• 作成日 : 2024年1月31日

総合原価計算とは?個別原価計算との違いや手順をわかりやすく解説

総合原価計算とは、製品・サービスの原価を計算する手段の一つです。
企業が製品を市場へ展開するには様々な費用が発生します。そのため、どの程度の値段で売れば利益が出るのかを把握するためには、製品一つ一つの原価を計算し、把握する必要があります。

適正な販売価格を設定できないと、企業が市場で利益を出し続けていくことは難しいでしょう。そのため、企業にとって正確な原価計算は必須です。
今回は、総合原価計算の概要や手順について解説していきます。

総合原価計算とは

自社製品の原価計算手段として、総合原価計算を検討している企業は多いと思います。
総合原価計算ではどのように原価を計算するのでしょうか?

総合原価計算の概要

総合原価計算とは、一定期間に発生した原価を合計し、生産数で割る方法です。
単一の製品を連続かつ大量に生産する際によく採用され、特に同じ規格のものを大量に製造する場合などに適しています。
主に、食品、製造、鉄鋼、繊維などの業界で用いられています。

さまざまな総合原価計算

総合原価計算にはいくつか種類があるので、その点も把握しておきましょう。それぞれ、計算方法が少しずつ異なります。
例えば、単純総合原価計算、工程別総合原価計算、組別総合原価計算、等級別総合原価計算などがあります。

単純総合原価計算

原材料、作業工程、設備などが全て同じ場合に採用される計算方法です。
この計算方法は、後述の各総合原価計算のベースとなっています。

工程別総合原価計算

生産時に工程が複数ある製品などで、工程ごとに原価を計算する方法です。
各工程で担当部署が分かれている場合などに採用されます。

組別総合原価計算

同じ工程で異なる製品を生産する場合の計算方法です。
例えばイチゴとブドウそれぞれのジュースを作る場合などです。
作業は同じでも原材料が異なるため、別々に計算することになります。

等級別総合原価計算

種類が同じでも、サイズ(等級)が異なる商品を製造する場合などに用いられます。
まずは単純総合原価計算で計算し、その後で各等級に設定された係数に基づいて原価が計算されます。

個別原価計算との違いについて

総合原価計算とは対となる計算方法として、個別原価計算があります。これは一つ一つの製品について、個別に原価計算する手法です。
どちらかの方法が優れているというわけではなく、生産形態によって適切な計算方法が異なるのです。

個別原価計算に関しては別記事で詳しく説明しているので、参考にしてください。

総合原価計算のメリット・デメリット

原価計算には種類があり、製品や生産形態によって適切な計算方法は異なります。
総合原価計算を検討中の場合は、まずその特徴を正確に把握しましょう。総合原価計算のメリットとデメリットは、個別原価計算と比較すると理解しやすくなります。

総合原価計算のメリット

総合原価計算は、大量生産する製品の原価計算手法として適しています。
主なメリットは以下のとおりです。

  • 計算対象が大量であってもまとめて計算することができ、担当者の負担が少なくなる。
  • 対象の製品をまとめて計算できるため、作業時間や人件費があまりかからない。

総合原価計算のデメリット

一方、オーダーメイドの製品やサービスの場合、総合原価計算は不適切だといえるでしょう。
一つ一つの製品で原価が大きく異なる場合、計算の難易度は高くなります。総合原価計算には、主に以下のデメリットがあります。

  • 完成品によって原材料が異なる製品の場合、正確な原価を計算できない
  • 期間の最後まで原価計算が実施できないため、適切な販売価格を見極めづらい

総合原価計算の手順

総合原価計算は、前述のとおりいくつかの種類があります。また、計算期間も会社によって異なります。
現場や製品による計算方法・手順の違いもあるため、注意しましょう。
ここでは最も一般的な単純総合原価計算の手順を説明します。

計算手順

①原価の集計
まずは総合原価計算の対象として定めた期間の中で発生した全ての製造費用を集計します。
対象となる期間は1ヶ月に定めている企業がほとんどですが、そうではない場合もあります。集計対象の費用は製品の材料費だけでなく、労務費や経費なども含めます。

仕掛品の原価を集計
次に、仕掛品の原価を集計します。仕掛品とは「製造途中の製品」です。まだ製品として完成していないものになるため、原価計算時には計算対象から除外する必要があります。
①で計算した結果に仕掛品が含まれていないかを確認し、含まれている場合はその費用を集計します。

③対象期間の費用から仕掛品の費用を引く
そして、全ての製造費用から仕掛品費用を引き、完成品の総費用を計算します。
具体的には、上記の①から②を引きます。

④完成品の原価をその数量で割る
最後に、③の結果を完成品の数量で割って、一つの製品あたりの原価を算出します。

総合原価計算の具体例

上記の計算手順に当てはめた、具体的な計算例を紹介します。

今回の対象期間で製造予定だった製品は100個で、その材料費など全ての費用が950,000円だったとします(①)。
ただし、その期間内で完成した製品は80個で、残りの20個は仕掛品だったとしましょう。
その仕掛品の合計費用をチェックすると150,000円でした(②)。
そのため、950,000円から150,000円を引き、800,000円が本期間の完成品の総費用となります(③)。
最後に完成品の総費用である800,000円を完成品数80個で割ると、製品1個当たりの原価は10,000円となります(④)。

総合原価計算のポイント

総合原価計算を効率的に行う際に留意すべきポイントを押さえましょう。

原価計算システムの導入

企業で原価計算の仕組みを構築するのであれば、一般的に原価計算システムの導入が有力でしょう。
特に総合原価計算に適した製品を扱う企業であれば、大量の原材料を管理する必要があるため、システム導入が必須になります。

原価計算用のシステムには、計算機能はもちろん、損益分析や配賦、予算と実績の比較などの様々な機能が実装されています。
選定の際は必ず、自社要件を満たせるかどうかを確認しましょう。

特にERPシステムの導入がおすすめ

ERPシステムの導入は、総合原価計算の効率化に特に適しています。
ERPシステムとはEnterprise Resources Planning(企業資源計画)の略で、企業全体のリソースを管理するシステムです。
企業全体のデータでビジネス状況を可視化し、経営判断の迅速化や業務の効率化を実現します。

ERPシステムの最大のメリットは、各部署のデータを一元管理できる仕組みが容易に構築できる点です。
ERPにより、顧客の注文から原材料の調達、製品の製造にいたるまで、あらゆる業務プロセスの効率的な管理につながります。

まとめ

今回は、総合原価計算について解説しました。
この手法の採用を検討している場合は、まずその特徴を正確に理解しましょう。
製品を適正な価格で販売することは、ビジネスを成功させていく上で非常に重要です。
そのためには、適切な原価計算方法を選定する必要があります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

お役立ち資料

関連記事