- 更新日 : 2024年7月12日
ヒューマンエラーとは?発生原因や防止策、他社事例を解説
ヒューマンエラーが発生する原因は、知識不足や経験不足、業務の慣れによる手抜き、集団欠陥、複雑な業務フローの影響などさまざまです。
ヒューマンエラーが発生すると、労働災害や社会的信用の失墜につながるため、企業としてヒューマンエラーの防止策を講じる必要があります。
本記事ではヒューマンエラーの概要や発生原因、防止策を解説します。
目次
ヒューマンエラーとは
厚生労働省によると、ヒューマンエラーとは「意図しない結果を生じる人間の行為」とされており、簡単にいうと、人の認識不足や作業漏れから発生するミスを指します。
業務でヒューマンエラーが発生すると、作業の遅延や生産性の低下をはじめ、経済的損失や労働災害を引き起こす可能性があります。
企業はヒューマンエラーによるこれらの影響を認識し、ヒューマンエラー防止対策を策定・実施することが求められます。
出典:厚生労働省「ヒューマンエラー[安全衛生キーワード]」
ヒューマンエラーの発生要因
本章では、ヒューマンエラーの主な発生要因について解説します。
複雑な業務フロー
複雑化した業務フローは、作業者のヒューマンエラーを誘発する原因の一つです。
手順が多岐にわたり、作業工程が複雑に絡み合っている場合、一つ一つの作業に対する注意が散漫になりやすい傾向があります。
例えば業務フローに多くの例外が存在する場合、作業者は必要な情報を見落としたり、誤った手順を踏んだりしてしまう可能性があり、結果としてヒューマンエラーにつながりやすくなります。
知識・経験不足
作業者の知識や経験が不足していることも、ヒューマンエラーの大きな原因の一つです。
特に新入社員や未熟な作業者の場合、業務に必要な知識や技能が十分に身についていないため、誤った判断を下すことがあります。
例えば、製造機械の操作方法を完全に理解していない作業者が、誤った操作をしてしまうことなどが考えられます。
このような知識や経験の不足は、作業の質を大きく低下させる原因となり、ヒューマンエラーにつながります。
認識の誤り
認識の誤りも、ヒューマンエラーの原因です。作業者が持つ先入観や固定観念が、誤った判断や行動を引き起こすことがあります。
例えば、ある作業が安全だという誤った認識に基づき、適切な安全対策を怠ってしまうケースなどが考えられます。
このような認識の誤りは、意図しないミスや事故を招くことにつながります。
情報伝達の誤り
誤った情報が伝えられることや、重要な情報が伝わらないことで生じるヒューマンエラーもあります。
例えば、作業指示が不明確であったり、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の不足により、必要な情報が抜け落ちることがあります。
このような情報伝達の誤りは、とくに複数人で作業する場合に発生しやすく、結果として誤った作業を進めてしまうことがあります。
慢心による手抜き
慢心による手抜きは、経験豊富な作業者が「自分なら大丈夫」と過信し、必要な確認作業を怠ったり、安全対策をおろそかにしたりすることで起こります。
例えば、繰り返し行っている作業に対して、過去の成功体験から安全確認を省略してしまうケースなどが考えられます。
このような慢心は特にベテランの作業者に見られ、結果として思わぬミスを引き起こすことがあります。
疲労や心身の機能低下
疲労や心身の機能低下も、ヒューマンエラーの大きな原因の一つです。
長時間労働や睡眠不足、ストレスなどが原因で作業者の判断力や注意力が低下し、ミスを起こしやすくなります。
また、加齢による身体機能の衰えも記憶力や認識力の低下を招き、作業中のミスにつながりやすくなります。
ヒューマンエラーの防止策
続いて、ヒューマンエラーの防止策を詳しく解説します。
業務プロセスや作業マニュアルの見直し
ヒューマンエラーを防止するには、業務プロセスの見直しや作業マニュアルの整備が不可欠です。
作業マニュアルの見直しによって作業の標準化を図り、ミスの原因となる情報のバラつきを減らすことができます。
また、作業マニュアルを継続的に更新し、現場の声を取り入れることで、実際の作業に即した内容へと改善し続けることが重要です。
これによって作業者が各自の役割を明確に理解し、作業の無駄やミスを減らすことにつながります。
社員教育の強化
社員教育を強化することも、ヒューマンエラーを防止する上で効果的な対策の一つです。
特に新人教育では、具体例を交えた教育プログラムを用意し、初心者が犯しやすいミスを事前に防ぐよう配慮することが重要です。
また、経験豊富な社員に対しても、定期的な研修を通じて最新の作業プロセスや安全管理についての知識をアップデートさせ、ヒューマンエラーに対する意識を高めることが求められます。
作業環境の改善
作業環境には、物理的な条件だけでなく作業プロセスやチームのコミュニケーションなども含まれます。
「作業スペースが狭すぎる」「照明が不十分である」「ツールや機器が古い」「作業手順が複雑すぎる」などの問題は、ヒューマンエラーの発生リスクを高めます。
これらの課題を特定・改善することで、作業効率の向上とエラーの発生率低減が期待できます。
定期的に作業環境をチェックし、従業員からの意見を積極的に取り入れ、必要に応じて作業環境やプロセスを改善することが重要です。
健康管理の推進
従業員の健康状態は、ヒューマンエラーの発生率に大きく影響します。
疲労やストレス、体調不良は注意力や判断力を低下させ、作業中のミスにつながりやすくなります。
そのため、企業は従業員の健康管理を推進することが求められます。
例えば、休憩時間の確保や健康診断の実施、メンタルヘルスケアの提供などが挙げられます。
実践的なヒューマンエラー対策事例
実践的なヒューマンエラー対策事例の一つに、トヨタ生産方式の「ポカヨケ」があります。
ポカヨケとは、工場などの製造ラインに設置される、ヒューマンエラーを物理的に防止する仕組みを指します。
トヨタ自動車株式会社では、働く人が使用する締め付け工具などと連動し、閉め忘れが無いかなどをチェックする装置が導入されています。
作業の状態ごとに緑・オレンジ・赤のランプが点滅する仕組みとなっており、作業始めはオレンジ色が点滅します。
閉め忘れなどの作業漏れがあると赤色が点滅し、作業が完了すると緑色が点滅するなど、作業の状態を作業者へ視覚的に知らせる仕組みです。
万が一作業漏れに気づかなくても、問題がある場合はラインが止まって後工程に製品が流れない仕組みになっており、ヒューマンエラーを防止する工夫が施されています。
参考記事:トヨタ自動車「よく分かる『トヨタ生産方式』」
まとめ
本記事では、ヒューマンエラーについて詳しく解説しました。
業務でヒューマンエラーが発生すると、作業の遅延や生産性の低下を引き起こす可能性があり、企業として徹底した対策が求められます。
また、ヒューマンエラー防止は一度きりの取り組みではなく、継続的な努力が必要です。
そして定型化や自動化できる仕事についてはシステムやツール導入を行うことも、ヒューマンエラーを防ぐ有効な対策の一つです。ぜひITツールも活用しながらヒューマンエラーを防止し、仕事を効率よく進められるようにしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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