• 更新日 : 2024年5月8日

原価管理の基礎 目的やメリット、効果的な管理方法を解説

原価管理とは、製品・サービスの創出に必要な労務費材料費などの原価を管理する活動全般を指します。
原価管理は、企業を運営し、適切に利益を上げていくために不可欠な要素となっています。さまざまな原価管理の手法やツールがありますが、原価管理を行う際には、自社に適した手法やツールを選ぶことが重要です。
本記事では、原価管理の目的やメリット、管理方法、効率的な管理のポイントなどについてわかりやすく解説します。

原価管理とは

はじめに、原価管理の概要や種類などについて解説します。

原価管理とは

原価管理とは、製品やサービスの生産にかかるコストを適切に計測・記録・分析し、その結果に基づいてコストを分析したり、調整したりすることで、ビジネスの改善や効率化を図る経営管理の手法のことです。

そもそも原価とは、自社でサービスや製品を作る際にかかる、様々な費用のことを指します。原価には、材料費や労務費、製造間接費など、生産に必要なあらゆるコストが含まれています。

原価管理の主な目的は、これらのコストを理解し、必要に応じて削減することです。
しかし、単にコストを削減するだけでなく、それらを効率的かつ効果的に使用するための取り組みも重要になります。
効率的な原価管理は、製品価格の適正化や利益率の改善、市場競争力の強化などに直結します。そのため、企業の長期的な成功を目指すには、原価管理が不可欠だといえるでしょう。

また、原価管理は、大きく「総合原価管理」と「個別原価管理」に分けられます。

総合原価管理とは

総合原価管理は、一定期間における全ての製品原価を生産量の総数で割り、原価の平均値を算出する管理方法です。製造業など、主に製品を大量生産する工場などで用いられます。

たとえば、ある期間における製品の総原価が3,000,000円で、総生産数が200個の場合、平均原価は15,000円となります。

個別原価管理とは

個別原価管理は、ソフトウェア開発などのプロジェクト単位で原価を計算する管理方法です。ソフトウェア業界やコンサルティング業界など、プロジェクト単位で仕事を進める場合に用いられます。

ソフトウェア開発などの場合、プロジェクトによって仕様や原価が異なるため、個別に原価計算を行うことが必要です。

企業における原価管理の重要性

企業が市場競争力を維持し、持続可能な利益を確保するためには、製品やサービスのコスト構造を正確に理解し、コストを効果的に削減することが不可欠です。
製品やサービスの生産・提供にかかるコストを把握し、適切に管理することは、企業の利益の最大化や無駄の削減に直結します。
原価管理を行うことは、コストの過剰な発生を予防し、より効果的な企業運営につながる点で非常に重要だといえるでしょう。

原価管理と関連する用語との違い

予算管理との違い

原価管理と予算管理はどちらも企業の財務健全性を保つ上で重要ですが、焦点が異なります。
原価管理は、具体的に製品やサービスの生産過程で発生するコストを詳細に把握し、コストの削減や効率化を図ることに重点を置いています。
一方、予算管理は、企業の総収入と総支出などの実績に基づいて一定期間の予算を策定し、その実行を通じて財務のバランスを保つことに焦点を当てています。また、予算管理では、企業の予算編成や各事業への予算配分、予算の執行管理などを行うため、原価管理を含めたより広い範囲での管理活動となります。

予算管理の基本情報や管理手順についてはこちらでも解説していますので、ぜひご覧ください。

原価計算との違い

原価管理と原価計算は混同されがちですが、目的と範囲において明確な違いがあります。
原価計算は製品やサービスのコストを正確に算出し、これをもとに価格設定や財務報告を行うことに重点を置いています。
一方、原価管理はこれらのコスト計算をもとに、コストの管理や削減、運用の効率化などを目指すより広範なアプローチを指します。
原価計算が「コストをどう計算するか」に注目しているのに対し、原価管理は「計算されたコストをどう管理し、最適化するか」に焦点を当てています。

利益管理との違い

利益管理は企業の利益を最大化することを目的とし、売り上げの最大化とコストの削減を通じて達成されます。これに対して原価管理は、利益管理の一部としてコスト面に注目し、コストの管理と削減を通じて利益の増加を目指します。
利益管理は、価格戦略や市場戦略を含むより幅広い戦略的アプローチを取り、全体の財務成績の改善に貢献します。原価管理はその中の一つのカテゴリーとして、製品やサービスに関するコスト削減に特化しています。

