- 更新日 : 2024年7月16日
ダイバーシティとは?意味やビジネスに生かすメリット、身近な例を解説
ダイバーシティとは、多様性を意味する単語です。性別や年齢、人種、国籍、趣味嗜好、障害の有無などさまざまな属性の人が、組織や集団に属している状態を意味します。
近年、企業の競争力や生産性を高めるために、政府は企業に「ダイバーシティ経営」を推進しており、ダイバーシティの推進は重要な経営課題とされています。
目次
ダイバーシティとは?
ダイバーシティとは、多様性を意味する単語です。人口減少やグローバル化、価値観の多様化といった流れを受け、さまざまな人が共存する組織がビジネスの現場で重要視されています。以下で、語源や注目される背景について解説します。
ダイバーシティとは「多様性」の意味
ダイバーシティ(Diversity)とは、「多様性」を意味する単語です。人種や国籍、性別、宗教や価値観など、異なる属性を持った人々が集団で共存する状態を指します。
ビジネスの現場でも、ダイバーシティーは経営戦略として重視されています。なぜなら、キャリアや経験、働き方なども含めた多様な人材を採用し、個々の人材がその特性を活かして働くことができる環境を作ることができれば、自由な発想を生み出すことや組織の活性化につながり、イノベーションを生み出すことが可能になるからです。ダイバシティに取り組むことは、生産性や競争力を高め、企業価値の向上にもつながります。
ダイバーシティが重視される背景
ダイバーシティが重視されるようになった背景には、少子高齢化と労働力人口の減少の問題があります。国内の労働力人口は1998年をピークに減少しており、今後も日本社会では慢性的な人材不足が予測されています。このような見通しがあることから、女性や高齢者、障がい者や外国人など、誰にとっても働きやすい職場環境を整え、多様な人材を活用することが、企業には必要です。
また、仕事への価値観が多様化したことも、ダイバーシティが重視されるようになった一因といえるでしょう。近年、正社員という雇用形態にこだわらず、副業やフリーランスなど、やりたい仕事を求めてキャリアを積む人も見られるようになりました。企業が優秀な人材を獲得するためには、こうした人材の多様なニーズに応える必要があります。そのためにも、働き方や採用手法など、旧来の手法を見直し、ダイバーシティを実践していく必要があるのです。
多様な価値観や年齢、国籍など、さまざまな人が属する組織は、国内だけではなく海外で成長できる可能性も高くなります。また、外国人材を登用し、グローバル化にも対応できるでしょう。
ビジネスのグローバル化
IT分野の技術進歩もあって、海外との物理的な距離を気にする必要はなくなり、サービスのグローバル展開が進んでいます。海外に生産拠点を構えるほか、日本国内に拠点を置きながら海外での市場展開に取り組む企業も少なくありません。また、アプリをはじめとしたインターネットを通じて提供されるサービスでは、エンドユーザーが海外にいるということも珍しくありません。
ビジネスのグローバル化に対応するには、組織内で多様な価値観や文化を有していることが鍵となります。ダイバーシティを推進することで、さまざまな人材が活躍できる土壌が整い、グローバル化の推進につながります。
ダイバーシティとインクルージョンとの違い
ダイバーシティと並んで語られることの多い言葉が「インクルージョン」です。インクルージョン(Inclusion)は英語で直訳すると包括や受容という意味があります。インクルージョンは、もともと社会的排除(ソーシャルエクスクルージョン)の対義語として生み出された社会福祉政策の理念がもとになっています。
インクルージョンは、多種多様な人が違いを受け入れながら尊重し合い、個々に能力を発揮している状態を意味します。近年では、「ダイバーシティ&インクルージョン」として、多様な人材が集まるだけではなく、共存して組織が成長するという意味で企業経営の重要項目の一つとして認識されています。
政府が企業にダイバーシティの促進を図る理由
国内でも、政府を主導としたさまざまなダイバーシティへの取り組みが見られます。以下に、経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」について紹介します。
ダイバーシティ2.0とは?
