- 更新日 : 2024年7月12日
原価と人件費とは?原価と人件費の関係を詳しく解説
企業の粗利や業績を正確に把握するためには、「原価」や「人件費」がどれだけかかっているのかを把握する必要があります。
原価と人件費の正しい意味や計算式を理解することで、原価管理をスムーズに行えます。しかし、これらの要素を理解するだけでなく、原価と人件費の関係性についても理解しておくことが重要です。
本記事では、原価と人件費のそれぞれの意味や計算方式に加えて、原価と人件費の関係についても詳しく解説していきます。
また、個別原価計算と人件費との関わりにも触れ、経営における重要な概念を明確にしていきます。これらの要素を統合的に理解することで、企業の健全な経営をサポートする手助けができるようになるでしょう。
目次
原価とは
はじめに、原価の意味について解説します。
原価とは、商品やサービスを提供する際の元手となるお金、あるいは提供するために使ったお金のことです。
原価には大きく分けて「製造原価」と「売上原価」の2種類があります。それぞれの意味と計算式について解説します。
製造原価
製造原価とは、商品やサービスを製造するために費やした原価を指します。製造原価の計算式は以下のとおりです。
製造原価=期首材料・仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末材料・仕掛品棚卸高
商品やサービスを製造する工程では、原料の購入費や設備の電気代などのさまざまな費用がかかります。
製造原価は、それら製造工程で発生した費用を全て合算することで算出できます。
売上原価
売上原価とは、売れた商品やサービスのために費やした原価のことです。売上原価の計算式は以下のとおりです。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
売上原価は、売れた商品の原価を算出している点が特徴です。
製造原価は製品の製造コストを把握するために、売上原価は製品の販売利益を把握するために利用するケースが多く見られます。
原価の主な分類
原価は、形態別に材料費・労務費・経費の3種類に分けられます。それぞれの意味について簡潔に解説します。
- 材料費
材料費は、製造に必要な原料や資源の仕入、部品や消耗品などが該当します。 - 労務費
労務費は、賃金や雑給、従業員賞与手当、退職給付費用、法定福利費などが該当します。 - 経費
経費は、製造に必要な設備や備品、それらの減価償却費用、電気代などが該当します。
上記の材料費・労務費・経費の3つの原価を合計すれば、全体の原価を算出できます。
人件費とは
続いて、人件費について解説します。
人件費は、製品やサービスの原価を計算する際に同時に計上されます。
例えば、給与や賞与、各種手当、役員報酬、退職一時金などが人件費に該当します。
人件費には、直接費(製品やサービスを作るために直接関係する費用)や間接費(製品やサービスを作るために間接的に発生した費用)が含まれており、原価の一部となっています。
労務費との違い
人件費は労務費と混同されるケースが多く見られます。
労務費は、製造に関わる人に対して支払われる費用のことであり、例えば従業員の給与や賞与、通勤費・家賃補助などの各種手当が該当します。
人件費は、労働力を提供した人に支払われる全ての費用を包括しています。
そのため、労務費は人件費の一部であるといえるでしょう。
人件費は、労務費に加え販売費(販売にかかる費用)と一般管理費(企業の管理部門で発生する費用)を合わせることで算出できます。
例えば、営業部門で働いている従業員の賃金・給料などは販売費に、管理部門で働いている従業員の賃金・給料は一般管理費に該当します。
原価と人件費の関係
この章では、原価と人件費の関係について解説します。会計において、人件費をどのように計上するかは、その経費がどのような目的・活動のために発生したものであるかによって異なります。
人件費を原価として計上する場合の科目
人件費を商品やサービスの原価として計上する場合は、一般的に「製造給与」や「製造人件費」などの科目に振り分けられます。
製造業における直接労務費は、商品の製造に直接関与する従業員の給与や賞与などの人件費のことを指すケースが多いです。
・売上原価に計上する人件費
商品の製造やサービス提供などに直接関わっている人件費は、多くの場合売上原価に計上されます。
例えば、製造業の工場で働く従業員の給与や、レストランの調理スタッフの給与などは売上原価に計上します。
・販管費および一般管理費に計上する人件費
営業部門や経理部門、経営管理部門の従業員の給与や事務用品などは、販管費や一般管理費として計上されるケースが多いです。
上記のとおり、人件費を計上する科目は業種・業務によって変わってきます。
個別原価計算と人件費の関係
この章では、個別原価計算と人件費の関係について解説します。
個別原価計算では、直接材料費や間接経費などのコストを各製品・サービスに割り当て、各製品・サービスごとにどれだけの原価がかかっているのかを計算します。
ここで重要となるのが、人件費の取り扱いです。人件費は、それが直接的に製品やサービスの製造・提供に関連している場合と、間接的な役割を果たしている場合とがあります。
個別原価計算において、これらの人件費がどのように扱われるかは、その違いによって異なります。
直接労務費
製品の製造やサービス提供に直接関わっている従業員の給与や賞与などの人件費のことを「直接労務費」といいます。
直接労務費は、個別原価計算において特定の製品やサービスにそのまま割り当てられます。
例えば、製品Aの製造に従事する従業員の給与は製品Aの原価に直接計上されます。
間接労務費
製品の製造やサービスの提供には関わるものの、特定の製品やサービスにそのまま割り当てるのが困難な人件費のことを「間接労務費」といいます。
例えば、管理職や製造ラインの監督者の給与などは間接労務費に含まれます。
間接労務費は、製造時間や使用機械の稼働時間などを基準にし、各製品やサービスに間接的に割り当てられます。
上記のとおり、直接労務費は製品やサービスごとに明確に計算・割り当てられるのに対し、間接労務費は特定の基準や方法を使用して間接的に割り当てられるのです。
個別原価計算を活用し、個別原価管理を実施するのがおすすめ
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例えば、個別原価計算で得られた製品やサービスごとの人件費を比較し、人件費が高い製品やサービスを特定することで、プロセスの改善などの具体的な施策を立てやすくなるでしょう。
人件費を適切に管理することは、企業の売り上げの向上や競争力アップにつながります。個別原価管理は、業務上の課題に対処するために大いに役立つでしょう。
まとめ
今回は、原価と人件費について詳しく解説しました。
原価は大きく分けて、製造原価と売上原価に分けられ、製造原価は商品やサービスの製造にかかるコスト、売上原価は売れた商品やサービスにかかるコストを指します。
人件費は、製品やサービスの原価を計算する際に同時に計上される費用であり、給与や賞与、各種手当、役員報酬などが含まれます。人件費の計上方法は、業種や業務によって異なり、特定のルールはありません。
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