで、競争力を高めることができるでしょう。
まとめ
CAPEXとOPEXを適切に管理すれば、業績向上や業務改善に向けて行った投資が効果的に活用されているかを確認することができます。OPEXは月次で管理しやすいのに対し、CAPEXは数年にわたって償却されるため、その効果を測定するためには工夫が必要です。
どちらの費用も、経営にとって重要であれば積極的に支出するべきですが、目的に見合った投資であったかどうかは定期的に検証することが望ましいでしょう。
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