経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」とは、企業におけるダイバーシティ経営を促進させることを目指す取り組みをいいます。2017年3月にガイドラインが策定・公表され、2018年6月には改訂版がリリースされたことにより、企業のダイバーシティに対する注目度が高まりました。
ガイドラインでは、受け身的に女性の雇用を増やすような形骸化したダイバーシティからの脱却を掲げ、「多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組」であることを強調しています。
引用:ダイバーシティ2.0 の更なる深化に向けて|経済産業省
企業が取り組むべきダイバーシティ推進のためのアクション
ダイバーシティ2.0では、「行動ガイドライン」として実践のための7つのアクションが記載されています。女性や外国人、高齢者など、多様性に関連するさまざまな属性を鑑みながら、経営課題に取り組むことが重要になります。
課題 | 具体的アクションの例 | 関連する属性 |
---|---|---|
経営戦略への組み込み |
| ジェンダー、年齢、雇用形態、ライフスタイル、国籍等 |
推進体制の構築 |
| ジェンダー、年齢、雇用形態、ライフスタイル、国籍等 |
ガバナンスの改革 |
| ジェンダー、国籍等 |
全社的な環境・ルールの整備 |
| ジェンダー、年齢、雇用形態、ライフスタイル、国籍等 |
管理職の行動・意識改革 |
| 雇用形態、価値観 |
従業員の行動・意識改革 |
| ライフスタイル、価値観 |
労働市場・資本市場への情報開示と対話 |
| ジェンダー、年齢、雇用形態、ライフスタイル、国籍等 |
参考:P17,18 ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ|経済産業省
ダイバーシティをビジネスに生かすメリット
ダイバーシティは、企業と従業員の双方にメリットをもたらします。以下に、ビジネスがダイバーシティマネジメントに取り組むことで得られるメリットを紹介します。
企業競争力の強化
ダイバーシティのある組織は、多様な価値観や考え方、バックグラウンドの人材が共存することから、環境変化に強いという特徴があります。変化の速いグローバル市場においても、強い競争力を維持し、生き残れる可能性が高くなるでしょう。また、事業に対して新しい意見や考えを反映させることで、イノベーションによる価値創造が期待できます。
採用力の強化
ダイバーシティを推進するということは、多様な考えを持つ人にとって、働きやすい職場を作るということです。働く場所や時間、仕事内容など、各個人が活躍できる土壌を整えることは、働きやすい企業というイメージを広めることにつながります。多様なスキルを持つ人材が、その企業に注目するきっかけにもなるでしょう。
働きがいの向上
働きやすい環境は、個人の働きがいを向上させ、企業へのエンゲージメントを高めます。離職率防止につながるほか、企業の生産性を高めることができるでしょう。
ダイバーシティをビジネスに生かすデメリット
ビジネスでダイバーシティマネジメントに取り組む際には、無意識の差別や、従業員の抱える不満などに気を配る必要があります。ダイバーシティへの正しい理解が進んでいない環境では、偏見・思い込み(アンコンシャスバイアス)によるハラスメントが発生する可能性があります。異なる価値観の人々が衝突しないよう、互いの理解を深めるための取り組みが求められます。
また、人事評価制度や勤務体系について、従業員に正しく周知することも重要です。仕組み作りが不十分な場合、「〇〇さんばかり優遇されている」というような、不平不満が蓄積する恐れがあります。価値観の違いや働き方の多様化が、混乱や生産性の低下などをもたらさないよう、企業として適切な取り組みを進めなければなりません。デメリットを理解した上で、職場でのトラブルが起きないよう、注意しましょう。
ダイバーシティの身近な例
ダイバーシティを推進する企業の事例について紹介します。
働き方を多様化!リモートワークを当たり前にする企業|株式会社キャスター
「リモートワークを当たり前にする」をミッションとする株式会社キャスターは、スタッフ全員がリモートワーカーです。国内各所だけではなく、海外にもスタッフを抱え、場所を選ばずに仕事ができる環境を実現しています。リモートワークが当たり前となることで、これまでは引っ越しや結婚などのライフイベントによって就業継続が難しかった人でも働けるようになり、働き方の多様化に貢献しています。
参考:株式会社キャスター
女性雇用、障がい者雇用に力を入れる|ベネッセ株式会社
「ESG・ダイバーシティ推進部」を有するベネッセ株式会社では、さまざまな人が働ける体制づくりに取り組んでいます。障がい者雇用や、女性活躍の推進も同社の取り組みの一つです。同グループの事業は、子育てや教育、シニアなど生活者としての視点が重要視されており、性別や年齢、属性など個々の強みを活かせる職場作りが、仕事での付加価値の創出につながっています。
参考:ダイバーシティ、エクイティ&インクリュージョン | 株式会社ベネッセホールディングス
ダイバーシティへの取り組みの注意点
ダイバーシティを推進する場合、ひとくくりに捉えるのではなく、個々の意見を尊重することが重要です。また、取り組みの成果について発信することで、進捗を確認し改善につなげることができます。
集団ではなく個として捉える
ダイバーシティの推進でありがちな失敗として、「女性向け商品だから」といった理由で、女性社員だけのチームを結成するというケースがあります。チームが効果を発揮するためには、個々のチームメンバーの考え方や要望を尊重しなければなりません。特定の属性を同質的に捉えてしまうことが、逆に発想を限定してしまう恐れがあると認識する必要があります。
成果の発信と共有
ダイバーシティの推進を行うにあたり、社内の取り組みを社外に発信できるような仕組みを作りましょう。年度ごとに取り組みをまとめ、定量的な数値とともに発表するのもよい方法です。社内での達成度の共有ができるほか、ダイバーシティに取り組む企業として対外的にもアピールできます。
企業の競争力を高めるダイバーシティ推進に取り組む
変化の激しい時代に企業が生き抜くためには、新しい価値観をサービスや事業に反映させる必要があります。また、働き方の価値観の多様化や、労働力人口の減少に対応するために、さまざまな人が生き生きと働ける職場作りが重要です。ダイバーシティの推進は、そうした視点から企業の生産性向上をもたらし、競争力を高めることにつながります。ダイバーシティの取り組みにあたっては、従業員に目的や意図を伝えると共に、取り組みを定期的に評価し、社外に発表することが重要です。
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