原価管理の目的・メリット

原価管理は経営効率や収益性の面で非常に重要であり、多くのメリットがあります。以下では、原価管理の主な目的とメリットを掘り下げて解説します。

利益の最大化

原価管理の最大の目的・メリットは、利益の最大化にあります。企業は製品やサービスの原価を正確に把握し、無駄を削減することで利益率を高めることが可能です。
コストの「見える化」により、どのプロセスのコスト効率が悪いかを特定し、具体的な改善策を講じることができます。これにより、最終的には製品の価格競争力を保ちつつ、利益を最大化することが可能となります。

損失の最小化

原価管理のもう一つの重要な目的・メリットは、損失の最小化です。不要なコストや非効率なプロセスを明らかにし、それらを排除または改善することで、企業の損失を軽減します。
これにより、資金や人的リソースの無駄遣いを防ぎ、企業の財務状況をより安定させることができます。効率的な資源の利用は、企業の持続可能性に直接影響を与えます。

将来的な経営判断の材料

原価管理は、将来的な経営判断に役立つ重要な情報となります。コストの動向を定期的に分析することで、企業はより戦略的な投資判断を下すことができます。
また、原価データをもとにした予測は、新たな事業展開や製品開発の方向性を決定する際の貴重な指針となるでしょう。このように、原価管理は企業が市場での競争力を保ち、地位を強化するために不可欠です。

原価の種類と計算方法

原価は、直接費と間接費(製品との関連による分類)もしくは、変動費固定費(操業度との関連による分類)に分けて考えることができます。分け方の詳細は業態や企業によって異なるため、自社で明確な基準を決めておくことが重要です。以下では、それぞれの分け方について解説します。

直接費と間接費

直接費は、特定の製品やサービスの生産・提供に直接関連するコストを指します。例えば、原材料費や直接労働費などがこれにあたります。
これに対し間接費は、製品やサービスの生産・提供に必要なものの、個々の製品やサービスに直接割り当てることができない費用を指します。これには、管理部門の給与や工場の維持費などが含まれます。
直接費は、製品ごとまたはサービスごとに直接計上しますが、間接費は、総合原価管理や個別原価管理の方法に基づき、適切に配賦されます。

変動費と固定費

変動費は、生産量やサービス提供量などに比例して変動する費用を指します。原材料費は典型的な変動費の例であり、一般的に生産量が増えれば増えるほど変動費も増加します。
一方、固定費は生産量やサービス提供量にかかわらず発生する費用です。例えば、賃貸料や保険料などが固定費に該当します。
変動費は生産量に応じて計算し、固定費は一定期間ごとに均等に計上するのが一般的です。

原価管理の実施方法・手順

ここでは、原価管理の実施方法と手順について解説します。

① 原価情報の入力と集計
原材料の購入から製造部門や開発部門の労働時間、製造過程で発生する各種コストまで、生産やサービス提供に関わるすべての費用を詳細に記録することが原価管理の第一歩となります。これには直接費だけでなく、間接費も含まれます。このデータは後の分析の基盤となり、コスト削減や効率化の方策を導き出すために不可欠です。

② 費目別の原価計算
次に、直接材料費、直接労働費、製造間接費などの各種コストを明確に分類し、それぞれのコストを計算します。この過程では原価の詳細な内訳を理解し、コスト削減の機会を特定することが目的です。
この段階で正確なコストデータが集計されることが、効果的な原価削減・最適化の鍵となります。

③ 部門別配賦とプロジェクト別原価計算
企業内の各部門やプロジェクトにかかるコストを正確に割り当てることも重要です。
これにより、各部門やプロジェクトの費用対効果を評価し、コスト管理をより具体的に行うことができるようになります。
なお、部門別配賦では間接費を適切に各部門に割り振り、プロジェクト別原価計算では特定のプロジェクトに関連するすべてのコストを集計します。

