- 作成日 : 2023年6月30日
原価管理とは?概要や管理方法、効率的な管理のポイントなどを解説

原価管理とは、製品・サービスの創出に必要な労務費や材料費などの原価を管理する活動全般を指します。
原価管理は、企業の利益を適切に把握し、財務諸表の作成や事業計画の策定を行う上で欠かせません。本記事では、原価管理の概要や管理方法、効率的な管理のポイントなどについて解説します。
目次
原価管理とは
はじめに、原価管理の概要や種類などについて解説します。
原価管理の概要
原価管理とは、製品やサービスを生み出すためにかかった材料費や労務費などの原価を管理する活動や取り組みを指します。
原価管理は、企業の利益を正しく把握し、決算書の作成や事業計画の策定を行うために重要な管理活動です。
原価管理は、大きく「総合原価管理」と「個別原価管理」に分けられます。
総合原価管理とは
総合原価管理は、一定期間における全ての製品原価を生産量の総数で割り、原価の平均値を算出する管理方法です。製造業など、主に製品を大量生産する工場などで用いられます。
たとえば、ある期間における製品の総原価が3,000,000円で、総生産数が200個の場合、平均原価は15,000円となります。
個別原価管理とは
個別原価管理は、ソフトウェア開発などのプロジェクト単位で原価を計算する管理方法です。ソフトウェア業界やコンサルティング業界など、プロジェクト単位で仕事を進める場合に用いられます。
ソフトウェア開発などの場合、プロジェクトによって仕様や原価が異なるため、個別に原価計算を行うことが必要です。
予算管理との違い
原価管理と予算管理の主な違いは、管理対象のスコープの違いにあります。予算管理では、企業の予算編成や各事業への予算配分、予算の執行管理などを行うため、原価管理を含めたより広い範囲での管理活動となります。
原価計算との違い
原価計算は、製品やサービス、プロジェクトにかかった原価の計算作業を指し、原価管理の一部に当たります。原価管理は、原価計算を行った上で原価の進捗管理や改善検討なども行うため、原価計算だけに留まらない管理活動となります。
原価管理の実施方法・手順
ここでは、ソフトウェア開発プロジェクトの個別原価管理を例に、原価管理の実施方法・手順について解説します。実施の流れは以下のとおりです。
- 原価情報の入力・集計
- 費目別の原価計算
- 部門別の配賦
- プロジェクト別の原価計算
- 原価管理のレポーティング
- 計画と実績の差異分析および改善検討
原価情報の入力・集計
開発現場の社員の作業工数や外注費用、サーバー費用といったプロジェクトの原価情報の入力・集計を行います。原価情報を正確に管理するためには、現場の担当者に日々の作業工数を忘れないうちに入力してもらうことが重要です。
費目別の原価計算
原価情報を集めたら、まずは費目別に原価計算を行います。費目別の種類は、大きく直接費と間接費に分けられます。ソフトウェア開発に直接関係する労務費や外注費などは直接費に分類し、オフィスの賃料や光熱費などの間接的な費用は間接費に分類しましょう。
部門別の配賦
費目別の原価計算で間接費となった項目について、各部門の人員数や作業時間などの基準に沿って部門ごとに割り当てます。
プロジェクト別の原価計算
各部門に配賦された間接費を、人月比などを基準に各プロジェクトに配賦します。費目別の原価計算で集計した直接費と各プロジェクトに配賦された間接費を合算することで、プロジェクトごとの原価が算出可能です。
原価管理のレポーティング
原価管理の状況は、経理担当内に留めず、開発現場や管理者、経営層などとも共有していくことが大切です。関係者に共有する際は、表やグラフなどを活用し、分かりやすい形でレポーティングするようにしましょう。
計画と実績の差異分析および改善検討
計画した原価情報と実際の原価実績の差異分析を行います。原価実績として、どの費目にどの程度の原価が実際にかかっているかを把握し、計画時の原価情報と突き合わせます。
原価の計画値と実績値が大きく乖離している場合は、関係者でプロジェクトの改善検討を行いましょう。改善検討の際は、原価実績と合わせてプロジェクトの進捗状況も確認することで、プロジェクトの状態を総合的に判断することが可能です。
たとえば、原価が計画よりも速いペースで計上されていたとしても、その分プロジェクトも前倒しで進行していれば問題ないと判断できます。反対に、原価の計上が計画通りでも、プロジェクトが大幅に遅延している場合は、コストの見直しも含めたプロジェクトの立て直しが必要となるでしょう。
このように、原価管理をプロジェクトにうまく活かすことで、適切な意思決定や改善活動につなげることができます。
原価管理を効率化する方法
原価管理の効率化にあたっては、主に以下の方法が挙げられます。
- エクセルを活用する
- 原価管理システムを活用する
- ERPを導入する
エクセルを活用する
エクセルを使って製品やプロジェクトの原価を管理する方法です。
企業規模やプロジェクト規模が小さい場合は、エクセルの管理で十分なケースもあります。
ただし、エクセルを使った原価管理では、計算ミスや管理の属人化などの懸念が生じるため注意が必要です。企業規模が大きくなるにつれ、エクセルでの管理困難になってくるでしょう。
原価管理システムを活用する
企業規模やプロジェクト規模がそれなりに大きい場合は、原価管理システムを使って原価を管理する方法が効果的です。また、規模に関わらず、エクセル管理での計算ミスや属人化などを回避したい場合においても、原価管理システムの活用が有効となります。
原価管理システムを使うことで、人的ミスや恣意性のない確実な原価管理や管理状況の可視化などが可能です。
ERPを導入する
ERPを導入して原価管理システムと連携することで、原価管理のさらなる効率化を実現できます。ERPは、販売や購買、会計といったデータを一元管理しているため、原価管理に必要となるデータもまとめて管理することができます。
ERPを導入することで、原価管理におけるデータ収集作業や入力作業の効率をより一層高めることが期待できます。
原価管理においてERPを活用することのメリットについては、以下の関連記事も併せてご確認ください。
まとめ
原価管理とは、製品やサービスの開発・生産において生じた材料費などの原価を管理するための活動・取り組みを指します。
原価管理は、企業の利益を正しく把握し、決算書の作成や事業計画の策定を行うために重要な管理活動です。
原価管理では、現場などから原価情報を収集した上で、費目別の原価計算や各部門への間接費の配賦などを実施します。また、原価管理の状況は常に可視化し、現場や経営層などの関係者にタイムリーに共有することが重要です。
原価管理を効率化する上では、原価管理システムを活用し、人的ミスや恣意性のない確実な原価管理や管理状況の可視化を行うことがポイントとなります。さらにERPを導入することで、原価情報の収集や集計の効率化を実現できるでしょう。

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