- 更新日 : 2024年7月12日
モダナイゼーションとは?最新テクノロジーを活用しシステム刷新を実現
あなたの企業では、稼働後、数十年を経過したシステムはありませんか?組織が成功し続けるためには、時代に沿ったシステムや最新テクノロジーの導入が不可欠です。
その中で注目されるのが、「モダナイゼーション」という概念です。モダナイゼーションとは、古い慣習やプロセスを見直し、最新テクノロジーを取り入れてシステム刷新することを指します。
この記事では、モダナイゼーションとは何か、実施するための手法やメリット、実現へ向けたよくある課題や進め方、成功事例について詳しく解説します。
目次
モダナイゼーションとは
モダナイゼーションは、最新テクノロジーを取り入れながら既存のシステムを刷新・改修するプロセスを指します。
長い期間使用しているシステムには膨大なデータが蓄積されており、過去からの運用方法や業務と一体化しているため、なかなか置き換えができないケースが多くあります。
加えて、データ量増加によるレスポンス低下や、現代のシステムトレンドに適合できず、使い勝手や効率が悪いシステムになってしまっているケースもあります。
また、データが部門ごとにサイロ化し、ビジネス上の意思決定に必要なデータが活用できないケースもあります。
このような問題点を解決するためには、最新テクノロジーを取り入れ、システム刷新を行うことが重要だといえます。
マイグレーションとの違い
マイグレーションは、既存の古いシステムやプラットフォームから、新しいものへの単純な移行を意味し、システムの置き換えが中心となります。
両者は移行や刷新という点において共通していますが、モダナイゼーションは企業全体の進化や改善に焦点を当て、広範囲な業務プロセスの改革や、システムの更新を目指します。
一方でマイグレーションは、特定のシステムやプラットフォームの変更・移行などに限定されます。
なぜ今、モダナイゼーションが必要なのか?
本章では、モダナイゼーションが必要な理由を2つの観点から解説していきます。
レガシーシステムが抱えるリスク
長年使い続けられてきたレガシーシステムは、企業にとって大きなリスクを抱えています。
例えば、サポート終了(EOL)を迎えたシステムは、最新のセキュリティ対策が施されないためサイバー攻撃を受けやすく、情報漏えいなどのリスクが高まります。
また、長年の運用によってシステム構造が複雑化し、担当者しか理解できなくなってしまう「ブラックボックス化」も深刻な問題です。ブラックボックス化はシステムの改修やトラブル対応を困難にし、業務効率の低下や担当者依存による業務停滞を招く可能性があります。
これらのリスクは、企業の競争力や存続を脅かす問題に発展する可能性があるため、早急な対策が必要です。
モダナイゼーションは、これらのリスクを解消し、企業の成長を支える有効な手段となります。
ビジネス環境の変化への対応
昨今のビジネス環境はめまぐるしく変化しており、企業は迅速な対応が求められています。具体的には、膨大なデータをリアルタイムに分析して迅速に意思決定を行うことや、市場変化に合わせてビジネスモデルやサービスを柔軟に変更することなどが求められます。
さらに、顧客一人ひとりに最適化したサービスを提供することも重要です。最新技術を活用できれば顧客満足度を高め、競争力を強化することができます。
しかし、環境の変化に対応してビジネスを成功させることは、従来のシステムだけでは難しいでしょう。そのため、モダナイゼーションによってこれらの課題を解決できるシステムを構築することが、企業の成長には欠かせません。
モダナイゼーションの手法とメリット
モダナイゼーションを行う上での主な手法やメリットについて解説します。
モダナイゼーションの手法
モダナイゼーションは、一般的に以下の方法を用いて実施されます。
・リプレース
既存のソフトウェアやシステムをすべて新しいものに置き換える手法です。新しいソリューションとして、最新テクノロジーやアーキテクチャを利用します。
・リホスト
既存のアプリケーションやシステムを新しい環境に移行する手法です。一般的にオンプレミスからクラウド環境への移行を指し、アプリケーションの変更は最小限に留めます。
・リファクタ
既存のコードやシステムを改良し、保守性や拡張性を向上させる手法です。コードのリファクタリングを通じて、バグの修正や新しい機能の追加が行われます。
・リビルド
既存のアプリケーションやシステムを根本から再構築する手法です。新しいアーキテクチャやテクノロジーを導入し、機能や性能を向上させます。
・リライト
リライトとは、既存のシステムのソースコードを書き換えることで、システムの機能や性能を向上させる手法です。現行システムの基本的な構造や機能は維持しつつ、最新の技術やアーキテクチャに適合させたい場合に適しています。
例えば、古いプログラミング言語で開発されたシステムを新しい言語に書き換えることで、保守性を向上させたり、セキュリティリスクを軽減したりすることが可能になります。
特に、COBOLなどの古い言語で開発されたシステムを長年使い続けている企業にとって、リライトは有効なモダナイゼーション手法といえるでしょう。
・リドキュメント
リドキュメントとは、既存システムのドキュメントを整備・最新化することで、システムの可視性を高める手法です。
