• 更新日 : 2024年11月25日

基幹システムとは?導入するメリットや構築方法をわかりやすく解説

「基幹システム」とは、生産・販売など、企業の基幹業務を管理するためのシステムです。基幹業務の種類だけ存在し、基幹システムを構築・導入することで、業務効率化が大きく進みます。ここでは、基幹システムを導入するメリットや構築方法、また業務システムや情報系システムなどほかのシステムとの違いについて解説します。

目次

基幹システムとは?

「基幹システム」(mission-critical system)は、企業の基幹業務、根幹業務を管理するシステムです。

基幹業務とは、製造業であれば製品の製造販売など、事業活動の中心となる業務のことをいいます。そのため、その業務を管理する基幹システムは「止まってはいけないシステム」といわれ、安定性と正確さが最も重要とされています。

基幹システムは、生産、販売など業務プロセスごとに分かれています。基幹システムの目的は、それぞれの業務プロセスを効率化することにあり、業界や企業の業務内容により、どのシステムが基幹システムとなるかは異なります。最近は基幹システムもクラウド化が進んでおり、テレワークの普及や働き方改革に貢献しています。

業務システムとの違いは?

業務システムとは、文字どおり業務に使用するシステムです。基幹システムや情報系システム、それらを統合したERPも含めて業務システムと呼びます。

しかし、会社によっては情報系システムを指して業務システムと呼ぶ場合もあります。業務システムについて説明する場合は、まず相手が「業務システム」をどう定義しているかを確認するとよいでしょう。

ERPとの違いは?

ERP(Enterprise Resource Planning)は、いくつもの基幹システムを1つのパッケージに統合し、業務全体をカバーしたものです。

統合したことでデータをスムーズに連携でき、業務に関するリソースを連続的に一元管理できます。また、業務に関するデータを一元管理することで、より精度の高い経営分析が容易にできます。

基幹システムは、業務プロセス単位で構築されています。一方、ERPはすべての基幹システムを統合し、業務プロセスを連続的に管理するものです。

情報系システムとの違いは?

情報系システムとは、業務に利用されますが、企業の基幹業務には関連しないシステムです。
情報系システムがあれば業務は格段に便利になりますが、情報系システムがなくても基幹業務が止まることはありません。

例えば、文書管理システム、グループウェア、スケジュール管理システム、チャットツールなどが情報系システムになります。

基幹システムには、代替手段がなく、システムが停止すると基幹業務が止まってしまいます。しかし、情報系システムが止まっても業務が止まることはなく、代替手段を使うことで業務を続けることができます。

基幹システムの種類は?

基幹システムには、基幹業務の数だけ種類があります。いくつか基幹システムの例を挙げて説明します。

生産管理システム

材料の仕入れから製品の生産、完成品の在庫登録までを管理するシステムです。在庫管理システムと連携します。

販売管理システム

製品の販売を管理するシステムです。受注管理システムや在庫管理システムなどと連携します。

受注管理システム

製品の受注と発送を管理するシステムです。販売管理システムや在庫管理システムなどと連携します。

在庫管理システム

製品の生産・販売に伴う在庫管理を行うシステムです。多くの基幹システムと連携します。

労務管理システム

社員の勤務状況を管理するシステムです。人事給与システムと連携します。

財務・会計システムなど

企業の財務会計を管理するシステムです。人事給与システムと連携し、給与計算までカバーするものもあります。特定の業界ではなく、すべての企業に必要なシステムです。

製造業であれば、生産管理システムと受注システム、販売管理システム、在庫管理システム、会計システムなどが連動して、製品の製造から納品までの業務を管理します。また、システム構築を主な業務とするIT系企業なら、受注管理システムや労務管理システムが基幹システムとなるでしょう。

またシステムによっては、ほかの基幹システムとかぶるような広い業務範囲をカバーするものもあります。そのため、導入時にはシステムがどこまでカバーしているか確認し、うまく連携させることが重要です。

基幹システムを導入するメリットは?