標準原価の設定
標準原価とは、製品の製造やサービス提供に際して、理論上標準的にかかるコストを指します。標準原価を設定し基準値を定めることで、コストの過剰な発生を防ぎ、効率的な資源配分を促進します。
このように、適切な標準原価を設定することは、コスト管理の効率化に寄与します。

⑤ 標準原価と実際原価の比較分析
実際原価と標準原価を比較し、差異の原因を分析します。どのような要因で差異が生じたのかを分析することで、今後の標準原価設定の精度を上げることができます。

一度で適切な標準原価を設定することは困難なため、定期的に調整を重ねていくことが重要です。

⑥ 原価管理のレポーティングと改善検討
企業全体で原価情報を共有し、計画と実績の差異分析に基づく改善提案を検討していきます。これにより、経営の効率化につながります。前述した差異分析の結果、計画値と実績値が大きく乖離している場合は、プロジェクトの改善検討を行います。
また、レポーティングを行う際は、提供先に応じて必要な情報を取捨選択することも重要です。

⑦ 分析結果に基づく改善
最後に分析結果を用いて具体的な改善計画を立て、改善していきます。具体的な数値目標を新たに設定するようにしましょう。

この一連の流れによって、原価管理の効率化と正確な分析を実現できます。また、最終的に企業利益に寄与する仕組みを構築できるでしょう。

原価管理の課題

原価管理は企業の利益最大化や資源効率の向上に寄与しますが、実行にあたってはいくつかの課題が存在します。ここでは、原価管理を行う上での主要な課題について解説します。

データの正確性と収集

正確で詳細なデータ収集は原価管理の成功に不可欠ですが、特に大企業の場合は複数のプロジェクトや部門が存在するため、全ての情報を適切に集約し管理することは容易ではありません。
取集したデータが不正確だと、コスト計算の誤りにつながり、結果として誤った意思決定を引き起こす可能性があります。このため、データ収集とその正確性の確保には特に注意が必要です。

間接費の配分

間接費は製品やサービスに直接割り当てることが困難なため、どのようにしてこれらのコストを製品原価に反映させるかが課題となります。
不適切な配分はコストに歪みを生じさせ、製品の価格設定やコスト分析に悪影響を与えることがあります。そのため、透明性と公平性を確保しながら間接費を適切に配分する方法を定めておくことが重要です。

組織全体でのコミットメント

原価管理を効果的に実施するためには、組織全体のコミットメントが求められます。
しかし、組織内の意識の不一致や原価管理の重要性に対する理解の欠如がプロセスの妨げとなる可能性があります。全ての関係者が原価管理の目的・メリットを理解し、そのプロセスに積極的に関与する土壌を育てることが、課題を乗り越える鍵となります。

効果的な原価管理を行うためのポイント

ここでは、コストの効率的な管理と利益最大化を実現するためのポイントについて解説します。これらのポイントを理解し実践することで、より効果的な原価管理を実現できるでしょう。

コスト構造の理解

まずは、企業全体のコスト構造を理解し、どの部分に最も費用がかかっているかを特定することが大切です。全体のコスト構造を把握した上で、無駄なコストを排除する戦略を策定していきましょう。

コスト分析

全体のコスト構造を把握したら、定期的にコスト分析を行い、無駄な支出や効率化のポイントがないかを探していきます。
製品やサービスごとの原価計算を継続することで、その変遷についても分析することが可能です。これらの情報をもとに、価格設定や利益率の最適化を試み続けましょう。

適切なツールの活用

長期的な成功のためにはこれらのプロセスを仕組み化し、持続的な改善を図っていくことが不可欠です。適切なツールやソフトウェアを使用して原価管理プロセスを自動化し、原価管理の効率をより高めていきましょう。

原価管理の手法とツール

効率的な原価管理を行うには、適切なツールやソフトウェアの活用が不可欠です。本章では、原価管理に適したツールやソフトウェアを紹介し、それぞれの特徴や利点について解説します。

これらのツールは、原価データの収集、分析、モニタリングを効率化し、より正確な意思決定を支援することができます。
自社に合った適切なツールを選定することで、原価管理の効果を最大化し、経営の効率化を実現できるでしょう。