具体的には、システムの設計書や仕様書、運用マニュアルなどを整理・更新したり、ソースコードにコメントを追加したりすることで、誰でもシステムの構造や動作を理解しやすくすることなどが挙げられます。
リドキュメントは、ドキュメントが不足していたり、ドキュメントに最新情報が反映されていないために、システムの理解や保守が困難な企業に有効です。
リドキュメントによってシステムのブラックボックス化を防ぐことで、担当者の変更やシステム改修をスムーズに行えます。
モダナイゼーションのメリット
自社システムのモダナイゼーションを実施することで、享受できるメリットは以下のとおりです。
・セキュリティの強化
多要素認証をはじめとする認証システムの導入などによって最新のセキュリティ標準が適用されることで、データやシステムの保護につながります。
・生産性や業務効率の向上
新システムによるプロセスの最適化や自動化により、作業効率や生産性の向上が期待できます。
・拡張性と柔軟性の向上
クラウドサービスなどの将来の拡張・変更に対応できる柔軟なシステムであれば、ビジネスの成長や要件に応じて容易にシステムを最適化できます。
・コスト削減
既存システムの保守や運用に高いコストがかかっている場合、オンプレミスのシステムからクラウドへの移行によって、サーバーの購入や保守・運用のコストが削減できます。
・データ駆動型ビジネスの促進
データの収集・分析機能を持つシステムが導入されることで、リアルタイムなデータの把握や分析・予測が可能になり、戦略的な意思決定が可能になります。
・可用性の向上
クラウドを活用したインフラ構成を構築すると、システムやアプリケーションの安定性と可用性が向上します。
・競争優位性の確保
最新テクノロジーやビジネスプロセスの採用によって、競合他社よりも優れたサービスや製品を提供でき、競争の激しい市場での競争優位性の確保が期待されます。
DevOpsの導入による業務効率化
DevOpsとは、開発担当者と運用担当者が連携し、開発と運用を一体化することで、ソフトウェア開発のスピードと品質を向上させる手法です。
従来の開発と運用が分離した体制では、開発に時間がかかったりリリース頻度が低くなったりするといった課題がありましたが、DevOpsの導入によって、これらの課題を解決し、ビジネスの変化に迅速に対応できるようになります。
DevOpsの導入は、開発サイクルの短縮、デプロイの自動化、迅速なフィードバックなどを実現し、ビジネスアジリティ向上に貢献します。
モダナイゼーションのよくある課題と進め方
モダナイゼーションはビジネスの成長にとって必要なプロセスですが、その過程では多くの課題に直面することがあります。よく発生する課題と、課題に効果的に対処しながら進める方法について解説します。
よくある課題
資金や人的リソースの不足
モダナイゼーションは資金と時間がかかるプロセスであり、十分な予算と専門知識が必要になります。資金不足や人的リソース不足は、進捗を妨げる場合があります。
従業員や部門がシステム変更に抵抗を示す
新しいシステムやプロセスへの適応に時間や工数がかかることから、実際にシステムを使用する従業員がシステム変更に抵抗を示す可能性があります。
システム間の互換性がない
古いシステムに新しい技術やプラットフォームとの互換性がない場合、統合が難しくなります。
適切なテクノロジーの選定が難しい
自社のニーズや要件にマッチする適切なテクノロジーやアーキテクチャの選定は重要です。選択を誤ると、追加コストの発生や業務効率の低下などの影響を与える可能性があります。
モダナイゼーションの進め方
現状のシステム状況の評価・適合性
既存のシステムやアプリケーションを評価し、強みと課題を明確化した上で、モダナイゼーションのビジョンや目標を定義します。また既存のシステムで維持したい要件を定めて、新システムとの互換性を確認します。
段階的なアプローチと予算計画
初めは、基幹システムなどの業務に大きな影響を与えるシステムではなく、一部の業務システムなどから段階的に移行を進めることで、リスク分散が可能です。各段階の予算を計画し、必要なリソースやコストを見積ります。
移行計画の策定
移行するシステムの範囲やいつまでに実現するかなど、詳細な移行計画を策定します。
新システムに切り替える場合は、一定期間並行して運用するなどのリスク管理も必要となります。
モダナイゼーションで活用されるテクノロジー
モダナイゼーションを成功させるためには、適切なテクノロジーの活用が不可欠です。最新のテクノロジーを導入することで、システムの柔軟性、拡張性、効率性などを向上させることができます。
ここでは、モダナイゼーションで活用される代表的なテクノロジーを紹介します。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングとは、インターネット経由でサーバーやストレージ、ソフトウェアなどのITリソースを利用できるサービスです。
従来のオンプレミス環境では自社でサーバーなどを保有・管理する必要がありましたが、クラウドコンピューティングでは、必要なリソースを必要な時に必要なだけ利用することができます。
そのため、従来のオンプレミス環境に比べて、柔軟性、拡張性、コスト効率に優れており、システムの拡張や縮小を容易に行うことができます。また、クラウドサービスは常に最新の状態に保たれるため、セキュリティリスクの軽減にも貢献します。