基幹システムを導入すると、次のようなメリットがあります。

業務効率化を実現できる

基幹システムを導入することで、基幹業務の作業速度が上がります。また作業の人的ミスがなくなり、正確性を確保できるため、製品の品質が向上します。また、コストの削減や大きな業務効率化にもつながります。

業務標準化を進める

基幹システムを導入すると、作業の方法や手順を標準化して固定することができるようになるため、作業の無駄やムラをなくし、大幅な業務効率化が実現できます。また最も効率のよい作業をもとに標準化することで、業務に関するノウハウや知見の属人化を防ぐなど、業務全体のレベルアップにもつながります。

データの一元管理と可視化

基幹システムの導入により、業務データを一元管理することができるようになり、データ連携による業務効率化を促進することが可能になります。また、リアルタイムな業務データを可視化して経営戦略へ反映することで、より正確でスピーディーな意思決定につながります。

顧客満足度の向上

基幹システムを導入することで、企業は顧客に対してより迅速かつ正確な対応が可能になります。
基幹システムの特徴は、在庫情報や納期、顧客情報、注文履歴など、企業内のあらゆるデータが一元管理できる点です。

一元管理しているデータを参照することによって、顧客からの各種問い合わせに対してすぐに回答できます。顧客は最低限の待ち時間で必要な情報をすぐに入手できるため、顧客満足度の向上につながります。

コンプライアンスの強化

基幹システムでは、定期的なアップデートが実施されています。そのため、基幹システムを導入することにより最新の法規制に従って業務を実施でき、コンプライアンスの強化につながります。例えば税制の変更があった場合は、請求書や取引の処理に新しい税率を反映させることが可能です。

手動での調整が不要になるため、法的なリスクを回避できます。複雑な法令に対応しやすくなることで、企業はコンプライアンスリスクを最小限に抑えられるでしょう。また監査対応をスムーズに行えるため、信頼性向上にもつながります。

基幹システムを構築する方法は?

基幹システムを構築・導入するには、次のような手順が必要です。

1.企画

どのような基幹システムを構築するのか、すなわち業務のどの部分に基幹システムを導入するのかを決定します。システム導入箇所を決めるには「現在の業務プロセスのなかで、特に効率化が必要な場所はどこか」を的確に判断することがポイントです。また、規制のツールをカスタマイズして導入する場合は、ツールの選定を行います。

2.要件定義

業務システムに必要な機能・仕様を決定します。そのためには、業務に必要なタスクやプロセスの洗い出しが必要です。場合によっては業務プロセス自体を見直し、より効率的な業務プロセスに修正していく必要があります。この作業は、社内で時間をかけて行わなければなりません。

3.実装・テスト

システムの構築・実装・カスタマイズが進んだら、不具合がないかテストを行います。テストと修正を繰り返し、業務プロセスの処理やデータ連携に問題がないか確認しましょう。

4.運用・保守

システムのテストを終えて運用を開始しても、すぐにスムーズに使えるわけではありません。社員が新しいシステムに慣れるのには、時間や教育が必要です。また、運用を開始して気づくような不具合が残っていたり、新機能が必要になったりする場合もあります。そのため、定期的に保守・修正が必要です。

基幹システムを選ぶポイントは?

基幹システムを選定するときには、次のようなポイントがあります。

自社に必要な機能・仕様であること

同じ会計システムといっても、製品が異なれば搭載している機能は異なります。また、利用できる人数や環境など、仕様もさまざまです。自社に最も必要な機能や仕様はなにかをリストアップし、それを満たす製品を選びましょう。

使いやすいこと

システムによって、また同じシステムでもユーザーによって、使いやすさは大きく異なります。特に使いやすさに大きく影響するのは、インターフェースである作業画面や操作性です。多くの製品は試用できるので、実際に試してみることをおすすめします。

インターフェースや作成される帳票はさまざまですが、できるだけ自社の利用している帳票に近いものがつくれることと、必要な項目が漏れなく入っていることがポイントです。

ただし、この部分はある程度カスタマイズできます。製品によってどの程度カスタマイズできるかは異なるので、ベンダーに確認が必要です。

安定稼働すること、システムダウンしないこと

基幹システムは、毎日の業務に必ず必要なものです。基幹システムがシステムダウンすれば、企業の業務そのものが止まってしまうこともあります。そのため、毎日安定して稼働すること、システムダウンしないことは、最も重要な条件です。他社の評判などを参考に、できるだけ安定したシステムを選びましょう。

強固なセキュリティ

基幹システムの多くは、自社の社員や顧客の個人情報、自社の機密情報など、重要な情報を取り扱っています。一度情報漏えいが起こると、損害賠償や信用低下、顧客離れなどが起こり、企業としては大きなダメージを受けるものです。不正なアクセスや情報漏えいを防ぐためには、できるだけ高いセキュリティを実現しているシステムを選ぶ必要があります。

サポート体制

基幹システムでは、導入後の運用やトラブル対応が非常に重要です。システムの使い方が分からなかったり、不具合が発生した際に、迅速かつ適切にサポートを受けられるかどうかを確認しておく必要があります。

