• 作成日 : 2024年9月13日

価格弾力性とは?計算方法や価格設定への活用方法、事例を解説

価格弾力性とは、ある商品の価格が変化したときに、その商品の需要や供給がどれだけ変動するかを示す指標のことです。
企業は価格弾力性を効果的に活用することで、需給のコントロールや利益の最適化が可能になります。
本記事では、価格弾力性の概要や測定・活用方法、活用事例などについて解説します。

価格弾力性とは

はじめに、価格弾力性の概要や特徴について解説します。

価格弾力性の概要

価格弾力性とは、ある商品の価格が変化したときにその商品の需要や供給がどれだけ変動するかを示す指標です。

あらゆる商品やサービスは、価格が高騰すると需要が減少しますが、価格の上がり幅に対してどれくらい需要が減るかは商品やサービスの種類によって異なります。

価格弾力性を活用すると、商品ひとつひとつに適正価格を設定でき、消費者の需要をコントロールできるようになります。収益の最大化や安定を目指す企業にとって、価格弾力性は不可欠な知識といえるでしょう。

価格弾力性の程度

価格弾力性の程度は大きい、小さいで表現されます。価格弾力性が大きいとは、価格の増減に対する需要の増減幅が大きいことを指し、価格が上がると顧客が商品を買わなくなる傾向を示します。

一方で価格弾力性が小さいとは、価格の増減に対する需要の増減幅が小さいことを指します。価格弾力性の小さい商品は、価格の値上げに対して顧客が離れにくい傾向があるといえます。

価格弾力性の特徴

価格弾力性が小さい商品の代表例としては食料品や医療品などが挙げられ、多くの生活必需品があてはまります。一方で価格弾力性が大きい商品にはブランド品のような贅沢品や嗜好品が当てはまり、他で代替できる商品やサービスは価格弾力性が大きい傾向にあります。

価格弾力性の測定方法

価格弾力性を測定する主要な3つの方法を紹介します。
なお価格弾力性を算出する際は、需要や供給、価格の変化率を絶対値として扱うため、プラスの値に変換します。

また価格弾力性の数値が「1」を下回ると弾力性が小さい、「1」を上回ると弾力性が大きいと評価されるのが一般的です。

パーセンテージ法

価格弾力性の計算方法の中でも最も基礎的な計算方法で、需要の変化率を価格の変化率で割って計算します。

価格弾力性 = 需要変化率(%)/ 価格変化率(%)

※需要変化率 = (価格変更後の売上数-変更前の売上数)/ 価格変更前の売上数
※価格変化率 = (変更後の価格-変更前の価格)/ 変更前の価格

ポイント法

ポイント法は需要曲線上の特定の点での価格弾力性を算出する方法で、与えられた価格と数量レベルにおける需要量の変化を価格変化率で割る方法です。

需要曲線が曲線的な場合や、特定の1点での弾力性を知りたい場合に適している方法です。

価格弾力性 = (需要の変化率) / (価格変化率) × (平均価格 / 平均数量)

アーク法

アーク法は需要曲線上の任意の2点間の価格もしくは需要に大きな変化がある場合に便利な計算方法です。需要量の変化を初期に設定した価格と最終価格の平均で割った結果を、価格変化率と平均価格で割ることで算出できます。

需要曲線上の複数の点での弾力性を比較したい場合に適切な方法です。

価格弾力性 = (需要の変化率 / 平均数量) / (価格変化率 / 平均価格)

価格弾力性の活用方法

本章では、価格弾力性の活用方法を解説します。

新商品・新サービスの価格設定

新商品発売時の適切な価格設定は、利益最大化の重要な要素となります。新商品・サービスの価格を決定する際は、以下の点に着目すると良いでしょう。

  • 自社商品を値上げしても需要を維持できるのはいくらくらいか
  • 競合より安く価格設定することで、どれほどの顧客獲得が見込めるのか

これらの指標は自社の商品・サービスの独自性や希少性によっても変化するため、総合的な判断が重要となります。

既存商品の価格見直し

商品の利益率を改善したい場合や需要を創出したい場合も、価格を変動させることで課題解決につなげることが可能です。商品やサービスの収益率や需要が予測と見合わない場合は、価格の再設定を検討しても良いかもしれません。

既存商品の価格を見直す際には競合調査もあわせて行い、扱う商品の価格弾力性の特徴を踏まえた価格設定をすることが重要になります。

セールやキャンペーンの効果的な実施

価格弾力性が大きい商品は、セールや期間限定のキャンペーンと相性が良い傾向があります。価格を下げることで需要の伸びが期待できるので魅力的な訴求にも活用でき、単価を高めるよりも販売数を増やすという目的にも合致しやすいためです。

一方で価格弾力性が小さい商品は、値下げよりもプロモーション方法を見直す方がより効果的です。

「需要の価格弾力性」以外におさえておくべき弾力性

今まで解説してきた需要の価格弾力性以外にも、知っておきたい弾力性を2つ紹介します。

供給の価格弾力性

供給の価格弾力性とは、ある商品の価格が変動した場合に供給がどれくらい変化するのかを示す指標です。例えば、供給の価格弾力性が大きい商品は値上げによって供給量も増加するため、値上げは在庫リスクを高める一因になります。

そのため、供給の価格弾力性が大きい商品にはより慎重な価格設定が求められます。

価格の交差弾力性

価格の交差弾力性とは、ある商品の価格が変動したときに、別の商品の需要がどれくらい変化するかを示す指標です。この数値が大きくなるほど別の商品への影響も大きいことを意味し、競合の価格変動による影響を判断する際に便利な指標でもあります。

価格の交差弾力性が大きい場合は、競合の値下げによって需要が大きく減り、自社も価格変更を迫られることが多いでしょう。逆に価格の交差弾力性が小さい場合は、競合による値下げによって奪われる需要が小さくて済むことを意味します。

価格弾力性の活用事例

価格弾力性を実際のビジネスに活用した事例を解説します。

エネルギー業界の事例

電気やガスなどのエネルギーは代替品の少ない必需品であるため、本来は価格弾力性が低い商品です。しかしその需要はピーク時とオフピーク時で差があり、電気の場合は夏の暑い時期や冬の寒い時期に高まる傾向があります。

しかし、需要に対する供給量は一定であることが望ましいので、供給を安定させるために時間帯によって価格を変動させることで、需要をコントロールしています。

需要が高いピーク時は価格を上げることで利益を高める一方、オフピーク時は価格を下げることで需要を創出し、顧客に利用を訴求できるのです。

食品業界の事例

食品は季節によって需給が変動しやすく、価格弾力性の分析が重要な商品の1つです。中でも海産物や農産物はその年の収穫量や漁獲量の影響を受けるため、特に変化が激しいという特徴があります。

例えば冬の野菜であるキャベツは、暖冬や天候が不順な場合に供給が減るため、価格が高騰します。キャベツが高騰すると他の野菜を買うという消費行動になることから代替性と価格弾力性は高く、値段の上がり幅も大きくなりやすいのです。

まとめ

価格弾力性は、商品価格の変化に伴う需給の増減幅を数値化する指標です。
商品やサービスの種類によってその数値は異なり、最適な価格設定に活用できることから企業の販売戦略に大きな影響を与えます。

商品ごとの価格弾力性の特徴を踏まえた上で新商品・新サービスの価格設定や既存商品の価格見直しなどに適切に応用し、利益の最大化につなげましょう。


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