モダナイゼーションにおいてクラウドコンピューティングは、システムの柔軟性や可用性を高め、ビジネスの変化に迅速に対応できる環境を構築するための重要なテクノロジーだといえます。
マイクロサービス
マイクロサービスとは、システムを独立性の高い小さなサービスに分割して構築するアーキテクチャです。
従来のように、すべての機能をひとまとめにして開発する方式では、一部の変更がシステム全体に影響を及ぼす可能性があり、開発や保守の効率が悪くなるという課題がありました。
一方マイクロサービスでは、それぞれのサービスが独立して動作するため、一部のサービスに加えた変更が他のサービスに影響することなく、迅速に更新することができます。
これは、システム全体の柔軟性と保守性を向上させるだけでなく、障害発生時の影響範囲を最小限に抑えられるというメリットにもつながります。
モダナイゼーションにおいて、マイクロサービスは、変化への対応力が高いシステムを構築するための重要なテクノロジーです。
自動化
自動化は、モダナイゼーションにおける効率化と生産性向上を実現するための重要なテクノロジーです。
従来、手作業で行っていたタスクを自動化することで、人的ミスを削減し、業務スピードを大幅に向上させることができます。
例えば、ソフトウェア開発におけるテストやデプロイ(リリース)作業を自動化すれば、開発サイクルを短縮し、より頻繁にソフトウェアをリリースできるようになります。
また、システムの運用タスクを自動化すれば、システム管理者の負担を軽減し、システムの安定稼働を支援することができます。
このように自動化は、モダナイゼーションにおいてシステムの効率性と信頼性を高めるために欠かせない要素です。
モダナイゼーションの成功事例
世界中に事業を展開する電子部品メーカーA社は、グローバルな取引を支えるITシステムを保有していました。しかし、20年以上稼働しているこのレガシーシステムは、老朽化によるさまざまな課題を抱えていました。
具体的には、セキュリティリスクの増大、維持費の高騰、担当者しか理解できないブラックボックス化などが問題となっていました。これらの課題は、企業の競争力や業務効率に悪影響を及ぼす可能性があります。
そこでA社は、基幹システム再構築プロジェクトを立ち上げ、モダナイゼーションに取り組みました。そして約4年の歳月をかけ、レガシーシステムをオープンシステムへと刷新したのです。
その結果、A社はモダナイゼーションによって、以下の成果を挙げました。
- 納期回答時間が最大4分の1に短縮
- システムの陳腐化、技術者枯渇といったITリスクの解消
- ビジネス要件の変化に柔軟かつ迅速に対応
このように、モダナイゼーションは企業の抱える課題を解決し、ビジネスの成長を促進する有効な手段といえるでしょう。
まとめ
本記事では、モダナイゼーションについて詳しく解説しました。
ビジネスに寄与するシステム刷新を実現するために、現状の把握をしっかりと行い、計画を立てて、段階的にアクションを進めてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
お役立ち資料
関連記事
価格転嫁とは?成功・失敗事例と交渉のコツを解説
価格転嫁とは、原材料費やエネルギー費の高騰に伴う生産コストの増加分を製品価格に反映させることを指します。 昨今の日本では、原材料費や石油価格の高騰に加え、昨今の賃上げトレンドによる労務費の増加も相まって、製品の生産コストは上昇傾向にあります…
詳しくみるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 定義とERPの活用で実現できることをわかりやすく解説
ここ数年の間に、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。しかし、DXに着手しはじめたものの、“業務のデジタル化”で止まってしまい、本質的にDXを実現できている企業はあまり多くはありません。 ここでは、DXとは…
詳しくみるOEMとは?メリット・デメリットや成功に必要なポイントをわかりやすく解説
OEMとは、自社オリジナル製品の製造を他社へ依頼することを指します。 OEMは企業にさまざまなメリットをもたらしてくれる一方で、デメリットもある点に注意が必要です。 この記事ではOEMの概要やメリット・デメリットをはじめ、OEMを成功させる…
詳しくみるMROとは?概要や最新技術を活用したMRO管理を解説
MROは、製造業や他の産業においての、設備や資材の調達に関する重要なプロセスです。 設備の保守や修理に必要な部品や資材を適切な時期に調達し、企業の生産性と効率性を維持するために不可欠です。 本記事では、MROの概要とその重要性について詳しく…
詳しくみるサイロ化とは?原因や問題点、解消するためのポイントなどを解説
サイロ化とは、組織やシステム、データなどがそれぞれの部門や拠点で別々に管理され、部門間・拠点間での連携が取れていない状態を表します。サイロ化は、業務効率の低下や経営上の意思決定の遅れなどを引き起こすため、組織全体で解消を図ることが重要です。…
詳しくみるクラウドとSaaSの違いとは? クラウドのメリット、利用率を詳しく解説
近年、さまざまなタイプのクラウドサービスが普及し、「クラウド」や「SaaS」という言葉が聞かれるようになりました。それぞれの言葉はよく聞くものの、意味や違いについて正確に理解していないという方も多いのではないでしょうか。 本記事では、クラウ…
詳しくみる