特に下記の点を確認すると良いでしょう。

  • 24時間対応のサポートがあるか
  • 導入後のトレーニングが充実しているか
  • サポートチームの対応品質や評判

サポート内容が充実している基幹システムを選ぶことで、スムーズな運用が可能になります。

最新のテクノロジーが活用されているか

基幹システムの中には、AIや機械学習、IoTなどが活用されているシステムもあります。最新のテクノロジーが活用された基幹システムを利用することで、意思決定の迅速化や正確性の向上が期待できるでしょう。

AIや機械学習が活用された基幹システムは、予測分析や業務の自動化などが可能です。例えば、毎月の請求書発行や支払処理を正確かつ迅速に自動処理できます。これにより、入力ミスや転記ミスなどを減らし、担当者の負担を軽減することが可能です。

またIoTシステムと連携ができれば、製造現場の機器やセンサーからリアルタイムでデータを取得できます。これによって、在庫管理や生産プロセスを最適化することが可能です。

基幹システムのクラウド化が注目される理由は?

最近は、基幹システムでもクラウドサービスを使う企業が増えています。そこには、次のような理由があります。

オンプレミスよりもコストを削減可能

クラウドサービスの料金は、サービスを利用する分だけ支払う従量制です。また、クラウドサービスでは、サーバーなどのハードウエアや、利用するアプリケーションのライセンス、アップデートは料金に含まれています。そのため、オンプレミスでハードウエアごと導入するよりも導入コストや運用コストを抑えることができます。

テレワークの普及

クラウドサービスは時間や場所を問わずアクセスできるため、テレワークからもスムーズに利用できます。これは働き方改革にもつながります。

セキュリティが向上

クラウドサービスとして提供されている基幹システムは、基本的に、クラウドサービス側が強固なセキュリティを設定しています。社員のセキュリティ教育を十分に行えば、安心して使うことができるでしょう。

使いやすいサービスが提供されている、最新のサービスが使える

クラウドサービスは多くの企業で使われているので、比較的万人向けの使いやすいシステムが多く提供されています。また、アプリケーションが更新されればユーザーには自動的に新しいバージョンが提供されます。そのため、新機能も利用しやすくなっています。

BCP対策としても有効

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略で、日本語では事業継続計画といい、災害やテロなどによりシステム障害が発生した緊急時でも事業が継続できる施策や計画のことを意味します。クラウドサービスを利用すれば、システムやデータはクラウドサービスのデータセンター、つまり社内ではないところに保存されます。そのため、社内で事故が置きたり災害に遭ったりしても、システムやデータが破損することはありません。速やかに原状回復し、事業を続けることができます。

システムの規模を拡張・縮小できる

クラウドベースの基幹システムは、必要に応じてリソースを柔軟に増減できるのがメリットです。企業の成長やニーズの変化に応じて、システムの規模を拡張・縮小することができます。例えば、繁忙期にリソースを一時的に増加させたり、機能を追加したりといった変更も容易に施すことができます。

オンプレミスでシステムの規模を拡張するとしたら、新たなハードウェアやソフトウェアを購入しなければならず、手間とコストがかかります。一方、クラウドベースの基幹システムは、迅速かつ低コストでシステムの規模を拡張・縮小することが可能です。

メンテナンス作業の負担軽減

クラウドの基幹システムでは、メンテナンスやアップデートにかかる作業をプロバイダー側で実施します。メンテナンス作業を実施してもらうことで、自社のIT部門の負担軽減につながります。
企業内部のシステムに障害が発生した場合は、IT部門が原因を調査して修復しなければなりません。一方クラウドの基幹システムでは、プロバイダーが障害の発生を検知し、バックアップやリカバリを実施します。迅速な対応が可能になるため、システムダウンの影響を最小限に抑えられるでしょう。

基幹システムの運用方法

基幹システムを導入した後は、適切な方法で運用する必要があります。この章では、基幹システムの運用方法について詳しく解説します。

定期メンテナンス

基幹システムの安定稼働を保つためには、定期的なメンテナンスが重要です。基幹システムの運用ではセキュリティリスクやバグの修正を行うために、定期的にシステムアップデートを実施します。
特にセキュリティパッチの適用を怠ると、システムに脆弱性が生まれ、サイバー攻撃の標的となるリスクが高まるため注意が必要です。

例えば、セキュリティパッチを適用せずに放置していると、攻撃者がその脆弱性を突いて機密データにアクセスしたり、システムをダウンさせたりすることがあります。定期的なアップデートを実施することで、このようなリスクを未然に防ぐことが可能です。

