• 作成日 : 2024年11月11日

リコンサイルとは?目的、やり方、課題とその解決策を解説

リコンサイルとは、異なる取引記録やデータを照合し、データ間の不一致を解消するプロセスです。リコンサイルを行うことでデータの正確性を高め、信用力低下などの事態を回避することができます。本記事では、リコンサイルの目的やプロセス、課題とその解決策などを解説します。

リコンサイルとは

はじめに、リコンサイルの意味と目的、対象について解説します。

リコンサイルの意味

リコンサイルとは「調和」や「一致」を意味する言葉で、英語の「reconcile」に由来します。金融や会計の分野では、異なるデータや取引記録を照らし合わせて、データ間の不整合を解消するプロセスを指します。

例えば、銀行口座における残高と会計記録の照合や、異なるシステム間のデータの整合性を取る作業などがこれに該当します。

リコンサイルの目的

リコンサイルは、データの正確性を保つことでリスクを管理するために実施します。
異なるデータや記録の間にあるズレを洗い出して修正することにより、入力ミスなどを発見でき、財務や在庫などに関する情報の正確性が向上します。その結果、顧客からの信用低下や不必要な支出といった事態を回避できるのです。

また、異なるシステム間のデータを調整することにより、業務の透明性や効率が高まり、経営判断の基礎となる正確な情報の提供にもつながります。

リコンサイルの対象

リコンサイルでは、ある対象と別の対象との間で、データの整合性が取れているかをチェックします。典型的な例として、下記が挙げられます。

  • 銀行取引明細と会計記録
  • 売掛金買掛金の明細と実際の入出金情報
  • 在庫管理システムのデータと実際の在庫数量
  • 異なる部門(フロントオフィスとバックオフィスなど)や子会社間におけるデータの相違

調査対象は多岐にわたるものの、実際に行う作業に大きな差はなく、あくまで正確性を担保することが重要です。

リコンサイルで対処可能な5つのリスク

リコンサイルで対処可能なリスクとして、主に以下の5つが挙げられます。

システムリスク

システムリスクとは、使用しているシステムやソフトウェアの障害や誤作動によって、データの不整合や取引処理の遅延が発生するリスクです。
例えば、フロントオフィスとバックオフィスのいずれかのシステムに不具合が生じることで、売掛金や買掛金などのデータに不整合が生じるケースが当てはまります。

そのため、リコンサイルによって複数のシステム間でデータの整合性を確認し、システム障害による取引のズレや誤りを早期に発見して、システムリスクを軽減することが求められます。

流動性リスク

流動性リスクとは、取引に必要な資金を適切なタイミングで確保できないリスクです。
例えば、手数料の口座引き落としを見落とすことで預金口座に不足が生じてしまい、銀行への金利支払いが生じたり、取引先への支払いに遅延が生じたりするリスクが挙げられます。

口座情報と社内システムの間でリコンサイルを頻繁に行うなどして、資金の残高やフローを正確に把握することが重要です。

事務リスク

事務リスクとは、手続きや業務処理におけるヒューマンエラーや不備に起因するリスクです。
例えば、帳簿の記入ミスや二重計上、誤入力などによってデータに不整合が生じるケースが当てはまります。

リコンサイルを行うことで、異なるデータ間の不整合を定期的にチェックし、人為的なミスが引き起こすエラーを早期に発見できます。

信頼リスク

信頼リスクとは、自社の信用性が低下することによってさまざまな弊害が生じるリスクです。
例えば、契約よりも大きな金額を取引先に請求したり、ずさんな会計管理を続けていたりすることが外部に発覚すると、信用力が低下して資金調達や売上などに支障を来すリスクがあります。

リコンサイルによって会計の正確性を高めることで、こうした信用力の低下を防げます。

法務リスク

法務リスクは、法令違反や契約違反によって発生するリスクを指します。法律の要件に沿って取引や契約の記録をしていない場合、法的な問題に発展する可能性があります。

リコンサイルを行い、契約や取引が法的義務に基づいて正確に処理されているかを確認することで、法的トラブルの発生を防げます。
コンプライアンスを確保して法的リスクの低減を図ることは、企業にとって不可欠な対応です。

リコンサイルのやり方・プロセス

リコンサイルのやり方を流れに沿って解説します。

手順1:必要資料の準備

はじめに、リコンサイルに必要な資料として、整合性を確認したい複数のデータ(内部情報と外部情報など)を用意します。
例えば、内部記録として会計システムに記録されている経理データ、外部記録として銀行明細や取引先の請求書などを準備します。資料の正確性と完全性がリコンサイルの結果に大きく影響するため、この段階で漏れがないようにしっかり確認することが重要です。

手順2:データの比較

次に、整合性を確認したい複数のデータを比較します。
先の例でいうと、会計システムに記録された経理データ(内部情報)と、銀行明細や取引先の請求書など(外部情報)を比較します。

ここでは、不整合の有無を正確に把握することが重要になるため、以下に示す流れに沿って、慎重に実施します。

複数データ間の期首・期末残高が一致しているかどうかを確認する(残高の不整合の有無を先に確認する)
各データの取引金額や内容、日付などの詳細が一致しているかどうかを細かく照合する

手順3:問題点の特定

内部記録と外部記録の間に不一致や誤りが見つかった場合は、その原因を特定します。
例えば、取引の入力ミスや、未処理の取引、遅延が発生しているなどの可能性が考えられます。また、一時的なズレなのか、継続的な問題なのかを判断し、問題点を詳細に記録することも大切です。

手順4:問題点の改善と承認

問題点の特定が完了したら、発見された問題点の改善を図ります。
例えば、重複している取引を削除したり、不足している取引を追加したりします。問題点を改善したら、その内容を関連部門や上司などに報告し、内容をチェック・承認してもらいます。

なお、リコンサイルは一度実施して完了するものではなく、正確性を維持するために継続して行うものです。そのため、発見された問題点や対処した内容は文書として残すことが求められます。

リコンサイルの課題と解決策

最後に、現場でよく見られるリコンサイルの課題とその解決策をお伝えします。

現場で頻出するリコンサイルの課題

リコンサイルの課題として下記が挙げられます。

  • 人為的なミス(誤入力や入力漏れなど)によるリコンサイルの精度低下
  • 取引量の多さや人材不足による作業効率性の低下
  • 標準化されたプロセスや仕組みがないことによる作業の難航

こうした課題があると、リコンサイルを行なっても、リスクの低下につながらない可能性があります。

リコンサイルの課題解決策

リコンサイルの課題を解決するためには、<クラウドERPシステムなどのITツール導入による、作業の自動化が効果的/b>です。ITツールによる自動化を図ることで、以下のメリットが期待できます。

  • 作業時間の短縮(効率化)
  • 少人数でのリコンサイル実施
  • ヒューマンエラーの削減
  • ITツールへの機能集約による標準化の実現

上記のとおり、ITツール導入によるメリットは大きいため、リコンサイルの精度を高めたい方には、ERPシステムなどの導入がおすすめです。

まとめ

システムの不具合やヒューマンエラーなどにより、実態と手元のデータに不整合が生じる事態は起こり得ます。こうした事態を放置すると、資金繰りや信用力に悪影響を及ぼすリスクがあります。そのため、リコンサイルによってリスク軽減に努めることが重要です。
さらにリコンサイルの精度や効率性をより一層高めたい方には、ERPシステムなどによる自動化を検討してみてください。


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