エクセルを活用する

  • 概要・特徴:
    エクセルは、表計算ソフトとしての高い柔軟性とアクセシビリティを有し、原価計算やデータ分析に広く利用されています。初期段階の原価管理や小規模プロジェクトにおいて、手軽に使用できる点が特徴です。
  • メリット:
    エクセルは、低コストでの導入・運用が可能であり、ビジネスの現場において既に広く使われているため、特別なトレーニングを必要としない場合が多いです。また、簡単な使い方から高度な分析まで幅広く対応可能なため、柔軟な原価管理が可能です。

原価管理システムを活用する

  • 概要・特徴:
    原価管理システムは、原価計算、予算管理、財務報告などを自動化し、効率化することができます。これらは特に、複数のプロジェクトや大規模な事業運営をサポートする際に効果を発揮します。
  • メリット:
    原価管理システムの導入により、原価計算の自動化と精度の向上やヒューマンエラーの防止を図ることができます。また、リアルタイムでのデータアクセスと分析が可能になるため、迅速な意思決定支援も期待できます。複雑なデータも一元管理できるため、管理の手間を大幅に削減できるでしょう。

ERPを導入する

  • 概要・特徴:
    ERP(Enterprise Resource Planning)システムは、原価管理を含む企業の全業務プロセスを一元管理するソフトウェアです。財務管理、人事管理、生産管理など、企業運営に必要な機能が統合されています。
  • メリット:
    ERPシステムの最大のメリットは、企業の運営に関わるあらゆる情報を一元管理し、組織全体の効率化を図れる点にあります。これにより、情報の透明性が高まり、部門間の連携がスムーズになります。また、経営資源の最適化によるコスト削減も期待できます。

原価管理においてERPを活用することのメリットについては、以下の関連記事も併せてご確認ください。

原価管理を効率化するマネーフォワード クラウド個別原価

マネーフォワード クラウドには、原価管理に役立つ「マネーフォワード クラウド個別原価」という製品があります。

マネーフォワード クラウド個別原価の特長

① 工数データの収集が簡単
マネーフォワード クラウド個別原価では、従業員による工数データの入力が簡素化されているのが特徴です。データ収集の負荷軽減と時間短縮につながります。

② 全ての費用データの効率的な収集
原価管理を行うには、労務費や外注費、その他経費などのデータを収集する必要があります。マネーフォワード クラウド個別原価では、複数のシステムに散らばっている労務費や外注費などのデータを一箇所で収集し、効率的な原価管理を容易に行えます。

③ 複雑な間接費配賦の自動化
自動化機能により、間接費の複雑な配賦計算を簡単に実行できます。また、配賦ルールに変更があった際のメンテナンスも簡単に行えます。

配賦の詳細については、こちらで詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

マネーフォワード クラウド個別原価の導入事例

株式会社オプティマインドでは、精緻な原価計算体制を敷くにあたり、原価計算と工数管理が統合的に行えるツールの導入を検討していました。
マネーフォワードクラウド個別原価を導入したことで、以下の3つの成果を得ることができました。

・工数入力の手間を削減
・周辺システムとの連携によって、情報の一元管理に成功
・緻密な個別原価計算が可能となり、監査に耐えうる原価管理体制を実現

これまで手作業で行われていた工数比率の計算と各部署への振り分けに関する原価管理が改善され、効率的なバックオフィス体制へとつながっています。

まとめ

原価管理とは、製品やサービスの開発・生産において生じた材料費などの原価を管理するための活動・取り組みを指します。
原価管理は、企業の利益を正しく把握し、決算書の作成や事業計画の策定を行うために重要な管理活動です。
また、原価を把握することは、最適な製品価格設定・利益確保にもつながります。企業が市場で競争力を保ち、持続的な利益を生み出すためには、効果的な原価管理がポイントだといえるでしょう。

原価管理では、現場などから原価情報を収集した上で、費目別の原価計算や各部門への間接費の配賦などを実施します。また、原価管理の状況は常に可視化し、現場や経営層などの関係者にタイムリーに共有することが重要です。

また、原価管理を効果的に行うためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。
①コスト構造の理解
②コスト分析
③適切なツールの活用

原価管理を効率化する上では、エクセルや原価管理システムなどを活用し、人的ミスや恣意性のない確実な原価管理や管理状況の可視化を行うことがポイントとなります。さらにERPを導入することで、原価情報の収集や集計の効率化を実現できるでしょう。


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