また、基幹システムには多くの重要なデータが保存されています。データのバックアップを定期的に行い、正常にバックアップが実行されているかを確認することも重要です。バックアップを定期的に行うことで、システム障害やデータ損失時に迅速にリカバリーできます。

パフォーマンスモニタリング

基幹システムの運用では、パフォーマンスモニタリングを継続的に行うことが重要です。システムのCPUやメモリ、ネットワーク帯域、ストレージ容量などの数値をリアルタイムで監視します。平常時よりも負荷が増大していないか、異常が発生していないかなどについて確認しましょう。

定期的に負荷テストを実施し、システムがどのくらいのトラフィックやデータ処理に耐えられるかを確認することも重要です。負荷テストを実施することで、高い負荷がかかった際のパフォーマンス低下を未然に防ぐことができます。

ユーザーサポート

基幹システムは多くの従業員が日常的に利用するため、ユーザーサポートも重要です。基幹システムの導入時やアップデート後に従業員へトレーニングを実施し、システムの使い方や新機能の活用方法を教授します。

例えば、システムに新しい機能が追加された際に従業員が使い方を理解していないと、業務に支障を来すことがあります。定期的なトレーニングを実施しておけば、従業員は操作方法を習得でき、スムーズに業務を進められるでしょう。
また、サポート体制を整備することも重要です。基幹システムに関する問題が発生した際に対応が遅れると、業務の停滞につながります。迅速に対応できるよう、24時間体制のサポートや、チャットボットによるサポートなどを検討すると良いでしょう。

基幹システムのセキュリティ対策

この章では、基幹システムのセキュリティ対策について詳しく解説します。

基幹システムが抱えるセキュリティリスク

基幹システムには、顧客情報や機密性の高い業務データが保存されています。外部からのサイバー攻撃などを受けると、保存しているデータが漏えいするリスクがあり、非常に危険です。データ漏のえいが発生した場合、企業の信用失墜や法的な制裁を受ける可能性もあります。

また、不正アクセスによって基幹システム内のデータが改ざんされたり、盗まれたりするリスクもあります。不正アクセスは、業務プロセスの混乱や機密データの損失などにつながるため、下記のセキュリティ対策を行うことが重要です。

データの暗号化、アクセス制限

基幹システムのセキュリティ対策では、重要データの暗号化とアクセス制限の強化がポイントになります。先述のとおり、基幹システムには、顧客情報や財務データ、従業員情報など、企業にとって非常に重要なデータが含まれています。これらのデータを暗号化することで、不正にアクセスされたとしてもデータの内容を解読されないようにすることが可能です。

例えば、AES(Advanced Encryption Standard)を採用すれば、企業の重要なデータを暗号化できます。AESとは、世界中で標準的に使用されている暗号化技術のことです。AESは大量のデータを迅速に暗号化できるため、基幹システムのセキュリティ対策に適しています。

アクセス制限を強化する際は、多要素認証の導入が有効です。多要素認証とは、ユーザーがシステムにログインする際に、パスワード以外にもう一つの認証方法(スマートフォンに送信されるワンタイムパスワード、指紋や顔を用いた生体認証など)を要求する仕組みのことです。
多要素認証を利用することで不正アクセスのリスクを減らし、基幹システムのセキュリティレベルを高めることができます。

まとめ

業務効率化を考えると、基幹業務のシステム化は必須です。この部分をデジタル化することは、DXの推進にもつながります。

基幹システムを導入する場合、機能、仕様、使いやすさなどの面で自社に合うシステムを比較して選びましょう。高い安定性とセキュリティも欠かせません。基幹システムは、コア業務の管理を行い、機密情報や個人情報を取り扱っているため、システムダウンしないことや情報漏えいしないことが重要だからです。基幹システムをスムーズに導入するには、情報システム部門による導入教育や現場のフォローも必要です。安定した基幹システムを運用するためには、システムの構築だけでなく、体制づくりや人材確保や育成にも取り組むことが大切です。

よくある質問

基幹システムとはなにか?

生産管理、販売管理など、企業の基幹業務を管理するシステムのことです。

基幹システムを導入するメリットは?

基幹システムを構築・導入することで、基幹業務が大きく効率化されます。業務効率化だけでなく、生産性向上、作業のミスの削減なども実現可能です。

基幹システムをクラウド化する理由は?

基幹システムをクラウド化することで、時間や場所を問わずシステムにアクセスでき、業務効率化やテレワークの普及につながります。


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